Extreme N7800GT DUAL/2DHTV/512M 問い合わせ先：ユニティ コーポレーション（販売代理店） news@unitycorp.co.jp

　以前4Gamerでは，2個のGeForce 6800 GTを搭載し，1枚でNVIDIA SLI（以下SLI）動作が可能なASUSTeK Computer（以下ASUSTeK）製グラフィックスカード「Extreme N6800GT Dual」（以下EN6800GT Dual）を紹介したことがある。ただし，このカードはあくまでも技術サンプルで，市場に登場することはなかった。
　しかし，その後継製品であり，GeForce 7800 GTを2個搭載する「Extreme N7800GT DUAL/2DHTV/512M」（以下EN7800GT Dual）は，数量限定ながら店頭向けに出荷される。発売時期と価格も順に2005年11月第2週，12万円前後が予定されており，まもなく入手できるようになるはずだ。今回は，GeForce 7シリーズ搭載では初となる"デュアルチップ搭載グラフィックスカード"にスポットを当て，普通に2枚差すのと何が違うのか，その意味はどこにあるのかを考えていきたい。

 

 

■文字どおりの「外部電源」ACアダプタが付属

 

　EN7800GT DualはPCI Express x16接続のグラフィックスカードで，動作クロックはコア430MHz，メモリ1.2GHz相当（600MHz DDR）。GeForce 7800 GTのリファレンスである同400MHz，1GHzよりもオーバークロックされている。2個のGeForce 7800 GTチップはそれぞれPCI Express x8で接続されているため，SLI動作に当たってnForce4 SLIのレーン数をSLIモード（x8 ×2）へ変更する必要はない。

 

付属するAC電源アダプタを接続したところ

　特記したいのは電源周りだ。EN7800GT Dualには，補助電源として80W（12V/6.67A）仕様のファンレスACアダプタが付属している。筆者の知る限り，コンシューマ向けの単体グラフィックスカードで，ACアダプタによる給電を行うのはこれが初めてである。
　グラフィックスチップは，性能向上とともに消費電力が増大する傾向にあるが，この仕様なら，電源ユニットの容量が少ないPCであっても，わざわざ電源ユニットを交換することなくEN7800GT Dualを利用できる。
　もちろん，容量が足りるなら電源ユニットから給電することも可能だ。その場合，PCI Express用の6ピン給電コネクタが一つで済むところは，細かい点だが使い勝手がよく，ポイントが高い。

 

ACアダプタとの接続ケーブルは，チップクーラーの重みでカードがたわむのを防ぐ，トンネル状の補強板の中を通って，I/Oインタフェース側に伸びている。このケーブルを外せば，付属する内部接続用の給電コネクタも利用可能だ

 

 

■干渉の危険度は下がったが，やはり巨大

 

EN7800GT（右）とサイズを比較してみたところ

　2005年6月23日のレビュー記事でお伝えしたとおり，EN6800GT Dualは全長300mm，高さ155mmという巨大さを"誇って"いた。その点，EN7800GT Dualでは製品化に当たって全長245mm，高さ155mmと，かなりダウンサイズされている。もっとも，一般的なGeForce 7800 GTグラフィックスカードは全長228mm，高さ108mmであり，巨大であることは変わりないが。

 

チップクーラーのカバーを外すと，アルミ製のヒートシンクと65mm角相当のファンが見える。フィンはいわゆるスカイブタイプで，グラフィックスチップとはグリスを，メモリチップとは熱伝導シートを介して底面が接触。このクーラーの下には，2個のGeForce 7800 GTと，GeForce 7800 GT 1個当たり256MBぶん（8個）のメモリチップが規則正しく並んでいる

 

　一般的なミドルタワーケースの代表として，Cooler Master製「AMMO 533」（編注；ケース内部の基本設計は同社製「Centurion 5」とほぼ同じ）にセットしてみたところ，カード自体は取り付けられた。しかし，外部電源ケーブルがドライブベイと当たってしまう。コネクタが当たっているわけではないから大きな問題にはならないが，実際にPCとして運用するときは，ディスクドライブ用の配線などがあるため，もう少し窮屈になるはず。AMMO 533の奥行きが485mmなので，ケースの奥行きは，余裕を見て，できれば500mmは欲しいところだ。

