― レビュー ―
約1年半ぶりに登場した新たな拡張ディスク
ファイナルファンタジーXI
アトルガンの秘宝
Text by 川崎 政一郎
2006年6月26日

 

FF11の中〜上級者をメインターゲットにした
拡張データディスクが登場

 

FF11は発売から5年めに入り,多くのプレイヤーがレベルキャップに達している。こういった背景もあることから,今回の拡張版は基本的にレベル50以降の中〜上級者が対象だ

 国産のMMORPGとして現在唯一,ワールドワイドでの商業的成功を収めている「ファイナルファンタジーXI」は,サービスインから5年めに突入し,完全に円熟期へと入っている。今回はこのFF11の3本めの拡張データディスクである,「アトルガンの秘宝」のレビュー記事をお届けしよう。なお,本拡張には膨大なコンテンツ量が含まれるため,スペースの都合上,基本的な仕様説明は最低限に留め,評価面に重点を置いた記事内容となっている点はご了承いただきたい。

 最初に本拡張のキーポイントを簡潔にまとめると,「すべての追加エリアは新大陸」「主にFF11の中級者以上を対象」「ジョブバランスの追加および全体調整」,そして,これらの根底に秘められた「開発側の,プレイヤーに歩み寄った姿勢」となる。

 順番に説明していくと,本拡張の舞台となるのはミンダルシア大陸から東に位置する「エラジア大陸」。新エリアが既存の大陸の隙間にも存在した過去2本の拡張データディスクとは異なり,今回はすべてが別大陸にあるのだ。
 エラジア大陸は,全体的に中近東をモチーフとしており,一歩踏み入れた瞬間に従来の国々とはまったく違った印象を受ける。しかも,ただ単純に新鮮な雰囲気というわけでない。本拡張で最初に訪れる拠点エリアは実に使いやすくなっており,詳しくは後述するが,FF11プレイヤーに「今までとは違う」という印象を与えている。例えば競売や各種合成ギルドといった,従来の街にあった主要サービスの大半がここに集結しているのだ。その快適さたるや,従来の拠点エリア「ジュノ」の比ではない。

 

港町マウラからの定期航路が1本増え,船で新大陸へ行けるようになった。過去の拡張ディスクでは既存大陸の中に違和感を与えないようにエリアが追加されていたが,今回は旅をしているという気分を存分に満喫できる

 拠点エリアの施設で特筆すべきは,これまでFFXI最大の問題点の一つであった「アイテムスロット数不足」への対策として,「モグロッカー」という追加枠(合計で30〜50)が利用可能になっていること。これらの多大なメリットによって多くのプレイヤーがここを拠点に替え,ひいてはジュノにプレイヤーが集中しすぎていた問題も解消されているのだ。アトルガンの拠点はハイレベル向けの狩場へアクセスしやすいこともあり,現在はキャラクターのレベル60前後を境として,プレイヤー層が大きく二分されている。

 完成された世界に,これほどまでに便利な拠点エリアが突如として現れるのは,普通ならば違和感を覚えてしまうものだが,アトルガン皇国のバックグラウンドストーリー面もよく練り込まれている。アトルガン皇国は以前から存在していたが,過去に勃発した大戦時に孤立主義を貫くなど,諸外国と国交を断絶しており,長い間ミステリアスな存在として知られていた。そのアトルガン皇国が沈黙を破って,各国で大規模な傭兵募集活動に乗り出した,というのが本拡張のストーリーの発端だ。いわば我々プレイヤーは,アトルガン皇国に馳せ参じた傭兵の一員ということになる。

 いったいなぜ,アトルガン皇国がこのような募集活動を行うに至ったのか。これにはかなり込み入った事情があり,傭兵のキャラクター視点で鋭く迫っていくのが,本拡張における"アトルガンミッション"のメインテーマだ。ミッションが進むにつれ,やがては世界各国の首脳部をも巻き込み,一触即発の緊張感溢れる展開となっていく。現時点ではまだミッションの序盤しか実装されていないが,個性的なNPCがふんだんに登場するため感情移入しやすく,また難度面でもレベル制限を強いる極端なパートがないなど,全体としての手応えは上々だ。

