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印刷2016/08/27 13:25

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[CEDEC 2016]堀井雄二氏と齊籐陽介氏がドラゴンクエストシリーズを振り返った基調講演をレポート。ゲームデザイナーには「発想力」「忍耐」「勇気」が必要

 CEDEC 2016の3日目にあたる2016年8月26日,ゲームデザイナーの堀井雄二氏と,スクウェア・エニックスの齊籐陽介氏による基調講演「ドラゴンクエストへの道 〜ドラゴンクエスト30周年を迎えて〜」が行われた。開発中の「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」PS4 / 3DS)についても語られた講演の模様をレポートしよう。

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 この講演は,齊藤氏が聞き手となり,堀井氏が2016年5月に30周年を迎えた「ドラゴンクエスト」シリーズを振り返る形で進められた。

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ゲームデザイナー 堀井雄二氏
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スクウェア・エニックス 執行役員エグゼクティブ・プロデューサー 齊藤陽介氏

 まず語られたのは,堀井氏がゲームデザイナーを目指す前の話。ゲームデザイナーになる前の堀井氏が,漫画家(のちに漫画原作者)を志していたことをご存じの人もいると思うが,それより前,小学生の頃は,大人から褒められるという理由で「将来は弁護士になる」と言っていたという。

 しかし堀井氏の創意工夫が好きな部分はその頃からすでに発揮されており,実家のサッシ屋から出た廃材を使っていろんなものを作り出していたそうだ。また,大学時代には,自分でルールを作り,麻雀牌を利用したスゴロクを楽しんでいたとのこと。

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 大学卒業後,フリーライターとして活動していた堀井氏は,27歳の頃にNECのPC-6001と出会う。BASICのINPUT,PRINT,IF,GOTOといった基本的なコマンドを覚えた堀井氏が,最初に作ったプログラムは「占い」。
 それは,堀井氏の自宅に遊びに来る友人について先にいろいろ調べておき,友人が名前などを入力すると,「夏休みはどこそこに行きましたね」といったような内容が表示されるようにした他愛のないものだった。しかしPCやプログラムをよく知らない友人達は,ズバリと的中する占いに非常に驚いていたという。

 さらに,PC-6001向けの「スタートレック」や「信長の野望」など,BASICで組まれたゲームのプログラムを解析し,自分が有利になるよう,データを書き換えることなどもやっていたそうだ。

 堀井氏が本格的にゲーム開発に取り組んだのは,「ラブマッチテニス」である。このタイトルでは,描画を速くするためにBASICだけでなくマシン語にも取り組んでおり,エニックス(現スクウェア・エニックス)が1982年に主催したコンテストにて入選作品に選出された。
 ちなみにこのコンテストで優秀賞を獲得したのは,現スパイク・チュンソフト 代表取締役会長の中村光一氏が開発した「ドアドア」。のちに「ドラゴンクエスト」をともに手がける堀井氏と中村氏は,このとき初めて出会ったのだ。

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 やがて,海外にアドベンチャーゲームというジャンルが存在することを知った堀井氏は,「ポートピア連続殺人事件」を開発した。よく知られているように,このタイトルのPC-6001版は,コマンドとなる単語をキーボードで直接打ち込む形式を採用していたが,必ずしも遊ぶ人達が堀井氏の想定する単語や言い回しを使うとは限らないという問題に突き当たり,その後の課題になった。

 なお,「ポートピア連続殺人事件」の衝撃的な結末は,ゲーム冒頭の部分とともに最初から決めていたという。結末については,「犯人として一番意外性のある人物は誰か」と考えていたそうだ。

 ちなみに,ここまで堀井氏は自分だけでゲームを作ってきているが,当時はデータ容量が小さかったこと,また途中で好きなように内容を変更できることなどの理由から,大変だと思ったことはなかったという。

 続いて堀井氏は,「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ」「軽井沢誘拐案内」の開発に相次いで取り組むこととなった。この2タイトルでは,「ポートピア連続殺人事件」の経験を活かし,単語を入力するのではなく,コマンドを選択する形式が採用されている。
 またこの当時の堀井氏は「Wizardry」や「Ultima」にハマっており,「軽井沢誘拐案内」の終盤にはRPG的な要素がフィーチャーされている。

 堀井氏がアドベンチャーゲーム3部作の開発に取り組んでいた頃,世間にはファミコンが登場していた。ファミコンは家庭で綺麗なグラフィックスのゲームが遊べるという,当時としては画期的な存在で,堀井氏はこのプラットフォーム向けにRPGを作ることはできないかとエニックスに相談に行ったのである。

