― レビュー ―
“警官vs.ギャング”の抗争を描いた過激アクション
25 to Life
Text by 奥谷海人
2006年2月9日

 

■ギャングもしくは警官となって,目の前の敵を撃ちまくれ

 

25 to Lifeでは,悪徳警官であれ敵対ギャングであれ,目の前に銃器を持って現れる敵に対しては,とにかく攻撃の手を加えていく

 最近,過激な暴力表現を含んだゲームソフトがスポットライトを浴びることが,何かと多い。Eidos Interactiveがアメリカでリリースした,三人称視点のアクションシューティングゲーム「25 to Life」もその一つで,“警官vs.ギャング”の抗争を描いたアクションシューティングゲームである。テレビ番組の中で,ヒラリー・クリントン議員から名指しで批判を受けるなど,発売前からかなりの“評判”を得ていた。

 

 このゲームを手掛けたのは,ユタ州をベースにするAvalanche Softwareで,17歳以上指定のMレーティングソフトとして,プレイステーション2とXbox用に開発されていた。しかし同社は,昨年の4月に,ディズニー傘下のBuena Vista Gamesに買収されており,ソフトの開発に関しては,コンソール機用がCrystal DynamicsとHighway 1 Productionsに,PC用がRitual Entertainmentにそれぞれ引き継がれるという,複雑な経路を辿ることとなった。

 

 25 to Lifeのシングルプレイモードにおけるストーリーは,ストリートギャングや麻薬の売人として生きるFreezeを中心に描かれている。Freezeは,地域では名の知れた“22nd St D-Boys”のメンバーだったが,妻のマリアと一人息子のために足を洗おうと決意する。しかしそれでは,D-Boysのメンバーで幼なじみでもある,Calderonの顔にドロを塗ることになる。Freezeは,Calderonの頼みで,最後の大仕事として麻薬取引の現場に送り出されるのだが,事態は思わぬ方向に進展し,家族をも巻き込む大事件へと発展していくのだった。

 

 ストーリーは全部で4章12レベルからなっており,途中でLester Williams警部やCalderonでもプレイすることになる。悪役を含めて,それぞれのキャラクターには少なからず繋がりがあるため,プレイヤーが善なのか悪なのかははっきりしておらず,“警官vs.ギャング”という構図が,期待していたほど鮮明に描かれているわけではなかった。ストーリーは直線的に進行していくので,ミッションやオブジェクトの内容を理解できなくても問題はない。銃器を持って向かってくる,目の前の敵を撃ち殺しながら進んでいくという,非常に単純明快なシューティングゲームである。

 

ゲーム開始時点のムービーでは,一人息子のためにギャング廃業を誓うFreezeと,口の悪い妻との激しいやり取りが描かれる マップに散らばる一般人を人質に取り,しばらくゲームを有利に進めることも可能。なお人質が死んでも,ペナルティが科されることはない ゲームは直線的で,迷路のように入り組んだ場所でも,左上のレーダーを頼りにすれば迷うことはない

 

火の“揺れ”を表現するかのような,かなり派手な爆破効果。プレイヤーキャラクターに引火することもあり,そうなると一定時間は攻撃が困難になる 警官殺しの汚名を着せられながらも,ただ一目散に前進していくFreeze。シングルプレイモードは6時間程度で終わってしまうので,少々物足りない 接近戦のような緊迫した状況を表現するためか,画面にブラー効果がかかる。手強いSWAT警官が相手だと,急速にヘルスが減少することも

 

 

■操作性からグラフィックスまでの移植ゲームらしさ

 

QもしくはEキーで体を傾斜させ,目の前の障害物を利用しながら敵を狙撃。この場面では,うまく行けば,ドラム缶が炸裂して敵に大きな被害を与えられる

 25 to Lifeの舞台は,ストーリーでは明確にされていないものの,ロサンジェルスのようなオープンな雰囲気の漂う大都市である。各面の内容やロケーションは多岐に渡っており,麻薬取引の待ち合わせ場所である倉庫からはじまり,アパートやダウンタウン,銀行,ショッピングセンター,刑務所などとさまざまだ。Calderonを追うWilliams警部が地下鉄の駅構内を走り回り,Calderonはメキシコとの国境にあるティワナの街へと逃れて,そこで地元ギャングの乗っ取りを行うことになる。そのような場所には一般人もたくさんいるので,彼らを人質にとり,“盾”として利用することも可能だ。

