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法のないところに不義はない。中国・韓国は,ゲームの法規制に対する動きが盛んに。そして日本は?
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印刷2024/04/10 17:57

業界動向

法のないところに不義はない。中国・韓国は,ゲームの法規制に対する動きが盛んに。そして日本は?

 ゲームは,単なる“娯楽”の域を超えて,今や立派な「産業」となりつつある。言うまでもなく世界のゲーム市場規模は年々拡大しており,各国がゲーム産業の育成に力を入れ始めている。
 そしてその一方で,ゲームのビジネスモデルの変化や,ゲームが社会に与える影響の大きさから,法規制のあり方も問われるようになってきた。

2023年グローバルゲーム市場の売り上げは,1840億ドル(約26兆円)とされる(関連記事
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法のないところに不義はない(トマス・ホッブズ)


 日本のゲーム業界は,1983年の任天堂のファミリーコンピュータ発売以降,家庭用ゲーム機市場をリードしてきた。しかし,2000年代後半からのスマートフォンの爆発的普及により,モバイルゲーム市場が急成長。
 ガラケー時代からモバイルゲームが広がっていたが,現在ではスマホ向けのガチャを利用した課金型ゲームが主流となっている。

 法規制という点では,日本はいつも比較的緩やかな環境だ。1990年代後半から2000年代前半にかけては,過激な表現を含むゲームも普通に発売されていたが,2000年代半ば以降には青少年保護の観点などから,業界団体による自主規制が進められるようになった。現在でも,レーティング制度などによりゲームの内容はある程度規制されているが,そこに法的な強制力はない。

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 CEROレーティングについては,ここ数年,審査不通過によるタイトル発売見送りや,15歳以上対象としているタイトルが小学生の間で大ヒットするといった出来事が相次いでいる。さらに,国際機関であるIARCのレーティングに対応するストアも増えている。そんな現状をどう見ているのか,CEROに聞いた。

[2023/05/23 08:00]

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 切込隊長あらため山本一郎氏による連載コラム「茹で蛙たちの最後の晩餐」。今回は,皆さんお待ちかね(?)の業界ネタで,テーマは「ソーシャルゲーム業界の規制問題」について。すでに3000億円市場とも言われるソーシャルゲーム市場ですが,一方で,いわゆる「ガチャ商法」に関する議論が盛んになっています。騒がれている論点とはなんなのでしょうか。

[2012/04/09 00:00]


ゲームの規制をめぐる攻防


グラビティが運営する「ラグナロクオンライン」は,法改正に応じ公式サイトの排出率情報を更新した。情報更新前後の見比べをすることによって,,ゲーム内アイテムの出現確率を実際よりも高く公表していた疑惑が浮上した。一部のアイテムでは,実際の出現率が公表値の8分の1だったケースもあったということについては,韓国公正取引委員会が消費者の被害や意図的な確率操作の有無に調査を着手したという
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 お隣韓国では,2024年3月に施行された法律により,ゲーム内のガチャの排出率公開が義務化された。これまでも一部の企業が自主的に公開してはいたが,法的強制力はなかった。しかし今回の法改正により,全ての企業が公開を迫られることになる。
 ユーザー保護の観点からは前進と言えるが,法律の施行直後には,大手ゲーム企業のグラビティが,旧来のガチャ排出率と新法に基づく排出率に差異があったとして,ユーザーから厳しい追及を受ける事態となった。今後,こうした不正リスクへの監視の目は一層厳しくなるだろう。

※日本においても業界団体のガイドラインとしては存在するが,法規制ではない。(「ランダム型アイテム提供方式を利用したアイテム販売における表示および運営ガイドライン」,2016,JOGA)

 また同じく韓国では,自国のゲーム産業保護の観点から,海外企業に対する規制強化も進んでいる。公正取引委員会は海外企業に対し,韓国国内の代理人指定を義務づける方針を打ち出した。これは中国が2003年から導入済みの制度で,韓国もこれに倣った形だ。規制の推進背景としては,同委員会はこう述べた。

 最近海外オンラインプラットフォームを利用する消費者が急増し,それに伴い消費者の不満や紛争の件数も増加しています。海外事業者の国内法遵守の状況に関心が高まっており,海外直販の規模増加や海外事業者の市場占有率の急速な上昇が見られます。消費者の不満や紛争の件数が急増する一方で,国内事業者に対する逆差別の懸念もあります。このような状況に対応するために,政策の点検と対策の準備が必要とされています。

韓国公正取引委員会:海外オンラインプラットフォーム関連消費者保護総合対策(韓国語)

韓国個人情報保護委員会:国内代理人指定制度について(韓国語)


 中国はもともと自国のゲーム開発力が弱く,海外ゲームに依存していた時期があった。しかし,海外企業に国内代理人の指定を義務付けたことで,海外ゲームは現地法人を通じて提供されることになった。これが中国企業のゲームパブリッシングのノウハウ蓄積につながり,Tencentやシャンダ(現Shengqu Games),崑崙(コンロン)といった中国企業が,海外タイトルのパブリッシングを通じて成長する契機となった。
 ただ,これはあくまでも過去の話であって,現在の状況は一変している。

 日本は従来からコンソールゲーム市場に強みを持ち,モバイルゲーム時代の到来とともにソーシャルゲームという新ジャンルを生み出した。一方の中国は,この数年でモバイルゲーム市場の急成長を遂げ,ゲーム開発力や海外市場への進出度で世界トップクラスに躍り出た。
 その間,韓国はかつてのPCオンラインゲーム全盛期の地位から転落。モバイルゲームへの移行の遅れや,大手メーカーが旧来タイトルのモバイル展開に偏重したことで,斬新なヒット作に恵まれなくなっていた。

ここ最近はSHIFT UPのように,PC MMO全盛期とは異なる新世代の韓国系デベロッパーが台頭しつつある
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 現在の東アジアのゲーム市場では,日中韓3か国によるしのぎを削る競争が展開されている状況だが,その競争に勝ち抜くには,自国産業の保護と育成が欠かせない。かつて中国がそうしたように,韓国が海外企業への規制強化に動いたのは,そのための布石とも言えるだろう。
 各国ともに,国内企業優遇,外資参入規制,消費者保護といった複合的な思惑から,ゲーム関連の法整備を進めている。ガチャなどで高額課金を促したり,ゲーム依存を助長したりするようなビジネスモデルには,何らかの歯止めが必要でありつつも,表現の自由を阻害するような行き過ぎた規制も避けるべきで,健全な業界を作るためにはどの方向に旗を振るべきか,まだまだ試行錯誤の余地があるかもしれない。


ワクワク感を生み出すコンテンツ……から一歩先へ


日本は,ここ最近はAIやWeb3界隈の法整備に対しての議論を展開しているが,ゲームに関してはいま一つ進捗が遅い。資金決済法や景表法,風営法などゲームを取り巻く周辺についての議論は進みつつある
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 冒頭で書いたように,ゲームはもはや単なるエンタメの枠を超え,立派な経済活動の一翼を担うようになってきている。巨額の利益を生み出す一大産業であると同時に,各国の経済成長を左右する戦略的な分野ともなっている。その意味においては,ゲームをめぐる各国の覇権競争は,もはや「フェア」である必要はないのかもしれない。
 米中対立の最前線に立たされたTikTokや,独禁法をめぐってGAFAと角を突き合わせる欧州の動きを見ても,それは明らかだ。

 つまるところ,ゲームへの規制のあり方は,産業戦略と表裏一体なのだ。規制を通じて自国産業をいかに強くするか,それが各国に問われている。自国にも他国にも優しい日本は,これからどこへ向かうのだろうか。
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