― プレビュー ―
「ハードなアクション性」がウリのMMORPG,クローズドβテストレポート
DEKARON
Text by touge
2005年12月22日

 

 「DEKARON」は,韓国ゲームハイが開発し,日本モリア/スープレックス両社が日本での運営を担当する3D MMORPGだ。本作は「ハードなアクション性」をコンセプトに設計されており,コンボやノックバックが繰り出される激しい戦闘がウリとなっている。2005年6月には韓国文化観光部の「今月の優秀ゲーム」,中国のゲームショウ「China Joy 2005」では「最優秀海外ゲーム賞」に選ばれるなど,方々ですでに高い評価を受けている作品だ。
 本日,2005年12月22日からクローズドβテストが開始される。すでにβテストを始めている人や,逆に選に漏れてやきもきしている人も多いだろう。今回,運営元のご厚意により,βテストに使われる予定の日本語サーバーのアカウントを一足お先に借りられたので(ほぼ無人のサーバーだが),まずはプレビューをお届けしたい。「Extreme Action」というサブタイトルを掲げる本作だが,その実力はいかほどのものだろうか?

 

 

■洗練された「王道」を目指すシステム

 

 まずは本作のシステムを,俯瞰して解説しておこう。といっても,DEKARONではあまり特殊なシステムは採用されておらず,あくまでオーソドックスなものだ。ここは少々寂しい点でもあるのだが,すんなりゲームに入っていけると思う。
 まずはレベルアップによって得られる,ステータスポイントとスキルポイントについて。ステータスポイントは,筋力/敏捷力/体力/精神力という四つの基本ステータスにそれぞれ振り分けられる。スキルポイントは,ツリーに割り振って新たなスキルを取得していく。スキルの取得には,最初の街にいるクラストレーナーから本を購入する必要があることに注意しよう。一度覚えたスキルをレベルアップするには,スキルポイントだけあればよい。

 

直感的に理解しやすいインタフェース。珍しいものではないだけに,操作に戸惑うことはないだろう ステータスウィンドウ。右側にある「能力値」をステータスに割り振っていく ナイトのスキルツリー。スキルは本を買って覚える必要があるが,レベルによる制限もある

 

 武器と防具は,後述するクラスによって使えるものが決まっている。自分のクラスの武器商人と防具商人は隣り合って配置されているので,場所を覚えておくといいだろう。装備品はクラスによる制限のほか,レベルやステータスによる制限もある。懐に余裕があっても,実力以上のものは装備できないことに注意しよう。また装備している武器によって,使えるスキルにも制限がかかる。例えば弓を使うスキルは,当然ながら弓を装備していないと発動できない。

 

店売り装備品のステータス。能力の及ばない部分は赤字で表示されている

 また,モンスターがドロップした装備には,「ソケット」が設けられているものもある。ソケット付き装備には,やはりドロップやクエストを通じて得られる特殊アイテムをはめ込むことで,属性効果や特殊効果が得られるようになる。ソケットアイテム以外にも,精錬用のアイテムを手にしていれば,+1,+2と基本の能力をアップグレードできる。

 

ソケットによる強化。はめ込むアイテムによって,違う能力が得られる。同じ装備でもソケットの数は異なる。写真では「魔法攻撃力」がプラスされている

 

精錬強化は鍛冶屋を通して行う。精錬用のアイテムも,モンスターからのドロップかクエスト報酬のようだ。写真では武器の名称に「+1」が追加された。能力値もUp

 

 ここまで駆け足で紹介してみたが,基本的な要素は「Diablo」のシステムを忠実に踏襲していると考えて差し支えないだろう。Diabloに直接触れたことのないプレイヤーでも,「ラグナロクオンライン」をはじめとする韓国製のタイトルをかじったことがあれば,おおよそ把握できると思う。なお現時点では,生産に関するシステムは用意されていない。

 

 

■「DEKARON」の目指すアクション性とは?

