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印刷2011/09/12 00:00

レビュー

2基のGTX 580によるSLI構成を1枚で実現したウルトラハイエンドカードを試す

ASUS MARS II/2DIS/3GD5

Text by 米田 聡

MARS II/2DIS/3GD5
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
予想実売価格:15万5000円前後
R.O.G.
 2011年6月の「COMPUTEX TAIPEI 2011」でASUSTeK Computer(以下,ASUS)が展示していたグラフィックスカード「MARS II/2DIS/3GD5」を憶えているだろうか。ゲーマー&オーバークロッカー向け製品ブランド「R.O.G.」(Republic of Gamers)に属する本製品は,シングルGPUとして現行最速の「GeForce GTX 580」(以下,GTX 580)を1枚の基板に2基搭載するという,とてつもないカードだ。

 NVIDIAの正規ラインナップにも,ウルトラハイエンドのデュアルGPUソリューションは「GeForce GTX 590」(以下,GTX 590)として用意されている。ただ,あちらはフルスペックの「GF110」コアを2基搭載しつつも動作クロックが「GeForce GTX 570」にすら遠く及ばない水準に抑えられているため,動作クロックが重要な局面では,性能が今一つ振るわなかった。その点MARS IIは,GTX 580のSLI構成をそのままシングルカードで実現しているというのが最大の特徴である。

MARS IIに付属するシリアルナンバー入りカード
R.O.G.
 では実際のところ,“ASUS独自のデュアルGeForceモデル”として,2009年のデュアル「GeForce GTX 285」カード「MARS/2DI/4GD3」以来となるMARS IIは,どういう製品に仕上がっているのだろうか。全世界1000枚限定となるMARS IIのうち,シリアルナンバー「522」の個体をASUSから借りられたので,今回はその実力に迫ってみたいと思う。


3スロット占有でカード長は330mm

重量は驚愕の2.38kgという規格外仕様


MARS IIと,リファレンスデザインを採用したASUS製GTX 580カード「ENGTX580/2DI/1536MD5」とを並べてみたところ。カード長実測267mm(※突起部除く)のENGTX580/2DI/1536MD5が小さく見える
R.O.G.
 さて,製品ボックスを開けてまず目に飛び込んでくるのが,MARS IIの巨大さである。「3スロット仕様の大型クーラーを搭載」というのは,ハイエンドのグラフィックスカードならもはや珍しくもなくなってきているが,特筆すべきは実測330mm(※突起部除く)というそのカード長だ。

 ちなみに,横幅は実測158mm。PCI規格だと,フルサイズで長さは312mm,横幅は107mmと規定されているので,MARS IIは完全に規格外だ。前出のGTX 590デュアルGPUカードだと,カード長は実測278mm(※突起部除く)。また,300mm超のカード長で知られる「Radeon HD 6990」カードでも同305mmと,横幅ともども規格内に収まっているわけで,MARS IIがどれだけトンデモないかは,このあたりからも推測できよう。

 この大きさを生んでいる主要因は何かだが,もうそれは見てのとおり,3スロット仕様の大型クーラーである。“あの”GTX 580を,1枚のカードに2基も搭載するというだけあって,ファンは120mm角相当のものが2基。GPUごとにファンが用意されるイメージである。そして,ファンの回転によってクーラーが振動したりしないよう,大がかりなカバーが取り付けられているため,その重量は実測値で,驚きの2.38kgとなっている。片手で持っていると腕がぷるぷると震え出すほどの重さで,もしPCケースへ組み込むときに手を滑らせでもしたら,カードは無事でもほかのパーツを壊してしまうのではないかと心配になるほどである。

拡張スロットに貼り付けて使う補強シート×2。補強シートが入っていた袋に,使い方が書かれている
R.O.G.
 それほどまでに大きく,重いMARS IIだけに,製品ボックスには,隣接する拡張スロットへ貼り付けることで,拡張スロットにも重さを支えてもらえるようにするゴム製の補強シートが付属している。補強シートはPCI Express x16スロット用とPCIスロット用とが1枚ずつ用意されているが,最低でも1枚は,カードを差したスロットから遠いほうに貼り付けるべきだ。
 「PCケースに組み込んだときにはブラケットで固定できるのでは?」と思うかもしれないが,正直,ブラケットをネジ留めしただけでこの重量を支えきれるとは思わないほうがいい。

