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印刷2012/12/08 00:00

インタビュー

DHARMAPOINTに聞く新型マウス「DRTCM37&38」。これが「俺達のIE 3.0」だ!?

DRTCM37。全面ラバーコートの黒モデルとなる
DHARMAPOINT
 日本発のゲーマー向け周辺機器ブランド「DHARMAPOINT」(ダーマポイント)が,マウスの新製品「DRTCM37」「DRTCM38」を12月14日に発売すると発表したのは,2012年11月9日のことだ(関連記事)。
 DHARMAPOINTにとって約2年半ぶりとなる完全新作のマウスは,国内の著名プレイヤーに意見を聞いて生まれたという,いわゆる「IntelliMouse Explorer 3.0」(以下,IE 3.0)クローンとなっているが,製品としての見どころや開発時のこだわりはどこにあるのか。今回はそのあたりを,DHARMAPOINTブランドの製品開発担当として,全製品の開発に携わってきている梅村匡明氏にがっつり聞いてきたので,お伝えしたい。

つや消しの黒でコーティングされた黒カバーのモデル「DRTCM38BK」と,ラバーコートされた青カバーの「DRTCM38BL」の2モデルで展開されるDRTCM38。本体側面のグリップ部はドライサンド加工済みだ
DHARMAPOINT DHARMAPOINT

 なお,あらかじめお断りしておくと,筆者BRZRKは,DRTCM37と38の開発に協力した立場でもあるため,筆者一人でインタビューに臨むと,一部で不自然な状況が生じたり,「すでに知っている」前提で話を進めてしまったりする可能性があったため,今回は担当編集と共同で行っている。そのため以下,筆者の発言は「BRZRK」,担当編集の発言は「4Gamer(編)」と書いて区別するので,この点はご了承のほどを。


DRTCM37と38の開発には国内の有名プレイヤーが参加

そしてできあがった「俺達のIE 3.0」


BRZRK:
 本日はよろしくお願いします。さっそくですが,今回の新製品であるDRTCM37とDRTCM38の開発コンセプトを聞かせていただけますか。

梅村匡明氏:
梅村匡明氏
 そもそもの話としては,「DRTCM12」と「DRTCM15」があまり受け入れられなかったというのがあります。センサーを思い切って前方へ寄せたりと,いろいろアイデアを詰め込んで,一部のコアなユーザーには歓迎してもらえたのですが,それ以外のゲーマーさんには響かなかったんですね。「難しそうなマウスだ」と,敬遠されてしまったのかもしれません。

4Gamer(編):
 それで,今回は180度転換した,ということでしょうか。失礼を承知で――というかニュース記事でも書かせていただきましたが――今回の新製品は,やはりIE 3.0のクローン的な製品ですよね。

梅村匡明氏:
 いや,実はDRTCM12と15も,IE 3.0を頭に入れながら開発したんですよ。

4Gamer(編):
 なんと,それは気づきませんでした。言われてみれば面影がなくもないですね……。
 要するに,IE 3.0を頭に入れつつも,コア層のさらにコアなところへ行ってしまった,といったところでしょうか。

梅村匡明氏:
 そうですね。なので,「それを引き戻す必要がある」と。本当は,DRTCM37と38のあとに,DRTCM15(や12)を出すのが正しい順番だったと,今は考えています。なので,1つ飛びになってしまっていたところに戻ってきたといった感じでしょうか。

 開発側から発言すると「敗北」になってしまうのですが,(DRTCM12&15の開発では)マーケティング的なことをきちんと考えるべきだったとは思いますね。
 今だから話せますが,僕にはプライドもありますから,先行する成功製品があったとして,同じようなものを“ぺろっと”市場に出すというのはやはり抵抗があります。ただ,前がこういう状況なので,古くからのゲーマーの方や,いまバリバリに最前線で戦っているゲーマーの方々に話を聞いて,現在のDRTCM37や38の形になっています。

