プレビュー : アミーゴ・アミーガ

チュンソフト開発の国産MMORPG

アミーゴ・アミーガ

Text by Yatagarasu
2006年12月13日

※本稿は12月11日(トライアルテスト)時点でのゲーム内容に準じています

 

 「アミーゴ・アミーガ」は,すべての「モノ」(イスやテーブルなど)が命を持っている「エストレヤ」という世界を,「アミーゴ」と呼ばれる「モノ」達と共に冒険するというコンセプトのMMORPGだ。
 ひさびさの国産MMORPGの新作で,しかも開発は家庭用ゲームメーカーの老舗,チュンソフトだというのだから,期待せずにはいられない……。はずなのだが,世間では不思議なほど話題になっていないように思える。
 トゥーンレンダリングを使ったポップなグラフィックス,強く打ち出されたストーリー性,エンカウント方式の戦闘システム,視覚で楽しむ生産,マイルーム機能。……それらの要素と絡み合い,ゲームを盛り上げてくれる「アミーゴ」という仲間の存在。チュンソフトのオンラインゲームデビュー作にふさわしく,フロンティアスピリット溢れる意欲的な作品だ。
 ちなみにサービスはハンゲーム上で提供され,基本料金無料のアイテム課金制が予定されている。このプレビューは11月30日から12月13日まで実施された,クローズドのトライアルテストをもとに執筆されている。オープンβテスト,正式サービスの時期は未定だ。

 

 

「アミーゴ」はペットではなくパートナー

 

自分の力で仲間にした,アミーゴ第1号。感無量。アミーゴは見た目がすべて,だと思うのは自分だけだろうか?

 イス,テーブル,タンス,ベンチ,樽,さらには家まで。すべてのモノが,この世界では命を持っており,「アミーゴ」と呼ばれ人間達と共存している。そして本作の最大の特徴といえば,このアミーゴを仲間にして共に冒険し,一緒に敵と戦ったりできることだろう。どこでもよく見かけるアミーゴのほか,めったに見かけないレアなアミーゴも存在するという。
 世界のあらゆるところにいる「モノ」としての「アミーゴ」。戦闘,生産,マイルームなどに関わる,ゲームシステムとしての「アミーゴ」。共に冒険をする,仲間としての「アミーゴ」。……世界観,システム,そしてプレイヤーの感情,そのすべてに「アミーゴ」というモノが,何らかの形でリンクしているのだ。

 看板,ポスト,イスといった「アミーゴ」の多くは,顔はあるものの,普段はしゃべったり動いたりすることはなく,単にフィールドを彩るオブジェクトとしていたるところに存在し,こちらを見守っている。そんなアミーゴ達とコミュニケーションを取るカギは,端的に言うと「食べ物」である。主食である「キラキラ」をプレゼントすることにより,アミーゴは仲間になってくれるのだ。
 だが,話はそう単純ではない。アミーゴ達はグルメで,それぞれの好みに合ったキラキラでなければ,何の反応もしてくれない。そもそも話しかける以前に,ただの不思議な形をした道具なのか,それともアミーゴなのか,確認することすらできない。
 アミーゴ探しは,色,形,大きさが違う,いろいろな種類のキラキラを集めることから始まる。キラキラはモンスターが落としたり,クエストをクリアするともらえたりと,入手経路もさまざまだ。とにかく,必死でキラキラを集めてから,街やら外やらを徘徊してみると,微妙な違和感に気付くだろう。今まで微動だにしなかったオブジェクトが,飛んだり,跳ねたり,うねうねしていたり……。プレイヤーが好みのキラキラを持っていると,アミーゴは逆に向こうから「話しかけてくれ」とアピールしてくるのだ。そこで声をかけると,ついに言葉を返してくれる。動いているアミーゴを初めて見つけたときは,誰もが驚きと共に喜びを感じることだろう。

 戦闘システムの詳細については後述するが,戦闘におけるアミーゴの特徴は,ここで簡単に説明しておく。仲間のアミーゴには直接指示を出せない。「弱っている敵を狙え」などといった大まかな指示を,あらかじめ設定しておき,戦闘中はアミーゴがその指示に沿って,自分で考えて行動を決める。
 生産では,「アミーゴのサポートを受けると成功率が上昇する」というシステムを採用している。アミーゴの種類によって,生産における得意分野がそれぞれ設定されている。

 アミーゴには,HPのほかに耐久度,信頼度という数値が設定されている。アミーゴのHPは,プレイヤーキャラのHPとは違って座っても回復せず,街や村にいる修理工に頼んで回復させることになる。耐久度は,アミーゴに戦闘や生産を手伝ってもらうと消耗する数値だ。耐久度を回復させるにはキラキラを食べさせるか,やはり修理工に頼むしかない。
 信頼度は高ければ高いほど,1回の戦闘や生産で消耗する耐久度が小さくなる。信頼度は戦闘や生産を手伝ってもらうことによって上昇するが,耐久度の残りが10%を切った状態で戦闘や生産を手伝わせると,逆に下がってしまう。またアミーゴが戦闘不能になった場合にも,信頼度は低下する。