R.O.G.
補強シートを拡張スロットの上に置いたところ(※実際にはシールの保護シートを剥がして貼り付けるが,今回は借り物なので置いている)。基本的には,差すスロットの2本隣に一枚を貼っておけば,支点として十分機能するが,貼れる環境なら2枚貼ってしまってもいいと思う
R.O.G.
左の写真のように補強シートをスロットの上に置き,その状態でMARS IIをPCI Express x16スロットへ差したところ。補強シートがカードの下から支えてくれるため,カードは傾いたりしない。というか,補強シートがなければ,確実にカードは傾き,最悪,スロットを破壊してしまうだろう

 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点でメーカー保証は受けられなくなるが,今回はレビューということで取り外してみたい。

GPUクーラーのカバーはネジ留めされており,比較的簡単に取り外せる
R.O.G.
 というわけで,まず2.38kgという重量の大きな要因となっているカバーを取り外してみると,2基のファンがカバー側に取り付けられているのが分かる。また,2基のGPUにはパッシブクーラーが取り付けられており,それらには4本ずつヒートパイプが走っているのも確認できよう。

 この状態でカードの背面にあるネジを外すと,パッシブクーラーを取り外せる。パッシブクーラーは,ミドルクラス以上のASUS製グラフィックスカードでお馴染み,「DirectCU」仕様だ。ヒートパイプがGPUのパッケージに直接触れる構造である。
 面白いのは,ブラケットに近いほうのパッシブクーラーでヒートパイプが1本だけ長く伸び,NVIDIA製のPCI Express 2.0ブリッジチップ「nForce 200」にも掛かるようになっていること。同じクーラーユニットを使い回したりしていないわけで,「コストがかかっているな」といった印象を受ける。
 ASUSは,このGPUクーラーが,GTX 590のリファレンスクーラーよりも22%高い冷却能力を持っていると謳っているが,単に大きなファンで強引に冷やしているわけではないということなのだろう。

パッシブクーラーは,ヒートパイプがGPUに直接触れる仕様。ブラケット側のヒートパイプ中1本はnForce 200にも触れるよう長くなっている
R.O.G. R.O.G.

 ただ,2基のGTX 580を1枚の基板に搭載して安定動作させるとなると,冷却能力が高いGPUクーラーを搭載するだけでは十分条件にならない。それは,MARS IIの基板を見れば一目瞭然だ。

MARS IIの基板。2基のGPUとメモリチップ,nForce 200のスペース用のスペースを除くと,ほとんどが電源回路といった印象だ
R.O.G.

カード背面の金属板は,一番最後まで取り外せない。空気孔があることも分かるように,基板背面のメモリチップ用ヒートスプレッダではないため,純然たる補強板と見ていい
R.O.G.
 MARS IIでは,2基のGPUに挟まれるような形で,基板中央に電源回路がずらっと並んでいる。
 ASUSによれば電源回路は合計21フェーズだそうで,配置を見る限り,GPUが各8,メモリコントローラが各2で,nForce 200用が1といったところか。発熱量が低いとされるロゴマーク入りチョーク「Super Alloy Choke」や,長寿命が謳われるコンデンサ「Super Alloy Capacitor」,そして対応電圧を広げた「Super Alloy MOSFET」からなる,ASUS独自のグラフィックスカード用電源回路「Super Alloy Power」が採用されており,基板上の余裕はほとんどないほどだ。
 限られたスペースに詰め込めるだけ詰め込んだ電源回路によって,“大メシ喰らい×2”を安定的に動作させようという意図が,この基板設計からは窺い知れる。

R.O.G.
GTX 580 GPU。言うまでもないことだが,これがカード上に2基搭載されている
R.O.G.
PCI Expressブリッジチップは,当然nForce 200が採用されている。リビジョンはA3だ
R.O.G.
搭載するグラフィックスメモリチップはSamsung Semiconductor製の1Gbit品「K4G10325FE-HC04」。動作クロック5000MHz相当(実クロック1250MHz)までサポートするものだ。実のところこのあたりは,GTX 580のリファレンスカードと同じ仕様である
R.O.G.
基板背面には,グラフィックスメモリチップに加え,NECトーキンが開発した「プロードライザ」というノイズ対策デバイスが2基搭載されている。プロードライザは,コンデンサの一種で,低いインピーダンスと実装面積の狭さが特徴とされるデバイスだ