 

エラジア大陸へ船で乗り込んだキャラクターが,最初に訪れるアトルガン皇国へと一歩足を踏み入れた瞬間,ここが新天地であることを強く実感させられる。だが,景観だけで驚くのはまだ早いのだ 新システムの導入時に世界設定面で強引さや理不尽な点があると,一気に白けてしまうもの。とはいえ,FFシリーズの一環である本作にとって,このあたりのストーリーテリングは朝飯前か 本拡張が発売される少し前のアップデートで,こういったNPCが世界各地に配置され,アトルガン皇国の存在をスムースに受け入れられる。世界観で違和感を与えないための気配りは見事

 

アトルガン皇国を拠点に設定すれば,大抵の用事はここで済ませられるほどだ。写真はジュノへの転移魔法の修行をしているタルタルのNPCだが,思わず応援したくなる 新エリアには,50台の中盤から75までの全レベル帯を対象としたキャンプポイントがある。旧大陸も含めれば,レベリング時の狩場探しに困ることは,もうないだろう アトルガン皇国は中近東をモチーフとしており,プレイ中は異国を旅している感覚を随所で得られる。ちなみに写真は青魔導師のアーティファクトを着用したNPC

 

傭兵派遣会社「サラヒム・センチネル」の社長,ナジャ・サラヒム。歴戦の冒険者に対しても情け容赦なくハッパをかける,典型的な姉御肌ミスラである アトルガンミッションは,やがて世界各国の首脳部を巻き込み,急転直下の展開となる。お馴染みのNPCにも意外なエピソードが発覚するなど,FFXIファンなら面白くて仕方がないだろう FFXIのミッションは,アップデートによって段階的に実装されていくのが特徴。先の展開が知りたくてもどかしいが,一方でイヤでも想像力をかき立てさせられる

 

 

アトルガン皇国の傭兵として奮闘せよ!
攻める「アサルト」と守る「ビシージ」

 

アサルトは選んだ難度に応じた報酬を得られるため,中〜上級者に人気がある。現在のFFXIは,レベル上げ以外のプレイスタイルもかなり幅広いのだ

 アトルガン皇国のバックグラウンドストーリーは,本拡張の新たなコンテンツ群とも密接に結びついている。アトルガン皇国の情勢は決して安泰というわけではなく,近辺を取り囲む敵対勢力「蛮族軍」の存在に頭を悩ませている。彼らとの攻防は今も絶え間なく続いており,これに対して我々プレイヤーが一傭兵として,この蛮族軍との攻防に直接参戦できるのだ。

 その内の一つ「アサルト」は,アトルガン皇国を取り囲む蛮族軍の拠点を,プレイヤーが急襲するというもの。流れとしては拠点エリアでアサルトの目標や難度をチョイスし,パーティを編成したうえで作戦を遂行する。その結果無事に目標を達成すれば,専用のポイントやアイテムを始めとした各種報酬を得られる,というわけだ。アサルトは従来の「ENMクエスト」や「リンバス」といった,プライベートエリア向けコンテンツのアップグレード版として位置付けられるが,トータルでの完成度はズバ抜けて高い。

 その魅力をピックアップすると,まずアサルトの目的が「敵の殲滅」「目的地の探索」「要員の救出,護衛」「味方の侵入経路を確保」など多岐にわたっており,これらに応じてエリアを攻略するという楽しさがもたらされている点。続いて,アサルトの作戦地域までは直接ワープで移動できるなど,たとえリンクシェルに所属していないプレイヤーでも,レベル50以上の冒険者であれば気軽に参加できる環境が整備されている点。もう一つは,報酬品の性能バランスが良く,トレード可能品も数多く含まれている点。アサルトの報酬品は,ポイントをこつこつと貯めることで誰でもいつかは必ず入手できるため,収入源としても優れている。

