■クリックタイプとしての基本を押さえつつ遊びやすさを重視
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| ブライトキングダムは,ハイファイブ・エンターテインメントが運営中のMMORPG。「キングダムクエスト」を始めとした,コミュニティ重視の仕様に注目してほしい |
「ブライトキングダム オンライン」は,ハイファイブ・エンターテインメントが現在運営を行っているMMORPG。かつては韓国ARAGON Networksが「Shine Online」として開発していたタイトルで,日本向けの大幅なアレンジが施されたものとなっている。現在のブライトキングダムの運営状況は,オープンβテストに相当する“ブラッシュアップ”の最中で,近日中に正式サービスが開始される予定だ。
ブライトキングダムのゲームジャンルは,とくにアジア圏で人気の高いクリックタイプのアクションRPG。そして日本人のライトゲーマーが親しみやすいように,単純な日本語ローカライズに留まらない仕様変更が施されているのが大きな特徴だ。例えば韓国産MMORPGのローカライズタイトルをプレイしていると,言語感覚やキャラクターデザイン面などで違和感を覚えることはよくあるが,本作の場合,そういった違和感を取り除くために,かなりの労力が費やされているのだ。
グラフィックスに関しては,カートゥーン調のテクスチャデータを3Dキャラクターに貼り付けることで,独特の質感を表現している。これはアニメーションに慣れ親しんだ日本人にとっては,比較的受け入れやすいものといえるだろう。
キャラクターをぱっと見る限りでは,「マビノギ」や「エミル・クロニクル・オンライン」に近い印象を受けるかもしれないが,実際にプレイしてみるとだいぶ違うことに気づく。キャラクターは輪郭線が太く縁取られ,モーションにも躍動感があるため,あたかもアニメキャラクターをそのまま動かしているかのような感覚がある。そのため本作には,「軽快でコミカルなアクションRPG」という表現がしっくりくる。
ゲームの基本操作は,左クリックまたはW/A/S/Dキーで移動で,右ドラッグで視点移動。そしてダブルクリックによる攻撃を行いながら,数字キーでスキルなどを繰り出す。この類のタイトルでは欠かせないポーション類については,HPとSP(スキルポイント)を回復するための“ストーン”を数十個単位でストックでき,専用のショートカットキーで使用する。このように操作面に関しては,韓国産MMORPGを遊んだことがある人ならば,直感的にプレイできるものとなっている。
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| 左からクレリック,アーチャー,メイジ。日本人でも受け入れやすいデザインだ。モーションにもメリハリが効いていて,走ったり攻撃したりといった動作一つ一つが良く出来ている | ||
ゲームに登場する職業には,ファイター,アーチャー,クレリック,メイジの4種類があり,各職業の特徴はその名前から思い浮かべるイメージとほとんど同じ。習得可能スキルは職業によって大きく異なり,通常攻撃に関してはファイターとクレリックが直接攻撃,アーチャーとメイジが長射程攻撃となっている。ちなみにキャラクターが成長してレベル20になると,上位職へのクラスチェンジが可能だ。
基本的には戦闘がメインのゲーム展開だが,さまざまなタイプのクエストを並行してこなすことで,効率はよりアップする。本作ではこのクエストにまつわるシステムがなかなか良く出来ているので,積極的に活用していきたいところだ。例えばレベルアップなどで新たなクエストが受けられるようになると,それを告知するポップアップが表示される。また,気軽にパーティプレイが楽しめる「キングダムクエスト」や,「エピッククエスト」と呼ばれる長編ストーリーも用意されているので,対モンスター戦を軸としたルーチンワークに終始するようなことは,あまりない。
原稿執筆時点では,合計で15前後の屋外エリア+ダンジョンエリアが実装されており,キャラクターが大体4〜5レベルくらい成長すると,次のエリアで冒険できるようになる。ゲームバランスに関してはソロプレイも十分可能で,パーティを組めばより効率的な経験値稼ぎができるように調整されている。回復用のストーンがかなり安く,また休息時の回復率も高いため,ゲームプレイのテンポはとても良い。
■見知らぬ同士でも抵抗なく参加できる「キングダムクエスト」
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| キングダムクエストのタイムスケジュールは,学校の授業の時間割表のようなものをイメージしてもらうと分かりやすい。本作を代表する,ユニークなシステムだ |
本作最大のアピールポイントはずばり,「キングダムクエスト」(以下キンクエ)と呼ばれるシステムだ。キンクエとは簡単に説明すると,「予約制の自動生成クエストシステム」である。キンクエは10分程度の間隔で絶え間なく発生しており,そのタイムスケジュールがプレイヤーに公開されている。そして参加を希望するプレイヤーはキンクエを予約することで,開始時刻と共に全員が専用エリアに招集され,一緒にクエストを攻略できるのだ。
