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[GDC 2017]Amazon.comのゲームエンジン「Lumberyard」に注目が集まる。UE4とUnityに並ぶ3大ゲームエンジンとなるか?
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印刷2017/03/11 00:00

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[GDC 2017]Amazon.comのゲームエンジン「Lumberyard」に注目が集まる。UE4とUnityに並ぶ3大ゲームエンジンとなるか?

 GDC 2017の展示会場「Expo」は,規模こそ例年並みだったものの,気になる変化も見られた。たとえば任天堂は,ビジネスミーティング専用ブースのみで展示は一切なし。常連だったCrytekも,GDCに出展していないといった具合だ。
 2014年頃から経営危機が噂されていたCrytekは,企業としての規模を縮小して経営再建を行っている最中であると聞く。同社のゲームエンジンである「CRYENGINE」も,ゲーム業界における存在感は下がり気味だ。

 業界における勢力図が顕著に表れるExpo会場を見ていると,今や商用ゲームエンジンは,「Unity」と「Unreal Engine」の2強時代に突入したという印象を受ける。
 たとえばUnityのブースは,採用ゲームタイトルや関連ツール,そしてゲーム以外の用途への応用事例などを展示して,来場者の注目を集めていた。なかでも人気が高かったのは,Nintendo Switchの実機上で動作するUnityベースのリアリスティックなグラフィックスデモだ。大局照明にも配慮した写実的な屋内シーンを探索できるようになっていた。

大賑わいのUnityブース(左)。GoogleのVRプラットフォーム「Daydream」に対応するVRアプリのデモや,Nintendo Switchの実機で動作するデモを公開して注目を集めていた(右)
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 ライバルのEpic Gamesブースでも「Unreal Engine 4」(以下,UE4)を採用する新作ゲームやUE4関連ツール,最新技術が所狭しと展示されていた。これまでのUE4は,PCや据え置き型ゲーム機といった高性能なハードウェア用のゲーム開発ツールという印象が強かったと思う。しかし近年は,スマートフォン用ゲームタイトルでの採用事例も増えており,Expoでの展示も,スマートフォン向けゲームを強くアピールしているのが印象的だった。

ニョロニョロ動くヘビが主人公という,いかにも欧米なセンスのアクションゲーム「Snake Pass」(左)は,UE4ベースのNintendo Switch版を披露していた。「Lineage II」のiOS/Android版「Lineage II:REVOLUTION」もUE4ベースで開発されている(右)
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Epic Gamesの新作ゲーム「Battle Breakers」もスマートフォン向け(左)。ジャンルはタクティカルRPGとのこと。韓国のActionSquareが開発中のアクションRPG「BLADE 2」(右)。ハイエンドスマートフォンでなければ,最上位設定のグラフィックスは味わえないそうだ
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Amazonのゲームエンジン「Lumberyard」が勢力拡大!?


LumberyardをアピールするAmazonブース
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 勢力を拡大し続けるゲームエンジン2強に対して,後追いながらも距離を詰めてきたなと感じるのが,Amazon.comのゲームエンジン「Lumberyard」(ランバーヤード)だ。

 そもそもLumberyardとは,2015年に,CRYENGINEをソースコードレベルで買い取る形でAmazon.comがライセンスを取得して開発したゲームエンジンだ。ライセンス取得時に支払われた金額は,5000万ドルにものぼったという。
 ライセンス取得後は,Amazon.comの資金力で優秀な人材を集めて,独自の拡張を行っているとのこと。長年,BungieでHALOシリーズのグラフィックスエンジンを開発していた実力派エンジニアのHao Chen氏も,Lumberyardの開発チームに加わっており,すでに映像表現力はCRYENGINEをしのぐレベルにあるという声も出ているほどだ。
 2016年6月のGDC 2016では,CRYENGINEよりも一足早く,「Dolby Vision」のようなHDR映像出力への対応も実現しており(関連記事),本家を超えたかのような印象を感じたものだ。
 そんなLumberyardブースの見どころを,簡単にレポートしよう。