 よって,たとえ一日に1〜2時間しか遊べないようなプレイヤーでも,アサルトによってほどよい冒険を満喫できるというわけだ。当然ながら現在のアサルトは盛況を極めており,それまで十分面白かったENMクエストや「BCNM」などが霞んでしまっているほどなのだ。もっとも,仮にENMクエストなどの参加者が減れば,そこで取得できるアイテムの価値が上昇するわけで,これを狙う賢いプレイヤーも出てくるはず。各コンテンツにそれぞれ別の魅力が詰まっているため,参加比率はゆくゆくは適正な範囲に収まっていくことだろう。

 

各地に点在する蛮族軍の拠点を叩くという物語。広く考えるとアトルガンミッションの一部になるが,なぜここまで大規模になったか,という事情にも注目 アサルトは細かなルールが多いため,最初は混乱しがちだが,よく考えてみると短時間でサクっと遊べるように配慮した結果だと分かる アサルトの一種「土竜作戦」では,文字通りモグラのようにダンジョンを掘り進んでいく。アサルトの種類によって,その目的は違ってくるのだ

 

アサルトのポイントで交換できるアイテムには,現時点で30種類以上がある。BCNMやENMクエストなどと異なり,いつかは確実に入手できるシステムだ ときには未鑑定のアイテムを得られることも。アサルトやビシージの全貌は,本稿だけではちょっとカバーしきれないほどのボリュームがある アサルトに挑戦するためのハードルは限りなく低く,パーティを編成してから10分もあれば,現地での作戦を始められる。何よりも移動面が簡略化されているのが嬉しい

 

ビシージにはサーバーイベントならではの,ある意味お祭り騒ぎにも似た盛り上がりがある。初めて参加したプレイヤーは,誰もが驚くのではないだろうか

 もう一つの新コンテンツ「ビシージ」は,アトルガン皇国へと攻め込んできた蛮族軍を撃退するという,アサルトとは逆の立場の戦いだ。蛮族軍には三つの勢力があり,それぞれが現実時間に応じて着々と勢力を増やしていく。そして一定数に達した蛮族軍は,アトルガン皇国への進撃を開始し,これを多数の傭兵(=我々プレイヤー)を従えたアトルガン軍が迎え撃つという筋書きだ。ほかの要因も絡んでくるので断言できないが,ビシージが発生するペースは,現実時間の一日に数回といったところ。

 一度にビシージに参加できる人数は,最大で700名ほど。これに加え,多数のアトルガン軍NPCと蛮族軍が同一エリアで激戦を繰り広げるわけだ。その規模は,従来では最大人数であった「デュナミス」(64名+α)とは比べものにならない。ビシージの舞台がプライベートエリア“ではない”というところがポイントで,FFXIにとって初の,特定エリアで定期的に発生する大規模サーバーイベントということになる。

 ビシージに参加して蛮族軍の撃退に貢献したキャラクターは,戦績ポイントや経験値といった報酬を得られる。逆に蛮族軍の侵攻を自陣の奥深くまで許してしまうと,街の主要NPCが連れ去られてしまうなど,サーバー内の全プレイヤーが被害を被る仕組みだ。NPCなどの共有資産はかなりのメリットをもたらしているので,これを防衛するために見知らぬプレイヤー同士が一致団結するという,サーバーイベントならではの面白さがビシージにはある。またほかにも,仮にNPCが囚われてしまったら,今度はこれを救出するために蛮族軍の拠点を攻めることも可能で,ビシージ全体としての構想はかなり奥深い。

 ただしコンセプトはともかく,ゲームコンテンツとして見たビシージは,現時点(2006年6月中旬執筆)では手放しで褒められるものにまでは昇華されていない。容易に想像が付くと思うが,膨大な数のキャラクターが密集することで,タイムラグおよび処理落ちが頻発してしまうのだ。仮にハイエンドスペックのPCでビシージに参戦したとしても,その戦闘中は狙い通りにターゲットしたり動いたりすることが困難で,ひどいときには周囲のキャラクターが“見えない”こともある。
 ビシージならではの魅力は確かに存在するものの,このコンテンツの核となるはずの戦術的なプレイが事実上不可能なため,結果として十分に楽しめないのだ。