 

AMMO 533に取り付けようとすると，給電ケーブルがドライブベイと当たってしまった	給電ケーブルを曲げればなんとか装着できる

 

2スロット占有タイプで，クーラーも巨大なため，一度取り付けると，PCI Express x16スロットの脱落防止装置を取り外すのは骨の折れる作業になる。指が入らないのだ	今回取り付けテストに用いたAMMO 533。5インチベイ×5，3.5インチオープンベイ×1，3.5インチシャドウベイ×4と，拡張性の高さが特徴だ。 問い合わせ先：高速電脳　電話：03-5297-3210

 

　出力インタフェースはデジタル/アナログRGB（DVI-I）×2，アナログRGB（D-Sub）×2，コンポーネントビデオ（S/コンポジットビデオ入出力にも対応）×1。今回入手した評価用サンプルではアナログRGBケーブルが取り付けられていなかったが，ASUSTeKによれば，実際には取り付けられて出荷されるとのことだ。SLIを利用しなければ，同時に4画面出力が可能となる。

 

　なお，付属ゲームタイトルは「Call of Duty 2」「Project：Snowblind」「Xpand Rally」英語版フルバージョン。購入するとすぐにCall of Duty 2をプレイできるのはうれしいところだ。

 

 

■対応チップセットはnForce4 SLIのみ

 

　対応チップセットは，nForce4 SLIのみとなる。必ずしもASUSTeK製マザーボード専用ではなく，11月1日時点では表1に挙げるようなマザーボードで動作確認が取れているようだが，ご覧のとおり，nForce4 SLIシリーズ以外のチップセットは非対応である。

 

 

　とはいえ，SLI非対応チップセットでSLI動作を実現できるかもしれないと期待する人もいるだろう。
　そこで試しに，nForce4 Ultraを搭載するEPoX製「EP-9NPA＋ Ultra」と，Intel 955X Expressを搭載するASUSTeK製「P5WD2 Premium」，2枚のマザーボードを用意して，EN7800GT Dualを差してみたが，いずれのマザーボードでも，GeForce 7800 GTが1個しか認識されなかった。それどころか，P5WD2 Premiumでは，PCI Express x16のレーン数がPCI Express x1と認識されてしまうという，別の問題も発生したのだ。もちろん，ほかのマザーボードでの可能性をすべて否定するつもりはないが，まず無理と思っておいたほうがよさそうである。ここは素直にnForce4 SLI搭載マザーボードを用意したい。

 

EN7800GT Dualを差して，ForceWareから動作状況を確認したところ。左がEP-9NPA＋ Ultra，右がP5WD2 Premiumだが，いずれもGeForce 7800 GTを1個しか認識できていない

 

 

■高負荷時に仕様上の利点アリ

 

　さて，ここからはベンチマークテストを行っていこう。テスト環境は表2のとおり。比較対象として，リファレンスクロックで動作するASUSTeK製のGeForce 7800 GTカード「Extreme N7800GT/2DHTV/256M」（以下EN7800GT）を2枚用意している。SLI動作の検証となり，動作クロックの調整が行えなかったので，同一クロックの比較ではない。このため，スコアからは傾向を見ていただきたいと思う。

 

　また，実際にインストールしようとしたところ，原稿執筆時点である2005年10月31日現在の最新版グラフィックスドライバ，ForceWare 81.85で，EN7800GT Dualを利用できないという問題があった。Release 80世代のForceWareでは，SLIの有効化に当たってPCの再起動は必要なくなったが，どうやらそれが悪影響を及ぼしているようで，EN7800GT Dualをインストールして，SLIを有効にしようとすると，なぜか再起動が要求されるばかりであり，まったく有効にならなかったのだ。
　ASUSTeKによれば，この問題は製品版では解決しているとのこと。今回入手したサンプルでは，Release 75世代の公式最新版であるForceWare 78.01を用いてテストを行っている。

 

 