 

 それではいよいよ,「DEKARON」の目玉といえる戦闘に目を向けてみよう。と,その前に,クラスについて説明せねばなるまい。クラスと戦闘は切っても切れない関係にある。本作で用意されたクラスは以下の五つだ。ちなみに本作には,キャラクターの外見をカスタマイズする選択肢は存在せず,クラスによって固定されている。

  • アズールナイト(Azure Knight)
  • セジタハンター(Segita Hunter)
  • インカルマジシャン(Incar Magician)
  • ビシャスサマナー(Vicious Summoner)
  • セグナレ(Segnale)

 

サマナーの召喚したモンスターは,サマナーの傍に寄り添い,自動的に攻撃を行う。右下のアイコンでモンスターの状態と指示を確認できる。分かりにくいかもしれないが,手前のごついのが使役しているモンスターだ

 ナイトとハンター,マジシャンはその名前から想像がつくと思うが,残りの二つは少し特殊なクラスといえるかもしれない。
 サマナーは,召喚したモンスターを使役して戦うクラス。スキルツリーを埋めていくことで,より強大なモンスターを呼び出せるようになる。一度呼び出したモンスターは,プレイヤーキャラクターのそばに立ち,攻撃してくるモンスターには自動的に反撃を行う。専用のコマンドで直接攻撃対象を指定したり,行動を禁止したりもできる。
 ただし,プレイヤーキャラから離れすぎた場合は自動的に戻ってきてしまうので,行動範囲はあくまでキャラクターの視界の届く範囲より,少し狭い程度に限られる。なおサマナーには,2刀流の小剣ツリーも用意されている。こちらはこちらで強力なのだが,使いこなすのに必要なステータスが異なるため,このクラスを選択したキャラクターは育成の方向性に苦労しそうだ。

 

鞭による吸血攻撃。赤い軌跡が美しい。鞭は十分な威力と射程の長さから,扱いやすい武器といえるだろう

 セレグナは,まるで女性のダークエルフのような容姿をしたクラス。その外見からは少し想像がつかないが,本作でのヒーラークラスに相当する。ヒールや攻撃力アップといったbuffに相当するツリーと,「呪い」と呼ばれるdebuffやDoT(Damage over Time)にあたるツリー,そして鞭による攻撃スキルを備えた,一風変わったキャラクター能力といえる。鞭は通常の近接武器より射程が長く設定されているうえ,吸血によって自分の体力を回復するなど,特殊な使い方が可能な武器だ。

 

 先の三つの職にも簡単に触れておこう。ナイトは文字通りの近接攻撃担当クラス。剣と盾を装備する基本的なスタイルのほか,両手持ちの大剣を振り回したり,両手にそれぞれ違う武器を持ったりというスタイルも選択可能だ。それぞれのスタイルにスキルツリーが用意され,育成の幅も広そうである。盾を持った場合には,後述する「ブロック」が発生する確率が向上する。パーティでの戦いで前衛を張るには適役だろう。

 

 セクシーな外見のハンターは,弓やクロスボウによる遠距離攻撃を主体とする。これもそれぞれ別のツリーを持っているほか,短剣によるスキルも備えている。ただし短剣のツリーはバリエーションに欠け,距離をとるためのスキルなど,あくまで補助的役割になる。基本的な属性攻撃に加え,ツリーを埋めていくことで貫通攻撃や範囲攻撃を獲得していく。

 

 柔和な女性キャラクターであるマジシャンは,魔法による攻撃をメインとする。各種属性による範囲攻撃スペルを備え,殲滅役としては申し分ないものが揃っている。半面キャスタークラスの常として,防御面に不安があるのはお約束だろう。足りない防御力は強化のスペルによって補おう。

 

きらびやかな鎧に身を包むナイト。武器は2セット用意可能で,Tabキーで切り替えられる。コンボの爽快感がウリ ハンターの貫通攻撃スキル。右下に矢の残数が表示されている。狩りに出かけるときには忘れずに補充しておきたい マジシャンの魔法は綺麗なエフェクトで彩られる。豊富なスキルを持ち,ショートカットスロットの数に悩まされそう

 