 そもそも単一のエリアに,これほどまでのキャラクター数を集めさせること自体,現状のインフラやマシンスペックを考えるに,やはり間違いなのではないだろうか。せっかくジュノにたむろしていたキャラクターの分散に成功しても,別の場所で同じことを繰り返してしまえば意味がない。
 FFXIにおける描画処理の限界面は,「デュナミス」などを通じてメーカー側も熟知していたはずだが,どのような将来プランをもってビシージのようなコンセプトを導入したのか,少々疑問に思う。ビシージをゲームコンテンツとして成立させるには,システムを大幅に改善するか,参加人数を大幅に減らすなど,なんらかの形でドラスティックな仕様変更が必須だろう。
 今のところビシージは本拡張において唯一のネックであり,処理落ち以外の出来が良いだけに,実にもったいない。時間が経てば落ち着いてくるのかもしれないが,その前段階でのなんらかの改善に期待したい。

 

蛮族軍の侵攻は自動的に発生するため,プレイヤーの都合などお構いなし。BCNMやENMクエストに慣れたFFXIプレイヤーにとっては,かなり新鮮だ エリアマップでは,各蛮族軍の状態をリアルタイムで把握できる。画面右上の「拠点兵力」が150に達して侵攻が始まると,エリア内に入りきれないほどのプレイヤーがアルザビに集まってくる 現在唯一のビシージ対象エリアである「アルザビ」は,いくつかの区画に分けられた城塞都市。エリア最深部の「魔笛」を奪うのが蛮族軍の目的で,ここにもストーリー上の大きな秘密が隠されている

 

蛮族軍の侵攻に敵わず,NPCが連れ去られてしまった直後のワンシーン。たとえパーティを組まずとも,その場に居合わせた者同士で得られる団結感はビシージならでは FFXIは,もともとプライベートエリア用のコンテンツが極端に充実している。今回のビシージで,それ以外の新規分野にもチャレンジしたという姿勢を見せてくれた キャラクターを描画しきれないというのは,ゲームとしてやや致命的。これらの「圧倒的多数のキャラクター」が織り成す各種の問題をどう改善していくのか,今後の開発に期待

 

 

3種類の新ジョブが追加されたことで
全レベル帯に活気が

 

 FFXIという作品は,自由に切り替えられる「ジョブ」が最大の特徴だが,本拡張によって新たに3種類のジョブが追加されている。これら3ジョブの概要を軽く紹介しておこう。

 

◆青魔導師
 モンスターの技を,我がものとして扱えるジョブだ。具体的な手順としては,モンスターが繰り出してきた技を「ラーニング」によって習得し,それ以降は「青魔法」として自分で使えるようになる。青魔法のセッティングを入れ替えることで,アタッカーやヒーラーといったさまざまなプレイスタイルが選択可能で,その幅広さは既存ジョブを含めても随一のもの。

 

◆コルセア
 海賊をモチーフとしたサポート型のジョブ。吟遊詩人の歌にも似た「ロール」を用いて,範囲内の味方にさまざまな特殊能力を付与するのが主な役割である。このロールを行うときは,ダイスを何度か振って,その合計値に効果が比例するという仕掛けがユニーク。しかしダイスの合計値が11を越えると暴発するなど,ギャンブル的な要素もあるのだ。またコルセア自身は基本的にはサポート型ではあるが,中レベル帯以降においては銃器による与ダメージも期待できる。

 

◆からくり士
 機械仕掛けの「オートマトン」と共に戦う,ペットジョブだ。従来のペットジョブと異なる点としては,オートマトンのカスタマイズ性が非常に高いことが挙げられる。このカスタマイズ性を同社の作品で比較するならば,「フェローシップ」以上,ファイナルファンタジーXIIの「ガンビット」未満といったところで,自分好みに育てる過程が面白さのキモである。ペットジョブゆえにソロプレイにも長けており,まとまったプレイ時間を確保できない人でも遊べるのが嬉しい。

