レビュー : CABAL ONLINE

「クリックゲー」からの脱却を目指した,スピード感溢れるMMORPG

CABAL ONLINE

Text by 川崎政一郎
2006年12月19日

※本稿は12月15日時点でのゲーム内容に準じています

 

ソロプレイでも「コンボシステム」により
痛快なアクションを満喫

 

「CABAL ONLINE」はゲームポットが現在正式サービス展開中のMMORPG。4Gamerにも頻繁にニュース記事が掲載されているので,多くの読者がどこかで名前を目にしているだろう

 「CABAL ONLINE」は,韓国ESTsoftが制作した3DタイプのアクションMMORPGだ。EST Softはこれまでツール関連の開発を主なビジネスとしており,ゲームタイトルに携わるのは本作が初ということだが,それを感じさせない堂々とした作りとなっている。ちなみにビジネスモデルは「基本プレイ無料+アイテム課金」で,日本国内における運営はゲームポットが担当している。

 

 ゲームの舞台となるのは,かつて栄華を誇ったものの,現在は崩壊寸前にある「Nevareth」という世界。プレイヤーが扮するキャラクターは「Cabal」と呼ばれる組織の一員として,この世界で生き延びるための術を探していくことになる。Nevarethの各地には,かつての高度文明の名残があり,世界観がファンタジーよりもSF寄りというところに注目したい。

 

 キャラクターの作成時に選べる「バトルスタイル」(いわゆるクラス)は,「ウォーリア」「ブレーダー」「ウィザード」「フォースアーチャー」「フォースシールダー」「フォースブレーダー」の6種類。後者の三つに見られる「フォース」については,映画「スター・ウォーズ」のフォースをイメージしてもらうと分かりやすい。あのような不思議な力を,武具やスキルなどに活用できるというクラスである。外観こそ違うものの,魔法と似たポジションといってもよいだろう。

 

 各クラスの方向性としては,近接タイプ,遠隔タイプなど微妙に違ってはいるものの,いずれも「攻撃系」に属している。回復系に属するクラスはなく,本作ではクエストやハンティングといったプレイの大半を,ソロで行えるバランシングとなっているのだ。詳しくは後述するが,「一人による短時間のプレイでもゲームを満喫できる」というのが,本作の基本コンセプトである。

 

移動方法はクリックまたはW/A/S/Dキーのどちらでも可能。カメラワークも3パターンが用意されており,幅広い操作スタイルに対応している 3Dグラフィックスだが,必要とするPCスペックは意外と低め。各種エフェクト類も凝っており,斬撃の軌道が一瞬湾曲する処理が格好いい ステータスや装備に関しては,一般的なアクションRPGの形式を踏襲している。このあたりはアクションRPGの経験者であれば説明不要だろう

 

SFの要素が,装備グラフィックスにもある程度反映されている。ちなみに,左の写真のようにゴテゴテした「いかにも」な鎧は,ゲームの中盤以降にならないと入手できない。序盤から中盤にかけての装備品は,すっきりとしたデザインが中心となる

 

 戦闘時の操作方法を説明すると,一度戦い始めた相手に対しては,あとはオートで攻撃し続けてくれる。一体のモンスターを倒すためには10〜20回前後と,比較的多くの攻撃回数を要し,この通常攻撃の合間に「クイックスロット」に登録(最大12個)したスキルを発動させるというのが,基本的な戦闘スタイルだ。場合にもよるが,クイックスロットのスキル使用は戦闘中における操作の大部分を占めている。これを言い換えると,本作はいわゆる「クリックゲー」ではないということである。

 

 そして,「クイックスロット+攻撃回数多め」の戦闘スタイルを最大限に生かしているのが,本作の「コンボシステム」だ。レベル10以上のキャラクターは,特別なクエストを達成することで,「コンボモード」を発動させられるようになる。コンボモードの最中は,ゴルフゲームにおけるパッティングにも似たゲージが次々と表示され,このタイミングにうまく合わせてクイックスロットを押すと,通常時よりも素早くスキルを叩き込めるのだ。

 

 このようなゲージを利用するシステムは,数多くのゴルフゲームや「デコオンライン」などでお馴染みだが,本作の場合はタイミングさえ合えば,いくらでもコンボを繋げられるというのが面白い。しかしスキルゲージの移動はあっという間に終わってしまうため(約1秒),実際に数多くのスキルを繋げるのは,思ったより難しく,そして挑戦しがいがあるのだ。見た目にもインパクトがあるので,ぜひ一度,公式サイトで公開されているムービーを見てもらいたい。コンボによる派手な画面エフェクトから,痛快なプレイ感覚が伝わってくるはずだ。

 

