レビュー
3D V-NANDの採用でSamsung製SSDの下位モデルはどう変わったか
Samsung SSD 850 EVO
新しいSSD 850 EVOは,従来モデルと比べて何が変わっているのだろうか。120GBモデルのレビュー用サンプルを入手できたので,SSD 850 EVOの特徴や性能を調べてみたい。
3D V-NAND技術採用のフラッシュメモリを下位モデルでも採用
前モデルであるSSD 840 EVOは,120GBと250GB,500GB,750GB,そして1TBという5ラインナップ構成を展開していたが,SSD 850 EVOは冒頭に述べたとおり120GBから1TBまでの4ラインナップとなった。スペックを表1にまとめておいたので,チェックしてほしい。
SSD 850 EVOは大きく3つの特徴を備えている。まず1つは,下位モデル製品では初めて,Samsungが開発した「3D V-NAND」(Three-Dimensional Vertical NAND)技術を採用したフラッシュメモリを搭載することだ。
3D V-NAND技術は2014年7月に登場した上位モデル「SSD 850 PRO」(以下,SSD 850 PRO)のフラッシュメモリで初めて採用されたものである。詳細はSSD 850 PROの発表に合わせて掲載した解説記事を参照してほしいが,ここでも簡単におさらいしておこう。
3D V-NAND技術では,NANDフラッシュメモリのメモリセルを構成する電極を立体的に形成することで,記憶密度と信頼性の双方を同時に向上させている。
メモリセルの立体形成技術は,微細化の限界に到達しつつあるといわれていたNANDフラッシュメモリにブレイクスルーをもたらす新技術として,フラッシュメモリメーカー各社が開発研究を行っていた。Samsungはライバルに先駆けて,その量産に成功したというわけだ。
つまり,今回SSD 850 EVOに3D V-NANDが採用されたということは,その製造が順調に推移して,コスト面の課題も解消されてきたということを示しているといえよう。
同じ3D V-NANDを採用しているものの,SSD 850 PROではそれを,1つのメモリセルあたり2bitを記録するMLC(Multi Level Cell) NANDとして使っていた。一方,今回のSSD 850 EVOでは,それをメモリセルあたり3bitを記録するTLC(Triple Level Cell,Samsungでは3bit MLCと呼称)として使っているという。
ちなみにSamsungの技術者によれば,フラッシュメモリを制御するコントローラ側の設定次第で,SLC(Single Level Cell,1メモリセルに1bitを記録)としても利用できるそうだ。
TLCはMLCよりも1つのメモリセルに記録できるデータ量が多いので,チップあたりの記憶容量がMLCよりも向上する。それはSSD製品の低コスト化につながる重要なポイントだ。
しかし一方で,1つのメモリセルに多くの情報を詰め込むためには,高度なエラー訂正機能の採用や書き込み時のベリファイ(確認)機能を強化する必要があり,それによってMLCに比べて,とくに書き込み速度が遅くなるという弱点を抱えている。SSD 850 EVOで,3D V-NANDをTLCと使用することで実際に性能面で影響が出ているのかは,後段で検証していこう。
Samsungの説明によると,MGXは「低容量モデルが使われることが多いクライアントPCの使用パターンに最適化したコントローラ」なのだそうで,とくに低容量モデルにおけるランダムアクセス性能が向上しているという。Samsungがレビュワー向けに提供したSSD 850 EVOのレビュワーズガイドには,各モデルのアクセス性能を並べた表があるのだが,これによると,SSD 840 EVOと比べてランダム書き込み性能が向上しているとされている。該当部分を抜き出した表2を掲載しておこう。
3つめの特徴が,「TurboWrite Technology」(以下,TurboWrite)の改良だ。
SSD 840 EVOは3D V-NANDとは異なるTLC NANDフラッシュメモリを採用していたのだが,前述したTLCの弱点である書き込み速度を向上させるために,フラッシュメモリ内にある予備領域の一部をSLC NANDとして読み書きすることで,高速バッファとして利用できるTurboWriteという機能を備えていた。
この機能がSSD 850 EVOで,さらに高速化されているのだという。従来のTurboWriteでは,SLCとして使用している領域を使い切るとTLCへの転送負荷が表面化してしまい,書き込みが低速になるという問題があった。要は書き込みバッファが溢れると低速になるわけだ。その溢れた場合の書き込み速度が,SSD 850 EVOではSSD 840 EVOよりも高速になっているという。
