プレビュー : アニス&フリッキー

コミカルなグラフィックスとアクションがウリの新機軸MMORPG

アニス&フリッキー

Text by 大陸新秩序
2006年12月06日

※本稿は12月4日(オープンβテスト)時点でのゲーム内容に準じています

 

カジュアルプレイヤーを意識した
ポップなキャラクターと世界観

 

アクション要素を前面に押し出した「X-RPG」を謳う「アニス&フリッキー」。その独特のグラフィックスと世界観が注目を集めている

 「アニス&フリッキー」は,韓国Actoz Softが開発したMMORPGで,日本国内での運営はGMO Gamesが担当する。料金形態は,基本プレイ無料のアイテム課金制が予定されており,現在は11月24日に開始されたオープンβテストが継続中。12月中に正式サービスが開始される予定だ。

 本作は,「X-RPG」と位置づけられている。Xは「EXTREME」の略で,この命名は「X-SPORTS」を意識したものだ。ちなみに,X-SPORTSの定義はちょっと曖昧で,以前はロッククライミングやスカイダイビング,サーフィン,スノーボードなどがそう呼ばれていた。一般的な捉え方としては,“ファッション性とアクション性を兼ね備えた,スピード感のあるカジュアルなスポーツ”,例えばBMXやスケートボードなど,いわゆるストリート系のスポーツを指す場合が多い。
 そんな新ジャンルを主張するところからも分かるように,本作はアクションの要素がふんだんに盛り込まれた,ポップなキャラクターが活躍するMMORPGだ。見たとおり,グラフィックスは従来のファンタジー系MMORPGとは一線を画した,非常にクセのある,コミカルかつ独特のセンスを持つものだ。見た目は個性的だが,果たして中身のほうはどうだろうか。

 本作の舞台となるのは,2030年の未来。そこは,ペリド博士によって創られた仮想現実,「キューブスペース」が人々に楽しみを与えている世界だ。巨大なコミュニティに成長したキューブスペースを管理するために,「キューブスペース委員会」が設立されるが,委員長に就任したクールディングは,キューブスペースから莫大な利益を得ようと陰謀を企てているのだ。
 その事実に気づいたペリド博士は,クールディングの陰謀を阻止するためキューブスペースにプロテクトを施すが,クールディングが作ったシステムと衝突してしまい,キューブスペース全体が「バグ」に汚染されてしまった。そのバグを排除して新たなキューブスペースを建設するために,ペリド博士が選び出したのが,本作の主人公であるアニスとフリッキーの二人なのだ。

 プレイヤーは,男性キャラの「アニス」か,女性キャラである「フリッキー」のいずれかを選択する。いちおうアニスは「強がりだが泣き虫」,フリッキーは「行動的で喧嘩っ早い」という設定がある。キャラクターの作成では髪型と表情を選べ,組み合わせによってはまったく印象の異なる外見にもできる。なお,男女いずれも最初の職業は「ファイター」で,二人のステータスに差はない。

 レベルアップには独自の概念を用いており,「Rank」と「Grade」で表される。Rankの一つの段階は八つのGradeに分かれており,Rankが3になると転職が可能となる。各職業の内容は,以下の4種類だ。

 

●ダンサー

踊ることによりエネルギーを凝縮させ,仲間を治療する。またエネルギーを逆流させて敵を攻撃することも可能

 

●バード

音楽を演奏することにより,バフ/デバフ効果を発揮する

 

●トラッパー

文字通り,床や空間にトラップを設置して敵を攻撃する。逆に仕掛けられたトラップの探知も可能

 

●フォーサー

体内エネルギーをコントロールすることにより,精神的,肉体的に自分の身体を強化して戦う。いわゆるタンク

 

 

キューブスペース管理委員会を悪用して,私腹を肥やそうと企むクールディング委員長。ストーリークエストでは,要所で彼のムービーが流れる プレイヤーが最初に降り立つキューブスペース,コグマ神殿ロビー。ゲーム序盤に必要なアイテムを販売するNPCや,個人商店が並ぶ コグマ神殿ロビーから入れるキューブパーク。数々のトラップをクリアした先には何が待っているのか?

 

男の子キャラクターのアニス。強がっているが,本当は泣き虫。髪型と表情の組み合わせをどのように変えても,子供っぽくなってしまうのが特徴だ

 

女の子キャラクターのフリッキー。サッパリした性格だが,行動的で頭に血がのぼりやすい。こちらは髪型と表情でかなり年齢不詳になる

 

 

分離しているアクション要素と戦闘システム

 

各ステージは立体的に構成されている。各種のトラップを乗り越える必要があるのはもちろんだが,はるか上方に出口がある場合もある。一目見ただけではどうやればたどり着けるのか分からない場合も多い