 複雑に思えるかもしれないが,結局のところ注意すべきは,アミーゴの耐久度を10%以下にしないことと,戦闘不能にしないことだけだ。そうすれば信頼度は自然と上がっていき,結果的に耐久度の消耗も小さくなる。

 ストーリークエストを進めていくと,マイルームとログインポイントを兼ねる「テントアミーゴ」を入手できる。テントアミーゴの中は自分好みにコーディネートでき,そこには友人も招待可能だ。ログインポイントとは,マップ上からいつでも一瞬で移動できる場所のことだ。テントアミーゴのほか,街や村に設置された「ブルーストーン」もログインポイントとして指定できる。任意の場所に設置したテントアミーゴとブルーストーン,2か所のログインポイントを上手に利用すれば,移動にかかる時間と手間を短縮できるだろう。

 

 

誰かが好物の「キラキラ」を持って近づくと,アミーゴは踊り出す。NPCが座っていようと,容赦なく踊るベンチ 仲間にしたアミーゴは,一緒に連れて歩ける。珍しいアミーゴを自慢できるのはもちろん,浜辺で追いかけっこも アミーゴウインドウでステータスを確認したり,作戦を変更したり,名前をつけたり,アミーゴと別れたり(!)できる

 

生産を開始するとスロットが表示され,揃うと成功。アミーゴは横で飛び跳ねてるだけにも見えるが,手伝い中だ プレイヤーキャラもアミーゴも,レベルが上がればボーナスポイントを取得でき,ベースステータスに割り振れる 念願のテントアミーゴをゲット。狩り場の近くには,ログインポイントとして設置されたテントが多数……

 

 

既存の「クリックゲー」とは一線を画す

 

パーティを組むと,一列になってぞろぞろと移動する。移動はリーダーが担当するので,ほかの人はボーっと見ているだけでOK

 アミーゴ・アミーガは,マウス一つあればプレイ可能だが,多くの人が「クリックゲー」と言われてイメージするであろうMMORPGとはプレイ感覚がまったく違う。それは家庭用ゲーム機のRPGのような,エンカウント方式の戦闘システムを採用しているのが主な理由だろう。ちなみに戦闘に移るときのロード時間は,まったく発生しない。
 フィールド上でモンスターをクリックするか,アクティブモンスターの場合は接触しただけで,画面が切り替わり戦闘が始まる。戦闘は半リアルタイムのターン制(アクティブタイムバトル)で,自分の行動ターンが来るまでは待機するという,「ファイナルファンタジー」タイプ。待機時間はキャラクターの周囲に表れるオーラの色で確認でき,オーラの色が赤になると行動が実行される。
 アミーゴ・アミーガの戦闘は,そこで終わりではない。独自の要素「コラボ」というシステムを採用することで,緊張感とスピード感を増加させ,同時にテンポの良さと奥深さをも与えているのだ。
 コラボとは,いわゆる多人数による連携攻撃だ。操作は単純で,まず自分の行動を選択し,次に待機時間中の味方を選択するだけだ。コラボの起点となった味方の行動が実行されると同時に,自分の選択した行動が実行される。正確にいえば,自分の行動の効果がコラボした相手の行動に追加される。
 もちろん,自分が起点となって,味方にコラボしてもらうことも可能だ。単純だが,場面ごとに臨機応変な判断を要求するアクティブタイムバトルの性質を高めると同時に,アミーゴというNPCと協力して戦闘を行なうという前提を,うまく利用している。

 コラボは,自分のアミーゴ,パーティを組んでいるほかのプレイヤーキャラ,ほかのパーティメンバーが連れているアミーゴ,そのすべてと可能だ。また,コラボは二人だけで完結するモノではなく,コラボした仲間を追いかけるように選択していくことによって,連携の輪を広げられる。5人でパーティを組んでいる場合,AさんがBさんにコラボし,BさんにCさんのアミーゴがコラボし,CさんのアミーゴにDさんがコラボし……と,理論上は10回の行動をコラボで一つにできる。

 通常攻撃は通常攻撃と,スキルはスキルとしかコラボできず,アイテムの使用もコラボに絡めることはできない。とまあ縛りがまったくないわけではないが,本作ではスキルの発動にコストが掛からないため,発動が早いスキルを起点とした,スキル構成のコラボが圧倒的な威力を発揮している。現状,通常攻撃の出番がまったくない状態だ。しかしながら,調整が可能なオンラインゲームであるということを考えれば,このあたりは次のテストまでに変わっている可能性もあるし,正直このままでも別に困らない。
 むしろ,コラボシステムの可能性について妄想するほうが,有意義で楽しい。弱点属性が違うモンスターを嫌らしく並べた戦闘配置への対応,スキルが増えていくなかでのコラボの多様化,特定のスキルを組み合わせると,特殊な効果が生まれるといった要素の追加可能性などなど……。コラボは現状でも十分に面白く,さらに未来にも期待させてくれるシステムだ。

