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NVIDIAの「SHIELD」分解レポート。299ドルの「ゲーム機型Android端末」にはけっこうコストがかかっていた
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印刷2013/08/26 00:00

テストレポート

NVIDIAの「SHIELD」分解レポート。299ドルの「ゲーム機型Android端末」にはけっこうコストがかかっていた

4Gamerで入手した北米版SHIELD。NVIDIAの直販から北米の転送サービス経由で届いた
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 2013年1月の2013 International CESに先だって行われたカンファレンスで,NVIDIAの総帥であるJen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)氏が衝撃の発表を行ってから半年以上。いったんは6月下旬発売が予告されながら土壇場で延期されるなどの紆余曲折を経て,ついに,NVIDIA初のモバイルゲーム機型Androidデバイス「SHIELD」が,北米市場で7月31日に出荷開始となった。
 4Gamerでもさっそく1台輸入してみたので,SHIELDとはどういうゲーム機であり,どういうAndroid端末なのかをチェックしてみたいと思う。

 ……と,振りかぶってみたものの,最初に1つ,お断りしなければならない大事なことがある。今回,SHIELDの電源を投入することはできないのだ。SHIELDは現在のところ,日本国内で利用するために必要な無線LANやBluetoothの認証を得ていないため,国内では(仮に「記事を掲載する」という目的であっても)電源を入れた瞬間に法律違反となってしまう。

 もう少し細かく説明しておくと,日本国内で電波を出す機器(≒無線機)は,ごく微弱な電波を出す一部の例外を除き,国内で「形式認定」を受けなければならない。「時代遅れの規制」だという意見がある一方で,「日本は国土が狭いため,無許可の無線機が与える影響が大きい」という意見も根強くある。
 もっとも,携帯電話の国際ローミングに関しては総務省が例外規定を作って許可していたりもするので,形式認定制度は有名無実化してしまっている部分もあるのだが,携帯電話以外の機器に対して規制は依然として有効で,違反には罰則もある。なので,無線LAN接続が前提で,どう考えても無線LAN機能が有効な状態で起動してくるデバイスの電源を入れて,何事もなかったかのようにレビューするというわけにはいかないのだ。

 よって「GeForce搭載PCで実行しているゲームを,SHIELDへストリーミングさせてプレイしてみる」といったことは,今回は行えない。ならただ眺めるだけかというと,それも面白くない。それならとりあえず分解してみようというのが,本稿の主旨である。


まずは届いた製品を概観してみる


Tegra 4の概要。スライド右側に2つ並んだチップの左がTegra 4だ(※右はソフトウェアモデムチップ)
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 というわけで,軽くおさらいしておくと,SHIELDは,ARMアーキテクチャをベースとしたNVIDIA製SoC(System-on-a-Chip)「Tegra 4」を搭載するデバイスだ。GPUメーカーたるNVIDIAが手がける初のコンシューマ向けシステム製品ということで,注目されているわけである。
 ちなみにTegra 4は,ARMのアプリケーションプロセッサ「Cortex-A15」を5基,NVIDIAの言う「4-PLUS-1」構成――クアッドコアCPUとして機能する4基とは別に,低消費電力&低クロックで動作するもう1基のコアを組み合わせた構成――で採用し,DirectX 9世代のGPUで言うところの「頂点シェーダユニット24基,ピクセルシェーダユニット48基」という編成になる計72基のGPUなどを集積したSoCだ。非常にざっくりした比較になるが,現行の据え置き型ゲーム機と同等,もしくはそれに迫る程度の性能が期待できると考えてもいいように思う。

 冒頭でも紹介しているとおり,OSはAndroid。製品ボックスに「Android Jelly Bean」と書かれているので,Android 4.1以降が搭載されているはずだ。起動できないので確認できてもいないが,北米のメディアが共通してレポートしている内容によれば,Android 4.2.1がプリインストールされているようである。

 製品ボックスの話が出たところで,実際にボックスを開けていくことにしよう。
 製品ボックスは実測191(W)×122(D)×190(H)mmで,スリーブの表側には,「HAWKEN」をストリーミングでプレイしているイメージのSHIELDが描かれている。

製品ボックス(左)。右は,初回限定として付属してきたオリジナルTシャツとメッセージカードだ。Tシャツがシワだらけなのは,到着した状態のままだからである
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 化粧箱のスリーブを外し,中のボックスを取り出したところが下の写真だ。この時点で,黄緑側の側面をノドとして,ぱかっと開く形なのが見て取れる。

