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[AOGC#6]ID数1100万! ハンゲームのサービス事業の軌跡を語る
2005/03/01 23:34
 カジュアルゲームを中心にオンラインサービスを展開する「ハンゲーム」は,今や同時接続者数が10万人を超えようかという超人気サービス。国内のオンラインカジュアルゲーム市場では,ダントツのシェアを誇る存在だ。
 今回の講演は,そんなハンゲームのサービスを手がけるNHN Japan戦略実践室 室長の室田典良氏が登壇。ハンゲームのサービスインから約4年間の事業軌跡を説明した。内容的には,これまで氏が経験してきたさまざまな決断と,その理由を順を追って解説していくという,非常に実戦的な内容。現在の国内オンラインゲーム市場の一翼を担っているとも言えるハンゲームだけに,非常に興味深い話を多数聞くことができた。

ID登録者数は1100万! 国内最大のアバター/カジュアルゲームサービスへ発展したハンゲーム

 室田氏は,まずハンゲームの成り立ちやBlogやASP事業などを軽く解説。同氏によれば,当初はポータルサイトやネットカフェへのコンテンツ提供など,B to Bのビジネスを基本にしていたのだという。しかし,そういった事業は顧客の対象自体に限りがあるなどの限界を感じるに至って,B to Cサービスの道を模索し始める。その第一歩として,2002年7月にアバターサービスを開始,2002年当時の段階では,ID登録者数70万人,同時接続者数4000人を記録していたという。
 その後の展開はというと,読者諸氏もご存じのように,ハンゲームの登録者数は爆発的な伸び率を示していく。今回の講演で公表されたデータによると,登録ID数は約1100万,最大同時接続者数は約10万と,現時点におけるオンラインサービスの中では圧倒的な数値。いまや「カジュアルゲームといえばハンゲーム」というほどの認知度だとは思うが,1000万IDを超えているというのは,少なくとも公式に出てきた情報としては初めてかもしれない。その人気の凄さを否応なく感じさせるスケールの数値だといえよう。
 もはやID数的にはある種のクリティカルマスに達しようかというレベルだと思われるが,室田氏は「今のハンゲームの認知度は,20%にも満たない程度だと思う。ということは,まだまだ開拓の余地があると考えている」とコメントするなど,今後さらに伸びていくだろうという見解を示した。


口コミこそが最大のプロモーション。ユーザー増加のキーポイントとは

 またハンゲームの特徴として,立ち上げ初期から一定の間は,ほとんどプロモーション活動をしていなかったという事実がある。それなのになぜハンゲームが急速にオンラインコミュニティへ浸透していったのか?

 この点に関して室田氏は,「口コミの効果が当社にとって一番重要な要素だった」と説明しており,その裏付けとして,「どうやってハンゲームを知ったか」についてのアンケートデータを提示した。そのデータによると,「友達から教わった」が54%で,次いで「検索サイト」が34%と,ほとんど既存のメディアからの影響は見られないのが最大の特徴。
 良質なサービスの追求こそが最大の広告になっていくというのは,一昔前ではAmazon.comなどでも言われた方法論である。口コミというミクロベースの営業マン(つまりはユーザー個人)をいかに生み出していくか,ネット上において爆発的な人気を得るためには,やはりユーザー第一主義こそが大きなポイントになるようだ。口コミによるマーケティング手法については,"バイラル・マーケティング"などという言葉も存在するが,ハンゲームは,そのお手本ともいえるサービスかもしれない。



遊べば遊ぶほどコミュニティに依存? オンラインサービスの特性
 1100万のID数を擁するハンゲームだが,これも今回発表されたデータによると,男性が69%で女性が31%。年代別で見ると,10代が37.9%,20代が32.1%というユーザー構成。MMORPGなどのコアなゲームと比べると,10代,そして女性の層が多く,やはりライトゲーマーといわれる層を中核に取り込んでいることがよく分かる数値だ。
 面白かったのは,室田氏が「ただアバターアイテムの購入率で見てみると,また違ってくる」と言い,年代別の購入動向データの資料を見せてくれたこと。グラフに具体的な数値が提示されていなかったのはいたしかたない部分だが,要するに,実際にお金を使う層としては,「20代,30代の層」が強いという話だ。これは先日「こちら」で記事にした4Gamerのアンケート結果と重なる部分があり,非常に興味深い。ライトユーザーを多く囲んでいるだろうと推測されるハンゲームといえども,10代のユーザー層に有料サービスを利用させていくのはなかなかに難しいようである。

 また室田氏は,ゲームユーザーのハンゲームへ求める価値についてのデータも公表。ハンゲームに居ついた"ハンゲームユーザー"はコミュニティ/コミュニケーションを重視するのに対して,まだそれほど慣れ親しんでいない一般のユーザーたちは,コミュニティよりもゲームそのものに価値を見いだしていると解説した。
 これは至極当たり前の話だが,つまりは最初は「ゲーム」を目的としてハンゲームを利用しているユーザーも,その過程で知人ができ,あるいはサークルに入るなどしてコミュニティに依存していくと,次第にそちらを重視していくという構図である。
 これはハンゲームに限らず,MMORPGでもRTSでもFPSでも同じ話になるのだが,つまりはそのニーズを満たすための「コミュニケーション機能」がいかに大切かを物語る話だといえよう。


 ともあれ,会員のデータを交えながらの解説が非常にタメになった室田氏の講演。国内のPCやインターネットの普及率がまだこれから伸びていく余地があることを考えると,ハンゲームもまたその時流に乗っていく可能性が高いのではと推測される。
 現在ハンゲームは,ほかのオンラインゲームメーカーと共同でMMORPGのような大型ゲームの提供も積極的に行っているなど,ライトユーザーを育成して,ゲームの窓口的な役割も担い始めており,オンラインゲーム市場を活性化させるキーサービスの一つといえる。今後の動向に注目したい。
(TAITAI / Photo by kiki)




【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2005.03/20050301233403detail.html