GTX 580のSLI構成と性能を比較

ベンチマーク結果は同等レベル


Maximus IV Extreme-Z
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:ユニティ(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
実勢価格:3万3000〜4万1000円程度(※2011年9月12日現在)
R.O.G.
 序盤で,「フルスペックのGTX 580を2基搭載する」と述べたMARS IIだが,厳正を期すならその表現は正しくない。というのも,リファレンス仕様を踏襲するASUS製グラフィックスカードは,「リファレンス+10MHz」のコアクロックが設定されるのが最近の定番になっており,MARS IIでもこの“ルール”が適用されているからだ。
 つまり,GTX 580のリファレンスクロックだと,コア772MHz(シェーダ1544MHz)となっているのに対し,MARS IIではコア782MHz(シェーダ1564MHz)になっているのである。

 ちなみに784MHzというコアクロックは,GTX 590比で174MHzも高く,そのまま比較すると,GTX 590のレビューにおけるテスト結果を踏襲することになりそうだ。そのため今回は,“ASUSルール”が適用されたGTX 580カード「ENGTX580/2DI/1536MD5」を2枚用意し,SLI動作させた状態(以下,ENGTX580 SLI)と同一クロックで比較したり,MARS IIのオーバークロック動作を試したりすることにした。
 テスト環境はのとおりだ。


 テスト項目は,4Gamerのベンチマークレギュレーション11.0に含まれるものから,「3DMark 11」の「Performance」および「Extreme」プリセットと,「S.T.A.L.K.E.R.:Call of Pripyat」(以下,STALKER CoP),「Battlefield: Bad Company 2」(以下,BFBC2)の「高負荷設定」を選択し,さらにBFBC2では8xアンチエイリアシング&16x異方性フィルタリングを適用した状態(以下,8x AA&16x AF)でもテストする。なお,STALKER CoPとBFBC2の解像度設定は,1920×1080ドットと2560×1440ドットを選択した。

ASUSの販売資料。1GHz動作が可能と謳われる
R.O.G.
 ところで,なぜオーバークロックなのか。それはR.O.G.というブランドがオーバークロックも指向していること,そしてもちろんのことだが,ワンプッシュでファン回転数の自動制御を止めて最大にまで引き上げる[Turbo FAN]ボタンがカード上に用意され,本ボタンを押してファン回転数を最大化したときには,動作クロック1GHzを達成できると,ASUSが謳っているからだ(※英語版の製品情報ページではなく,同社の販売資料に書かれている)。

 付け加えると,MARS IIの補助電源コネクタは8ピン×3(!)で,PCI Express x16スロットも加えると 75+150×3=525W もの電力供給が可能である点も,理由としては挙げられる。

さも当たり前のように8ピン×3が用意された補助電源コネクタ(と[Turbo FAN]ボタン)。試した限り,8ピン×2では起動しなかったので,8ピン×3を問題なく供給できるだけの出力を持った電源ユニットが必要だ。一応,グラフィックスカード用の6ピンコネクタ2系統から8ピンへ変換できるケーブルは2つ付属している
R.O.G. R.O.G.

 さて,今回オーバークロックに用いたのは,MARS IIに付属するユーティリティソフト「ASUS GPU Tweak」である。

ASUS GPU Tweak。グラフィックスカードの設定ユーティリティとして最近の定番となっているMSIの「Afterburner」によく似た印象だ。左側のウインドウでは温度や負荷状況をグラフで確認でき,右側では動作クロックやコア電圧などを変更できる
R.O.G.

 ASUS GPU Tweakは,各種ステータスをグラフ表示するウインドウと,コアクロックとコア電圧,メモリクロック,そしてファンの回転数が設定できるウインドウとで構成されている。
 ASUS GPU Tweakで設定できる項目とその範囲は以下に示したとおりだ。

  • コアクロック:582〜1182MHz
  • コア電圧:0.964〜1.1V
  • メモリクロック:3808〜4808MHz
  • ファン回転率:20〜100%

ASUS GPU Tweakの「Mars II」と書かれた部分をクリックすると,2基のGPUで設定を同期させるか,それぞれ個別に設定するか選択できる。もっとも,同期させる以外の選択肢にメリットがあるとはあまり思えないが
R.O.G.
 設定は2基のGPUで同期させることも,それぞれ個別に保持させることも可能で,さらに3Dアプリケーション実行時と2Dアプリケーション実行時とで別の設定を切り替えさせることもできる。
 設定した値は,「Profile」の項目にある[1]〜[4]の数字をクリックするとプロファイルとして保存されるようになっている。一度保存すれば,あとは数字の部分をクリックするだけで設定を復元可能だ。