SSD 850 EVOのレビュワーズガイドに,TurboWrite状態とバッファが溢れた後(TurboWrite後)の速度を比較したものがあり,SSD 840 EVOとの性能差が示されていた。その部分を抜き出したものが表3である。
これを見ると,シーケンシャル書き込みでは,SSD 850 EVOのほうがSSD 840 EVOよりもバッファが溢れた後の書き込み速度が速くなっている。120GBモデル同士の比較ではわずか7%程度の差に止まるが,記憶容量が増えるほどその差は開いていき,1TBモデル同士の比較になると,SSD 850 EVOのほうが20%も速い。
こうした性能向上によって,SSD 850 EVOはSSD 840 EVOに対して,「PCMark 8」のような実アプリケーションベースのベンチマークプログラムにおいて,最大で10%程度の性能向上が確認されたとSamsungは主張している。この主張が正しいかは,後段のベンチマークテストで明らかにしてみることとしよう。
もう1つ,注目したいのが保証期間だ。従来のSSD 840 EVOでは保証期間が3年間であったが,SSD 850 EVOではこれが5年に延長されているのだ。
さらに,SSDに寿命を迎えるまでに書き込めるデータ量を表す「Total Byte Written」(TBW)も,SSD 840 EVOの44TBWに対して,120GBモデルと250GBモデルでは75TBWに,500GBモデルと1TBモデルでは150TBWに引き上げられており,耐久性が大幅に向上している。
Samsungは3D V-NANDの利点として耐久性に優れることも挙げていたが,それが製品スペックにも反映されているようだ。普及価格帯とされているSSD製品で5年間もの保証期間を有する製品はほとんどないので,その点もSSD 850 EVOの魅力といえるかもしれない。
120GBモデルのフラッシュメモリはわずか1チップ
性能計測を行う前に,SSD 850 EVOの実機をチェックしておこう。
前モデルのSSD 840 EVOは,グレーの筐体に四角いワンポイントが黒であしらわれていたが,SSD 850 EVOでは配色が逆になって,つや消し黒の筐体にグレーのワンポイントというデザインになった。ワンポイントの色を除けば,上位モデルであるSSD 850 PROと同じようなデザインに変更されたわけだ。
筐体を開けて内部も見てみよう。今回は販売代理店の許可を得て行ったが,こうした分解はメーカー保証外の行為であり,行った時点でメーカー保証は失われることをお忘れなく。
筐体を開けると,中の基板はびっくりするほど小さかった。チップも少なく,目立つサイズのものは表裏合わせて4つしかない。
写真でMGXの上にある大きなチップが,3D V-NANDのフラッシュメモリチップである。120GBモデルにはこれしかフラッシュメモリが載っていないので,1チップで120GB(≒1Tbit)の容量を持つわけだ。チップ表面に「K90KGY8S7C」と印刷されていたので,この型番に該当するデータシートを検索したものの,該当するものはなかった。
もう1つ,MGXの下にある小さめのチップは「K4E4E16」という型番が印刷されている。調べてみると,どうやらSamsung K4シリーズと呼ばれるLPDDR3 SDRAMチップのようで,容量は256MBだった。
一方,反対側の面に目立った部品はない。小型のチップはおそらく電源管理のLSIだろう。大きめの空きパターンが1つあるので,250GBモデルでは,ここにフラッシュメモリがもう1枚実装されるのだろうと思われる。
たった1枚のチップで構成されている120GBモデルだが,空きスペースにどれくらいのチップを詰め込めるかをおおざっぱに計算してみたところ,2.5インチHDDサイズの筐体で容量2TBのSSDが実現できそうだ。今回のラインナップは半分の1TBまでしかないが,2TBという大容量製品が用意されなかったのは,下位モデルの価格を考慮したためかもしれない。
実アプリケーションのテストで平均転送速度の向上を確認
それではベンチマークテストを行って,SSD 850 EVOの性能を明らかにしていくとしよう。冒頭で述べたとおり,今回入手したのは容量120GBモデルなので,比較対象として,SSD 840 EVOの容量120GBモデルを用意した。そのほかテスト環境は表4のとおり。CPU側の自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Te