4Gamerが持ち込んだIE 3.0(中央)と,DRTCM37(左),DRTCM15(右)
DHARMAPOINT

BRZRK:
 ちなみに開発が始まったのはいつ頃のことでしょうか。DHARMAPOINTにとって,マウスの新作は約2年半ぶりです。その間,運営母体の変更(※編注:シグマA・P・Oシステム販売からクラストへ)があったわけですが。

梅村匡明氏:
 正直にお話してしまうと,(クラストへの移行直後は)すぐにものづくりができる環境ではなかったですね。会社として流通というか,製品を売る業務を行ったことがなかったので,社内で環境を整備していくのに,相当な時間を要しました。
 また,製品計画自体はあったものの,立ち消えになったり,開発費がかかりすぎるという理由で却下になったりしたものもあります。

 そんなわけで質問にお答えすると,DRTCM37と38の開発計画が出てきたのが去年の終わり頃で,具体的に動き始めたのは今年の4月くらいです。そこからは急ピッチで(動いており,それは),僕らのなかでもかなり速いペースじゃないかと思います。外から見ると2年半も開発していたように見えるかもしれませんが,内部的にはかなり短い期間なんです。

4Gamer(編):
 4月というのは,最初のモックができたタイミングのことですか。

梅村匡明氏:
 いえ,モックというお話だと,もうちょっと後,5月くらいですかね。その前段階では,デザイン上の図面を引いたり,予算の承認を得るための資料を作ったりしていました。

4Gamer(編):
 となるとモックが出てから発表まで約半年。それは本当に急ピッチですね。

インタビューは,さまざまなサンプルを置き,逐次手に取ったりしながら進んだ。写真中央に3個見えるクリーム色のサンプルがモック(モックアップ,実物大の模型)である
DHARMAPOINT

梅村匡明氏:
 実のところ,スケジュールがボッコリと空いていた訳ではありません。本当はDRTCM37と38の前に,もう1つ出す予定だったんですよ。今はペンディングになっていますが,本当は併売する予定で動いていました。そして結果的には,こっち(編注:DRTCM37&38のこと。梅村氏は両製品を1つの製品ラインとして扱っていた)1本に絞って動いたという感じになっています。

BRZRK:
 シグマA・P・Oからクラストへの移行後に,2つのラインを動かしていたということですか。

梅村匡明氏:
 そうです。厳密に言うと,ペンディングになったほうにも光学センサー搭載モデルとレーザーセンサー搭載モデルがあったので,当初の計画では,今頃,2種4モデルが展開されているはずでした。

BRZRK:
 なるほど,空白の時間の裏ではそんなことがあったんですね。

梅村匡明氏:
 昨今は不景気ですからね,色々と制限がかかってしまいます……。

4Gamer(編):
 ということは,そのペンディング状態のマウスと今回のマウスでは,方向性が異なるということですよね。片方はIE 3.0的なものですので,もう片方はそうでないということですか。

梅村匡明氏:
 そうです。当時から決まっていました。
 (DRTCM37&38について言うと)最初は皆で「IE3.0的な何か」を作れないかなと思ったんですよね。で,いろいろとしているうちに,だんだんIE 3.0そのものっぽく……(笑)。

4Gamer(編):
 今回,DRTCM37と38の開発には,「国内屈指のプレイヤー」が参加したとされています(関連記事)。「いろいろ」というのは,彼らの意見を聞いているうちに,ということですか。

梅村匡明氏:
 そうですね。BRZRKさんなどにお見せして,お話を聞いたのは5月頃でした。モックができて本当にすぐと言ってもいいタイミングです。

4Gamer(編):
 BRZRKさん以外にはどんなメンバーに声をかけたのでしょう。

梅村匡明氏:
 MatchaさんにKeNNyさん,yukishiroさん,uNleashedさん,Nemukeさん,StanSmithさん,Crizeさんといったところです。