 

 

 追加された3ジョブに共通するのは,どれもテクニカルな要素がぎっしりと詰まっており,また有用なサポートジョブも複数選べることだ。よって,FFXIを始めたばかりのプレイヤーにとっては少々難しいものの,本拡張のメインターゲット層である中〜上級者にとっては,十分に手応えを感じさせる。現在多数のMMOがリリースされてアイデアも枯渇している中,こういった独創的なシステムを続々と投入している点は,まったく脱帽せざるを得ない。

 

青魔導師のラーニング時は,モンスターが使う技を直接見て学習する。レアな技を求めて,普段はほとんど行かないようなエリアを探索するのも新鮮 セッティングした青魔法によって,キャラクター自身のスペックも変わっていく。3種の新ジョブの中でも,青魔導師は最も多くのシステムが搭載されたという印象 コルセアがロールを行うときは,1〜6のカードをシャッフルして一枚を引き抜く。効果の幅にランダム性を取り入れているのが,ほかのジョブにはない緊張感を生み出している

 

コルセアは,ポジション的には吟遊詩人よりもややアタッカー寄りとなっている。ロールを瞬時に行えるため,自由に動ける時間があるのが大きい 左にちょこんと座っているのが,からくり士のオートマトン。これを好きなようにカスタマイズして,共に戦わせるというペットジョブだ からくり士本体は,格闘タイプにフェローシップを加えたジョブ,というと分かりやすいだろうか。性質が理解されにくいのか,プレイ人口は少なめ

 

幅広いレベル帯で遊んでいると,以前よりもプレイヤーが楽しそうにプレイしているなと実感する。これからFFXIを始めるような人でも,ヒーラーやタンク系のジョブならパーティにも参加しやすいだろう

 現在は大勢のプレイヤーが新ジョブの育成を行っており,それによって低〜中レベル帯の冒険エリアに活気が出ている。またFFXIは,これまでのアップデートで,まとまった時間を取れないプレイヤーや,少人数のパーティーでも遊びやすいようにバランスを調整してきている。これらの要因が積み重なることで間接的ではあるものの,現在のFFXIは新規参入者にとってもプレイしやすい環境が整っているのだ。

 ほかにも,青魔導師の「ラーニング」を目的としたツアーが世界各地で組まれるなど,ヴァナ・ディールの世界全体が盛り上がってきていると感じる人は多いだろう。本拡張の表層だけを見ると,中〜上級者のプレイヤー向けの内容だと思ってしまうのだが,本当はそんな狭いレベルの話ではない。もし出遅れてFFXIのプレイを躊躇している人がいるならば,「いまはいいチャンスですよ」と教えてあげたい。

 またジョブに関しては,全体の性能バランスを微調整している点も見逃せない。最も分かりやすい例としては,FFXIにおける2大タンクジョブの「忍者」と「ナイト」が挙げられる。両者の役割は同じだが,そのプロセスがまったく異なるため,これまで長きにわたってバランス面での格差が生じていた。端的にいうと,忍者のほうがはるかに有用だったわけだが,本拡張でナイトの"正面から敵をがっちりと受け止める"という長所が伸ばされ,ほぼ同等の働きを行えるようになっているのだ。

 また,多くのプレイヤーがアトルガン皇国を拠点としているため,旧大陸への移動時に白魔導師の転移魔法が重宝されるなど,ジョブ間バランスへのさりげない配慮を随所で感じさせられる。どちらかというと本拡張の冒険エリアは,ジョブや装備といった性能面よりは,それを操るプレイヤーの判断力が求められる傾向が強い。FFXIは現在18ものジョブ数があり,サポートジョブを含めるとバランス調整作業は困難を極めるが,この部分をきっちり仕上げてきたことは,全体的に優れている本拡張の中でも最大級に評価したい。

