熱いファイアーキャプテンシリーズの最新作が登場
実際の火災現場をそのままに再現した,ファイアーキャプテンシリーズ。メラメラと燃えさかる炎,吹き上がる黒煙など,灼熱地獄を余すことなく再現。恐るべき速度で燃え広がる炎の恐怖,それと戦う消防士の勇敢さを味わおう |
火災現場の最前線で,命がけで人命救助や消火作業を行う消防隊員の,炎との熱き戦いを描いた災害救助ストラテジー,ファイアーキャプテンシリーズ。プレイヤーは消防指揮官となり,刻々と状況が変わる火災現場において,消防隊員,消防車両に適切な指示を出して,被災者を救助し,火災被害を最小限に食い止めるべく奮闘する,異色のストラテジーゲームだ。その最新作「ファイアーキャプテン2 〜緊急!! 消防最前線24時〜」がズーより発売となった。もちろん,ゲーム中のテキストはすべて日本語化されており,プレイヤーは安心して燃え盛る炎に集中できる。
このシリーズの面白いところは,実際に起きたらシャレにならない大火災が,次々と発生するところにある。
炎は燃える物があれば容赦なく,どんどん燃え広がっていくが,それはゲーム内でも同様。刻一刻と燃え広がる炎は緻密な計算でシミュレートされており,最初に発生した火災から,徐々に燃え広がって二次火災,三次火災が発生するという具合に,消火効率が悪ければ,あっという間に一帯が火の海と化していく。消防指揮官として的確に消防隊員に命令を飛ばし,燃え広がる炎より速く消防活動を行えるかがポイントだ。
実は本作は,前作「ファイアーキャプテン 〜ファイアーデパートメント2〜」のシナリオ変更版であり,基本ゲームシステム,操作性などを含めて前作とまったく同様で,チュートリアルの内容さえ同じである。そのため,本稿では基本的な部分については触れない。前作のレビュー記事を併せて読んでもらいたい。
ドアの下から煙が出ている場合,そのままドアを開けるとバックドラフトが発生して消防隊員が負傷する。消防斧でドアを破壊だ | モタモタしていると被災者が炎に包まれる。助け出そうと猛火に挑むものの逃げ道がなく,被災者と救命救急士を両方失うことも | 爆発性のあるものに引火すると黄色い耐久バーが表示される。バーがなくなると爆発するため,優先的に集中放水して消火しよう |
主人公フランクの周りで,次々に大火災が発生。どうやら仕組まれた火災のようだ。犯人は誰なのか……実は最初から分かっているんだけど | ブリーフィングで現場の状況を頭に入れておく。現場情報,火災のタイプの割合などは重要だ。消火栓の位置も把握しておけば必ず役に立つ | オプションで消防隊のデザインを登場する五か国から選択できる。デザインの変更のみなので性能に違いはない。日本がないのは少々残念か |
トライ&エラーを繰り返し,完全攻略の道を見つけ出そう
複数箇所の火災に対して,いかに迅速に指揮を執れるかがポイントだ。どの地点にどの消防隊員を配置するかも重要となる。消火作業,救助作業,再出火防止対策(窓を割る)など,次々に命令を与えていくのだ |
今回もキャンペーンは五つ用意されており,「ウクライナ」「フランス」「イギリス」「ドイツ」「アメリカ」の五か国で発生する大火災へ挑む。一つのキャンペーンは,三つのミッションで構成され,最後のキャンペーンであるアメリカだけ1ミッションのみの,合計13ミッションとなる。前作では一つのキャンペーンごとに完結するストーリー性を持たせていたが,本作ではゲーム全体を通して1本のストーリー上で展開されていく。なんとなく映画「バックドラフト」を思い出させるシリアスなストーリーが気分を盛り上げる。
◆ストーリー
5年前,消防チームが火災現場へと急行していた。その中に,消防隊隊長であるフランクとレイの姿があった。フランクとレイはかつて親友だったが,何かが原因で友情は壊れ,お互いいがみ合うようになっていた。レイがフランクの制止を振り切って行動し,バックドラフトが発生。被災者は死亡し,多くの消防隊員が負傷する事故を起こしてしまう。裁判にかけられたレイは,消防活動に加わることを禁止され,姿をくらました。そして5年後,フランクの周りで次々と不可解な火災が発生する。
こんな感じで,なんとなく映画「バックドラフト」を思い出させるようなシリアスなストーリーが背景にある。犯人はレイということが分かっているだけに,次々に発生する不可解な火災を目の当たりにして「レイの野郎め!」と,テンションもおのずと上がるのだ。