4Gamer(編):
 豪華メンバーだ。というか以前4Gamerでマウスレビューを書いていただいていたCrizeさんも入っているんですね。

梅村匡明氏:
 Crizeさんは僕が強引に押し込んだという感じです(笑)。あと,名前を出せないプレイヤーの方が何人かと,もちろん,イベント会場にいた――こう表現しては失礼かもしれませんが――名もなきプレイヤーさんの意見も取り入れています。

BRZRK:
 最前線の人もいれば,一線を退いた人もいますよね。ボクも含め,どういった基準で選ばれたのでしょう。

梅村匡明氏:
 単純なのですが,イベント会場の話を抜きにすると,「僕がFacebook上で連絡を取れる」というのが条件でしたね。ボツになっちゃう可能性があるというのと,情報が外に漏れると問題になってしまうというのがある,一方で諸事情によりNDA(Non-Disclosure Agreement,機密保持契約)を結ぶことができないといった理由で,こういう条件にした次第です。

BRZRK:
 絶対に口外しない人ということですね。

梅村匡明氏:
 現役プレイヤーをどうするか一番考えましたね。若い子の場合,「いやあ,ダーマの新しいマウス触ってきたぜぇ!」という感じになっちゃうのが一番怖かったので,(すでにこういうことを経験したことのある人のなかから)信頼できる方を選びました。

4Gamer(編):
 そして,選ばれた人達に,5月頃にモックを見せた,と。

BRZRK:
 でしたね。八王子の某所で。奥まった席で「実はこれなんですよ」と,モックが出てきて。

梅村匡明氏:
 そのときはまだ,最終的な「GO」の判断が出ていなかったため,「もしかしたらボツになっちゃうかもしれないです」と言ってお見せした記憶があります。

BRZRK:
 ええ,逆にボツになる可能性もあるなら言いたいこと言っちゃおうかなと思って好き放題言いました。

梅村匡明氏:
 それはもういろいろな意見を多数いただきました(笑)。

4Gamer(編):
 で,先ほどのお話に戻って,いろいろな意見を取り入れていったら,いよいよIE 3.0クローンになっていったというわけですよね。

BRZRK:
 もうIE 3.0にしちゃえよ! 的な。

梅村匡明氏:
 「YOUやっちゃいなよ!」みたいな感じでしたね……(笑)。

4Gamer(編):
 DHARMAPOINTの製品キャッチコピー的に表現するなら,皆で意見を出し合っていくうちにだんだんと「俺達のIE 3.0」になっていった,といったところでしょうか。

梅村匡明氏:
DHARMAPOINT
 ああ,それいいですね(笑)。まさにそんな感じです。もう途中から皆さんというか,謎の圧力で「俺達のIE 3.0」的な方向に向かっていました。

4Gamer(編):
 プレイヤーの意見を取り入れることで,現在の形になったわけですけれども,当初の形状から何が一番大きく変わりましたか?

梅村匡明氏:
 最も大きく変わったのはマウスの“握り”ですね。あとは,DHARMAPOINTというブランドのこれまでを考えると,チルトが削られたのは大きいと思います。本当に,いろいろとメスを入れました。

BRZRK:
 当然のことだと思いますが,「削れ」と言われると,開発者として思うところもありますよね。そういった意見を突っぱねることも可能だったと思うんですが,今回,それはしなかったと。

梅村匡明氏:
 はい,突っぱねることはしませんでしたね。「好きなマウスを作ります」っていうのではなく,先ほどのお話で言えば「俺達のIE 3.0」という指針がありましたから。

4Gamer(編):
 今回,開発の初期と中期,最終版に近いものと,3つモックを用意していただいていますが,中期のモックで一度本体が細くなっていますよね。これはどういった経緯があってのものですか。

梅村匡明氏:
 「握りをIE 3.0と同じにしてくれ」という意見をいただいて,カーブの値を数字で入れていった結果が中期の形状になりますね。

4Gamer(編):
DRTCM37(左)とIE 3.0(右)。DRTCM37のほうが,全長など,全体的に若干小さい
DHARMAPOINT
 なるほど。ただ,値を入れていくということであれば,極論,まったく同じサイズと形状にすることもできなくはないですよね。DRTCM37と38はIE 3.0と比べて若干小さめですが,この理由は何なのでしょう。