 本作のフィールドは,「テーマ」ごとに分かれている。原稿執筆時点で実装されているテーマは「コグマ神殿」と「未来」の二つ。それぞれのテーマは「ロビー」と「フロア」に分かれており,前者は各種施設を備えた,いわゆる街で,後者はモンスターのいるフィールドだ。フロアはさらにいくつものステージに分かれており,基本的には入り口からスタートして出口を目指す。出口の先には次のステージやフロアが待っており……といった繰り返しで,最終フロアの最終ステージに到達してクエストの条件を満たせば,めでたくそのテーマをクリアしたことになる。

 各ステージは立体的に構成されており,「ジャンプ」や「しゃがむ」などのアクションを駆使しつつ,出口を目指す。それぞれのステージには,移動したり,一定時間が経過したりすると消えてしまう床,連続ジャンプで通り抜ける足場,そしてジャンプ台といった,アクションゲームではおなじみのトラップが配置されており,テーマの深部に向かうにつれて,それらの組み合わせが複雑になっていく。難しくなればなるほどステージクリアの達成感は強まり,プレイの満足感も高まっていくというわけだ。
 またステージによっては,迷路ゲームの要素も持っている。水面下にある足場に気づかないと出口にたどり着けないステージなどもあり,分からないと途方に暮れてしまうことだろう(というか途方に暮れた)。とはいえ,そこはMMORPG。ほかのプレイヤーの行動を観察して真似ることで,無事にクリアできたりもする(今思えば,そのプレイヤーに話しかけて教えてもらったほうが話が早かったような気もするが)。

 プレイヤーキャラクターの移動は,キーボードのW/A/S/Dで行う。ジャンプはSpaceバー,しゃがみはShiftキー,はしごを登ったりスイッチを押したりといったアクションにはCtrlキーを使用する。
 マウスクリックによる移動も可能だが,たぶん,多くのプレイヤーが早い段階でキーボード操作に切り替えるだろう。というのも,各種のアクションにはかなりの正確さが要求され,マウスではそれに応じきれないからだ。

 とはいえ,キーボードによる操作でも難度はやはり高い。ジャンプのタイミングや着地点の計算などがシビアに設定されており,キーボード操作でも限界を感じてしまうのだ。
 現状では,複数の消える足場を連続ジャンプで駆け抜けるような凶悪なステージも登場するのだが,これがクリアできずにプレイ休止状態に陥っているプレイヤーも多いのではないだろうか。いちおうキーの配置をカスタマイズできる仕様にはなっているが,筆者の主観では正直なところ根本的な解決にはなっていないと思う。

 だが,そうした筆者のようなプレイヤーに朗報がある。12月中に行われるアップデートで,ゲームパッドに対応する予定なのだ。まだ実際の操作感はおろか,どのような機能をフォローしているのかすら分かっていないが,これが実装されればきっと現状よりもプレイは楽になるだろう。投げ出してしまったステージのクリアを夢見て,ここは素直に期待しよう。

 そうした移動におけるアクション要素の強さの一方で,戦闘はマウスクリックによるシンプルなシステムを採用している。マウスをクリックして敵をターゲット,数字キーでスキルを使用するスタイルであり,「アクション要素の強いMMORPG」と聞いてコンシューマ機のアクションRPGのようなものを想像すると,やや肩透かしを食う。戦闘に関しては,いわゆる「クリックゲー」そのものだ。

 戦闘自体は良くも悪くも“オーソドックスな”プレイ感で,レベルの上がり方は割と速め。しかし,レベルアップ時に割り振ったステータスポイントの効果のほどが,やや曖昧なのは気になるところ。職業によって必要度が違う「体力」「筋力」「知力」はともかく,回避に必要な「敏捷」,スキル防御と命中率に関連する「技術」の効果があまり感じられないのである。そのため,敵の攻撃は当たるのに自分の攻撃は失敗というケースが多く,戦闘の爽快感にはやや不満が残る。
 なかには,遠距離攻撃の射程距離が妙に長く,どこから攻撃されているか分からないモンスターや,クールタイムやMPの制限がないのか,連続スキル攻撃をしてくるモンスターなどもおり,よく状況がつかめないまま自分が殺されているというケースがあった。
 どうにも戦闘部分は,ステージクリアの達成感と比較するとバランスが良くない印象で,「純粋なアクションゲームにすればいいのではないか」という意見も出かねない。このあたりは早々に調整を望みたい。

 

フロアのマップ。色がついているステージは,一度入ると次から「ウェイポイント」を使ってショートカットできるようになる 「ウェイポイント」を見つけたら,必ずクリックしておこう。忘れると,またフロアの最初からステージをクリアし直す羽目になるかもしれない アクションゲームではおなじみのトラップ。キーボード操作ではジャンプのタイミングを誤ったり,勢いあまって2回ジャンプし,飛び出してしまったりもする

 

壁の高低差を利用して,巧妙に出口への経路を隠蔽したステージ。水面下にあるブロックに気づかないと,出口にたどり着けない このステージでは,一定時間が経過すると消失する足場を連続ジャンプで通過しなければならない。足場間の距離が微妙に違っているなど,意地悪な仕掛けも多い ステージ内に復活ポイントを設置できるスキル「ロータス」。回数制限が厳しいうえ,一回使用するごとに体力の上限値を一時的に下げられてしまう