ミッションには飛行機の格納庫,ウイルス研究所,ユーロトンネル,花火工場,銀行,刑務所,森林など,シチュエーションの異なるさまざまな火災現場が登場する。ひたすら火事だけとはいえ,いずれもバリエーションに富んでおり,ミッション途中のドラマチックなイベントも前作以上に発生する。消防作業のためにマップ内を走り回ることも多く,攻略し甲斐のあるミッションが揃っており,やりごたえも十分だ。
一通りミッションをクリアして感じたのが,どのミッションも前作と比べると難度が高く,難しいということだ。シリーズを通してプレイしており,火消しの腕に多少覚えのある筆者は,正直ちょっと舐めてかかったのだが,難度初級で始めた最初のミッションで,いきなり敗北(ゲームオーバー)を味わうことになった。
火災現場での消火作業や救助作業自体は前作と変わりないのに,何が難しさの要因になっているのか。それは「同時にやるべきこと」が非常に多くなったということと,性能が異なる幾種類ものユニットを,それぞれの能力を生かして行動させることが一段と重要になったこと,この二点の影響が大きい。
マップ内の火災はだいたいどのマップも1か所ではなく,数か所で炎が上がっており,またほとんどの地点で被災者が危険な状況にさらされている。つまり数か所の消防作業を同時に行うことになり,次々に消防作業を行っている地点で指示を出す必要がある。途中で「〜を操作しろ」「〜の焼失を防げ」といった新たなイベントも発生するため,ゲーム中は前作以上に忙しい。
消防作業では,最初に登場することの多い通常の消防士と技術隊員や救命救急士のチームを,各員あまり区別せずに使っていると,あっという間に致命傷となることも多い。救命救急士は斧を持っていないため,フラッシュオーバーが発生しそうなのに窓ガラスを割れなかったり,バックドラフトが発生する兆候が出ているのにドアを破壊できないなんてことが起こる。
また,被害者の救助は救命救急士に任せ,消防士は消火作業に徹底させるべきだ。状況によっては,消防士を炎の中に突入させて被災者を運び出す必要も出てくるが,被災者を安全な場所で降ろし,消火作業に戻れば時間的ロスを最小限に押さえられる。こういった効率の良い連携ができると,面白さがグッと増してくる。
ミッションが進むにつれて特殊な技能を持った隊員も増えてくるが,それぞれの消防隊員にどこで作業を行わせるかで,ゲームの展開は大きく変わる。
本作では,1回のプレイで満足のいくミッション達成を迎えることは希である。何度もプレイして,全体の流れ,被災者の位置,イベントの発生状況などを把握し,トライ&エラーを繰り返して攻略方法を見つけ出していくタイプのゲームだ。火の手の上がる場所,イベントの発生タイミングなどは固定されており,パターンゲームといえなくはない。
しかしパターンゲームとはいえ,相手は炎である。消防作業次第で,炎はどの方向に燃え広がるか分かったものではないし,普通なら到達しないような場所にまで炎が及ぶこともある。
もちろん展開の流れが分かれば,次に火災が発生する地点に,火の気がないうちから消防隊員や消防車両を先回りさせおく「ズル」も可能だ。ただし,それが通用するのも中級まで。上級ともなると,もはや先回りもできないほどの猛火に襲われる。再びトライ&エラーを繰り返して,新たな攻略方法を見つける必要があるわけだ。すべてのミッションで上級クリア,金メダル五つ獲得できるまで極めたいところだ。
放水力があり,機動力も素晴らしいポータブル放水砲は,筆者のお気に入り。水槽付き車両から水を供給するためセットで行動させる | 消防車両のダメージは,クリア後の評価に影響する。放っておくと炎に包まれていることも多く,途中で修理できないので注意したい | 火の手がないからといって被災者の救助を後回しにしていると,燃焼性のガスにより突然発火することも。助け出すか,窓を割るかして対処だ |
ゲーム開始直後なのに延焼が進んでいて愕然。ただし建物内の延焼はそれほど速く進行しない。入り口は四か所,どう移動するかがポイント | 本作で登場する化学消防車MX。チェルノブイリ事故(ウクライナ)で初めて使われたとか。装甲板で消防作業の邪魔になる障害物を押しのける | どのミッションも難度は高いが,やり方を変えつつ繰り返しプレイすることで,最終評価は徐々に上がっていくはず。これが面白さの一つだ |
マルチプレイはやらなきゃ損!