梅村匡明氏:
 IE 3.0は大きくて持て余すというのがあって,どうしても小さくはしたかったので。その意味では,最後まで残ったDHARMAPOINTの主張と言えますね。

4Gamer(編):
 完全に同じにしてくれといった意見はありましたか。

梅村匡明氏:
 いえ,それは不思議と全然ありませんでした。「このあたりに小指のサポートが欲しいな」とか,皆さん,握りの話に集中していた印象です。

BRZRK:
 最初のモックの時点で,ボクは握りの形状だけに集中して話していた記憶があります。
 ひょっとして,IE 3.0と同じサイズだったら,「デカい!」っていう意見が出たかもしれませんね。ただ,モックごとに微妙に大きさは異なりますけど,サイズがIE 3.0より小さめというのは最初から最後まで変わっていないと記憶しています。

4Gamer(編):
 ではなぜ,最初のモックの時点ですでに小さく,最後までそれを守り通せたのでしょうか。何か事前のデータがあったのですか。

梅村匡明氏:
DRTCM15
DHARMAPOINT
 それはコイツです(とDRTCM15を指差す)。

BRZRK4Gamer(編)
 ああ,なるほど!

梅村匡明氏:
 先ほど,DRTCM15が広く受け入れられなかったのを戻してみる作業だったとお話しましたが,そういう流れなので,最初の数値のポイントはもうこれ(=DRTCM15)ですね。微妙に異なってはいますが,サイズ的には,ほぼこれがスタートです。

BRZRK:
 お尻のところが(DRTCM37や38とDRTCM15では)全然違いますから,気づかなかった。なるほど,そういうことだったのか。

左から順に,開発後期,開発中期,開発初期のモック。スカートのところに溝が何本か彫られているが,こういったものも「俺達のIE 3.0」化のなかで消えていったとのことだ。最終製品の側面に溝は彫られていない
DHARMAPOINT


「チルト廃止」の葛藤と

見た目以外は相当に異なるサイドボタン


4Gamer(編):
 先ほど,チルトが廃止されたという話が出ましたが,これ,DHARMAPOINTにとっては極めて大きな変更ですよね。

BRZRK:
 やはりDHARMAPOINTのマウスというとチルトのイメージが強いですよね。

梅村匡明氏:
DRTCM37と38ではスクロールホイールのチルト機能が廃され,センタークリック機能付きスクロールホイールとなった
 チルトだけは外さないように,外さないようにと,いろいろと話をしているときにも誘導尋問的に話の流れを作って,「やっぱりチルトって必要ですよね?」と押していたにもかかわらず,皆さんから「いらないっすね」って(笑)。そういった事情で,今回はこんな仕様になっています。

BRZRK:
 チルトに関してはボクとかKeNNyがずっと口酸っぱく言ってたかもしれませんね。

梅村匡明氏:
 僕のほうでも,割としつこく必要性を繰り返したんですよ。それでも,「いや,いりません」ってキッパリ。

BRZRK:
 チルト操作って,本来はどういった使い方を想定していたのでしょうか。

梅村匡明氏:
 サイドボタンの延長ですね。「ボタンとして使ってください」というのがありました。親指(でのサイドボタン操作)でもいいですけれど,人差し指をなぎ払うだけでスイッチが入るのも有効だろうと。
 ゲーマーのなかには,サイドボタンを絶対に使わない人もいますし,ボタンがあれば全部使うという人もいます。なので,DHARMAPOINTとしては,より多くの人に使ってもらえるよう,どちらにも合わせたい。でも単純にボタンをぽんぽん増やすと操作しにくいということで,チルトにしたという経緯があります。

