ニュース
[GDC#18]日本人開発者も大幅に増えた,GDC 2005総括
2005/03/14 22:15
■日本からの参加者が2004年の約3倍に
最終日には日本人有志が集まっての夕食会が行われ,楽しいひとときとなった

 「The East Meets West」(東と西の出会い)と題されたレセプションパーティには,ざっと150人ほどの日本人参加者がいただろうか。2004年のGDCでは,最終日に私的に集まって夕食会を開いた日本人の人数が50人ほどだったことを考えると,今年は約3倍に増えたといえそうだ。
 この急激な増加は,IGDA日本を2年にわたって運営してきたボランティア達の,多大な貢献のたまものである。まぁ素直に考えれば,次世代ゲーム機に対する興味や,年々需要の増えるアメリカ市場の動向調査目的で参加した人が多いのだろうが,これまで閉鎖的と言われてきた日本のゲームメーカー各社の有能な人材が,一つの場所に集まってゲームについて語り,レクチャーを受け,名刺を交換していることの意義は計り知れない。

 このパーティには,アジア圏からの参加者はもちろん,「Ultima Online」や「Star Wars Galaxies」のラフ・コスター(Raph Koster)氏,"Indiana Jonesシリーズ"のハル・バーウッド(Hal Barwood)氏,「Matrix」のデイビッド・ペリー(David Perry)氏ら,今回のGDCでも講演者を務めるアメリカゲーム業界の重鎮達も乱入(?)しており,日本の参加者らと談笑していた。



■GDC 2005で話題をさらった任天堂の岩田社長基調講演

 PCゲームとは直接関係がないために記事にはしなかったが,GDC 2005で一番盛り上がっていたのは,任天堂の岩田聡社長の基調講演「Heart of a Gamer」(あるゲーマーの心境)だったかもしれない。次世代機「Revolution」の仕様が部分的ながらも初めて公開され,独自のWiFiプロトコルを利用して無線LAN化できることや,ゲームキューブ用ソフトとの互換性の確保,そしてゲーム開発が簡単であることなどが発表された。
 さらにはゲームキューブ用「The Legend of Zelda」(仮称)の最新ムービーデモが公開されたり,アメリカでは初公開となるニンテンドーDS用ソフト「nintendogs」「ELECTROPLANKTON」などを例に,「Non-Game Games」(ゲームではないゲーム)といった制作コンセプトが語られた。
 しかし,それにも増して会場を沸かせたのは,岩田氏のゲーマーっぷりだ。会場から誕生日の人を募って「マリオカート DS」(仮称)で対戦したということもあるが,それ以前に講演冒頭のコメントで「(名刺を掲げながら)私の名刺には会社社長という肩書きが書いてありますが(こめかみに指を当てて)頭の中では開発者だと思っています。(胸に手を当てて)でも心の中ではゲーマーでしかありません」と発言したことで,多くの開発者を虜にしたようだ。聞き取りやすい英語も手伝って,筆者の近くに座っていたアメリカ人開発者達も「凄くインスピレーションを受けた最高の講演だったよ」と語り合っていた。


(左)任天堂の岩田聡社長による基調講演「Heart of a Gamer」で,心を突き動かされた開発者達も多かったようだ
(右)「The Legend of Zelda(仮称)」のムービーを見る限り,前作「ゼルダの伝説 風のタクト」とは打って変わって,かなり大人向けのソフトになっている印象を受ける


■GDC 2005総括

 それではここで,今回のGDC会場で聞いた話を,すでに報道済みのものも含めてまとめてみよう。

次世代Xboxは,5月のE3 2005で発表予定。映画監督ジェームス・キャメロンがゲーム開発に参入か?

AGEIA社,史上初の物理処理専用プロセッサ「PhysX PPU」を開発

ウォーレン・スペクター(Warren Spector)氏が,新しいゲーム開発会社Junction Point Studios社を設立

Microsoft社,ピーター・モリニュー(Peter Molyneux)氏のRPG「Fable」をXboxからPC用に移植(Xbox版にはない要素も追加)。発売は2005年秋予定

1979年創業以来,携帯電話やコンシューマ機向けにゲーム開発を行ってきたトーセ社(京都)が,アメリカに支社を設立していることが明らかに

Epic Games社,E3 2005で新しいフランチャイズを発表予定

「Civilization IV」は,NDL社の3Dグラフィックエンジン「GAMEBRYO」を採用

SEGA EUROPE社が「Total War」シリーズのThe Creative Assembly社を買収。次世代機向けRTSを開発か?

「Star Wars Galaxies」の最新拡張パック「Rage of the Wookies」は5月にリリース(関連記事は「こちら」

ウィル・ライト(Will Wright)氏の新作「Spore」,E3で公開

「Rise of Empires」のBig Huge Games社が,次世代Xbox用のRTSを開発中

(左)会場で捕まえたウォーレン・スペクター氏。「今は何をしているんですか?」「えーっと,参加証の社名を見てみてよ」(写真では見えないが,Junction Point Studios社を設立)
(右)Sun Micro Systems社のブースにあった「Tribal Troubles」というRTSは,なんとJAVAで作られている


 今年のGDCはサンフランシスコで開催されたものの,2006年は再びカリフォルニア州サンノゼに戻ることになるという。IGDAは日本からの参加を熱望しているようで,実際,今後は日本と欧米のゲーム開発者の接点が,ますます増えていきそうだ。
 次世代機に向かって激しく動いている世界中のゲーム業界の中にあって,PCゲームの未来はどのように変わっていくのか……。GDCは,ゲーム産業の動向を肌で感じられる貴重な会合なのである。(奥谷海人)

(上段左)S3 Graphics社ブースでファンたちとの対戦に忙しいオンラインゲーマーのアイドル"Kornelia"
(上段右)混み合うMicrosoft社J・アラード(J Allard)副社長の基調講演。世界各国の参加者や女性の姿も年々増えている
(下段左)ATI社は,モバイル用3Dグラフィックプロセッサ「Imageon 3D」を搭載したLG社の携帯電話を展示
(下段右)非常に混み合っていたGDC会場。昼食時には,用意されたテーブルに座るのも難しいほど


「GDC 2005」
 →記事一覧は「こちら」
 →公式サイトは「こちら」

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2005.03/20050314221555detail.html