 

新エリアでは,忍者よりもナイトのほうが役立つ場面も珍しくはない。キャラクターの仕様調整だけでなく,モンスターの戦術面からのアプローチでも,これを実現させている 主にアサルト用のウェイポイントは,通常のレベル上げなどでも使うことが可能。狩場へ向かうのに何十分もかける必要がないのは本当にありがたい 現在のジョブ間バランスに,大きな問題はほとんどないと思う。効率面にばかりこだわらず,自分がやりたいと思ったジョブを,素直にのびのびと遊んでほしい

 

 

発売後5年を迎えたFF11の現状と,
プレイヤーの要望を見据えた素晴らしい内容

 

 これまで紹介してきた新要素の,すべてに共通する点がある。新エリアへの往来,拠点エリアの施設,ミッションへの挑戦,アサルトおよびビシージへの参戦,ジョブ取得クエスト内容,モグロッカーといった要素のどれをとっても,中級者(レベル約50)以上ならば“誰でも直ちに”享受できるのだ。一見当たり前のように思えるかもしれないが,とりわけ「アトルガンの秘宝」の一つ前の拡張データディスクである,「プロマシアの呪縛」を経験しているプレイヤーであれば,この部分のありがたさをしみじみと実感しているのではないだろうか。

 かつての「プロマシアの呪縛」では,新コンテンツの利用時に,ことごとく高難度のミッションが設けられていた。しかし「アトルガンの秘宝」では特別な条件を必要とすることなく,中級者以上なら誰でもすぐに新規コンテンツに触れられる。こういったこともあり,「アトルガンの秘宝」のコンテンツは多くのプレイヤーから歓迎されているようだ。

 どんなに優れたMMORPGといえど,拡張版を3〜4本も出す頃には,普通であればゲームバランスや世界観の破綻は免れられないものだ。しかし本拡張のどの要素を取っても,成熟しきったFF11プレイヤーの現状と要望を見据え,世界中に張り巡らされた伏線を生かしながら適切な対応を自然な形で打ち出してきた,という印象を受ける。

 かつて一度はFF11から離れてしまった人や,未だにFF11に触れたことのない人も含め,MMORPGに関心を持つすべての人は,この機会に本作をプレイしてみてほしい。現在のFF11は,我が日本を代表するMMORPGとして幅広い層に自信を持ってお勧めできるタイトルである。

 

モグロッカーの利用条件がここまで緩やかとは,発売前にいったい誰が予測しただろうか? レベル50未満のキャラクターでも,この地を訪れて利用する価値があるだろう 新システムが実装されても,従来のコンテンツの魅力をスポイルしていないのは凄い。現在のFF11はソロからRaid規模まで,幅広い中から自分に見合った遊び方を選択できる 空の描画周りは,拡張版が出るたびに素晴らしくなっている。新エリアの冒険中は思わず立ちつくすことも多く,静止画像ではその魅力の半分も伝えられないのが残念

 

メンバーの全員がモンスターの姿に変身して,敵地を探索している場面。レベル上げ以外のユニークな仕掛けを盛り込んでいるところが魅力だ ビシージに関しては,一般向けテストサーバーを設置するなどの解決方法もあるのではなかろうか。現状のままでは厳しいので,今後に期待 実に奥が深い拡張パックのため,本当にすべて語り尽くそうとすると大変なことに。本稿では,各要素について非常に駆け足の紹介となってしまった

 

タイトル ファイナルファンタジーXI アトルガンの秘宝
開発元 N/A 発売元 スクウェア・エニックス
発売日 2006/04/20 価格 オープンプライス
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 8.1以上),CPU:Pentium III/800MHz以上[Pentium 4/1.0GHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[256MB以上推奨],グラフィックスチップ:NVIDIA GeForce/ATI RADEON9000以上,グラフィックスメモリ:32MB以上[64MB以上推奨],HDD空き容量:7.5GB以上

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