BRZRK:
 なるほど……。しかし,少なくとも日本のコアゲーマーは不要という判断をしたと。

梅村匡明氏:
 そういうことでしょうね。

BRZRK:
 自分の話ですいませんが,一応,世界大会に何度か出場した立場から言わせてもらうと,チルトボタンに何を割り振ればいいのか,全然思い浮かばないんですよね。
 あとは,チルト入力するときに指がマウス本体を左右方向に押す格好になって,マウス自体の位置を押してしまうのはイヤだなあと思っていたりはします。

梅村匡明氏:
 ああ,それはあり得ますね。
 DHARMAPOINTとしては,コアなゲーマーからカジュアルなゲーマーまで広くカバーしようとしていたため,結果としてはチグハグになっていたのかもしれません。

BRZRK:
 商売ということを考えると仕方ないのかもしれませんね……。

4Gamer(編):
DHARMAPOINT
 一方,IE 3.0において,大きな遊びが賛否両論を呼んだサイドボタンは,それほど変わっていないように見えます。少なくとも配置と大きさはほとんど同じですよね。

梅村匡明氏:
 確かに配置というか,前後の位置関係は残念ながら変わっていないですね。僕は変えたかったんですけれど。

BRZRK:
 ただ,サイドボタンの形状は,最初期に見せていただいたモックと比べると,かなり変わりましたよね。

梅村匡明氏:
 最初は割と出っ張った形になっていたのですが,とにかく削ってくれと。「ここはいらないよ」と言われました。

BRZRK:
 比べてみると,かなり違うんですよ。最初のモックはかなり大きく出っ張っていたのですが,(並んでいるモックのうち)2個めの時点でそれより低くなりました。で,3個めのモックの時点で斜めに隆起した形になったんですよね。

左から順に,開発後期,開発中期,開発初期のモック。分かりにくいかもしれないが,初期から中期でサイドボタンの高さがかなり削られ,後期で再び盛り上がった
DHARMAPOINT

梅村匡明氏:
 そうですね。

BRZRK:
 平面的なボタンだったのが,「丸みを帯びつつもシャープになった」印象というか。

梅村匡明氏:
 そこはかなり苦労しました。いや,本当に。

BRZRK:
 (インタビューの)数日前にお借りしたサンプルだと,とくにこれという違和感はありませんでした。まだ触り始めたばかりなので,ああだこうだ言うのは間違っているかもしれませんが。ファーストコンタクトではスッと使えてます。

梅村匡明氏:
 ありがとうございます!

BRZRK:
 ボクがイチバン口うるさく言ったせいかもしれませんが,好みの感じですね。

4Gamer(編):
 IE 3.0は,サイドボタンが鬼門でしたからね。こう,グラグラした感じが。

梅村匡明氏:
IE 3.0(上)とDRTCM37(下)で,サイドボタンを押してみた例。遊びの大きなIE 3.0と比べると,DRTCM37のサイドボタンが異なるのは明らかだ
DHARMAPOINT
DHARMAPOINT
 構造の話をすると,IE 3.0って,サイドボタンのスイッチは底面側にあるんですよ。それを,やや長い板で,テコの原理を利用して押すような仕掛けになっています。要は,スイッチの“上”にボタンなどのパーツが乗っている印象なんですよね。

BRZRK:
 確かIE 3.0はに上から倒すように押すんですよね。だから,サイドボタンのストロークが変に長くなっている。それがプレイヤーにとってストレスになるというのは,うなずける話だと思います。

梅村匡明氏:
 そのとおりです。それに対してDRTCM37と38では,ボタンの“真横”にスイッチを置くことで,きっちり押せるようにしています。かなりシャープに押せるようになっていますよ。

BRZRK:
 ストロークも相当短くて,本当に押しやすく,だからといってスイッチが柔らかすぎたりもしない。

梅村匡明氏:
 ありがとうございます。そこはBRZRKさんに散々言われていましたからね。「あー,硬いっすね!」って(笑)。

BRZRK:
 八王子で(笑)。昼間っからスイッチを大量に並べて。

梅村匡明氏:
 ちなみに,BRZRKさん以外の方からも同じような意見をいただいています。

4Gamer(編):
 それはスイッチが硬いということを,ですか。

梅村匡明氏:
 はい。なかには「板を叩いているようだ」と表現されている人もいました。それを直して今度は自信を持ってBRZRKさんに渡したら「今度はセンターのスイッチが硬いっすね!」って言われました,やっぱり八王子で(笑)。
 あ,そういえばセンター(クリック)がかなり変わったと思いますがどうでしょう?