 

操作キーは任意にカスタマイズできる。W/A/S/Dよりも,カーソルキーやテンキーのほうが操作しやすいというプレイヤーにとってはありがたい 戦闘はオーソドックスなクリックゲームスタイル。すばやくかつ慎重,がモットーとなる移動時とテンポとずれてしまうので違和感が出る 「B」「O」「N」「U」「S」という五つのアイテムを集めると,獲得経験値上昇や獲得通貨上昇などといったボーナススキルが使える

 

 

豊富だが意味の分からないクエストなど
まだまだ細かい部分の修正が必要

 

クエスト受領機から受けられるクエストは,レベル制限内なら繰り返し挑戦可能だ。うっかりレベルを上げすぎると,受けられなくなるので注意

 レベルアップが速めに感じられる理由の一つに,クエスト量の豊富さが挙げられるだろう。クエストには,レベルに応じて必ず受けることとなる「ストーリークエスト」と,クエスト受領機から任意で受けるものがある。前者に関しては上記のストーリーに沿ったもので,1回クリアするとそれっきりだが,後者に関してはプレイヤーのRankとGradeに応じて繰り返し受けられる。報酬も何度でも受け取れるので,経験値と資金を稼ぐのにはもってこいだ。
 いずれのクエストもいくつかの段階に分かれているが,「今自分が何をしなければいけないか」「次に何をすればいいのか」といったことは,簡単に確認できるようになっており,その点はかなり便利だ。

 しかし少々気になるのは,「どうすれば達成できるのか」が提示されていない場合があること。たとえば序盤に「青いキノコの傘」を集めてくるクエストがあるのだが,どこで何を狩ればいいのかが分からない。それを考えて試行錯誤することまで含めてクエストだといわれてしまえば仕方ないが,おそらくはこの作品が対象としているであろうプレイヤー層を考えれば,若干不親切さを覚える。一方で,後々レベルが上がってから受けたクエストでは,大体どのあたりに該当モンスターがいるか示してあったりもして,どうもクエスト全体の整合性が取られていない気がする。

 また,原文と翻訳のどちらに問題があるのか分からないのだが,クエストによっては「なぜ今それをやるのか」「次にそれをやる関連性はあるのか」といった理由が,テキストから読み取りにくかったり,まったく分からなかったりしたのも気になった。まあ「MMORPGのクエストなんて,そんなものだろう」という気もするが,本作のクエストは行動の一つ一つにタイトルがついているので,ほかの作品より妙に気になるのだ(この画像を参照のこと)。こうした細かい部分を修正していくことで,プレイヤーの印象はかなり良くなるのではないだろうか。

 総じて本作は,旧来のMMORPGで指摘されてきた問題点を引き継いでいる部分はあるものの,アクション性やグラフィックスに関する,独自のセンスというウリの部分が突出している感がある。細かい部分をさらに調整して問題点をつぶし,各要素のバランスを保てば,「狩りとレアアイテム探しばかりのMMORPGには,もうウンザリ」というプレイヤーを惹きつける可能性を十分に持っているといえるのではないか。

 年末年始にかけてのアップデートで前述したゲームパッドへの対応だけでなく,新キャラクターや新フィールドが登場し,さらにそれに伴うクエストが順次追加実装される。加えて,クラブバトル(ギルド戦)や生産システム,あるいは装備のアップグレードシステムなどの実装も予定されており,現在よりもかなりやり込みがいのあるゲームとなりそうだ。すでにMMORPGをかなりやり込んだ人でも,従来とは毛色の違う本作は,一度プレイしてみる価値はあるだろう。

 

細部情報を見れば,何をすればいいのか一目瞭然。また次に何をすればいいのかも表示されるので,心の準備もできる。ただ,「どこで?」も分かるとなお嬉しいことも NPCのメッセージの中には,「なぜ」「どうして」が抜けてしまっている場合が散見される。分からなくてもゲームの進行に問題はないが,どうもモヤモヤしてしまう 2Rank後半のクエストをクリアすると,「未来」テーマのキューブスペースに進出可能になる。さらに3Rankまでレベルを上げれば,転職可能になる

 

転職後は職業別のスキルと武器を使用。ただしフォーサーの武器は,どの職業でも装備できる オープンβテストで実装されたタイムアタック「死の道」。モンスターのいない純粋なアクションステージで,クリアすればスキルポイントなどの報酬がもらえる。また,好タイムを出せば,ランキングにも掲載される

 

タイトル アニス&フリッキー
開発元 ACTOZ SOFT 発売元 GMO Games
発売日 2007/前半 価格 プレイ料金無料(アイテム課金制)
 
動作環境 対応OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/800MHz以上[Pentium 4/1.8GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce 4 MXまたはRadeon 7000以上[GeForce FX 5600またはRadeon 9500以上推奨]

(C)2007 GMO Games, Inc. / NETCLUE CO., Ltd. / ACTOZSOFT All Rights Reserved.

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http://www.4gamer.net/review/enf_preview/enf_preview.shtml