 

 ゲーム中には,指定された場所にスプレーペイントの印をつけたり,ATMを破壊して金を集めたりといったサブオブジェクトもあるが,成功しなくても何ら問題はない。警官でプレイしているときに誤って一般人を殺してしまっても,何のペナルティも科されないほど甘く設定されている。ただし,いかに忠実にミッションを遂行したかによって,マルチプレイヤーモードで使えるバズーカなどのアイテムがアンロックできるか否かが決まるといった要素があるようだ。

 

 家庭用ゲーム機のゲームは,当然ゲームパッドで操作することが前提になっている。そのため,うまく照準を合わせられない人のために,操作面で易しく作られていることが多い。もともと25 to Lifeは,そのような家庭用ゲーム機からの移植作品なので,マウスとキーボードを使って操作することに慣れた人なら,容易に照準を合わせられる。かなり簡単にゲームを進められるだろう。
 左クリックで銃器の発砲,右クリックでドアの開閉などがそれぞれ行える。シューティングゲームらしく,リロード(再装填)やジャンプ,しゃがむ(crouch)といった動作も行えるが,実際に多用することになるのは,壁や障害物の後ろで左右に傾斜し(lean),身を隠しつつ敵を撃つ動作だろう。
 利用できる武器は,ピストルからサブマシンガン,アサルトライフル,そして手榴弾やパイプ爆弾などがあるが,一つのレベルで使用できるものは2〜3種類に制限されている。ヘルスパックや弾丸はマップ中に散らばっており,銃弾のやりくりに困ることはほとんどないように感じられた。倒した敵がアイテムを落とすこともあるが,ギャングと警官それぞれに使用が限定された武器もあり,例えばWilliams警部がモロトフカクテル(火炎ビン)を使用するなどということはできない。

 

 グラフィックス面では,炎が揺らめく雰囲気や,接近戦での緊迫感を表現するブラー効果などの見どころはあるものの,壁や地面のテクスチャは単調で,かなり古臭い印象を受ける。解像度は800×600ドットに固定されているうえ,グラフィックス関連のオプションはガンマ調節だけしかない。
 音楽は,DMXやPublic Enemy,2Pac,Xzibitなどのギャングラップを中心に,20曲程度が用意されている。どのマップにも大きなスピーカーの付いたラジカセが点在しており,これに近づけばBGMを自由に変更できるようになっている。

 

敵キャラクターの思考ルーチンはイマイチで,リロード時ですら,隠れもせずにプレイヤーに向かってくることが多々ある しゃがむこともできるようになってはいるが,ヘルスはあちこちにあるので,物陰に隠れて戦うよりも突進したほうが,早くゲームを進められる Freezeの幼馴染みだったCalderonだが,自らの野望のためにFreezeを陥れ,やがてはメキシコに落ち延び,地元マフィアの乗っ取りを図る

 

プレイヤーが何もしなくても,敵の投げた爆弾や火炎瓶が付近のオブジェクトに当たり,勝手に自爆してくれることも,しばしばある 右クリックは,ドアの開閉など,特定のオブジェクトとのインタラクションに使用する。レーダーで敵の位置を確認できるので,あらかじめ銃撃の準備が行える なぜか銀行強盗をすることになったFreeze。マップによっては,大味なテクスチャを使用している場所も多い

 

 

■16人までのチーム対戦をサポートするマルチプレイモード

 