BRZRK:
 かなり変わりましたね。前のは押すのに結構加圧が必要だったのでシンドかったんですが,今回のは僕の感覚だと普通に扱えます。


タップ撃ちに向けたボタンデザインと

その結果としてのCPI設定周りの変化


4Gamer(編):
 DRTCM37と38でもう1つ気になるのは,「タップ撃ち」がしやすいと,強くアピールされていることです。

梅村匡明氏:
 この点はKeNNyさんにも言われましたが,実は,ここを一番強く要望していたのは,(今回開発協力者として発表した8人ではなく)「秘密基地GAMES」のHanatyanさんですね。
 もともとタップ撃ちについての話は開発チーム内でも出てはいたのですが,BRZRKさんに連れられて,平日の真っ昼間からHanatyanさんのオフィスにお邪魔したんですよ。そうしたら,これまでに使用したマウスをすべてデスクに出してきてくれて,「この製品はタップしやすいけど,こっちの製品はタップしにくい」と,1つ1つ説明していただけまして。

BRZRK:
 割と近所に住んでいるので,「せっかくだからHanatyanにも見せましょうか」ってノリで,仕事中に乗り込んだんですが,結果としてよかったですね。

4Gamer(編):
 何がどうなるとタップ撃ちがしやすくなるのでしょう。

梅村匡明氏:
 マウス開発上の技術面だけでいえば,カバーとボタンが一体の,ワンピースタイプのほうが難しいんです。ただ,Hanatyanさんの意見を伺ってみると,タップしやすいマウスは“分けている”ほうなので,セパレートタイプのボタンにしようと。

4Gamer(編):
 ということは,タップ撃ちがしやすいかどうかは,スイッチうんぬんではなく,ボタンがワンピースかセパレートかで決まるわけですか。

梅村匡明氏:
 ですね。DRTCM15はセパレートだったので,DRTCM37と38はそこを踏襲したとも言えます。
 ただ,どちらかといえば従来製品を踏襲したというよりも,Hanatyanさんとこの件でたいへん盛り上がったことが,僕の中ではセパレートタイプのボタンを採用する決定打になったのかなと思います。
 BRZRKさんが最初に触ったワーキングサンプルはワンピースでしたよね。

BRZRK:
 ええ,最初はカバー一体型でしたね。で,「切り分けましょうよ」と。

梅村匡明氏:
 はい。

BRZRK:
 で,セパレートになった当初は,DHARMAPOINTオリジナルデザインというか,左右非対称のメインクリックボタンになっていたんですよ。ただ,それが微妙な違和感を生んでいたので,「CPI切り替え表示のLED減らして,メインボタンを左右対称形状にしたほうがいいんじゃないすかね」と言ったことは覚えてます。

左から順に,開発後期,開発中期,開発初期のモック。いずれもメインボタンはセパレート型だが,開発初期だけボタン形状が左右で異なり,左メインボタンのほうが長くなっていることに注目してほしい
DHARMAPOINT

梅村匡明氏:
 最初は従来どおり,4段階分のLEDインジケータを用意しておいたんですが,BRZRKさんだけでなく,ほかの方からも「そんなに使わない」「使い分けない」という意見を多くいただきました。なので2個に減らしたという。ここも,DHARMAPOINTの主張を入れようとして,ハネられたところです(笑)。

BRZRK:
 LEDインジケータはそんなにいらないという話が来るとは思っていなかった?