SSD 840 EVOのファームウェアは,テスト時点で最新の「EXT0BB6Q」にアップデート済みだ。一方で,試用したSSD 850 EVOはレビューアー向けのものなので,導入されていたファームウェアは,市販されるものとはバージョンが異なる可能性もあるとのこと。発売前の機材によるテストなので,その点はやむを得まい。
といっても,Magician 4.5自体や新しいRAPID ModeはSSD 840 EVOにも対応しているので,SSD 850 EVOだけの利点というわけではない。そこで今回は,一部のテストに限ってRAPID Modeを利用して比較を行うことにした。
まずは,Futuremark製のPC総合ベンチマークアプリケーション「PCMark 8」(Version 2.3.293)に用意されたストレージテスト「Storage」から始めよう。
PCMark 8のストレージテストは,5本のアプリケーションと「Battlefield 3」,「World of Warcraft」(以下,WoW)のゲーム2種類を実際に動かしたときのストレージアクセスを再現したワークロードを,3回繰り返してストレージの平均転送速度を算出するという負荷の高いテストだ。今回はRAPID Modeを有効にした結果も取得してみた。その総合スコアをまとめたものがグラフ1である。
実のところ,最新のSSDは十分な性能を有しているようで,どれを使ってもPCMark 8の総合スコアはほとんど差が出ない傾向にある,今回のテストでもそのような結果となった。先述したとおり,SSD 850 EVOはSSD 840 EVOに対して最大10%スコアが向上したとSamsungはアピールしているのだが,測定した限りでは1%の差もなく,アピールどおりにはいかなかった。
RAPID Modeを有効にするとスコアがやや上がるのはどちらも同じで,こうなるとSSD 850 EVOとSSD 840 EVOの差はますますなくなってしまう。
しかし,PCMark 8実行時の平均転送速度を計測する「Storage Bandwidth」に目を向けると,少し違った結果が見えてくる。グラフ2がその結果で,RAPID Modeを使用しない場合の転送速度は,SSD 840 EVOの約287MB/sに対して,SSD 850 EVOでは約306MB/s。約6.6%の転送速度の向上が見られたのだ。PCMark 8のような重いワークロードを3回も繰り返すテストで6.6%は誤差とは考えにくく,有意な差があると見ていいだろう。
RAPID Modeを有効にすると差は小さくなるが,それでも約4%の差がついた。前モデルに対して性能の向上が図られたこと自体は確かに見てとれる結果である。
次のグラフ3は,PCMark 8のストレージテストから,Battlefield 3とWoWの計測時間を抜き出したものだ。あくまでも「ゲーム実行のワークロードを完了させるのに要した時間」なので,グラフは短いほど高速である点に注意してほしい。
その結果だが,完全に横並びで新旧EVOシリーズの差はほぼない。RAPID Modeの使用/未使用でもほとんど差がないので,少なくともBattlefield 3とWoWに関しては,RAPID Modeの効果は体感できなさそうだ。ゲームのプレイ中には,まとめて長時間の読み書きを行うということがあまりないので,メモリキャッシュであるRAPID Modeは効果がでないのだろう。
以上のように,PCMark 8ではSSD 850 EVOはSSD 840 EVOに対して平均転送速度が向上していることを確認できた。では実際に何が向上しているのか,そこを調べてみる必要がありそうだ。
ランダムアクセス性能の向上は確認
TurboWriteの改善は見えてこない
続いては,定番のストレージベンチマークツールである「CrystalDiskMark」(Version 3.0.3b ja)を使い,SSD 850 EVOが持つ素の性能を見ていきたい。
CrystalDiskMarkはスコアの揺らぎが大きいベンチマークである。そこで今回は,テストサイズ「1000MB」でテストパターン「デフォルト(ランダム)」,テスト回数は「5回」という標準設定を採用したうえで,このセットを5回連続実行した平均値を結果として採用することとした。25回分のテストから平均値を取れば,スコアの揺らぎも無視できるだろうという考えだ。
また,SSD 850 EVOとSSD 840 EVOはTurboWrite機能を備えるため,テストサイズを大きくすると書き込み性能が低下する可能性が高い。そしてSamsungの説明どおりなら,性能の低下はSSD 840 EVOのほうが大きいはずである。
そこで今回はテストサイズを「4000MB」に引き上げたテストも実行してみた。テストサイズをこれだけ大きくするとスコアの揺らぎは比較的小さくなるので,ここではテスト回数「5回」のセットを3回連続して平均値を採用した。
