いよいよ明日(2月23日)発売/正式サービス開始となるスクウェア・エニックスの“MMOアクションRPG×ストラテジー”「ファンタジーアース ザ リング オブ ドミニオン」(以下,FE)。50人対50人の大規模な対人戦闘をゲームのメイン要素に据えたアクションRPGという,あまり例のないジャンルに挑んだ意欲作ということもあり,発売を心待ちにしている読者も多いことだろう。
そこで今回は,正式サービスに最も近い形とされていた,第3次βテスト(2006年1月27日〜2月5日)の模様を,以前のβテストからの変更点を中心にお伝えしていこう。なお,第1次βテストと第2次βテストの模様についても,プレビュー記事を掲載済みなので,併せてチェックしてほしい。
■Stの廃止により,HP/Pwの管理がシンプルに
これまでのβテストでは,画面右下の三本のゲージのうち,一番下のものはSt残量を表していた。だが,Stの廃止により,獲得経験値が表示されるようになっている |
St(スタミナ)の仕様が廃止されたことは,第3次βテストにおける大きな変更点の一つである。インタフェースからは,St残量を示すゲージが取り払われ,獲得した経験値の量を示すメーターに置き換わった。
これまでのFEでは,キャラクターの心身の状態を表すゲージはHP,Pw,Stの三本立てになっていた。HPは体力で,当然のことながらこれが0になるとキャラクターは死亡する。Pwは,スキルの発動に必要なエネルギー。そしてStは,Pwの回復に使用される予備エネルギーのような扱いとなっていた。スキルを使用することでPwの最大値と現在値の間にスキマができると,自動的にStを消費してPwが回復する,といった感じだ。
この仕様は目新しく,また興味深くはあったのだが,実際には斬新なプレイ感覚を生み出すまでには至っていなかった。加えて,ゲーム中に用意されている回復アイテムには,このStを回復するものとHPを回復するもの,さらにPwを直接回復するものがあり,若干分かりにくかった。
前述のとおりStは,第3次βテストで廃止され,St回復アイテムはHP回復用に変更された。それまでのシステムでは,とくに戦争時にデスペナルティがないため,最も手っ取り早い回復方法が死ぬことという側面もあった。その点では,第2次βテストで実装された「クリスタル回復」に加え,さらにHP回復手段が増えたのは歓迎できる。
実際,これらの要素のために,第3次βテストではプレイヤーのHPマネージメントに対する考え方が変わり,PvPの戦術/戦闘スタイルの変化につながっていたようだ。「あまり死なないようにしよう」という意識が高くなったとも言えるだろう。
■首都での移動や戦争参加がよりスピーディに
首都における移動速度の向上は,一見するとゲームに何も関係ないようではあるが,これまでのβテストに触れてきた人なら,ありがたさは分かるはず |
ゲームの進行をスピーディにしようという工夫もいくつか見られた。そのうち一つは,首都での移動速度の向上だ。首都によっては,用のあるショップとショップが遠く離れているケースもあり,買い物が面倒だったりもしたのだが,これが改善された。
また,パーティを組んでいるときにだけ入手できる「ボーナス経験値」が廃止された。以前は,このボーナス経験値が結構な量になっていたため,戦争が始まる前にパーティを組みたいと思うプレイヤーが多く,そのことが“戦争開始時の暗黙のルール”を生み出していた。新仕様では,パーティを組んでいなくても損をしないので,より手軽に戦争への参加が可能になっている。ただし,モンスター狩りにおいてパーティを組む動機も同時に薄められてしまっている。これは,今後調整されるべき部分だろう。
■「ランク制度」と「参戦コスト」で公平な戦いを実現
ランク制度と参戦コストの導入により,戦力の不均衡が発生する可能性はだいぶ下がった。だが,参戦人数が50人に満たなくても戦争に参加できないケースも |
第1次,第2次βテストで大きな問題となっていたのが,“戦力の不均衡がしばしば発生する”ことであった。戦場に兵士がどの程度集まるかは成り行きに任されていたため,対戦国間の戦力(つまり参加プレイヤー)に不均衡が生じてしまい,一方的な展開のまま終わる戦争も少なくなかった。これを改善すべく,第3次βテストから組み込まれたのが「ランク制度」と「参戦コスト」のしくみだ。
