インタビュー
VR ZONE「アーガイルシフト」はいかにして生まれたのか。原田勝弘氏や荒牧伸志監督らにまったく新しいVRアクティビティの開発過程を語ってもらった
実際に動いて,しゃべって,表情があると,違和感も奇妙さも感じなくなる
4Gamer:
アニメではカメラの位置が固定ですから,角度によってデフォルメしたり,パースをわざと崩したりといった技法があります。キャラクターを不自然に見させない技術も多いと思います。
しかし,VRとなるとキャラクターモデルをどこからどう見られるか分かりません。そうしたキャラクターモデルとして,たとえば1/1フィギュアがありますが,間近で見ると,どこか違和感というか奇妙さを感じてしまいます。にも関わらず,アイネには不自然さを感じなかったのは,どんな理由があるのでしょうか。
荒牧氏:
「アーガイルシフト」をアニメ調で作ると聞いたとき,僕もその点を心配しました。でも,1/1フィギュアに感じる違和感というのは,さまざまな理由はありますが,何よりも「完全に静止している」という点が大きいと思います。
事実,アイネの場合,実際に動いて,しゃべって,表情があると,違和感も奇妙さも感じなくなる。これは僕にとっても発見でした。
4Gamer:
以前,原田さんは「アイドルマスター」や「鉄拳」のキャラクターでVR映像化を試みたら,「違和感が強かった」と発言されていました。
アイマスに限らず,アニメ調のモデルは頭身の問題が大きいんです。離れて見ているとすごく良いんですが,目の前まで近寄ると「僕が知ってるキャラクターより大きい」という感覚を持ってしまう。
日本のアニメ絵だと,頭が大きく,目が大きい。それが近寄ってくると「んん? スケールがおかしくない?」となる。この解決策として「近寄るとスケールが変わる」という表現も試してみたのですが,相当計算をうまくやらないと余計に不気味になる(笑)。一定距離を保てば,すごく良いんですけどね。
ただ,アイネの場合はそもそも頭身が高い。これが効いてると思います。
つまり,さらに踏み越えるべきステップとして「低頭身にも対応する」という課題は残っているということでもありますが。
4Gamer:
鉄拳のキャラクターは頭身が高いはずですが,なぜうまくいかなかったのでしょうか。
原田氏:
鉄拳キャラの問題は,格闘家であることです。
まず,目が親近感を抱かせないようなデザインで,デフォルトで三白眼です(笑)。当然,顎を引いていて,眉も通常位置でもすごい怒り眉。キャラによっては,眉間にしわが入ったりして,要は最初から怖い顔なんですね。
あとはアップにすることを想定していないので,目があまり生きていない。人形のような目をしてるんです。でも,これを修正するとなると,眼球パーツから表情,顔の造形から設計まで,何から何まで全部やり直しです。
それだったら,そもそも鉄拳をモチーフにすることを一度やめてみよう,という話にどうしてもなってしまうわけです。
一方,アニメキャラをVRに持ってきたときも,やはり目が問題になりました。近距離だと,キャラの目線が自分を向いているように感じられないんです。「サマーレッスン」のキャラクターがリアル寄りになったのは,こうした試行錯誤の結果です。
「アーガイルシフト」のアイネは目が大きいのに,こちらを見ている感がありますから,一定の課題をうまくクリアできたのかなと。
4Gamer:
今回,うまくクリアできた理由とは?
