Optimus Pad
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2011年3月31日,LG Electronics製Android 3.0タブレット
「Optimus Pad L-06C」(以下,Optimus Pad)がNTTドコモから発売となった。国内携帯電話キャリア扱いのタブレット製品としては初の
「Tegra 2」搭載モデルだ。
そんなOptimus Padの発売を受けて,「国内の報道関係者向けに,Tegra 2の持つ可能性をアピールする」という趣旨の説明会が,4月13日にNVIDIA Japanで開催された。
その内容は,
「Tegra 2の概要まとめ」といったところで,
4月4日付けのテストレポートでお伝え済みの内容がほとんど。そのため,興味のある人はそちらもぜひチェックしてほしいが,今回の説明会ではいくつか興味深い発言があったので,そのあたりを中心にレポートしてみたい。
説明会ではLG Elecronics JapanのHi-Chol Kim(キム・ヒチョル)氏(主任/モバイルコミュニケーション プロダクト&ビジネスグループ)が登壇。「片手で持てるサイズで最も大きなタブレットとして,8.9インチを選択した」「Optimus Padは世界市場に先駆けて日本へ投入した。Optimusというスマートフォンブランドで,本格的に日本市場を攻略していく」と,意気込みを披露していた。なお,右は1080pのムービーをHDMI出力するデモ
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NVIDIAが語る「Tegra 2の優位性」をまとめてみる
Steven Zhang氏(Technical Marketing Engineer, NVIDIA)
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NVIDIAの代表として説明に立ったのは,同社のテクニカルマーケティングエンジニアであるSteven Zhang(スティーブン・ザン)氏。序盤は「Tegra 2はSoC(System-on-a-Chip)だが,SoCとは何か」といった内容だったので,
先のテストレポートを参照してほしい。
本稿では,中盤以降を簡単にまとめてみることにした。
1.Flashコンテンツにおける優位性
Zhang氏は「Android端末で『Flash』が動く端末はあったが,Flashが快適に動くのはTegra 2。PCと同じことができる」と述べ,実際にWebブラウザベースの「アメーバピグ」をOptimus Pad上で動かして見せた。
アバターを用いたSNS,アバターピグ。Flashベースなだけに,Flashが安定して動作するOptimus Pad上では快適な操作が行える。
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ちなみにNVIDIAによれば,他社のスマートフォン用デュアルコアプロセッサと比べても,Tegra 2のFlash処理に向けた最適化は相当に進んでいるとのこと。これには,QuadroやGeForceで培ってきた「Adobe Systemsとの協力の歴史」がモノを言っているのだとか。
他社製のSoCよりも圧倒的にFlashへの最適化が進んでいるとZhang氏。HTML5でも優位性があるという
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2.GPUコアにおける優位性
TEGRA ZONEアプリ
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テストレポートでも取りあげた「Tegraに最適化されたアプリを紹介するアプリ」こと
「TEGRA ZONE」だが,そこで扱われているタイトルについて,一歩踏み込んだ説明が行われた。NVIDIAによるSDK(Software Development Kit,ソフトウェア開発キット)などを用いる形でTegraに最適化されたタイトルでは,ポリゴンの量が増えたり,影や光といったエフェクトがリッチになったり,ゲームの難度を上げられたり,一般的なスマートフォン用タイトルよりもボリュームを増したりできるとのことだ。
処理能力が上がるため純粋にポリゴンの量を増やせるだけでなく,テクスチャや陰影がリッチになり,さらにAIの思考能力も向上するという。ゲームレベルやアイテムの数がゲーム機並みになる点についてもZhang氏は「CPU性能が上がり,扱えるデータ量が増えるため」といった説明を行っている
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Zhang氏は,発売予定となっている3D STG「Galaxy on Fire 2」を用いて,Tegra 2に最適化されたバージョンでは,そうでないバージョンと比べて,テクスチャなどに違いがあることを実演してみせてもいる。
開発版だからかどうか,Galaxy on Fire 2では,Tegra 2最適化版(左)とそうでないもの(右)をゲーム中で切り替えられるようになっていたが,ご覧のとおり,前者のほうがテクスチャのディテールはより明瞭だ
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また,NVIDIA広報の中村かおり氏が,Tegra 2に搭載されるGPUコア
「Ultra Low Power GeForce」(以下,ULP GeForce)について,「1から作ったものではなく,
GeForce 6〜7世代の技術を応用したもの。投資の回収が終わった技術を落とし込んでいけるので,もともとモバイル用から始まっているため,“下から上げていく”必要のある他社よりも開発速度面で我々の優位性になっている」と述べていた点も紹介しておきたいと思う。
3.省電力面での優位性
今回示されたのは,「Webブラウズやビデオ再生といった作業を行う場合は,デュアルコアCPUのほうがシングルCPUよりも消費電力面で有利」というシナリオだ。もちろん,デュアルコアCPUの両方に100%の負荷がかかるようなシナリオや,2コアにかかる負荷が一時的に高くなっても,処理にかかる時間がシングルコアCPUよりも短くなるシナリオなども考えられるため,Zhang氏はあくまでも一例だと断っていたが,「同じ処理を行わせる」条件において,デュアルコアCPUはシングルコアCPUよりも消費電力が40%低下するという。
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Flashムービーなどがページ内にいくつもあるような,いわゆる「リッチな」Webサイトを閲覧する場合,シングルコアだとほぼフル稼働になってしまうのに対し,デュアルコアなら余裕があるとZhang氏 |
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「デュアルコアだとシングルコアより消費電力が40%下がる」としたシナリオの各種条件も示された |
Tegra 2では,メインCPUコアとなる2基のCortex-A9とは別にARM7コアを搭載することが知られているが,これにより,ULP GeForceやHDビデオエンコーダ/デコーダ,サウンドコントローラなどの電力供給オン/オフを制御できるともZhang氏は説明していた。これも省電力性の向上に一役買っているとのことだ。
Tegra 2における消費電力制御のイメージ(左)と,Webブラウジング時に行われる電力制御の実例(右)。ARM7コアがPower Management Unitを制御し,それによって処理ユニットごとの電力管理を行っている
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Project Denverの概要
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……以上,駆け足でまとめてきたが,面白いのは,Tegra 2搭載機が他社のデュアルコアモデルよりも早く出てきた背景に,CPUコアではなく,GPUコアの開発速度が影響していそうであることと,「2コアや4コアのCPUより,メニーコアとなるGPUのほうがすごい!」と繰り返し強調してきた“あの”NVIDIAが,デュアルコアCPUによるメリットを冷静に語り出したところだろうか。
とくに後者は,Project Denverとも強くリンクする将来のTegra開発計画において,NVIDIAがCPUメーカー的な立ち位置を強めている証左とも受け取れそうだ。今後のNVIDIAは,CPUメーカー的な発言が少しずつ増えてくるのかもしれない。
2014年まで明らかになっているTegraのロードマップ。搭載タブレットが今夏にも登場と予告されている「Kal-El」(カルエル,開発コードネーム)では,Tegra 2比で「性能」が5倍に達するとのこと(※何の性能からは未公表)。同時に,CPUコア性能を測る「Coremark 1.0」で,「Core 2 Duo T7200/2GHz」を上回るとされている
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ノートPC市場を大きく上回るペースでタブレット&スマートフォン市場は拡大し,次期WindowsはARMアーキテクチャもサポートする。だから,Project Denverで,スマートフォンからスパコンまでのすべてでARMアーキテクチャによるプロセッサを展開するのだというスライド群
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