Amazon.comのLumberyardブース(右下)は,2016年の2倍ほどに拡大していた。ブース面積で比較すると,Epic GamesやUnity,GoogleやNVIDIAよりも広いほど。上回るのはOculus VRだけだ
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グラフィックスエンジンがさらに進化

Crytekのコードは50%程度しか残っていない


 見どころの1つめは,Lumberyardのゲームエンジンがどれくらい進化したかを解説するコーナーだ。
 2017年版のLumberyardでは,Crytekが開発したプログラムコードは,50%ほどしか残っておらず,すでに半分が自社開発の新コードに置き換わったという。ゲーム開発のパイプライン自体は,CRYENGINEのものを引き続き継承するものの,アピールポイントであるグラフィックスエンジンは,かなりの割合が新コードになっているとのことだった。

メインツールとなるLumberyard Editor。操作感は,CRYENGINEに近いものとのこと
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 そのグラフィックスエンジンだが,GDC 2017において進化点として挙げられたのは,「Temporal Anti-Aliasing」(時間方向のアンチエイリアス)と,「Specular Anti-Aliasing」(スペキュラアンチエイリアシング),そして「Order Independent Transparency」(順不同の半透明描画)の実装だ。順に説明していこう。

 時間方向のアンチエイリアスとスペキュラアンチエイリアシングは,どちらも似たような機能で,カメラやオブジェクトがゆっくり動いたときに生じる,時間方向に生じるピクセルのちらつき,俗にいう「Pixel Shimmering」(ピクセルシマー)を低減させるものだ。
 オブジェクトの輪郭付近に生じるちらつきを抑制するのが時間方向のアンチエイリアスの役目で,スペキュラハイライト(鏡面反射の光沢部)がカメラの動きに連動してちらつく現象を抑制するのが,スペキュラアンチエイリアシングの役目と理解すればいい。
 HDRレンダリングの時代になると,1ピクセル未満で鋭く明るいハイライトが描かれることになる。ところがこうした表現は,カメラやオブジェクトの動きによっては,ポリゴンのピクセル化が行われたり行われなかったりすることがあるため,時間方向にハイライトが点いたり消えたりを繰り返してしまい,ちらつくように見えてしまう。
 こうした現象は,ジャギーと同じくいかにもCGっぽいノイジーな表現に見えるので,Lumberyardでは低減する機能を実装しました,というわけだ。

 順不同の半透明描画は,読んで字のごとく,半透明オブジェクトをソーティングせずに順不同で描く機能である。一般的なゲームグラフィックスの場合,半透明オブジェクトは奥から手前に向かって描かないと,透けて見える部分の情景がおかしなことになってしまう。

 Lumberyardのブースでは,こうした新機能をアピールするリアルタイムデモ「Bistro」を展示していた。
 このデモの見どころは,カウンターに並んだ酒瓶や金属の調度品が横に流れるシーンと,氷の入ったグラスにカメラが近づくシーンだ。前者は時間方向のアンチエイリアスとスペキュラアンチエイリアシングを活用したシーンで,後者は,順不同の半透明描画を活用したシーンである。

カウンターに並んだ食器や酒瓶をカメラが舐めるように動くシーンより。酒瓶の光沢部分がちらつくことはない
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 Bistroデモは動画が公開されているので,興味のある人は参照してほしい。


 リアルタイムデモはもう1つ,「Lost」というSFタッチのデモもあった。こちらは,Lumberyardのグラフィックス機能をほぼすべて活用した,AAA級ゲームをイメージしたものだ。Lumberyardブースでは,HDR表示対応の大画面テレビを使ってデモを披露していた。

 物理ベースレンダリングによるマテリアル表現や,写実的な映像効果を実現するリッチなポストエフェクトが見どころだ。植物の葉は,両面ライティングによる透過と遮蔽効果が施されており,リアルに見えるのもポイント。こうした要素は,もともとCRYENGINEが得意としていた表現であり,こうした点からも,LumberyardがCRYENGINEの後継者的ゲームエンジンとなりつつあることが窺える。



採用タイトルが徐々に登場

著名クリエイターもLumberyardを支持?