複数の指揮官が共に猛火に立ち向かうマルチプレイは,ぜひともプレイしてほしい。キャンペーンのミッションを仲間と一緒にプレイするも良し,専用マップで仲間と連携を取りつつ消防作業に精を出すも良し,シングルプレイでは味わえない面白さがある |
今回も「共有モード」「協力モード」という二つのマルチプレイモードが用意されており,最大4人での消防作業を楽しめる。キャンペーンゲームと同様に難度の選択も可能なので,上級をみんなで苦しむという楽しみ方(?)もできる。4人でプレイする場合,消防チームは各自1チームずつ,2人の場合は2チームずつ割り当てられる。
「共有モード」は,キャンペーンのミッションを消防ユニットを共有してプレイするモード。登場する消防ユニットは参加しているプレイヤーが自由に操作できるため,消防ユニットの取り合いとなることも多く,連携が取れていないと,あっちへフラフラ,こっちへフラフラと満足な作業すらままならない。イライラすることも多いので,短気な人にはあまりお勧めできない。
一方の「協力モード」は,プレイヤーごとに操作できる消防ユニットが決められており,ほかのプレイヤーと協力して消防作業を行うモードだ。このモードには「住宅地域」「軍事的大混乱」「モンテクリストストア」という三つのマルチ専用マップが用意されている。
住宅地域は,割り当てられている消防チーム構成が全員同じなので,お互いが淡々と火の手のあるところで消防作業を行うことになり,面白さという点ではイマイチだった。しかし軍事的大混乱とモンテクリストストアは,互いに異なる消防チームが割り当てられるため,消防作業が役割分担されて,まさに協力プレイで炎を制圧していく面白さを味わえる。
軍事的大混乱では,1チームはポンプ車,救急車,耐熱服着用隊員,救命救急士,災害救助犬チームというメンバー編成なのに対し,もう1チームにはポンプ車などがなく,技術隊員や科学機動隊員というメンバー構成(二人プレイの場合)。
火災現場で受け持つ作業が異なるため,お互いが自分の作業をこなすわけだが,後者のチームは救命救急士がいないため,倒れた被災者を,消防士が抱えて運び出すしかない。しかも救急車は相手が指揮しており,被災者を抱えて向かっているあいだに別のところへ移動されてしまうこともある。また,瓦礫に埋まっている被災者を助けたくても,埋まっている被災者を災害救助犬チームが発見しないと掘り起こせない。相手チームが行動してくれるのを待つしかないというわけだ。
もう一つのマップ,モンテクリストストアでは,1チームは6隻の消防艇,もう1チームは大勢の消防士や高所放水車,ポンプ車など計18のユニットを指揮する。つまり地上と水上からの消防作業という具合に,受け持つ仕事が完全に分けられている。まず地上チームが作業しないと消防艇が火災地点まで進入できないなど,しっかり連携を取って消防作業を行う必要がある。
マルチプレイでも,難度初級か中級はなんとかなっても,上級となると完璧に連携が取れていなければ手も足も出ない。ゲーム中はチャットで連絡を取ることになるが,このチャットが英語のみ使用可能だ。自分の作業に必死でチャットを見逃したり,忙しくて返答できないことも多く(ゲーム中は入力すら大変),別途ボイスチャットなどを使わないと,炎には勝てなさそうだ。
このマルチプレイモードは非常に面白いので,声を大にして「やっとけ!」と言いたいところだが,残念ながらLAN経由でのマルチプレイしか対応していない。そのため,環境を整えるのに苦労するのが非常に残念なところだ。
長くなったが,「本作はお勧めか?」と聞かれたら,間違いなくお勧めできるRTSである。ほとんどの人間は火災の怖さを知っている。燃えさかる火災は何とか消火したいと思うし,助けを求めている被災者を何がなんでも助けたいと思う。そんな人間の心理,正義感を拠り所とする本作は,多くの人が楽しめるだろう。
「本シリーズは初めて」という人は,難度の高さゆえに多少苦戦はすると思うが,初級で何度も挑戦すれば打開策が見えてくるはずだ。そして本作の難しさは,イコール面白さということに気付くだろう。まずは前作の体験版をプレイして「ムズ面白い」本作(本シリーズ)の魅力を感じ取ってはいがかだろうか。前作をプレイしてきた人は,今すぐにでも本作の新たな火災現場で活躍してほしい。
協力モードでは,各人が自分に割り当てられた消防チームを指揮する。仲間の消防チームはグレーで表示される。困ってそうなので手伝いを派遣 | それぞれの消防チームでメンバー構成が違うため,作業分担して消防作業を行うことになる。思わず「何をやってんだ!」なんて思うことも | 明らかに互いのチームが受け持つ作業量に差がある。ローマ字チャットで「ゲートを……」「被災者を……」と指示されまくるハメになった |
放火犯は爆弾まで使って火災を起こそうとする。爆発する前に回収できれば問題ないが,爆弾は一つだけではないのだ。すべて回収しよう | 部屋の中の様子は,消防隊員が入るまで詳しくは分からない。ドアを開ける前に,画面回転機能を使いバックドラフトが起きるか確認だ | 最初のミッションの冒頭。初級,中級では簡単に完全消火できていたのに,上級となると炎は消えにくくなり,簡単に延焼してしまう |