　今回テストに利用したのは「3DMark05 Build 1.2.0」（以下3DMark05）と，「DOOM 3」「Far Cry」「TrackMania Sunrise」「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」（以下FFXIbench）。DOOM 3ではTimedemo，Far CryではHardwareOCの「Far Cry Benchmark v1.4.1」を利用した。また，TrackMania Sunriseでは，約53秒で1周する「Paradise Island」というマップのリプレイを3回連続で実行し，その平均フレームレートを「Fraps 2.60」で測定している。
　なお，本文やグラフにおいて，以後ForceWare 78.01から垂直同期のみオフに指定した状態を「標準設定」とし，同じくForceWareから16倍（16x）のアンチエイリアシングと16倍（16x）の異方性フィルタリングを適用した状態を「16x AA＆16x Anisotropic」と呼ぶことにする。

 

　結果はグラフ1〜5に示したとおりだ。GeForce 7800 GTのSLIに対する負荷としては軽すぎるDOOM 3，Far Cry，TrackMania Sunriseの標準設定と，FFXIbenchでは差がついていないものの，それ以外，つまり，グラフィックスカードへの負荷が高い状態では，クロックに応じたスコアの差が見て取れる。
　注目したいのは，3DMark05で，16x AA＆16x Anisotropic適用時に，標準設定よりもスコアの差が開くことである。その差は5〜6％。これは，もちろんグラフィックスチップもグラフィックスメモリもオーバークロックされていることに起因するわけだが，SLI動作時の信号のやりとりがカード内で完結するため，いわゆる2枚差しと比べて，回路が最適化されている可能性もありそうだ。

 

 

 

■チップクーラーの冷却能力は確か

 

　EN7800GT Dualでは，2個のグラフィックスチップを65mm角相当のファン1個とヒートシンクで冷却している。そのため2枚のグラフィックスカードよりも静音性は高い。ほかの機材をファンレス化できないため，厳密な騒音レベルまでは測定していないが，2枚差しとの差は明らかだ。
　ただ，ファンが1個だと，冷却能力が気になるところである。そこで，PCケースに入れない，バラックの状態で，ForceWareからグラフィックスチップの温度を測定してみることにした。今回は以後，OS起動後30分放置した状態を「アイドル時」，3DMark05を30分間リピート実行させた状態を「高負荷時」と呼ぶことにして話を進める。また，グラフ内ではグラフィックスチップを「GPU」と表記する。

 

　測定結果はグラフ6にまとめたが，アイドル時で49℃と，ファンが1個ということもあって，EN7800GT Dualのほうが温度は高い。ただし，SLIでは付きものともいえる「2枚のカードで温度が少なからず違ってしまう」という問題から解放されており，冷却を考えやすいのは確か。実際，高負荷時だと温度が高いほうのEN7800GTとほぼ同じ温度である（厳密には1℃低い）点は興味深い。

 

 

　また，ワットチェッカーによりシステム全体の消費電力を測定してみたところ，アイドル時，高負荷時ともに差は見られなかった（グラフ7）。カードが1枚で済むとはいえ，消費電力における優位性はないようである。

 

 

 

■コストパフォーマンスは悪いが，引き替えにメリットも

 

　さて，気になるEN7800GT Dualの予想実売価格は12万円前後。安価なブランドのものであれば，GeForce 7800 GTX搭載グラフィックスカードを2枚購入してお釣りが来てしまう。同じく安価なブランドと比較すると，GeForce 7800 GT搭載製品なら3枚分……とまでは行かないが，3枚分にかなり近い額である。小ロット製品の宿命か，ACアダプタが高価なためか，コストパフォーマンスはすこぶる悪い。nForce4 SLI以外のチップセットでSLIを実現できるわけでもないため，対象となるユーザーはかなり限られる。

 

　とはいえ，（カードさえ無事に取り付けられれば）一般的なSLI構成よりもPCケース内にゆとりが生まれることや，静音性，そしてACアダプタ給電による，総合的な使い勝手ではかなり魅力的なのも間違いない。ACアダプタと，それほど大容量でない電源ユニットを組み合わせれば，PC全体の静音化にも寄与するはずだ。
　こういった部分に十分なメリットを見いだせるなら，EN7800GT Dualは，ゲーマーにとっても魅力的なグラフィックスカードといえるだろう。