 なお,「Profile」の欄には[S]と[G]というアイコンも用意されているが,この2つはASUSによるプリセットを読み出すものだ。マニュアルがまだ整備されていないため,正確なところは分からないものの,試してみると,[S]では控えめ,[G]ではやや高めの自動クロック設定が適用されたので,順に「Silence」「Game」の意味ではなかろうか。

 ……といったところがASUS GPU Tweakの概要だが,正直,現時点では作り込み不足が否めない。
 とくに問題なのが,肝心のオーバークロック設定周りだ。動作クロックや電圧のスライダーは,マウスのドラッグで直接動かしたり,スライドバーの両端に用意された矢印マークをクリックしたりすることで行えるのだが,カーソルキーを使った操作がサポートされていないのである。スライドバーを動かしてみる限り,動作クロックは1MHz,電圧は0.001V刻みでそれぞれ指定できそうなのに,実際問題としてマウスでそこまでの細かな操作は不可能。かといって矢印マークの押下では刻みが大きすぎるのである。

 また,ログが記録できないとか,スキンの変更機能がサポートされているのに,換えのスキンが用意されていないといったあたりも,現時点の不満として挙げられる。このうちログ取得機能は2011年9月中のアップデートで実装される予定だそうだが,オーバークロック設定時のカーソルキー対応も早急に行われるべきだろう。

 なお,テストにあたって「ログが取得できない」というのはかなり重大で,そのままではGPU温度やファン回転数のテストができないため,ここだけはMSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 2.1.0)を用いている。「ならば始めからAfterburnerを使えばいいんじゃないの?」という突っ込みは当然あると思うが,AfterburnerではMARS IIのGPUコア電圧を変更できないため,このあたりはご了承を。

R.O.G.
 さて,今回のオーバークロックするにあたっては,まずコア電圧を変更せずにコアクロックだけを上げ,MARS IIの標準コア電圧におけるコアクロック上限を調べた。そのうえで,次の段階としてコア電圧を上げた場合の限界を調査している。コア電圧を上昇させた場合の限界は,メモリクロックのオーバークロックも含めて設定してみた。そのうえで,今回用意したテストがすべて完走したことをもって,「安定動作した」と判断することにしている。

コアクロック878MHz時のファン設定。電圧を引き上げた状態GPU温度が50℃を超えるファン回転数が上がるように設定したことで,コアクロックを878MHzにまで引き上げることができた
R.O.G.
 で,結論から先に述べると,定格コア電圧における安定動作の上限は,コア860MHz。MARS IIの定格よりも78MHz高い値だ。一方のコア電圧変更時は,設定可能な最大値である1.100Vまで引き上げても,コアクロック878MHzが限界で,1GHzには遠く及ばず。コア電圧を1.100Vまで引き上げたときは,メモリクロックを4196MHz相当(実クロック1049MHz)まで引き上げ,さらにGPU温度が50℃を超えたときにファン回転数を高める設定にしているが,[Turbo FAN]ボタンからファン回転数を最大にしても,安定動作の上限に変化はまったく生じなかった。

 コアクロック設定1GHzでWindowsは立ち上がったので,ASUSの言い分に嘘はないのだが,3Dアプリケーションを起動すると即ハングアップしたので,標準搭載のGPUを用いた,空冷での常用限界は800MHz台後半と言うほかない。

※注意
GPUのオーバークロックは,GPUやグラフィックスカードメーカーの保証外となる行為です。最悪の場合,グラフィックスカードの“寿命”を著しく縮めたり,壊してしまったりする危険がありますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。本稿を参考にしてオーバークロックを試みた結果,何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者および4Gamer編集部も一切の責任を負いません。

外部出力端子は,HDMIとDisplay Port,そしてDVI×2基を搭載。3D Vision SurroundやNVIDIA Surround(2D)といったトリプルディスプレイ出力を標準でサポートする
R.O.G.
 以上を踏まえて,テスト結果を見ていこう。
 MARS IIはカードの定格動作と,定格電圧のままコアクロック(および同期するシェーダクロック)のみ860MHzへ引き上げた状態,さらに,コア電圧を1.100Vへ引き上げ,コアクロックを878MHz,メモリクロックを4192MHzにそれぞれ設定した状態の3パターンでスコアを示すことにし,以下順に「MARS II(定格)」「MARS II@860MHz」「MARS II@878MHz(OV)」と表記する。比較対象は先ほど述べたとおりENGTX580 SLIだ。