スキルはいくつかのランクに分けられており,条件さえ満たせば自由に習得できる。またスキルは,使い込むことでレベルアップも可能だ コンボシステムを発動させるには,通常攻撃によって「SP」というポイントを溜める必要がある。コンボ発動後は,画面中央上部にゲージが表れる コンボゲージはかなり速く進むので,うまく繋げるのは難しい。はじめは,各エリアに設置されているトレーニングダミーで練習するのがお勧め

 

 

プレイヤーに極力ストレスを感じさせない,
気配りの利いたシステム

 

序盤でお世話になる三つのエリアには,いずれも拠点とモンスター生息地が混在している。ポータルを通じて,これらを頻繁に行き来することになる

 基本的なゲーム展開は,クエストをこなしながらモンスターを倒してレベルアップに励むという,オーソドックスな流れとなる。本作ではクエストにかなりの重点が置かれており,そのための環境がしっかり整えられているのが,大きなアピールポイントだ。その魅力を一つずつ追っていこう。

 

 本作のクエストを大別すると,「単発もの」と「一連もの」の2種類があり,後者はクリアすることで「エンディング」を迎えるというのは,本作の大きな特徴の一つ。もちろんエンディングとはいっても,そこでゲームが完結するというものではなく,Cabalという組織により深く関わるストーリー上の区切り,といった意味合いである。レベル50から用意されているクエストの中にはエンディングが用意されているものがあり,単調な作業の繰り返しになりがちなプレイに新鮮さを加えている。このエンディングという要素は,プレイヤーにとっての大きな目標となるだろう。

 

 また,クエストを追ううえで重要になる「エリア間の移動」が,とても快適である。各エリアは共通のポータルエリアへと通じており,これを経由することで手軽に移動できるのだ(ポータルを中心とした「スター型」の構造)。ゲームの序盤から中盤にかけては,クエストで森林,砂漠,雪原の3エリアを頻繁に行き来することになるが,どの場所にいようとも,目的地までたった数分で移動できるのはありがたい。

 

 「GPS」と名づけられた,マップ表示に関連した機能群も便利だ。GPSにはクエストの目的地や依頼NPCが表示されるのはもちろんのこと,自分のレベルに応じたモンスターのレベル分布を,色別に表示してくれる機能がとくに助かる。これを見ながら「黄色」や「オレンジ」で塗られた地域へ向かえば,そこにはレベリングに適したモンスターがたむろしているのだ。似たようなレベル表示機能は「Rysk Your Life Part2」にも存在したが,あれよりもさらに洗練された印象である。

 

 このように,プレイ時間の多くを占めるであろうクエストの環境周りが整備されていることから,プレイはいたって快適だ。それを最も強く実感できるのが,自分がログオフしている時間に比例して,経験値ボーナスの期間が増える,というシステムだ。要するに「World of Warcraft」における「Rest System」と同じもので,アジア系のMMORPGでこれを取り入れているタイトルは,徐々に増えてきてはいるようだが,まだ数は少ないほうだろう。

 

 本作では,ただでさえクエスト達成時に得られる経験値が多めに設定されている。それに加えて上記の経験値ボーナスを併用すれば,レベリングを目的とした純粋なモンスターハントをほとんど行う必要がないのだから驚きである。この点からも分かるように,本作はコンテンツを出し渋ることでプレイヤーを長く引き留めようとするのではなく,どんどん成長させていく楽しさを前面に押し出しているのだ。「パーティを組めずキャンプができない」「なかなかレベルが上がらない」などといったストレスを極力感じさせない,ユーザーフレンドリーなシステムは,大いに歓迎できるだろう。

 

一般的なアクションRPGと比べて,モンスターの生息ポイントは細かく分けられている。エリアの大きさの割に,登場するモンスターの数は多めだ クエストは基本的にお使い系が中心となる。依頼NPC,目的地,報告NPCとそれぞれのポイントがマップに表示されるので,大いに活用しよう ポータルを通じて各エリアを瞬時に移動できるのは,とても便利だ。常に多くの人が行き交うためか,ここでバザーを行うプレイヤーも多い

 

GPSによるマップ表示を行っているところだが,塗られた色に注目してほしい。これなら,どこでキャンプを行うべきか迷うことはないだろう 一部のクエストでは,プライベートダンジョンにも挑戦することに。その内部では,タイムアタックによる緊張感ある戦闘が待ち受けている 画面右下の「休憩経験値ポイント」に注目。一定経験値を獲得するまで時間制限はない,というのが特筆すべき点で,マイペースで遊べるのだ

 

 

現状は順調な滑り出し。
中〜高レベル向けコンテンツの充実がカギ

 