25 to Lifeのマルチプレイモードでは,8人対8人でのチーム戦が行える。公式クランも10ほどできている

 25 to Lifeに出てくる敵キャラクターのAIは,あまり高度なものではない。プレイヤーキャラクターが視界に入ると,ほとんどの場合,ただ直進してくるだけなので,それを次々と撃っていく感覚だ。一方,敵キャラクターが一度こちらの存在を認識すると,その後はかなりセンシティブに動きを察知されてしまう。そのため,障害物から少し離れただけで,乱射されたり手榴弾を投げられたりして,ヘルスが少しずつ削られていくことになる。
 プレイヤーが障害物に身を隠しているときや,別の部屋から撃っているときなどは,警戒して飛び出してこないこともあるので,たいていの場合は,プレイヤー自らどんどん前進しながら敵を倒していくほうが,効率よくゲームを進められるようだ。
 手榴弾やモロトフカクテルを投げ込まれると,プレイヤーキャラクターにも引火してヘルスが減り,しばらくの間は攻撃もままならなくなってしまう。この手のゲームではよくあることだが,投げた手榴弾が部屋の壁で跳ね返って自分のところに戻ってきて,爆死したり燃えながら逃げ惑ったりする敵キャラクターの姿が,何度となく見られた。

 

 マルチプレイモードはチーム対戦が基本で,シングルプレイモードのマップを使って対戦を行う。最大16人のプレイヤーが対戦に参加できる,チームデスマッチに相当する「WAR」,ギャングチームのアジトに警察チームが乗り込んで,犯罪の証拠を押さえる攻防を楽しむ「RAID」,ギャングチームが強盗に押し入り,特定の場所まで逃げるのを警察チームが阻止する「ROBBERY」,二つのギャングチームに分かれ,スプレーペイントの印を付けて領地を奪い合う「TAG」の4モードが用意されている。Eidosが用意した専用サーバーでプレイすれば,ランキングなども自動的に表示される。

 

 25 to Lifeは、シングルプレイヤーモードを通してプレイすれば6時間ほどで終わってしまうこともあり、コントロールの甘さやゲームメカニックの不自然さを含めて物足りなさも感じてしまう。Grand Theft Autoのようにプレイヤーの自由度が高いわけでもなく,グラフィックスもとくに評価できるほどのものではない。マルチプレイモードがそれなりに遊べる点は,好材料といえるだろう。
 現在のところ,日本での発売は見送られている模様だが,アメリカから直輸入するか,29.95ドルを支払って,ソフトを丸ごとダウンロードする方法で購入可能だ。難しいことを考えずに撃ちまくれるゲームが好きなら,チェックしてみるのもよいかもしれない。

 

煙幕を張って,敵をかく乱することも可能。武器によっては,警官かギャングのどちらかでしか使えないものもある Zキーでズームインできるようになっているが,拡大率がやや中途半端なので,使い勝手は良くなかった。そもそも,当たり判定自体が甘いので,利用価値もあまりない 複数のヘッドショットがノルマになっているサブオブジェクトもある。ヘッドショットは敵を一撃で倒せるが,マウスでは簡単すぎると感じた

 

マルチプレイの専用サーバーをサーチして,気軽にプレイできる。しかし,コンソール機のように一つ一つの文字を打つ必要があり,面倒くさい 通常のチームデスマッチのほかに,「RAID」「ROBBERY」「TAG」などのゲームモードもある。なおマルチプレイヤーモードでは,右上にレーダーが表示される やはり人数が多いほど面白い。チートの問題も報告されているので,早期にパッチで対応してほしいところだ

 

タイトル 25 to Life
開発元 Avalanche Software 発売元 Eidos Interactive
発売日 2006/01/18 価格 29.95ドル
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium4 1.40GHz以上[Pentium4 2.40GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスチップ:DirectX 9.0以上に対応,グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨],HDD空き容量:2.5GB以上

25 to Life(C)2004 Eidos. Developed by Avalanche Software, LLC. Published by Eidos, Inc. Avalanche and the Avalanche logo are trademarks of
Avalanche, LLC. 25 to Life, Eidos and the Eidos logos are registered trademarks of the Eidos Group of Companies. The rating icon is a registered trademark of the Entertainment Software Association. All other trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.

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