 

パーティでの戦闘は,昔ながらのRPG的。一人がミスをすると全員がピンチになることもあるので,なかなか気が抜けない 皆が協力するコラボ攻撃はとても強力。サクサク敵を倒せるのだが,まだバリエーションがなく単調になりがち。今後に期待 パーティ募集には看板機能が便利だ。頭の上に表示する文字列を自由に設定でき,表示したまま移動できる。愉快な看板も多い

 

モンスターを近くでクリックすると,戦闘が始まる。アクティブモンスターは触れただけで戦闘が始まるので注意が必要 戦闘では味方にも敵にも奥行きの要素があり,味方の隊列は自由に変えられる。後方の敵を攻撃するには特定のスキルが必要だ 属性や状態異常などへの耐性といった要素もある。いま一つ効果が実感できないのは,序盤しかプレイしていないからだろうか

 

 

プレイ感覚は正に「RPG」の「MMO」

 

物語は,壊れかけのアミーゴ(種類はランダムで変わる)と出会うことから始まる。中々シュールな光景だが,これがこの世界だ

 本作は,家庭用ゲーム機のRPGをプレイしているかのような錯覚を覚えるほど物語性が強く,PCとNPC,NPCとNPCのやり取りは愉快で面白い。これは既存のMMORPGには,あまり見られなかった要素ではないだろうか。
 その一つの成果が,本作のオープニングイベントに表われている。MMORPGのチュートリアルといえば「おつかい」と揶揄される“やらされてる感”が強いものが多いが,本作のチュートリアルはオープニングの一連のストーリーイベントの中に埋め込まれているため,物語の中でゲームのシステムをストレスなく学べる。プレイヤーを作品の世界に引き込む面白さも兼ね備えており,素直に感心させられた。
 オープニングのイベントが終わっても,ただ世界に放り出されるわけではなく,物語は続いていく。物語は一つの指針であり,目標でもある。MMORPGの「自由」を阻害すると思う人もいるだろうが,ほかのMMORPGと比較して,とくに「やれること」が少ないわけではない。そして,物語があることによって窮屈を感じることもない。物語は「やらなければならないこと」ではあるが,PCの育成のチェックポイントであると同時に,それ自体が面白ければ,物語を進めること自体が目的にもなり,モチベーションを上げてくれる。
 先に述べた戦闘システムも,既存のMMORPGでは珍しい要素だ。戦闘がエンカウント方式のMMORPGは数少ないが,新鮮かつ自然に受け入れることができた。それと同時に,別段MMORPGが移動と戦闘を同一フィールド上で行なうことに固執する必要は,ないのだと改めて思った。考えてみれば,家庭用ゲーム機のRPGで,過去から現在に至るまで認められ採用されてきたエンカウント方式の戦闘が,MMORPGに浸透しなかったことは逆に不自然な話だったのかもしれない。
 さて,ここまでクドクドと語ることができたのも,MMORPGとしての「アミーゴ・アミーガ」が挑戦的に見えるせいだ。既存のMMORPGが作り上げた,「MMORPGとはこういうものだ」という強烈なイメージが,本作を挑戦的に見せてしまう。そのイメージこそが,これからのMMORPGが乗り越えるべきものだと思われた。アミーゴ・アミーガは,RPGの原点に回帰するという形で,一つの答えと可能性を示してくれたといえるだろう。

 

オープニングで仲間になったアミーゴと共に,冒険の旅に出ることになる。そして,恋の物語が始まる……かどうかは分からない クエスト内に隠された「秘密の条件」をクリアすると,クエスト終了後に何かご褒美があることも……。しかし,過度な期待は禁物だ ボスクラスのモンスターも出てくる。手強いのはもちろん,ソロ限定だったりと条件も厳しい。しっかり準備していかないと返り討ちに

 

物語を彩る,濃いめの人々……。ストーリークエストの合間には,ムービーがしばしば挿入される。登場人物もみんな個性的だ シンプルな絵に見えるかもしれないが,表情が変わったり,アクションがあったりと,キャラクターの描き込みは結構凝っている ムービーシーンは1回くらいは早送りしないで,ちゃんと見てあげてほしい。気になったSEの乏しさは,今後のアップデートに期待

 

タイトル アミーゴ・アミーガ
開発元 チュンソフト 発売元 ゲームズアリーナ
発売日 2007/01/10 価格 N/A
 
動作環境 OS:Windows 98SE/Me/2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/733MHz以上[Pentium 4/1.50GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスチップ:DirectX 9.0対応以上,グラフィックスメモリ:32MB以上[64MB以上推奨]

(C) CHUNSOFT / DWANGO / Games Arena