製品ボックス本体を取り出したところ。ノド側を見ると,NVIDIAの企業ロゴとともに,「INSPIRED BY GAMERS. BUILT BY NVIDIA.」というメッセージが書かれていた
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 というわけでご開帳。SHIELD本体がボックスのなかで動かないように固定するビニールカバーが高級感を削いでいるものの,なかなか凝った作りなのは一目で分かる。

製品ボックスを開けたところ。なかなか手の込んだ構造だ
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 台座の下には簡易マニュアルと保証書,充電用AC−USBアダプター,そしてUSBケーブルが置かれている。付属品は実のところこれらだけだ。余計な付属品があってももてあますだけなので,潔い仕様とは言えるだろう。HDMI Mini(※HDMI Mini Type C)−HDMI変換ケーブルがあるとよかったかもしれないが,価格を299ドルに抑えることを考えると,難しいのかもしれない。

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台座の下に置かれた付属品一式(左)。SHIELDマーク入りの封筒には保証書と簡易マニュアルが入っている(右)
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簡易マニュアルを広げたところ(左)と,充電用アダプター&ケーブル一式(右)。ACアダプターは44(W)×42(D)×26(H)mmとなかなかコンパクトだ

 SHIELDはゲーム機型デバイスというか,ゲームパッドに液晶パネルを取り付けたような形のデバイスなので,ここでXbox 360の純正コントローラである「Xbox 360 Controller」(以下,Xbox 360パッド)と比較してみよう。下に示したのがその写真だが,実測で158(W)×137(D)×60(H)mmというサイズのSHIELDは,Xbox 360パッドと比べて,感覚的に1.5回りは大きい印象だ。横幅はそれほど変わらないのだが,SHIELDのほうが奥行きは相当に長く,本体中央部の厚みもかなり増しており,全体的にぼってりした印象を受ける。

Xbox 360パッドと並べて,真上から撮影したところ。液晶パネル用のヒンジがあるので当たり前といえばそれまでかもしれないが,やはり一番の違いは奥行きである
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手前側(左)と左側面側(右)から比較。分かりやすいのは,SHIELDのグリップ部のくびれが極端に小さいことだ。右の写真を見ると,アナログトリガーはさておき,バンパーボタンの配置がXbox 360パッドとはけっこう異なるのも見て取れる
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 ただ,握りにくいかというとそんなこともない。背面を見ると分かるのだが,本体中央よりやや下よりのところに弧を描くような形で凹みが設けられており,ここに中指を置くように持つと,かなり据わりが良いのである。実測重量が589gもあるため,誰でも簡単に,しっくりくる持ち方ができないとマズいわけだが,そこには十分な配慮があると述べていいだろう。グリップ部もラバーも,フィット感の向上に一役買っている。
 ただ,それだけに残念だったのは,届いた時点で,アナログトリガーのすぐ手前側と,中指を置く凹み,グリップ部の背が高いところ,左右3か所ずつ,計6か所で,ラバーが擦れたような状態になっていたことだ。もちろんこれには個体差もあるだろうが,少なくとも入手した個体について言うなら,これは小さくない減点対象だと述べておきたい。

本体背面部(左)。先ほどグリップ部の凹みが大きくないと述べたが,内部的にはしっかり凹みができており,実際に握ってみると,ぱっと見で受ける印象よりもはるかに持ちやすかった。右は本体全景で,赤く丸を付けたとおり,ラバー部分に合計6か所の擦れがある
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 グリップ部の突起に挟まれた格好となる本体前面側では,SHIELDロゴとNIVIDIAロゴに挟まれる形でスリットが用意されている。これはデザイン上のギミックではなく,Tegra 4の冷却に必要な吸気孔なので,塞いではいけない。もっとも,普通に持つ限り,手がスリットを覆うような格好にはならないので,それほど気にする必要はないはずだ。
 一方,本体奥側の側面には,前出のアナログトリガーとバンパーボタンに挟まれる形で,HDMI MiniとUSB Micro-B,4極対応の3.5mmステレオミニピンの各端子と,microSDカードスロット,そして内蔵されるファン用の排気孔が設けられている。