 その結果はグラフ1〜5のとおりで,MARS II(定格)のスコアは,ENGTX580 SLIとほぼ同じ。GTX 580のSLI構成と同じ性能を1枚で実現できていることからして,MARS IIが現時点における世界最速のグラフィックスカードであることに疑いの余地はない。
 ただ同時に,オーバークロック設定のメリットがほとんどないのも見て取れよう。3DMark 11のExtremeプリセットや,8x AA&16x AF設定時のBFBC2で,わずかにスコアが伸びた程度だった。


 オーバークロック設定において,かかるリスクに対して得られるメリットが少ないのは,消費電力を見るとよりはっきり分かる。
 ログが取得できるワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を測定。30分間無操作で放置した状態を「アイドル時」とし,各ベンチマークテスト実行時の最大値を抜き出した結果がグラフ6だ。

 3Dアプリケーション実行時におけるシステム全体の消費電力は,MARS IIを差した時点で700W近くなる。なので,それからプラス何Wという話をしたところで誤差といえばそれまでなのだが,それでもMARS II@878MHz(OV)で,少なくともフレームレート以上に“景気よく”消費電力をブーストさせているのは目を引くところである。
 なお,MARS II(定格)とENGTX580 SLIを比較したとき,アイドル時の消費電力で前者が低くなるのは「構成部品がより少ないから」と説明が付くのだが,アプリケーション実行時でMARS II(定格)のほうが高くなるのは少々不思議だ。電源回路か,意外とクロックが伸びなかったGPUコアか,はたまたその両方が原因かもしれない。



冷却性能は極めて優秀で

デュアルGPUカードにしては静か


R.O.G.
 MARS IIの性能は分かったが,あの大仰なGPUクーラーはどれくらいの性能を持っているのか。ここからは冷却能力や動作音をチェックしていきたい

 普段筆者は,Afterburnerのログ機能を用いてGPU温度を測定しているのだが,前述したとおりAfterburnerがMARS IIのオーバークロックに利用できないため,今回の温度測定は「GPU-Z」(Version 0.5.4,以下 GPU-Z)のログ取得機能を用いることにした。
 GPU-Zでは,2つのGPUそれぞれの温度表示を「GPU1」「GPU2」といった具合に確認できるものの,2つのログを同時に記録できないため,今回は,GPU1と表示されているほうの値を採用する。

 計測は室温25℃で,バラック状態のシステムを使って3DMark 11のデモを30分間ループさせ,温度の値とファンの回転数の値とをログで取得することにした。
 そのときの温度推移を示したのがグラフ7だ。
 MARS II(定格)のGPU温度は,アイドル時だと40℃前後で安定しており,高負荷時で最大83℃を記録。高負荷時に注目すると,MARS II@860MHzでも最大85℃,MARS II@878MHz(OV)においてはファンの回転数設定を変更していることもあって84℃である。いずれのパターンもアイドル時のGPU温度に大きな差がないのも特徴といえる。
 ENGTX580 SLIは,アイドル時が50℃前後で,最大91℃だった。MARS II搭載クーラーの高い冷却力が分かる結果といえるだろう。

 なお,前述のとおり,2基のGPUで同時にログを取得できないため,もちろん断言はできないのだが,GPU-Zの温度表示を目視していた限り,MARS IIにおいてはGPU1とGPU2とで温度の差がほとんどなかった。一方,ENGTX580 SLIでは,CPUソケットに近いPCI Expressスロットに差したカード(=GPU1)のほうが,セカンダリのカードによって吸気孔がふさがれる関係で,温度が高くなる傾向にあるようだ。今回,ENGTX580 SLIの温度が高く出ているのは,そういった事情もあると思われる。

※グラフ画像をクリックすると,より見やすい拡大版を別ウインドウで表示します
R.O.G.