梅村匡明氏:
DRTCM38BL。ボタンとカバーの“付け根”部分がV字となり,あわせてLEDインジケータは2個になった。CPI切り替えスイッチが平板なものになっている点も従来製品とは異なる
DHARMAPOINT
 そこは全然想定していなかったですね。CPI周りは現状のままでいいだろうと。皆さんの意見は形状に集中するのかと思っていたので,CPI設定やLEDの話が出てきたのには驚きました。
 で,最終的にLEDは2個になって,それぞれCPIと動作モードのインジケータになっています。

BRZRK:
 それに合わせて,これまで突起状だったCPI切り替えスイッチが,純粋なボタンになりましたよね。

梅村匡明氏:
 ええ。CPIをよく切り替える,カジュアルなプレイヤーからは,「突起が指に当たる」と言う声が上がったので,突起のないボタンに切り替えてみたりもしました。

BRZRK:
 「そもそもCPIは切り替えない」というのと,「突起が邪魔」という話は,どちらが先に来たのでしょう。

梅村匡明氏:
 「CPIは切り替えない」という意見が先でしたね。ガチでプレイする人は全然使わないです。

BRZRK:
 となると,そういったプレイヤー人はゲーム側で調整しているということですね。従来製品ではCPIについてのフィードバックがあまりなかったのでしょうか。

梅村匡明氏:
 CPIについては不思議なことにほとんどありませんでした。僕らとしては,タイトルごとの調整も含めて(複数の設定項目はあったほうがいい)と思っていたのですが,最近はむしろ不要なのだということを気づかせてもらいましたね。

 そうそう,気づかせてもらったといえば,ソールの貼り付け場所を溝にしてほしいというのは目から鱗でした。具体的に誰から出たかというと,yukishiroさんからなんですけども,「他社のソールを使いたいので,使えるソールを限定しないでほしい」という発言があって,それが始まりです。

4Gamer(編):
 ソールの部分はかなり特殊ですよね。サンプルにはソールが貼られていますが,これは平坦な場所に貼られているのでしょうか。

梅村匡明氏:
DHARMAPOINT
 いえ,ほんの少しだけ凹んでいます。というのも,製造上,ソールを貼ってから検査をするわけですが,溝があって,少し凹んでないと,工場のスタッフがうまく貼れないんですよ。
 ならソールを貼らなければいいのではないかと思うかもしれませんが,そうすると(工場の規定上),検査ができなくなるのです。なので,少し凹ませました。

 ちなみに,今回開発に協力してくれたプレイヤーのなかには,最初から付いているソールを剥がさないで,その上にHyperglide製のソールを貼り付ける人もいたりするんですよ。“ソール・オン・ソール”ですね。

4Gamer(編):
 えっ。それってあとから貼ったほうのソールが簡単に剥がれちゃいませんか。

梅村匡明氏:
 それだけでなく,センサーと接地面までの距離も変わってしまいます。そうなるとマウスパッドによってはきちんとトラッキングしなくなる危険もあります。なので,ほかの子にも聞いたのですが,「普通ですよ,むしろ(標準で貼られているソールは)剥がないですよ」って言うんですよ。
 なので,こういう人達もいることを前提に進めようか,と。

BRZRK:
 ソール・オン・ソールも想定されていると。

梅村匡明氏:
 ええ。

4Gamer(編):
 ソールの形状を問題としないというのは面白い発想ですよね。(モックアップを手にしながら)確かに初期のものは普通というか,一般的なタイプになっています。で,これが最終的に,ほぼ平面になると。

DHARMAPOINT
梅村匡明氏:
 はい,これは完全にいただいた意見を受けての変更ですね。
 あとは……却下ネタになりますが,ホイールを18回転にしたいなと……。

BRZRK:
 あー,ありましたね!