 しかしそのときのエニックスからの回答は,「その前にファミコン向けのアドベンチャーゲームを作りましょう」というものだった。さらに中村光一氏から提案されたこともあり,堀井氏はまず「ポートピア連続殺人事件」のファミコン版に取り組んだ。
 このファミコン版「ポートピア連続殺人事件」には3Dダンジョンが追加されているが,これは当時の堀井氏の「RPGを作りたい」というメッセージだったという。

 さて,晴れてRPGの開発を始めた堀井氏。これも以前に自身が明かしているエピソードだが,「ドラゴンクエスト」という名称は印象を強めるために,わりと多くの人が知っている“ドラゴン”と,逆に馴染みのない“クエスト”という二つの単語を組み合わせることを意識していたという。

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 続く「ドラゴンクエストII」では,データ容量が前作の倍になったため,3人パーティでのプレイを実現可能になった。しかし堀井氏は「II」で初めてRPGをプレイする人もいるだろうと考え,最初は勇者1人でプレイし,ストーリーの展開に沿って人数が増えていく形式を採用。
 「Wizardry」など,最初からパーティを組んで冒険するRPGに親しんでいた齊藤氏は,ストーリーを進めて仲間を見つけていく仕様に衝撃を受けたという。

 「ドラゴンクエストIII」ではさらにデータ容量が増え,堀井氏が当初から構想していた酒場でのパーティメンバーの入れ替えや,転職などを実現できた。またストーリーは「ドラゴンクエストI」以前の時代を描いているが,これは「II」が「I」の100年後を舞台としていたことが理由だという。当時の堀井氏は,さらにそのあとの時代を取り上げたのでは,ありがちで面白くないと考えたそうだ。

 「III」の大ヒットを受けた「ドラゴンクエストIV」では,大きなプレッシャーが掛かっていたと語る堀井氏。「III」ではストーリーが長くなってしまったため,ほかの手法を試みることになったという。
 そこで考えついたのが,ルイーダの酒場で仲間になるキャラクター達にも,それぞれの人生があるということ。各キャラクターごとにエピソードを作り,それらを全体のストーリーとしてまとめていった。

 「ドラゴンクエストV」には,「プレイヤーに選択を迫る」ことと「親子三代で敵を倒す」というテーマを盛り込んだ。もちろん前者は,今なお一部で論争の絶えない,誰と結婚するかという選択だ。
 そして後者では,親子とはいっても主人公が途中で変わるのはどうだろうと考え,主人公の少年時代から始まり,子どもが生まれて一緒に戦う姿まで描くストーリー展開にしたという。

 「ドラゴンクエストVI」では,これまでの冒険が進むごとに移動可能な大陸が増えていくという展開ではなく,最初から二つの大陸を行き来できる形式を採用した。この試みと,移動範囲の広い「魔法のじゅうたん」の存在によって,主人公達はさまざまなところに行けるようになっため,ストーリーが破綻しないようにするのが大変だったそうだ。

 プラットフォームがPlayStationとなった「ドラゴンクエストVII」では,データ容量が飛躍的に増え,仲間と「はなす」コマンドが登場。

 「ドラゴンクエストVIII」では,そろそろアイデアも出尽くしていたのだが,たまたま出会ったレベルファイブが3Dグラフィックスの採用を提案したことにより,新しいイメージが生まれたとのこと。

 「ドラゴンクエストIX」では,ニンテンドーDSの「すれちがい通信」を使った新しい遊びを用意。当時話題となった「まさゆきの地図」は,極めて低い確率で生まれたものとのことで,堀井氏も日本全国に拡散するような大きな存在として成長するとは考えていなかったという。堀井氏は「まさにバーチャルがリアルを侵食した」と表現していた。

 そしてシリーズ初のオンラインゲーム「ドラゴンクエストX」は,現在もサービス中ということであまり多くは語られなかったが,構想は現在から10年ほど前からあったという。

 会場では,事前に募集した質問に堀井氏と齊藤氏が答えるコーナーも設けられた。
 最初の質問は,ファミコン版「ドラゴンクエスト」のバトルにあった「○○が あらわれた!」の次に「コマンド?」というメッセージが表示されたが,「II」以降なくなったのはなぜか,というもの。