本体前面側の吸気用スリット(左)と,背面部のインタフェース群および排気孔(右)。Huang氏はSHIELDのインタフェースを「業界標準のコネクタ」と述べていたが,確かに標準的な端子が並んでいる印象だ。欲を言えばHDMIはより一般的なHDMI Type Aのほうがよかったが,サイズ的にはやむを得ないか
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液晶パネル部を開けたところ。液晶保護シートにあるイラストは,「まず[NVIDIA]ボタンを押しましょう」という説明になっていたりする
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 液晶パネル部のカバーを開けると,液晶パネルと主要な入力系が姿を見せる。電源を投入できないこともあって,今回は工場出荷時に貼られていた液晶保護シートを貼ったまま撮影しているが,1つ特筆できるのは,ヒンジが,最大で180度近くまで開くようにできていることだ。これはプレイスタイルの自由度を上げてくれるという意味で歓迎したい。
 なお,液晶パネルカバー部にある飾り板は「Tag」(タグ)と呼ばれており,脱着が可能。磁石と,2か所ある位置合わせの爪で固定されているだけなので,簡単に取り外せる。現時点では黒と,カーボンファイバー風のTagが別売りオプションとして用意されているだけだが,今後,ゲームとのタイアップ品も増えていく予定になっているようだ。

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カバー部を開けた状態で横から。ご覧のとおり,ほぼ180度開いた状態までカバーは倒せる
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Tagと呼ばれる飾り板を外したところ。Tag側に磁石が埋め込まれているので,取り付けも簡単だ

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 ようやっと主要な入力系までやってきた。
 先ほど,SHIELDを「ゲームパッドに液晶パネルを取り付けたような形のデバイス」と述べたが,アナログスティックが2本と,D-Pad(十字キー)が1つに,[A/B/X/Y]ボタン,そして[NVIDIA]ボタンと,[NVIDIA]ボタンを囲むように4個配置されたボタンというのは,いかにもゲームパッドのそれである。アナログスティックとD-Padの並び的にはPlayStationシリーズの純正ゲームパッドシリーズ「DUALSHOCK」に近いが,いずれにせよ,現行世代のゲーム機と同じ入力系が用意されていることは分かる。ぱっと握って,スティックを動かしたりD-Padやボタンを押したときの違和感はなかった。

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アナログスティック(左)とD-Pad(右)。コントローラ部分の形状はXbox 360パッド寄りで,D-Padの形もXbox 360パッド風だが,全体的な入力系の配置はDUALSHOCK風だ
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[A/B/X/Y]ボタンの名称と並びはXboxパッドと同じ(右)。D-Padと[A/B/X/Y]ボタンに挟まれた中央部分の5ボタンは,これまでの発表会などで触った限り,[NVIDIA]ボタンが専用ランチャーとホームスクリーンの切り替え用で,残りはミュートの有効/無効やAndroidの基本操作用となる(はず)

SHIELDのアナログスティックは台座部分が相当掘り下げられており,スティック自体の高さはXbox 360パッド並みにある
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 ボタンの押し心地やスティックの感触は,可もなし不可もなしといったところ。ただ,液晶パネルが入力系のフタをするような格好になる都合上,アナログスティックはずいぶんと“掘り下げた”場所へ置かれるだけに,触ったときの違和感がないというのは,なかなかよくできているとはいえそうだ。


想像より複雑な内部構造

〜SHIELDをバラしてみる


 というわけで,本題である。実際に分解していこう。SHIELDが担当編集の私物であるため,今回は復元可能なレベルでの分解を目指していく。

※注意
 SHIELDの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカーはもちろんのこと,筆者,4Gamer編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。

 SHIELDは液晶ディスプレイを折り畳めるクラムシェル(clamshell,二枚貝)型で,分解は少し難しいと考えていたのだが,結果から先に言うと,分解自体はそれほど難しくなかった。

 手順としては,まず本体底面側5か所のネジ隠し蓋を取り外し,隠し蓋の中にある5本のネジと,ヒンジ部にある2本のネジを取り外す。これで,本体グリップ側の上下中央部から“開き”のように開けられる。
 ネジは,ヘックスローブ(六角星形)と呼ばれる特殊なものが多く使われているが,対応ドライバーは,一般的なホームセンターなどで割と簡単に手に入るので,ここ自体は大したハードルではないだろう。むしろ,“スマートフォン分解キット”的な工具セットがない場合,本体にキズを付けることなく隠し蓋を引き抜くことの難度のほうが高いかもしれない)。