荒牧監督のこだわりでしょうね。アイネがプレイヤーを見ているシーン,見ていないシーンが細かく分かれているんです。
荒牧氏:
見てないシーンではまったくプレイヤーを見ないけど,見ているときはこっちをビッとしっかり見る。そこは,かなり細かい指示を出しました。
原田氏:
おお,なるほど! 目線の演技が多めなんですね。
「サマーレッスン」のときは,フェイシャルのデータをそのまま取り込みました。瞬きのランダム性,眼の焦点のちょっとしたズレなども,人間のデータがほぼそのまま反映されています。それが,「サマーレッスン」のリアリティにつながったと思っています。
荒牧監督は,これを意識的に「見ています」「見ていません」という信号にして,分けて発信したというわけですか。いやいや,アイネの目線の演技は初耳だったので面白いです(笑)。
荒牧氏:
「サマーレッスン」の「自分の目線を常に追ってくるキャラクター」というのが,新鮮だったんですよ。あれでドキドキしたものですから,目線はかなり意識しました。
正直に言うと,最初に「サマーレッスン」をプレイしたときは舐めていたんです(笑)。「どうせCGのキャラでしょ?」と。それがHMDを被ったら「あっ,これはヤバイところに来たぞ」。
一同:(笑)
原田氏:
その「視線が合う」ときのドキドキは,ソニーのHMZシリーズで実験したときに感じたんですよ(笑)。
以前,NHKの番組で新宿のホストの方に「サマーレッスン」を体験してもらったんです。直前に「毎晩,女性の相手をしてますから,CGで緊張するとかはないと思います」と言っていたのが,プレイ後に「すみません,前言撤回します」と。
一同:(笑)
原田氏:
これも「人間というのは,必ずしも完全にリアルである必要はない」ということだと思います。「どう認知しているか」のほうが重要なんですね。
僕らは最初の仮説として,「眼球が重要である」と考えました。だから,「サマーレッスン」では目の虹彩をパーツとして作っています。虹彩は外からだと見えないものですが,虹彩を見ると,人間はそれを「目だ」と強く認識するんです。
あと,目のレンズも重ねて作っています。近寄ったときに光の屈折が見えるところまでこだわっています。
つまり,「人間は『目』をどのように認識しているか」というところに注目したのが,「サマーレッスン」だったんですね。
でも,そういう構造ではないアイネの目が,ちゃんと視線を感じさせることに成功している。「見ているとき」「見ていないとき」を明確にすることで,「見ていること」を意識させる。これはとても面白い。
アイネとしゃべった人がいる
4Gamer:
「アーガイルシフト」を体験した人の感想は,どのようなものがありますか。
田宮氏:
VR HMDを外したときに「すごいわ,これ……」と,圧倒されたというか,夢が叶ったといった反応をされる方が多いですね。
日本人の男性にとって,ロボットものはアニメや漫画などで見慣れたコンテンツじゃないですか。そういう方に「そうそう,これがやりたかった」と思われるものをストレートに詰め込んでいるので,ロボットが射出されるシークエンスまでに「完全にやられた」という反応が見られます。
4Gamer:
大絶賛,という感じですね。
ええ。残念なところとしては,「もっと先まで遊びたかった」というご意見が最も多いです。これに関しては,本当に申し訳ないと思っています。
原田氏:
VR ZONEの面白いところは,多くの人にとって「VR初体験」の場であることです。なので,僕らの想像を超越した反応をされる方が多い。「アーガイルシフト」では立ち上がった方がいたんだよね?
田宮氏:
そうですね(苦笑)。興奮して,筐体の上で立ち上がってしまって……可動筐体なので,すごく焦りましたが。
荒牧氏:
立ち上がると,頭がコクピットを突き抜けませんか。
原田氏:
いや,ギリギリ大丈夫なんです。そこは計算のうちですよ(笑)。
先ほど,初期の案ではサポートキャラクターが3人搭乗する予定だったと言いましたが,そこにはプレイヤーが立ち上がっても大丈夫なくらい広いコクピットを設計すると,3人はいないと絵的に間が持たないという判断もあったんです。
荒牧氏:
アイネとしゃべった人がいると聞いてますが。
田宮氏:
いらっしゃいます。普通に「はい,大丈夫です」と返事をしている方はおられます。近くにいると,自分に話しかけられたのかと思ってビックリします(苦笑)。
原田氏:
「サマーレッスン」もキャラクターが入ってくると,必ずプレイヤーはお辞儀しちゃいますね。
4Gamer:
日本人ですから……(苦笑)。
原田氏:
海外のプレイヤーは,キャラクターが手を伸ばしてきたときに握手しようとします。そういうところに,普段の行動が出てきますね。
まずは小さなお金で起爆剤になるものが必要
4Gamer:
少し話を戻しますが,「アーガイルシフト」の開発にあたって具体的な目標はありましたか。
原田氏:
なによりも,社内におけるお手本となる設計を見せたかった,というのが大きいです。 皆より,かなり先に研究してきたので,僕らがいま見ているものは,これからやる人より,少なくとも数か月は先に進んでいます。実際,ほかのアクティビティのチームも,「最初に僕や玉置に話を聞いておけばよかった!」という反応でした。それだけで最初の試行錯誤に費やした1か月近くの期間を短縮できたはずだ,と。
「酔わない」こと。「等しく誰もが最高の体験を得られる」こと。この2つをクリアするにはどうしたらよいかを,設計上で見せたいと考えていました。
逆に言うと,「アーガイルシフト」はあまり攻めていないコンテンツです。もっと派手な演出とか,普通なら酔ってしまうかもしれない回転とか,そういうものは抑えているんです。「すごいけど怖かった」「すごいけど酔った」ではなく,体験者全員が同じような感想になる,というところを目指しました。
そういう意味では,ベーシックかつ守るべきラインをタイトに示した作品です。
4Gamer:
海外だと「すごいんだけど,猛烈に酔う」といった作品も珍しくありません。
そこは,役割分担だと思っています。欧米の人って,FPSの時代から「2割のプレイヤーは酔うだろう。でも,しょうがないね(笑)」というノリですから。
それはそれでいい。でも,僕は日本のVRについては,VR ZONEに行って騒いだ人が,その体験を周囲にどう伝えるか。それを考えるべきタイミングだと思っているんです。
そういう人が「面白かったけど,ひどく酔って気持ち悪くなったからもう行かない」と感じていたら,最悪な伝わり方ですよね。多くの人がVRを体験してからであれば,攻めるコンテンツをやってもいい。ただ,それは今ではない。
すでにVRコンテンツを作ったり,遊んだりしてる人は「酔っても構わないから,もっとすごいものを!」と言いがちですが,それは彼らがだいぶ先に進んでいるからですよ。初めての人にそれを体験させるのはマズい,というところを守りたいと思っています。
だから,5年後には言うことが変わっているでしょう。「いつまで地面が水平なんだよ!」とか(笑)。
4Gamer:
プレイヤーの慣れに依存するところもある,ということですね。
原田氏:
ただね,FPSの歴史を見ていて思いますが,「酔わなくなったのは,プレイヤーが慣れたから」という考え方は危険だろうと思います。
この問題の難しさは,本当にプレイヤーが慣れたという部分が半分だけということです。残りの半分は画面のエフェクトだったり,画角だったり,演出だったり。そういう細かい技術が積み重なって,FPSは酔わないゲームになっていったという研鑽の歴史があるんですよ。
実際,最初は30分遊んでは吐きそうになって,休んではまた遊んで……みたいな,そんなゲームが存在した時代もあった。僕は耐えましたけど,万人にそれを強いるのは間違いですよ。
そういう意味で,VRと「気持ち悪い」「酔う」というキーワードを結び付けないための努力は,ここ数年においてとても重要なものと考えています。
4Gamer:
それでは,逆に「5年後のVR」にどのようなビジョンをお持ちですか。
田宮氏:
いまはまだ「どうしたらVRがうまくいくか」というのを,誰も分かっていないですよね。誰もが手探りの状態です。
VR Summitを見て思ったことですが,開発者はVRが面白いから何かを作りたい。投資家はお金を投資する先が欲しい。そういう状態ではあるので,誰かが「こういうものを作ったら,これだけ儲かる」と旗を振り,実際にその環境を作れる人が出てきたら,その瞬間から開発者と資金が一気に集まると思いますね。それくらい,上と下の圧力だけが高まっている状態なんだと。
我々は「一般の方に高いパフォーマンスのVR体験をしてもらいたい」という一心だけで,「えいや!」とVR ZONEをやってしまった感じです。だから,この先について聞かれても,本当に分かりません。でも,足を止めたらすごい流れに飲み込まれそうで,それならいっそこの勢いで突っ走るしかない,という形で動いている状態です。
4Gamer:
なるほど。
荒牧監督はいかがでしょう。今後,VR/ARアニメーションというジャンルは進出してくるでしょうし,スマートフォンVRのようなプラットフォームもあります。そんな中,映像業界はVRとどう向き合っていく形になるのでしょうか。
荒牧氏:
極端なことを言うと,インタラクティブ性がなければ,VRはドーム映像なんですよ。なので,作品としてはいくつか想定できますが,結局のところ,制限が増えているだけでしかない。
原田氏:
カメラを奪われているからですね。
ドーム映像をHMDで見る,というだけでは面白くないと思います。やはりインタラクティブ性が必要だろう,と。
今回はなるべくゲームっぽさを排したので,画面上に「イエス or ノー」の選択肢が現れるというようなことはやっていません。でも,自分がどこを見ているかによって,アイネの反応が変わるという要素は入っています。そういったものを突き詰めていくと,いっそう面白くなると思います。