 さて,本作の特徴となる「コンボ」「ガード」「ブロック」を見ていこう。敵をクリックして戦闘に入ると,ざくざくと連続したモーションで敵を斬りつけ始めるのだが,これが「コンボ」だ。コンボの連打数は使用する武器により決まっており,とくに追加入力などを行う必要はない。また,攻撃にはノックバックが設定されているため,タイマンで勝負を挑む限り,よほど格上のモンスターでなければ,コンボが続くことでノーダメージで倒せてしまう。
 それでも敵の攻撃を受けてしまうとき,ときおりガキンというエフェクトと共に敵の攻撃を受け止めるエフェクトが見られるはずだ。これが「ブロック」である。この発生確率は,基本的に敏捷度に依存している。ブロックは敵の攻撃を完全に受け止めるため,発生すればダメージを受けない。また,「ガード」も同じく敏捷度の度合いによって発生するもので,こちらはダメージを半減する効果を持っている。

 

敵をクリック(Bタイプ操作ではダブルクリック)すれば自動攻撃になり,コンボが開始される 緑色のブロック表示。これが発生した敵の攻撃では,ダメージを受けることはない。一般的な「Miss」と同じ!?

 

 ここで「アレ?」と思った人は,筆者と同じ感覚の持ち主かもしれない。コンボもガードもブロックも自動的に発生する効果なので,プレイヤーの操作自体が問われることはほとんどないわけだ。このシステムのどこが「アクション」なのか。

 

 この点で,筆者もずいぶん悩んでしまった。ぶっちゃけ「ブロック」とは,つまりほかのゲームでいうところの「ミス」に相当する。本作では「ミス」が発生した場合,ナイトなら盾を構えてガチンとこれを受け止める。ゲームのヘルプによると,「ブロックが発生すると相手のコンボを止められ,また少しのあいだ敵の動きを止められる」とある。ところが敵がコンボを使ってくることは,少なくとも筆者が見たところなく(モンスターに限った話だが),また攻撃が敵にブロックされた場合でも,次のこちらの攻撃が間に合ってしまうため,ここに駆け引きは存在しない。
 ノックバックの距離は敵の重量に依存するらしく,確かに重そうな相手に切りかかるとコンボは途切れて反撃を受ける。しかしこれを防ぐ手立ては存在せず,結局ポーションを飲みながらガチンコで殴り合うしかないのである。

 

 結局のところ,筆者はこう考えることにした。本作の唱える「アクション」とは「操作」のアクション性にあらず,キャラクターの見た目のアクションのことなのである。コンボの打撃感は爽快であり,体力を削りきると,敵は血吹雪を上げて真っ二つになる。これが本作の掲げるアクション性だ。なるほど,これならアクションが苦手なプレイヤーでも臆することなく派手な画面に没入できるに違いない。

 

各効果は,もちろん敵も使ってくる。敵にガードされるとダメージが黄色で表示され,通常の半分程度しか効かない ウリの一つであるゴア(残酷)表現。まさに真っ二つ。フィニッシュの仕方によって切断面の方向も変わるようだ

 

 2種類用意されている操作方法についても触れておこう。本作ではプレイヤーの好みにより「Aタイプ」と「Bタイプ」の操作法をオプションから選択できる。ゲーム内の説明では「Aタイプ」がオート,「Bタイプ」がマニュアル操作となるのだが……。
 「Aタイプ」ではスキルの使用にショートカット(1〜6キー)を押してから,右クリックで発動タイミングを指定する。「Bタイプ」ではショートカットで即時発動になっている。「Aタイプ」ではモンスターでなく地面を指定してのスキル発動が可能であるものの,ワンテンポ行動が遅れるだけで,あまり意味は見出せない。結局のところ,自動攻撃がシングルクリックかダブルクリックかといった差でしかない。WASDキーによる移動はどちらでも可能であるものの,カメラが追尾しないのでかえって操作しづらいように思える。
 なお,これはあくまで対モンスター戦闘における筆者の理解であることを付け加えておく。今回のプレビューではオープン前のサーバーでのプレイだったため,対人戦やパーティを組んでの集団戦は検証していない。むしろ「対人戦でこそ本領が発揮されるシステムである」という可能性もあることを忘れないでほしい。

 

 

 

■プレイを盛り上げる独特の世界観

 