通常のプレイ時における人数規模は,ソロ〜数人といったところだが,キンクエでは10〜20人もの人数が集まることも珍しくない。キンクエの,大人数が同じ目標に向かって一斉に突き進む空気には,ある意味お祭りにも似た独特の熱気がある。そしてもちろん参加プレイヤー数が多いだけに,キンクエで戦うモンスターの数も数百匹といった単位となる。キンクエの目標を無事に達成すれば多くの経験値だけでなく,レアアイテムなどのボーナスも得られる,というわけだ。このような大人数によるモンスター討伐は,一般的には“Raid”と呼ばれるが,本作のように,誰でも気軽に参加できるシステムとしてRaidを組み込んだタイトルというのは,なかなか珍しい。
キンクエはユニークなシステムなので,最初は戸惑うかもしれないが,慣れてくるとこれが実に面白い。今回筆者がしばらくプレイしてみたところ,そのメリットは二つあると感じた。一つは,同じ目的のプレイヤーが自動的に集められるため,まとまった時間の取りづらい学生や社会人でも,グループ編成を簡単に行えること。しかもキンクエという共通目的があるおかげで,初めて会ったプレイヤー同士でも意気投合しやすい。これは,「パーティープレイは好きだけど自分からメンバーを集めるのはちょっと……」という消極的な人にも,嬉しいシステムである。ライトゲーマーの中にはシャイな人が多いと思うが,キンクエによる自動編成を利用すれば,簡単にパーティプレイが楽しめるはずだ。
そしてもう一つのメリットは,何時からキンクエが行われるのかが明確になっており,予約さえ入れてしまえば,自分がどのエリアにいようとも,時間がくると自動的に招集されること。なので始まるまで別のエリアで遊んでいても構わないし,またストーン購入等の事前準備も余裕を持って行える。つまりキンクエを軸に考えることで,時間をとても効率的に使えるのだ。また,キンクエ単位でプレイ時間の区切りがはっきりとついているので,「落ちるタイミング」が計りやすいのも,嬉しいところである。
キンクエの内容はモンスター討伐系が中心だが,対象となるエリアが複数あってプレイヤーを飽きさせない作りになっている。そしてキンクエを通じて他プレイヤーと意気投合したら,一緒に別のクエストを行ったり互いにフレンド登録したりといった展開も,きっとあるはず。このように,ゲームシステムとコミュニティの両面において,キンクエは実に理にかなったシステムといえよう。いったいなぜ,このようなシステムが今まで登場しなかったのか,意外に思ってしまうほどよくできたシステムだ。
■コミュニティ関連が特に充実。プレイヤー寄りの運営を感じさせる今後に注目
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| 休憩時やバザー販売時には,きのこの姿をした「ミニハウス」が設置される。冒険の合間に突如としてこのミニハウスが表れると,なんとなく和んでしまう |
クリックタイプのMMORPGジャンルは,現在多くのタイトルがリリースされている。しかし本作は,基本システム面こそオーソドックスながらも,ゲーム外の環境面がとても丁寧に作られており,それによって他タイトルとは一線を画している印象を受ける。
例えば,本作の公式サイトを見れば分かるが,イベントなどさまざまな施策を通じてゲームを盛り上げていこうという,意気込みが伝わってくる。こういったイベントが絶え間なく行われることで,ゲーム内世界が,テーマパークにも似たワクワク感で包まれているのだ。
それらの中でも特筆すべきは,「ゲームアテンダント」(GA)と呼ばれるプロジェクトだ。GAとはいわば「メーカー公認のプレイヤー」で,従来のゲームマスター(GM)よりもプレイヤーに近い存在といってよい。つまりGAが一般プレイヤーをエスコートして一緒に遊びながら,ゲームに慣れ親しんでもらおうという試みである。各GAは一般公開用のブログ(Blog)も執筆しており,こういったコミュニティ面からのアプローチは実に好印象だ。
しかし逆に,ゲームのプレイ中にもったいないなと感じたのが,キャラクターの外見で個性を出しにくいところ。例えばキャラクター作成時のカスタマイズに関しては,同じ職業・性別の中で選べるのは「顔・髪型」が各3パターンしかない。さらに武具に関しても,あまり選択の幅がなく,レベル帯の近いキャラクターはみんな同じ姿に見えてしまうのだ。グラフィックスのデザインが悪くないだけに,これはとてももったいないと感じた。せめてフェイスパターンや髪型の種類は,今後のアップデートで拡充してもらいたいところである。
もう一つはこのジャンルの宿命ともいえるが,中盤以降のレベルアップに必要な経験値が膨大なこと。レベル17のキャラクターを例に挙げると(=ゲーム内ではだいたい脱初心者といった段階),適切な強さのモンスターを200匹前後も倒さないとレベルアップできない。各種クエストを活用すれば,経験値稼ぎの効率は幾分よくなるものの,いわゆる「ポーションがぶ飲みしながらひたすら敵をクリック」という,お馴染みのプレイスタイルになってしまう。この戦闘スタイルそのものが好きならなんら問題はないが,人によって好みが分かれるところだろう。
個人的に気になったのは,それくらいである。本作は基本要素がしっかりしていることもあり,とても安心してプレイできるMMORPGだ。普段から数多くのタイトルに触れているようなコアなプレイヤーにとっては,本作はキンクエ以外のシステムがオーソドックスすぎて物足りなさを感じてしまうかもしれない。だが本作のメインターゲットは,コア層ではなく,もっともっとライト寄りの人達だろう。そういった人達の視点に立って考えれば,本作はあらゆる面で間口が広く作られており,とても好感が持てる。クリックタイプのMMORPGが嫌いという人でなければ,本作はこれから夏にかけての,オススメの一本となるだろう。

