それでストーリーが描けるかとなると,まだ分からない部分なんですが,ともあれまったく新しいものとして考える必要はあるでしょう。従来の文脈の中で「これでストーリーが見られます」というものでは,つまらなくなってしまうだろうな,と。
ゲームっぽくもあり,映画っぽくもある。そんな「体験するエンターテイメント」というラインを探っていくと,面白そうだなと個人的には思っています。
4Gamer:
アニメ独特のパースを狂わせる表現というのは,VRでも可能でしょうか。
荒牧氏:
見ている側が移動できるなら話は別ですが,そうでなければ視点の位置は決まっているわけです。「この視点から見たときには正しい」というデフォルメの効いた映像を作ることは可能だと思いますね。
水島氏:
今回,開発に参加したことで,絵の見せ方よりも話の作り方が難しいと感じました。従来のアニメ的な手法では成立しないな,と。
映画であれば面白いプロットでも,VRでそのままやったら,おそらくお客さんには伝わらないと思います。映像には100年以上かけて培ってきた演出手法がある。映像を通じて,話を人に伝えるにあたっては,その蓄積がすごく大きく作用しています。
VRの場合,その蓄積がうまく生かせない。だから,これからはその方法論がどんどん生まれていくんだろう,と思いますね。
Production I.Gさんとストーリーを考えていくときも,「これをアニメにしたら,すごく面白くなりそう」というご提案をいただきましたが,それをVRに持ってくるとなると難しい,ということがありました。そのあたりは相互のフィードバックが重要になってくるのではないかと。
荒牧氏:
VRの場合,体験があってこそのストーリーですから。体験していない人にストーリーを書け,と言っても難しい。その温度差というのは感じましたね。
4Gamer:
ストーリーもシンプルにする方向で修正した,ということですか。
そうですね。荒牧監督はアニメはもちろん,主観視点で進むアトラクションも手がけておられるので,Production I.Gさんからあがってきた脚本について,すぐに「簡略化が必要だ」と判断されていました。
原田氏:
その勘どころが分からないと難しいですよね。カメラは自由が効かないし,制限は多いし(笑)。
水島氏:
難しさが独特なんですね(苦笑)。「アーガイルシフト」も体験者に対して,さまざまなストーリーの説明をしていますが,完全に当事者になっている人の頭にはほとんど入らないし,残らない。それは本当に痛感しました。
4Gamer:
それでは,VRはこれからどのような方向に進むと思われますか。
原田氏:
VRの未来ということでは,当然ハードが進化するでしょう。実際,それを待ってる部分はかなりあります。
4Gamer:
ハードウェアに関してだと,やはりケーブルが問題になりますか。
原田氏:
そうですね。ワイヤレス化はもちろん,転送速度の問題もあります。
ただ,映像全体がしっかり見えている必要はないんですよ。「見ている」部分だけちゃんとした解像度であれば,その周りの解像度が低くても,レンダリングが追いついていなくても,あまり気づかないものなんです。視野の中心だけ高解像度,周辺はわりと適当という技術はある。これなら,今の技術でもワイヤレス化は可能だと言われていますね(関連記事)。
でも,こうした部分はいわば「外の技術」じゃないですか。僕らゲーム屋がやることではないので,「待ち」なんです。ゲーム業界って,わりと他力本願なところもあるのは否めない。
4Gamer:
「NVIDIAさん,頑張って!」みたいなところはありますね。
原田氏:
ハードの技術が僕らを変えることもあり,ソフトウェア側で実現したい目標によってハードを引っ張ることもある。お互い持ちつ持たれつなところがあります。
VRの世界は黎明期なので,まずはアイデアですが,その次の段階になると技術がもう1ランク上がってくれないと,自分達のアイデアを生かせない。
ここ1年2年,僕はそうしたハードの進化やプラグインの出現を待ってるところはあります。
そして,ハードウェアとは別に待っているものが「AIの発展」です。
4Gamer:
AIも進歩が著しい技術です。
原田氏:
今はIBMやMicrosoft,Googleが引っ張っている分野ですが,これがエンターテイメントにまで入ってくると,エンタメ全体が次のステップに上がれると思います。
とくにVRにおいて,AIの発展が与える効果は想像以上に大きいはずです。というのも,「サマーレッスン」にしても決まったタイミングで決まったことをやっているのは,VRの世界では奇妙に見えてしまうんですね。