本体底面側の隠し蓋を抜き取り,5本のネジを外す。さらにヒンジ部の小型ネジ2本も外す。隠し蓋はラバーグリップに4つ,樹脂部に1つあって,とくに樹脂部の1つは,工具がないと引き抜きにくい
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7本のネジをすべて外した後,グリップ部の上下中央部に設けられた溝に爪を引っかけてこじれば,割とすんなり2つに割れてくれる
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 ヒンジ周辺はやや密度が高めだが,本体の上半分と下半分は,フラットケーブル1本と左右スピーカー用のケーブル2本でつながっているだけ。しかもこれらはいずれもコネクタ経由での接続なので,外すのは容易だ。
 外してみると,メインボードとバッテリーパック,液晶パネルからなる本体へ,入力系が上から覆い被さるような構造になっているのが分かる。

3本のケーブルを外すと,SHIELDは2つのブロックに分けられる。底面側のほうにメインボードやバッテリーパック,液晶パネル部が用意されるので,こちらが本体ということになるだろう
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 ここからしばらく本体側を見ていくが,まず,バッテリーパックは,左右グリップ部と,両グリップ部をつなぐ部分に1つずつセルが収められた3セル型で,合計容量は7350mAhとなっている。5インチクラスの液晶パネルを採用する,最近のハイエンドスマートフォンでも,容量は3000mAh前後が一般的なので,それと比べると倍以上の容量があると述べてよさそうだ。
 もっとも,タブレット端末だと,10000mAh以上のバッテリーを搭載する機種もあるので,SHIELDのバッテリーは極端に大容量というわけでもない。このあたりは,本体重量とのバランスで選択されたのだろう。

バッテリーパックは3セルタイプで,容量7350mAh。製品情報シールによれば,バッテリーパックは三洋電機製。セルはメイドインジャパンとのことだ。左右グリップ部とその中央にセルが配置されており,重量バランスはとれている
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 なお,バッテリーはメインボードとコネクタ経由で取り付けられているケーブルとは別に,1本,別系統でメインボードとつながっているケーブルがある。そのため以後はバッテリーパックを取り付けたままの作業になる。

 続いて,基板中央部分に取り付けられているファンユニットを取り外す。ファンユニットは,30mm径のファンを搭載するブロワーファンで,下の写真を見ると,赤みがかった金属のように思えるかもしれない樹脂製のフレームに,ブロワーファンから少し伸びる銅製テープで固定されていた。
 また,下の写真中央にはゴム製パーツも2個見えると思うが,これらは突起が樹脂製フレーム側の穴に填め込まれ,下からブロワーファンを支えるような格好となっていた。小型でも風量を稼げるブロワーファンだけに,その少なくない振動が本体に直接伝わらないよう,こういう設計になっているのだろう。

ブロワー型ファンを取り外す。ゴム製パーツがブロワーファンを支え,銅製テープが樹脂製フレームに固定するような形になっていた
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 樹脂製のフレームを取り外すとメインボードが姿を見せる。ここで分かるのは,メインボードと液晶パネルをつなぐフラットケーブルがネジ留めされていること。前述のとおり,今回は元に戻すことを前提に分解を進めているので,フラットケーブルがネジ留めだけでなくハンダ付けされている可能性を考慮してここには手を付けず,ヒンジ部のビスを外し,基板とともに液晶側を取り外す。

ブロワーファン固定用のフレームはネジ留めされており,これを外すと,基板のお目見えである
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ヒンジを本体と固定しているネジを外すと,液晶パネルとメインボード,バッテリーパックがまとめて外れてくる
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 メインボードの基板中央を覆っている黒い金属製パーツがヒートシンクで,これは3本のプラスネジによって基板裏から留められている。そして,これを外すと,メインボードの全貌が明らかになる。

メインボードのヒートシンクを取り外したところ
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Tegra 4。ダイサイズは実測で約9.6×9.6mmだった
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 基板中央部のチップがTegra 4だ。刻印は「T40T-A2」となっていた。
 下の写真でTegra 4の上に2つ並ぶチップは,SK Hynix製のDDR3 SDRAM「H5TC4G63AFR-RDA」で,容量は1枚あたり512MB。基板の裏側にも2枚搭載されているので,メインメモリ容量は(当たり前だがスペックどおり)2GBとなる。
 Tegra 4の右に見えるSamsung Electronics製チップ「KLMAG2GE2A-A001」は,容量16GBのeMMC(embedded MultiMediaCard)チップだ。要するにメインストレージとなるフラッシュメモリである。