 堀井氏は,今回指摘されるまで気づかなかったそうで,「コマンド?」と付けていたのはおそらくPC版のアドベンチャーゲームで,プレイヤーにコマンド入力を促していた当時の名残りだろうと分析。「II」以降ではなくても問題ないだろうと判断して省略したのではないかと話していた。

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 開発終盤のバランス調整やデバッグ作業に,どのくらい時間と人数をかけるのかという質問には,一概には答えられないが,堀井氏自身が1か月くらい掛けてスタッフの詳細なテストプレイデータを精査しているという。
 それをもとにした調整はマスターアップ後も続けられるそうで,堀井氏は「どうしても直さなければならない不具合が発覚したときに,ついでに調整してもらおうと思って」と話していた。またそうした調整の基準は,堀井氏自身の感覚とのことである。

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 「ドラゴンクエストV」の仲間モンスターシステムは,「IV」における人間とモンスターの対立構造を踏まえて企画されたのかという質問もなされた。堀井氏によると,「IV」における騎士のライアンと回復役のホイミンという組み合わせが面白かったので,「V」の一つの遊びとして拡張したとのこと。ちなみにモンスターの名前の候補には,「ゲレゲレ」のように一つはネタになるものを入れているという。

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 「ドラゴンクエストX」のシナリオは,Version 1の時点でどこまでできていたのかという質問には,Version 3までに登場した要素,すなわちレンダーシア大陸や竜族などは決まっていたという回答がなされた。なおVersion 4は現在骨格ができてきた段階で,Version 5はプレイヤーの動向を踏まえ,これから取りかかるとのこと。なお次に実装される職業は,もう決まっているそうだ。

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 初代「ドラゴンクエスト」では,ゲーム開始時から最終目的地である「竜王の城」を海越しに望めるが,その意図は何かという質問には,堀井氏が敢えて最初から目的地を示したと回答。その代わり,そこへ行く方法が分からないようにしたという。
 また,ワールドマップは,最初に全体の形を作り,それから街やNPCなどを調整しつつ配置していったという。これらの作業はグラフィックスが3D化したことにより複雑になったそうだ。

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 さらにアレフガルドなどの地名は,現実の世界地図に記されている地名を見てヒントを得るという。たとえば「サマルトリア」は,出会いの意味を持つ“サマル”に,実在の地名の語尾を付けたことで生まれたそうだ。

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 いわゆるクリティカルヒットを「かいしんの いちげき!!」(会心の一撃)と表現したのは,そのとき堀井氏の頭に浮かんだ気持ちのいい言葉だったからとのこと。シリーズ作品には,ほかにも独特な言い回しが見られるが,これはデータ容量が少なかった頃に,いかに短く,かつドラマチックな表現ができるか試行錯誤した結果だという。

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 最後の質問は,齊藤氏による「ゲームデザイナーとして,一番必要で一番大事なものは何か」というもの。堀井氏は,まず自分が面白いと思うものを発想する「発想力」を,次に発想をシステムにする過程を乗り越えるための「忍耐」を挙げた。そして3つめとして,出来上がってきたシステムが仮に面白くなかった場合に,「せっかく作ったのだから」と残すのではなく,バッサリ切り捨てる「勇気」も必要であるとした。

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 講演の終盤には,現在開発中の「ドラゴンクエストXI」についても少しだけ語られた。堀井氏と齊藤氏によると,先日も開発バージョンのテストプレイで洗い出した問題点の解決策について打ち合わせをしたという。
 なおチェックの基準となるのは,主にニンテンドー3DS版の3D表示バージョンで,そこで生じた調整をほかのプラットフォームに反映させていくとのこと。そのほか個別にPlayStation 4版のバトルをチェックしたりしているそうだ。
 また堀井氏は,「ふっかつのじゅもん」のような懐かしい要素も用意していると話していた。

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 講演の最後に堀井氏は,「『ドラゴンクエスト』がこんなに長く続くとは思わなかった。本当にありがたいです」「この30年でゲーム業界も変わり,できることが増えた反面,それが当り前になって難しくなっている面も生じているかと思います。そうしたときに,どの要素を切るかという判断は大事です」とコメント。

 またスマートフォンゲームの台頭など娯楽の選択肢が大幅に増えた昨今において,自分の作ったゲームを選んでもらうためには「やれば面白い」という姿勢ではなく,「面白そう」「やってみたい」という「掴み」をいかに作るかがポイントとなるという。
 そのためにはゲームに限らずさまざまなエンターテイメントにアンテナを張ることが重要であると,聴講していたゲーム開発者達に呼びかけ,講演を締めくくった。

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