レベリングやクエストは,かなりサクサクと進行する。これも,ハイレベル向けのコンテンツに自信があるからこそ成せる業といえよう

 クエストの遂行やキャラクターのレベリングをサクサク行えるということは,言い換えるとコンテンツの消費スピードが速い,ということでもある。ここまで快適なプレイを実現されると,早々とプレイヤーに飽きられないかと思わず心配になってしまうかもしれないが,その点もぬかりはない。正式サービス後のアップデートにより,ハイレベル向けコンテンツも続々と整備されてきているのだ。

 

 現時点で導入されている,ハイレベル向けコンテンツをピックアップしていくと,先述したエンディングクエストのほかに,レベル100以上を対象としたエリアやレアアイテム集め,製造(レベル50以上),国家戦(レベル95以上)などがある。ちなみに国家戦という単語が出てきたが,本作ではPvP要素も積極的に取り入れており,ギルド戦では最大で111名同士によるバトルが可能。またログイン時には,全エリアでPvPが可能なゲームチャンネルも選べる。

 

 課金アイテムに関しては,冒険時の利便性を高めるものや,コスチュームやペット類といった定番タイプが一通り揃っている。ただし,少なくとも序盤から中盤にかけては,これらを使わずとも別に困らないバランスなので安心してほしい。今回記事執筆に向けてプレイしている間も,課金アイテムの必要性はまったく感じられなかった。

 

 このようにユーザーフレンドリーなシステムを積み重ねた結果,正式サービス移行後の現在もなお,本作はかなりの人気を博している。例えば大勢の人が行き交うポータルエリアでは,マウスで地面をクリックすると必ずといっていいほど誰かしらのバザー(露天)を開いてしまうため,W/A/S/Dキーで移動せねばならないほど,人があふれているのだ。
 オンラインゲーム(とくにMMORPG)では,人が集まることによって形成されるコミュニティそのものが,魅力的なコンテンツとなる。さまざまな人のバザーでウィンドウショッピングを楽しんだり,111対111による大規模なギルドを繰り広げたりするのも,大勢のプレイヤーがログインしていて初めて実現が可能なものだ。

 

 そして,クリックゲーの単調さを避け,別のゲーム性を実現しているところを高く評価したい。これを代表するのがスキルコンボシステムだが,それともう一つ,キャラクターのMPが減るとポーションを自動的に飲んでくれるというオプションには,思わずニヤリとさせられてしまった。これはスキルコンボの操作に専念できるという意味だけでなく,「繰り返し,ポーションを飲む指示を与える」という行為を,ゲーム性として認めてない,という考えの表れではないだろうか。

 

 確かに現状として,多くのMMORPGでは「ポーションがぶ飲み」のような単調な作業が,常識として受け入れられていると思うのだが,今も続々とそうしたタイトルが雪崩れ込んできている日本で,本作のような志を持ったタイトルがプレイヤーに支持されていることは,やや大袈裟に言うと日本のオンラインゲーム市場全体にとって前進といえるのではなかろうか。

 

 総合的に見て,本作はこれまで数多くのアクションRPGに触れた人でも不満点がほとんど感じられず,それでいてライトゲーマーでも存分に楽しめる,優れたタイトルに仕上がっている。これから年末年始にかけて,お勧めしたい一本である。この機会にぜひ一度,プレイしてみてほしい。

 

飽くなきトレジャーハントや対人戦など,キャラクター成長後の遊び方は多い。この方面をいかに充実させるかが,本作のカギとなってきそうだ エフェクトが格好良く,ただ単に攻撃したり,スキルを繰り出したりするだけで気持ちがいい。スキルコンボは,その上をいく気持ち良さだ 本作のハードロック系のBGMは,世界観と相まって新鮮。ヴォーカル入りの曲もあるなど,BGMの割に自己主張しているが,意外とハマっている

 

一度しっかりと形成されたコミュニティは,後は勝手に発展を続ける。本作はまだ運営後間もないが,すでに軌道に乗っているかも キャラクターのモーションは,拡大しても不自然さが感じられない。それだけに,ハイスペックPC向けの高品質テクスチャもほしかった 経験値倍増期間の適用は,レベルアップ後も有効。何はともあれキャラを作り,時間ができたときに少しずつプレイしてみよう

 

タイトル CABAL ONLINE
開発元 ESTsoft 発売元 ゲームポット
発売日 2006/11/28 価格 基本料金無料(アイテム課金)
 
動作環境 CPU:Pentium III/800MHz以上[Pentium 4/1.4GHz以推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce2 MX200以上[GeForce Ti以上推奨],HDD空き容量:1GB以上

Copyright(C)2005 by ESTsoft Corp. All rights reserved.

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http://www.4gamer.net/review/cabal/cabal.shtml