 世界観についても少し触れておこう。「DEKARON」の世界は,かつて世界を滅ぼした魔物「カロン」の復活に備え,軍備拡張の真っ只中にある。この軍に参加するためキャラクターを作成するのだが,最初に受けるクエストも,新兵としての課題から始まる。世界は魔物にあふれ,人間達はその侵攻を恐れ,窮屈に身を寄せ合う。ほのぼのした雰囲気はかけらもない世界だが,こういうダークな世界観が好きな人にはたまらないだろう。
 グラフィックスは,マップを先に進むたびに幻想的な風景が展開され,それに伴ってモンスターもより巨大に,強大になっていく。世界全体はそれほど広くはないと感じたが,一つ一つのマップは大きく作られているように思う。先に進んでみたいという意欲を掻き立てられ,キャラクターの育成にもいっそう熱が入るというものだ。

 

クエストを提供してくれるNPCは頭に,巻物のような目印を持っている。ただし,実際に受けられるかどうかは自キャラのレベル次第だ 最初に受けるクエストは,スタート地点のすぐそばに配置されている。受けたクエストはクエストジャーナルから進行度合いを確認できる

 

 もう一つ,本作の世界観を特徴づけるものに,その装備品の豪華絢爛さがある。より強い装備は必ず,弱い武器より「華美」に表現されている。武具を精錬すれば光り出し,傍目に見ても目立ちまくる。その色彩感覚は,筆者にはちょっとついていけない部分であったりもするのだが,デフォルトのキャラクターの外見が固定であるがゆえ,こういう差異化はある意味必然ともいえる。「より強力なアイテムを!」という要求にも,「カッコいい装備をコレクションしたい」という欲求にも,ストレートに答えてくれる要素だ。
 シンプルなシステムだけに,レベリングとアイテム収集がメインになる本作だが,その過程を世界観がより熱を持ったものに彩ってくれるだろう。

 

精錬によって光を帯びた武器。細かい点ではあるが,ちゃんと見た目に反映されるのが嬉しい 主要なマップへは街から直通のテレポーターが用意されている。無駄な移動時間が省けて便利だ

 

 あえて一つ苦言を呈すと,ローカライズの出来には不安が残る。まだβテスト前ということもあり,現時点でそこまで求めるのは酷かもしれないが,一部でスクリプトの不具合か台詞が切れてしまっている場合もあったりで,世界観が本作のウリの一つであるだけに残念でもある。今後の調整に期待したい。

 

 

■プレオープン総評

 

 オーソドックスなシステムに,独特の世界観とド派手なチャンバラを載せた本作。練り込みが足りない部分も見受けられるが,それは今後の調整次第だろう。「王道」ゆえに,その方向性は受け入れやすくもあるだろう。しかしこれだけ韓国産のMMORPGが乱立する中,こうも独自性が少ないと,「このゲームでなければ」という決め手に欠けるのも確か。
 ウリであるアクション部分について,「アクションゲームのような戦闘システム」ではなく,「勝手に次々と繰り出される派手なキャラクターアクション」というものであった。人によっては物足りなく感じられるかもしれないが,逆に「MMORPGの地味な戦闘がつまらない」という人には,願ってもない要素となるのではなかろうか。
 韓国での評判も,バランス面の甘さを指摘する声が大きいようで,まさにこれからが正念場。この冬にリリースされる,多くのMMOタイトルから頭一歩抜け出ることができるかどうか,今後の動向に注目しつつ,見守っていきたい。

 

 

タイトル DEKARON
開発元 ゲームハイ 発売元 NeoWiz Japan
発売日 2006/05/25 価格 基本プレイ料金無料(アイテム有料)
 
動作環境 対応OS:Windows 98/2000/XP(+DirectX 9.0c以降),Pentium III 800MHz[Penttium 4 1.5G推奨],メモリー256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ64MB以上のGeForce2MXシリーズ以降/RADEON7500シリーズ以降[グラフィックスメモリ128MB以上のGeForceTiシリーズ以降/RADEON9600シリーズ以降推奨],HDD空き容量:800MB[1.2GB推奨],ADSL/ケーブル回線以上のインターネット接続環境

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