メインボード。Tegra 4の上に2個並んでいるのがメインメモリチップ,右に1個置かれているのがeMMCだ
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 また,小さいので見落としそうだが,eMMCと3.5mmミニピン端子に挟まれる格好で,モーションプロセッサを得意とするInvenSense製の3軸加速度&3軸ジャイロセンサー「MPU-6050」が搭載されているのも確認できる。

3軸加速度&3軸ジャイロセンサーはInvenSense製となる。金属カバーも目を引くが,付近にアンテナらしき線が取り付けられていることから,金属カバーの下には無線LANとBluetoothのコントローラチップもしくはモジュールが格納されていると思われる
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 基板の裏側も見てみよう。前述したSK Hynix製メモリチップ2枚を除くと,自作PCユーザーにはお馴染みの蟹マークが目を引くが,これはRealtek Semiconductor製のHD Audio CODEC「ALC5639」だ。
 メモリチップから見て左のほうに小さなチップがあるのに気づいた人もいると思うが,これはTexas Instrumentsが手がける,Tegra 4専用のボルテージレギュレータ「TPS 51632」である。

メインボードの裏側。表側と比べるとかなりシンプルな印象を受ける
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3.5mmミニピン端子の近くにRealtek Semiconductor製のHD Audio CODECが置かれている(左)。右の写真はTexas Instruments製のボルテージレギュレータで,同社の製品情報ページを見ると,Tegra用と書かれている
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 Tegra 4自体にほとんどの構成要素が組み込まれていることもあって,メインボード上の実装部品は必要最低限といったところである。採用されているパーツにもこれといって特殊なものはなく,全体的に,形状以外はAndroidタブレットの構成部品そのものと言ってもいいくらいである。

 ここからは,SHIELDの最もゲーム機らしい部分である本体上側を見てみよう。
 もっとも前述のとおり,SHIELDの入力系は既存の据え置き型ゲーム機の純正ゲームパッドと基本的に同じなので,内部構造にこれといった驚きはない。ボタンはよくある電卓タイプで,アナログスティックやトリガーも標準的だ。特筆すべき点があるとするなら,スティックやボタンなどが載る基板は立て込みのビスでしっかりと固定されており,丈夫そうなところか。

左はアナログスティックを取り外したところ。2軸のボリュームセンサータイプで,最近のゲームパッドでも広く使われているものである。右はボタン部も取り外したところだ
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ボタン部の基板。基板上のパターを導電ゴムで接触させる電卓タイプで,こちらも標準的な構造である。基板上には「CY7C643 4532LOXC」と刻印されたチップがある。本チップのデータシートは発見できなかったが,Cyrpess SemiconductorのUSB内蔵マイクロコントローラにCY7C643シリーズがあるので,おそらく同シリーズに属するチップだろう。ゲームコントローラ部はUSB経由でTegra 4と接続されているわけだ
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バンパーボタン,アナログトリガーともに特殊なところはない。オレンジ色のパーツはアナログトリガーの入力を読みとるためのボリュームセンサーだ
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299ドルという販売価格の割にコストがかかっているSHIELD


 最近はスマートフォンやタブレット端末のようなスレート(slate,石板)型デバイスが幅を利かせており,既存のゲーム機でも,クラムシェル型はニンテンドーDSシリーズくらいしかない。クラムシェル型にはヒンジが必須で,しかもヒンジにケーブルを通す必要があることから構造は複雑になりがちだが,SHIELDも,クラムシェル型らしい内部の複雑さを持ったデバイスだと言える。

 内部構造が複雑ということは,組み立て工程も複雑であり,その分コストもかかるわけだが,そう考えると,最終的に設定された299ドル(+送料)という価格はなかなか頑張っていると思う。赤字にはならない価格設定であるはずだが,利益率はそう高くなさそうだ。つまりそれだけNVIDIAはSHIELDに賭けているのだろう。

 日本のゲーマーとしては1日も早く国内で販売するか,北米版で日本の技術基準適合証明を取るかしてもらいたいところである。この問題さえクリアできれば電源を入れられるようになるので,組み立て直した今回のSHIELDを使える日が一刻も早く訪れることを期待して待ちたい。

SHIELD公式Webページ(英語)

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