 さて,上記した温度推移の測定と合わせて,ファンの回転率推移もログを取得している。その推移をまとめたものがグラフ8だ。
 それぞれの最大ファン回転率は,MARS II(定格)が78%,MARS II@860MHzが84%,MARS II@878MHz(OV)が87%,ENGTX580 SLIでは84%となった。
 ただ残念ながら,ASUS GPU TweakやGPU-Zではパルスセンサーによるファン回転数の取得が行えなかった。なぜかAfterburnerでは取得できており,MARS IIの場合,25%で860rpm,100%で2340rpmと出ていたが,今回に限っていえば,Afterburnerをどこまで信頼できるか分からないため,参考程度にしてもらえればと思う。

※グラフ画像をクリックすると,より見やすい拡大版を別ウインドウで表示します
R.O.G.

 上の結果からも分かるように,3DMark 11を実行した高負荷状況下でもデュアルGPUを80℃台に抑え込めており,MARS IIの搭載する大型GPUクーラーの冷却能力は大したものだ。ただ,そうなると動作音が気になる人もいるだろう。

 結論から述べると,MARS IIの動作音は,少なくともENGTX580 SLIよりは耳に優しい印象だ。下に6つずらずらと並べたのは,グラフィックスカードを差した状態で,CPUソケットから遠い方向へ200mm離れたところへマイクを置き(※ENGTX580 SLIではセカンダリカードから200mm離れることとなる),アイドル時と,3DMark 11実行時とで,ファンの動作音を録音した結果である。ぜひ,実際に聞き比べてみてほしい。
 MARS IIにおける,アイドル時の静かさは特筆すべきレベルだ。また,3DMark 11実行時も,静かとはいえないが,うるささの主体は風切り音であり,我慢できる水準にあるといえるだろう。

MARS II(定格)のアイドル時
音声ファイルを再生する

アイドル時のファン回転数は20〜25%程度。ほとんど聞こえないほどの騒音レベルといえる。なお,オーバークロックした場合でも,アイドル時の動作音は変わらなかった

ENGTX580 SLIのアイドル時
音声ファイルを再生する

さすがGTX 580カードということで,アイドル時は十分静か。ただ,MARS II(定格)と比べると,やや甲高い音が混ざっている


MARS II(定格)の3DMark 11実行時
音声ファイルを再生する

かなり大きい騒音に感じられるかもしれないが,実際の聴感は換気扇や扇風機のような風切音が主体になっている

MARS II@860MHzの3DMark 11実行時
音声ファイルを再生する

MARS II(定格)の高負荷時とほとんど変わらない騒音である

MARS II@878MHz(OV)の3DMark 11実行時
音声ファイルを再生する

MARS II(定格)やMARS II@860MHzと比べてわずかにうるさくなってはいるが,さほど変わらないともいえる

ENGTX580 SLIの3DMark 11実行時
音声ファイルを再生する

甲高い音が混じっているため,不快感がやや大きい。騒音レベルはMARS IIとあまり変わらないかもしれないが,MARS IIのほうが我慢できる音質である



現時点で世界最速の単体カードなのは間違いない

あくまでも「すべてを理解している人」向け


MARS IIの製品ボックス
R.O.G.
 というわけで,今回はMARS IIをあれこれ試してきた。
 MARS IIは,1枚のカードでGTX 580 SLIとほぼ同程度,もしくはそれ以上の性能を備えているといっていいカードだ。採用されているクーラーの冷却性能も申し分ないし,騒音も許容できるレベルである。
 現時点で世界最速の単体カードであることは間違いなく,肩を並べるような製品も存在しない。

 ただ,実際に使おうと思った場合,まず15万5000円前後という予想実売価格が,極めて高いハードルとして立ちはだかる。ENGTX580 SLIならカード1枚あたり4万8000〜5万4000円程度(※2011年9月12日現在)なので,MARS IIを買う予算があれば,3枚買えてしまうのである。また,購入したら購入したで,今度は規格外極まりないサイズと重量のハンドリングが必要だ。
 その意味でMARS IIというのは,性能のためならすべてを犠牲にできるような,「すべてを理解している人」向けの製品ということになるだろう。ただ,自動車競技に「曲がることすらできなくても,とにかく速ければいい」というカテゴリが存在するように,速さだけをひたすらに求めたMARS IIが存在すること,それ自体は意義あることだと思う。孤高のハイエンドカードとして憶えておきたい1枚だ。

MARS IIの製品紹介ページ(英語)

  • 関連タイトル:

    Republic of Gamers

  • 関連タイトル:

    GeForce GTX 500

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