 Lumberyardにおけるもう1つのニュースは,徐々にではあるが,採用タイトルが登場してきたことだ。

 GDC 2017時点で公開されている採用事例は3タイトル。
 1つめは,イギリスのSlingshot Cartelが開発中のTPS「The DRG Initiative」。2つめは,元Rockstar Northの代表で,歴代GTAシリーズのプロデューサーを務めてきたLeslie Benzies氏が設立したスタジオが手がけるジャンル不明の新作「Everywhere」。そして3つめは,Wing Commanderシリーズなど,宇宙ものシューティングゲームの名作を手がけたChris Roberts氏が何年も開発を続けているシミュレーションゲーム「Star Citizen」だ。

 The DRG InitiativeとEverywhereは,Lumberyardで開発を始めたタイトルである。しかしStar Citizenは,2011年に開発がスタートしたタイトルで,当初はCRYENGINEを採用していたという。それが,2016年にゲームエンジンをLumberyardに変更したのだが,その裏には,Amazon.comによる強い働きかけがあったという話もある。
 そんな事情があったかないのかはともかく,Lumberyardブースには,かなり大きなスペースを取ってStar Citizenのプレイアブルデモが披露されていた。

Star Citizenのデモコーナー。ここだけゲームセンターのようだ
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Lumberyardブースの一角に設けられたBreakawayのコーナー
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 Lumberyardブースの担当者によると,上記した3タイトルだけでなく,Amazon.com傘下のゲームスタジオであるAmazon Game Studiosが手がけているバトルアクション「Breakaway」も,Lumberyardにとって重要なタイトルであるという。
 Breakawayは,Amazon.comのネットワークサービスを活用したネットワーク対戦型TPSだ。同じAmazon傘下のゲーム映像配信サービスであるTwitchの機能を活用することで,「対戦を自由に観戦できるスポーツ観戦的な機能も盛り込んで,Lumberyardのトータルな機能をアピールするタイトルに仕上げていく」と,担当者は語っていた。


 そもそもLumberyardは,無料で利用でき,ロイヤリティ請求もなし,ソースコードの公開や改造は自由(※改造エンジンの公開は不可)だし,完成したゲームも自由に販売して構わないといった具合に,かなり自由度の高いゲームエンジンだ。採用ゲームがAmazon.comのオンラインサービス「Amazon Web Services」を利用することを見込んでビジネスモデルを構築しているので,Breakawayのようなゲームは,Lumberyardの応用事例として最適なモデルケースなのだろう。


NVIDIAの技術も取り込み,勢力を拡大するLumberyard


 Expo会場を取材していた筆者は,Epic Games関係者やUnity関係者に対して,「Lumberyardについてどう思うか」と雑談レベルで聞いてみた。すると彼らは口々に,「軽視できる存在ではない」と述べ,Lumberyardの動きに目を向けていることを肯定したものだ。

 また,Lumberyardの存在感が高まりつつあることは,NVIDIAのイベントでも窺い知ることができた。GDC 2017に合わせて行われた「GeForce GTX 1080 Ti」の技術説明会でNVIDIAが示したスライドの中で,メジャーなゲームエンジンとしてUE4やUnityと並んで,Lumberyardが挙げられていたのだ。

NVIDIAとゲームエンジンメーカーの開発協力体制を紹介するスライドに,Lumberyardの名前があった
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 さらにLumberyardが,NVIDIAの多機能カメラツール「Ansel」を導入する予定であることや,NVIDIAのゲーム開発支援フレームワーク「GameWorks」を統合したことも発表され,Lumberyardの開発を指揮するEric Schenk氏がステージに登壇してスピーチする一幕もあった。

NVIDIAのイベントで,LumberyardがAnselを導入予定であることが明らかに(左)。Lumberyardの開発を統括するEric Schenk氏(右,GM of Amazon Lumberyard)もイベントに登壇し,LumberyardにGameWorksを統合したことについてスピーチした
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 Lumberyardは,日本語の公式サイトもオープンしており,日本での展開も気になるところだ。ゲームエンジンの動向が気になる人は,注目しておく価値があるだろう。

Lumberyard 公式Webサイト

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