太平洋戦線に増援(新作)アリ!
20周年を迎える「太平洋の嵐」シリーズ。最新作の「5」は,「4」の面白さを継承しつつ,多くの新要素が盛り込まれている |
1987年,ジー・エー・エムからリリースされた「太平洋の嵐」は,太平洋戦争全体を再現するストラテジーでありながら,戦闘機一機にいたるまでシミュレートするという驚愕の内容だったため,マニアの間で話題になったタイトルだ。1988年には戦闘や資源加工率のリアリティ向上を含むパワーアップを盛り込んだ「太平洋の嵐DX」「太平洋の嵐・パワーアップキット」がリリースされたものの,同シリーズはしばらく沈黙する。
その後イマジニア,システムソフト・アルファーと販売元を変えつつ続いた同シリーズは,ついに20周年を迎え,この3月9日に待望の最新作,「太平洋の嵐5」が登場することになったのだ。
そんな「太平洋の嵐5」について,先日届いた評価版を元に,さっそく内容を紹介しよう。
●大和,発進ス | ●太平洋ノ浪高シ |
戦艦大和を中心としたオープニングから。迫るアメリカ軍機動部隊に対し,大和はどう立ち向かうのか? | 今回はマップでも2D/3Dが切り替えられるほか,前作と比較してインタフェースがかなり改善され,分かりやすくなっている |
シリーズ最多! 22本のシナリオで
太平洋戦争の激戦を再現
太平洋戦争の激戦を再現
今回収録されているシナリオは,シリーズ最多の22本。ミッドウェー海戦などを筆頭に太平洋戦争のさまざまなシチュエーションが用意されているほか,アメリカ本土侵攻を目指す架空シナリオも用意されている。また,映画「男たちの大和/YAMATO」の影響か,戦艦大和をテーマにした新シナリオも興味深い。
これまでの同シリーズでは日本軍でしかプレイできなかったが,本作ではアメリカ軍でのプレイも可能となり,日本軍を相手に戦えるようになった。単に日本軍用のシナリオを逆の立場で遊べるようなものではなく,アメリカ軍ならではのシチュエーションが用意されており,中には太平洋戦争後のソ連との争いを描いたものも収録されている。日本軍のシナリオに比べてアメリカのシナリオは6本とやや少ないが,これまでとは異なる立場で太平洋戦争を戦えるのである。
それでは,日米双方のシナリオの概要をいくつか紹介しよう。
各シナリオともに,初級/中級/上級の難度が用意されている。またルールを自分好みに変更することも可能だ | ゲーム開始時には時代背景がナレーションとともに表示される。聞き逃しても右クリックで聞き直せる機能付き | 画面左上を見てもらうと分かるが,シナリオによって,使用できるマップの範囲に制限があるものもある |
・バーチャルキャンペーン アジアの利権を求めてアメリカ軍が対日戦を開始。豊富な物資に恵まれたアメリカ軍を使って日本軍と戦うシナリオ ・グローバルキャンペーン 太平洋戦争の開始から終結までを描いた一大シナリオ。史実に基づいた太平洋戦争を丸ごと戦う一大キャンペーン ・米ソ対決 太平洋戦争が終結し,日本の分割をめぐってアメリカとソ連が激突。沖縄,硫黄島などを手中にしたアメリカ軍は北海道へ侵攻する ・硫黄島の戦い サイパン島を奪取したアメリカ軍は,次のターゲットを硫黄島に設定。要塞化された硫黄島をどう攻略するか? ・太平洋奪還作戦 ハワイに前線基地を築いた日本は,アメリカ本土侵攻を目指している。機動部隊を派遣してこれを退けろ! ・満州争奪戦 極東を制するために満州の石油資源を手に入れなければならない。ロシア,日本,アメリカの三者が利権を巡って激しい火花を散らす (全6本)
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「5」のゲームシステムと新要素
本作はターン制のストラテジーで,プレイヤーは日本軍かアメリカ軍のどちらかを選んで戦う。ゲームは6フェイズ=1ターンで進行し,各フェイズでは部隊の編成/進軍,兵器の開発/生産,兵員の育成/配置,物資の生成/輸送,根拠地の整備などを行う。
勝利を収めるには,各地の資源を確保しつつ,一定数の敵重要拠点を占領し,作戦期間中に敵国を降伏させることだ。兵器同士の戦いも重要だが,やみくもに敵を撃滅を目指すよりも,拠点に対する侵攻と防衛が非常に重要になってくる。このあたり,ボードゲームのような雰囲気で,大局を見る目がなければ勝利は難しいだろう。
敵の爆撃機によって攻撃を受ける味方の空母。戦闘はターン制で,各ターンごとにいくつかのコマンドから一つを選んで実行する |
●3Dになった戦闘シーン
戦闘シーンが3Dになった点も目新しい要素。戦闘シーンでは3Dのユニットが爆撃したり,砲撃をしたりするので前作に比べて戦場の臨場感は格段にアップしている。
なお戦闘中の各部隊へは前進,迎撃,右翼へ,上昇などの簡単な命令を出せるだけで,特定の敵を狙うなどの細かい指示はできない。操作自体はシンプルだが,工夫次第では奥深い戦術が楽しめるだろう。
艦隊の編成画面。組ませる艦船によって能力に変化が出るのだ。この特性を上手に活かして編成したい |
●新要素2:隊編成システム
前作よりも高まった戦術性を象徴するのが隊編成システムだ。これは,部隊を編成する際,艦船の組み合わせによって艦隊の防御力や攻撃力にさまざまな変化が出るというもの。
この変化を活かして部隊編成をすれば,戦闘で大きな戦果が上げられる。なお,手元の評価版ではあまり修正効果は発揮されなかったためメーカーに問い合わせたところ,製品版ではより顕著になるとのこと。実装が楽しみである。
兵器データも充実!
タイトル画面の兵器詳細。カテゴリー別に兵器の能力を閲覧できる。兵器データをチェックしておけば戦術に役立つかもしれない |
戦場を彩る兵器の存在にも着目したい。本作では史実に基づく兵器だけでなく,未完成のものを含む約370種類が登場する。タイトル画面では兵器の諸元と簡単な説明を閲覧できるようになっており,兵器ファンは注目。評価版では日本軍,アメリカ軍,イギリス軍,ソビエト軍,その他の5カテゴリーがあったが,その他の項目には何も存在しておらず,ひょっとすると隠し兵器なども存在するのだろうか?と実に気になるところである。
着実にタイトルを重ね、愛され続ける太平洋の嵐シリーズ。最新作の「5」はシナリオ数の充実、3Dモデルによる戦闘、隊編成システムなどを盛り込み、さらにパワーアップしている。シリーズ20周年という節目の年にリリースされる「5」が、ストラテジーファンにどう評価されるのかが楽しみだ。