プレイヤーキャラクターのランクは,参加した戦争で連勝することで上がっていき,連敗を続けると下がっていくというもの。高いランクのプレイヤーは,戦場に入る際に,低いランクのプレイヤー2人分や3人分の戦力と見なされる。これが,参戦コストだ。
例えば,敵側に高ランクのプレイヤーが多く参加している場合,敵軍の最大人数は抑えられるために,たとえこちらにランクの低いプレイヤーしかいなくても,対等な戦いが可能になるという具合だ。
ランクの決め方には,まだ調整の必要がありそうにも思えるが,対戦国間の戦力バランスがある程度揃うようになったのは確か。一方的な勝ち戦/負け戦が,滅多に見られなくなったことは素直に喜べる。
■製品に実装されるスキルはすべて出揃う
状態異常系のスキルを食らって戸惑っていると,その間に敵に囲まれて瞬殺されたりもする。こういうときに味わうドキドキ感は,本作ならではのものといえるだろう |
各クラスのスキルまわりの変更や調節は,第3次βテスト開始の時点でも行われていたが,その後,正式サービスにつながるであろう,さらに大きな変更/調整が施された。全体的には,各クラスの特徴が強調されて,さらに同じクラスでもスキルの取り方によって,異なったタイプのキャラクターへと成長していけるよう,バランスが整えられたという印象だ。
この変更が行われたのは,第3次βテストも半ばを過ぎた頃だった。開発側は上位のスキルのテストも行いたいと考えたようで,このパッチ以降は,キャラクターを簡単にβでのレベルキャップである,レベル25にすることが可能になっていた。このレベル帯では,自分が得意とする系統のスキルの最上位の技が使用可能だ。そのため,βテスト終盤では十分に育ったキャラクター同士の戦いが体験できた。
例外はあるが,このレベルまで育つと基本的に各クラスで“射程のある攻撃”(程度の差はある)と“状態異常付加能力”(効果はまちまち)と“範囲攻撃”(使い勝手に差はある)を使用できるようになる。このように,似たタイプの攻撃能力を一様に持たされるのに加えて,HP回復や他人を強化するスキルがないことも総合して考えれば,FEに存在する3クラスは,すべて攻撃的なキャラクターと見てよさそうだ。
そのようなキャラクターが揃った第3次βテスト終盤の戦場では,一度に複数の敵にダメージを与えられる範囲攻撃系のスキルが好んで使われていたようだ。放たれた矢や魔法の電撃が雨あられと降り注ぎ,まさに激戦区,といった雰囲気が感じられた。
■戦争を楽しむゲームとしての完成度は着実にアップ
βテストで実装された召喚モンスターは,ジャイアントとナイトの2種類。正式サービスではさらに追加される予定だが,そのときのゲームバランスが気になる |
第1次,第2次βテストで明らかになった問題点の多くは,第3次βテストでほぼ解消されたと言ってもいいだろう。だがその分,βテストごとに異なるゲームになっていたという気すらする。また,第3次βテストの後半になって実装された要素もいくつかあり,その部分に関してはまだ作り手のほうも練り込みたいところがあるのだろうなぁ,というのが正直な感想だ。
解決が必要な多くの問題が生じるのは,この作品が“これまでに似たもののない,新しいゲーム”を目指しているからであろう。そのような試みが,難しいものになるのは半ば必然である。
テスターと作り手,双方の努力の甲斐あってか,混戦時には身じろぎ一つままならない状態になっていた第1次βテストの頃に比べると,“大規模な戦争を楽しむゲーム”としての完成度が,着実に高まってきている。
半面残念だったのは,戦争部分を仕上げることを第一の目標としたためか,後回しになってしまった感のあるPvE戦闘/モンスター狩りの部分だ。これに関しては残念ながら,第1次βテストから大きな変更/改善は見られなかった。
また,今後予定されている召喚モンスターの追加についても,これまで注意深く作り上げてきたバランスを崩してしまいかねないのでは? という不安が残る。召喚モンスターは,新たなプレイ感覚をゲームに追加できる可能性を持つものであるだけに,期待も大きいのだが……。
ともあれ,いよいよ明日(2月23日)には,製品版の発売と正式サービスがスタート。第3次βテストの結果を受けて,どのような形に進化しているのか,楽しみなところだ。