工画堂スタジオの新作「ジオテイル」は,ノベルタイプのアドベンチャーゲームと独自のリアルタイム戦闘システム(詳しくは後述)のRPGを組み合わせた学園ファンタジーだ。ストーリーを担うノベルパートの進行に従って,RPGでいう「クエスト」に相当する探索&戦闘パートが展開するという,同社近年の作品におけるノウハウを応用したデザインであり,アドベンチャーゲームの持つドラマチックな演出/ストーリー展開と,RPG/SLG的な戦略要素を併せて楽しめるようになっている。
パラレルワールド的な異世界を舞台にした冒険譚
学校内で急にめまいを覚えて意識を失った翔が気づくと,そこは見たこともない光景だった。異世界ものでは割とおなじみの導入部だ |
怪物に襲われた翔を助けたのは,自分にそっくりな日野原 諒。驚く翔に諒は,この世界が合わせ鏡のような存在だと説明する |
本作の導入部のストーリーを簡単に紹介しておこう。主人公はごく普通の高校生「五十嵐 翔」。ごく普通とはいいつつも,幼いころに両親と死別し,歳不相応に沈着冷静であるなど,物語の主人公らしい背景とパーソナリティを持つ。
その翔が,あるとき急にめまいを感じて倒れ,気がつくとどこだか分からない森の中に倒れていた。人を探してさまよううちに,怪物に出くわしてしまい,危ういところを誰かに助けられる。
助けてくれたのは,自分とそっくりの人物「日野原 諒」。諒の話によれば,翔のいた世界とこの世界は合わせ鏡のような存在で,互いにそっくりの人々が生活しているのだという。
元の世界に戻る方法を見つけるため,さしあたり諒について行く翔だが,ついて行った先で事件に遭遇する……。こんな感じで始まる本作は,そうした二つの世界を舞台として主人公とその周辺に起こった事件の謎を解くのがプレイ目標だ。
現実世界におけるクラスメイトとの会話シーン。翔の幼馴染みの唯(中央)と,スポーツ少女の沙耶(右) | 異世界にいる,唯そっくりの悠香(左)や沙耶そっくりの紗姫(中)。ただし,それぞれ性格はかなり違う |
二つの世界を行き来して,世界の謎を解く
「探索」パートでは,主人公達を操作してマップ内を移動し,戦闘やアイテム探しなどを行って目標達成を目指す |
主人公の翔は,なぜか二つの世界の間を行き来するようになってしまい,さらに異世界で事件に巻き込まれたため,やむなく異世界の「同級生」達と冒険を開始することになる。
必然的に,異世界で起きた事件そのもの,自分が二つの世界を行き来するようになった原因,元の世界で起きている現象とこの世界との関係について,同時に探っていくことになる。
ゲームの展開としては,ストーリーを語るノベルパートの合間に,さまざまなことを調べる探索パートが挟まれる形となる。
探索パートでは一般的なRPGのように,マップ内でパーティを移動させながら,目的達成のキーを探して回ることになる。探索パートの課題は「校舎内にいる生徒を捜して安全な場所に誘導する」や,「怪物の目的を探る」などさまざまで,これをクリアするごとにストーリーが進んでいくことになる。探索パート内で敵に遭遇すると,リアルタイムの戦闘シーンになる。
異世界「ヴァリアス」は鏡写しの世界だけあって,建物の様式は違えど,現実世界と同じような街が広がっている | いたるところに仕掛けがあるマップも。そこまでに仕入れた情報をもとに仕掛けを操作しないと,先に進めない | 探索中にもイベントは発生する。仕掛けをクリアしたり,こうしたイベントを発生させたりすることで探索は進んでゆく |
既存作品のシステムをブラッシュアップした
リアルタイム戦闘システム
リアルタイム戦闘システム
リアルタイム戦闘は,味方メンバーに的確な指示を与え,アビリティ攻撃を生かすことで有利に進められる |
ジオテイルの戦闘は「リアルタイム制」だ。アクションRPGの進行がリアルタイムなのは当たり前だが,ここでいうリアルタイム戦闘とは,「羅刹」から「ブルーブラスター」につながる同社製リアルタイムストラテジーのシステムを,ベースにしているという意味である。
攻撃対象や移動目標を指定すれば,各キャラクターは行動を開始する。戦闘に参加するキャラクターは最大3人で,これは探索パート中の「キャンプ」で選択しておく。
RPGライクな戦闘要素としては,「アビリティ攻撃」が挙げられる。「魔法」や「スキル」と考えればOKだが,攻撃目標の選択方法からして通常攻撃と異なるので,最初は注意が必要だろう。
また,魔法世界らしく敵味方の各キャラクターには地・水・火・風・光・闇という属性があり,それぞれの関係によって攻撃の有効性が変わってくる。
学園内には探索パートの操作や戦闘の練習をする「訓練所」がある。慣れないうちはここで練習を重ねておこう |
ベースとなるシステムがあるだけに,操作性自体は良好だ。ただ,画面に占めるキャラクターのサイズが大きく,戦闘全体が画面内に収まらないこともあって,味方や敵の状況を把握しながら操作するのは少々難しい。
とはいえ,味方キャラクターはなかなかそれらしく自律行動するので,必ずしも頻繁に指示を与える必要はない。AIの個性を理解して――RPG的に表現すれば,仲間を信じて――臨むのが,本作における戦闘の作法である。
異世界ものでありながら,主人公が現実世界と異世界を頻繁に往復するという設定は,意外に先行例の少ないアイデアであり,本作のストーリーが持つ大きな特徴となっている。絵柄の好みは人によって分かれるものと思うが,こうした独自のストーリー/世界設定に心惹かれるなら,ぜひとも手に取ってみてほしい。
探索パートの「キャンプ」で味方のステータスや装備を確認し,戦闘に出すメンバーを3人まで選ぶ | 戦闘時に使う「アビリティ」もキャンプで選択できる。これも属性や効果がさまざまなので,考えどころは豊富だ |