なお,CrystalDiskMarkのテストではRAPID Modeを使用していない。RAPID Modeはメモリキャッシュであり,これを有効にしたままCrystalDiskMarkでテストを行ったところで,意味のあるデータが得られないという判断からだ。
それではCrystalDiskMarkのシーケンシャルアクセス性能から結果を見ていこう。グラフ4がその結果だが,テストサイズ1000MBでは逐次読み込み(Sequential Read),逐次書き込み(Sequential Write)ともに横並びで,どちらもSATA 6Gbpsの限界に迫る500MB/s以上を叩きだしているため,差が出ないのも無理はない。
注目すべきは,テストサイズ4000MBにおける逐次書き込みの落ち込みだ。テストサイズ1000MBとテストサイズ4000MBでの逐次書き込み速度を比べてみると,SSD 850 EVOが1000MB時の約57%という結果に止まったのに対して,SSD 840 EVOではそれが約59%。SSD 850 EVOのほうが若干低いという結果になった。
すでに述べたとおり,本テストは複数回実行して平均を取っているので,この差が誤差であるとは考えにくい。結果どおりというしかないだろう。もっとも,Samsungのレビュワーズガイドでも,120GBモデルは内部の転送速度があまり向上していないようなので,テストでは表面化しづらいのかもしれない。
続いて,512KB単位のランダムアクセスの結果をまとめたグラフ5を見てみよう。テストサイズ1000MBの結果では,ランダム読み出し(Random Read 512KB)で,SSD 840 EVOのほうがSSD 850 EVOよりも約106%ほど速かった。逆にランダム書き込み(Random Write 512KB)では,SSD 850 EVOがSSD 840 EVOを大きく引き離して,約45%も高速という圧倒的な性能差を見せている。性能面での改善があったことは明らかだ。
一方,テストサイズ4000MBのランダム書き込みでは,SSD 850 EVOのほうがスコアの落ち込みが大きい。SSD 840 EVOは1000MB時と比べて約56%程度の落ち込みですんだものの,SSD 850 EVOでは1000MB時と比べて約39%と大幅に低下してしまった。
スコアだけを見た場合,テストサイズ4000MBでのランダム書き込みは両製品ともほぼ同等。SSD 850 EVOがテストサイズ1000MBで優れた性能を発揮した分だけ,テストサイズを4倍にしたときの低下率が大きくなってしまったわけだ。
いずれにしても,Samsungが主張するTurboWriteの改善は,このテストでは見られなかったといえよう。
次のグラフ6は,4KBのランダムアクセスをQD(Queue Depth)=1で実行したときの結果だ。スコアを見ていくと,テストサイズ1000MBのランダム読み込み時(Random Read 4KB)に,SSD 850 EVOがSSD 840 EVOに対して約21%も高い結果を残しているのが目立つ。ランダム書き込み時のスコアも,SSD 850 EVOのほうが約7%ほど高い。
テストサイズ4000MB時の落ち込みを見てみると,ランダム読み込み時にSSD 850 EVOは約82%,SSD 840 EVOは約92%に落ち込んだ一方で,ランダム書き込み時はほとんど落ち込みが見られないという結果になった。ここでも,テストサイズを大きくするとSSD 850 EVOの性能も大きく落ち込むという傾向に変わりはなく,Samsungが主張するようなTurboWriteの改善は見られないといえよう。
グラフ7は,ランダムアクセスのコマンドを32個単位で処理するQD=32で4KBのランダムアクセスを実行した結果である。
スコアを一瞥して目に止まるのは,テストサイズ1000MBにおけるランダム書き込みで,SSD 850 EVOがSSD 840 EVOに対して約68%も高い結果を残しているところだろう。先のQD=1ではランダム読み込みで優れた結果を残したが,QD=32では書き込みが優秀と,ばらつきがあるのは面白い。もっとも,その原因がどこにあるのかは不明だ。
テストサイズ4000MBの落ち込み方はQD=1と同様の傾向が見られる。1000MBで高い成績を残したSSD 850 EVOのランダム書き込みは,約55%と大きく落ち込んでいるものの,他はSSD 840 EVOのランダム書き込みが約92%に落ち込んだ程度で,大きな変化は見られない。