だから,プレイヤーの言動や視線によって反応が変化するのが望ましい。でも,今の技術だとすぐにパターンを見破られ,それが強烈な違和感になってしまう。このあたりがAIの発展で解消されると,VR空間にいる意味が大きく変わると思います。
もっと広い話をすると,オンラインというのはゲームに限らず大きな変革をもたらしました。ここにも,AIは大きな変革をもたらしますよ。人とオンラインで遊ぶより,クラウド上のAIと遊ぶほうが楽しいと感じられる世界が来るでしょうね。
当然,MMORPGも変わります。同時接続数が1万人だとしても,その全員とインタラクションするかといえば,そんなことはなく,普通は気の合う仲間5〜6人と遊びますよね。でも,5〜6人のキャラクターでドラマが起こせるかというと難しい。
そこで「指輪物語」や「ゲーム・オブ・スローンズ」のようなドラマを起こすには,人間だと信じ込んでいるAIキャラクター達が,それとなくプレイヤーを誘導してくれると最高の体験になるはずなんです。
4Gamer:
AIの発展はゲームを変える,と。
原田氏:
もちろん,対戦格闘ゲームも例外ではないでしょう。自分よりヘタな相手と遊んでも,うますぎる相手と遊んでも楽しくない。同レベルの相手と競い合うのが,一番面白いわけじゃないですか。それを実現するために,今はマッチングシステムの改良に血道を上げていますが,これも理想の形になっているとは言えない。
そこで,AIが最適な対戦相手として入ってくれるなら,それが一番です。彼らは,人間の持つ不完全さの魅力も再現できるようになるはずですから。
4Gamer:
CEDECの講演で,はこだて未来大学の松原 仁教授は「人に勝つ将棋AIの研究はもう終わり。次は人を楽しませるAIだ」という主旨を述べています(関連記事)。
原田氏:
そう。AIはエンターテイメントを抜本的に変革する要因です。
僕に言わせると,「人と遊ぶのが一番楽しい」というのは,これからはちょっと次元が低い話になっちゃう。人じゃなくて,AIと遊ぶ。AIと競う。これが次のステップとして待っている。
VRの世界に変革を起こし,ゲームそのものにも大きな変革をもたらすことになります。
ただ,「これだ! この技術を待っていた!」と言えるとき,僕は60歳くらいになっているんじゃないかな(苦笑)。「今からなのに!」と歯噛みしそうな気がしますが,それはそれとして,AIの発展は大いに期待しています。
4Gamer:
もう1点,VRの未来についてお聞きします。ここまでの話で,VRの発展には学術領域との連携が重要な位置を担っているように感じました。そのあたり,どのようなビジョンをお持ちでしょうか。
間違いなく重要ですよ。VRを始めてから,僕もアカデミックな人達と話す機会が一気に増えました。互いに吸い寄せられるというか,互いに互いの知見や技術を必要としているんですよ。
現状,机上で理論を進めている人と,理論より先に実装しちゃう人が,お互いに答えを見せ合っている状況です(笑)。2人で「なるほどなるほど」と。
ただ,実際の産学連携には,ぶっちゃけカネが必要です。それも巨額の。そのためには,世の中を動かさなきゃいけない。でも,世の中を動かすにはカネがいる。タマゴとニワトリの関係ですね。
ならば,どっちを先にするのか。まずは,小さなお金で起爆剤になるようなものが必要になるわけです。「サマーレッスン」もその1つ,VR ZONEもそうです。VR ZONEのようなアナログで,泥臭い商売というのは重要ですよ。でないと,巨額のカネが動くようにはならないので,次の一歩に進めません。
だから,僕はそういうところを田宮君達に任せて,巨額のカネが動くようになったら,「オッス! オラまた来たよ!」といった感じで登場したい。うん,これが理想ですね!
一同:(笑)
4Gamer:
ちなみに,VRコンテンツではない分野で「アーガイルシフト」を展開する可能性はありますか。
田宮氏:
今回,VR ZONEで世に出しているのは,「アーガイルシフト」という企画の最初の導入部分なんですよ。ですので,構想としては新たな展開はあり得るのですが……。
原田氏:
現状のところでお金が尽きたと(笑)。
水島氏:
いろいろと尽きましたね……(苦笑)。
原田氏:
やっぱそこはカネだよ! 巨額のカネが動かないとダメなんだよ!
荒牧氏:
お金,大事だよね。
田宮氏:
いやはや,VRは本当にコストがかかります。こればかりは,しみじみとキツイです(苦笑)。
原田氏:
あちこちに行っては「僕に30億くらい任せてもらえれば,すごいことやりますよ」と言って回っているんですよ。しまったな,この前,サウジアラビアに呼ばれたときも言えばよかった!
4Gamer:
非常に現実的なオチがついたところで,本日のインタビューを終えたいと思います。長時間にもかかわらず,ありがとうございました。
「VR ZONE Project i Can」公式サイト
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