以上の結果をまとめると,SSD 850 EVOではランダムライト性能がSSD 840 EVOよりも向上しているといえよう。PCMark 8の平均転送速度が向上したのも,それによる影響が大きいと結論していいように思う。Samsungが主張するようなTurboWriteの改良による性能向上は確認できなかったが,Samsungの公開した値(先述の表3)にもあったように,120GBモデルでは性能向上の幅が小さかったからかもしれない。
Iometerでは連続動作時の速度低下が少ないことを確認
テストの最後に,「Iometer」(Version 1.1.0)の結果も見ておきたい。Iometerは,ストレージに高い負荷をかけて性能をテストするベンチマークツールで,I/O性能を確認するための機能を持っている。
今回のテストでは,4KB単位のランダム読み出しと書き込みを50%ずつ混在させた状態でディスクアクセスを5分間実行し,その間のIOPSを取得する方法で計測した。テストサイズは1GBで,QD=32としている。いずれの設定も,筆者によるストレージテストでは何度も採用しているものだ。
他方で,テスト時間は今まで5分間としてきたが,SSD 850 EVOではTurboWriteの性能向上によって,長時間実行した場合にIOPSの落ち込みが少ない可能性が予想されたので,今回は2倍の10分間実行することとした。そのうえで,スタート後1分間と終了前1分間の平均IOPSも比較してみる。
まず,10分間実行時の平均IOPSをまとめたのがグラフ8だ。トータルのIOPSだけでなく,読み込み時のIOPS(Read IOPS),書き込み時のIOPS(Write IOPS)のいずれも,SSD 850 EVOはSSD 840 EVOに対して2倍以上のスコアを記録しており,このテストでは確かに大幅な性能向上が見られた。
なお,スタート後1分間と終了前1分間のIOPS平均値は,SSD 850 EVOがスタート後1分間で「39211.83」,終了前1分間が「30111.57」となった。スタート後に比べて,終了前のIOPSは約77%になる。
一方,SSD 840 EVOは,スタート後1分間が「19571.53」で終了前1分間は「13656.69」と,スタート後に比べて終了前は約70%にとどまった。つまり,SSD 850 EVOのほうが落ち込みは小さいわけで,おそらくTurbo Writeの改善が表れたのではないかと推測できる。
TurboWriteの効果をもう少し分かりやすく示さないかと,「HD Tune Pro」(verson 5.5.0)で逐次書き込みを行った結果を画像で掲載しておこう。このテストは,SSDの先頭セクタから順に書き込むことによる転送速度の変化をグラフ化して表示するというもので,TurboWriteのバッファがフルになったときの状況が読み取れるはずだ。
下に示した2枚の画像の上側がSSD 850 EVOで,下側がSSD 840 EVOの結果である(※下側画像の画面上部にSSD 850 EVOと書かれているが,これは表示が変わっていないだけだ)。どちらも3000MB前後でTurboWriteのバッファが溢れるように見える。そしてSamsungの主張どおりであるなら,バッファが溢れた後の転送速度はSSD 850 EVOのほうが高くなりそうなものだが,HD Tune Proでは優位な差が認められなかった。
Samsungも差が小さいと認めている120GBモデルでは,この結果になるのも仕方のないことかもしれない。
SSD 850 EVOにおける逐次書き込み時の転送速度 |
同じくSSD 840 EVOでの転送速度 |
性能差は大きくないが,下位モデルでの「5年保証」は評価に値する
とはいっても,ランダムアクセス性能には向上が見られるので,実アプリではSSD 850 EVOのほうが,SSD 840 EVOより多少は快適に使えるのではないだろうか。
SSD 850 EVOで評価すべき点は性能よりも,5年に延長された保証期間や耐久性だろう。先にも述べたが,ラインナップの下位に位置する製品で5年保証を謳うものは少ない。SSD 850 PROのレビューでも,10年間という長期保証があることを最大の魅力と評価したが,その点はSSD 850 EVOでも同様だ。他社のSSDと比べて長期間安心して使える可能性があるという点は大きな強みである。
本稿執筆時点では価格が明らかになってはいないのだが,妥当な価格で登場してくれば,長期間使用時におけるSSDの耐久性に不安を感じていた人にとって,SSD 850 EVOは歓迎できる選択肢となってくれるだろう。
ITGマーケティング(Samsung製SSD販売代理店)
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