梅村匡明氏:
 それで,試しにテストモデルを作ってみたのですが,硬すぎるということで24回転に戻しましたね。ハァァァァ……,駄目だったなぁぁ。

4Gamer(編):
 18回転にしたいというのは梅村さんというか,DHARMAPOINTさんの案ですか。

梅村匡明氏:
 そうです。ホイールの1刻みごとに何かを割り当てられるようにしたらどうだろうかと考えたんです。
 ただ,そんなにとっさには使わないのと,ホイールは上回転か下回転のどちらかしか使わないので,結局,スムーズにしたほうがいいだろうということになりました。
 ちょうど18回転のサンプルがあるので,実際に触ってみて下さい。普通に使っていて使いづらいですよ。

4Gamer(編):
 (触りながら)感触として安価なマウスっぽいですね。

梅村匡明氏:
 僕達にとってまったくの盲点だったところは以上でしょうかね。本当に面白い意見が聞けてよかったと思います。

BRZRK:
 DHARMAPOINTの考えで今回新しくなったところというのはありますか。

梅村匡明氏:
 あります。ケーブルですね。ケーブルが少し太くなっています。
 なぜかというと,単純に線が1本増えているんですよ。今回は「海外で売れるようにしてほしい」という要望が(会社側に)あって。
 いままでのDharma Tactical Mouseだと,日本国内で使う分にはまったく問題ないのですが,アース線がなかったので,FCCなど,海外の電機規格を通らないんです。

4Gamer(編):
 なるほど,アース線を増やし,アースを取れるようにして海外で売っていくと。

DHARMAPOINTの公式Webサイトに掲げられている製品バナー。「三七」「三八」の文字が躍る
DHARMAPOINT
DHARMAPOINT
梅村匡明氏:
 はい。DRTCM37と38の製品紹介バナーで「三七」「三八」と漢字を使っているのも,海外で売ることを意識してのことだったりします。

4Gamer(編):
 ああ,合点がいきました。なぜいきなり漢字を使い出したんだろうと疑問に思っていたのですが,納得です。

梅村匡明氏:
 みんなグラフィックスカードって型番で呼ぶじゃないですか。「ロクハチマル」とか。なので,パーツみたいにしたかったんですよね。
 ゲーマー向け周辺機器だと,各社,皆さん強そうな名前を付けるのですが,僕達の製品は型番で呼んでもらって,番号ごとの違いを分かってもらえたらというところからスタートしていて,(バナーの漢字は)日本的なものを感じてもらいたいなと。

BRZRK:
 じゃぁ「サンナナ」とか「サンハチ」「サンパチ」と呼んでほしいわけですね。

梅村匡明氏:
 はい。もちろんDRTCM15を「ジュウゴ」と呼んでもいいのですが,正解は何かというと,「イチゴー」だったりします。今回漢字で(“三十七”ではなく「三七」と)書いたのは,そういった意味と効果も見込んでいます。

4Gamer(編):
 このまま製品を出し続けていくと数字が足らなくなりそうですが,その場合は合計4桁になる感じでしょうか。

梅村匡明氏:
 ですね。2桁+2桁みたいになるでしょう。


オムロンではなくZIPPYのスイッチを採用した理由

「クリック感」の正体も明らかに


BRZRK:
ZIPPYの公式Webサイト
DHARMAPOINT
 “中身”の話も聞かせてください。今回,昨今のゲーマー向けマウスにおいて定番となっているオムロンではなく,ZIPPY TECHNOLOGY(以下,ZIPPY)のスイッチを採用した理由はなんでしょうか。

梅村匡明氏:
 1つは耐久性ですね。オムロン製スイッチのなかにも良いものはあるのですが,それは一部の顧客にのみ供給されているものだという事情があって,標準で1000万回の押下に堪えるスイッチを選定したということです。ほかにもTTCなど選択肢はありましたが,実績などを加味した結果です。
 これにより,スイッチそのものの重量はオムロン製よりも上がってしまったのですが,それはほかのパーツの重量調整でカバーできました。

BRZRK:
 これまた八王子某所で,テーブルにスイッチをポンポン並べて,あーでもないこーでもないって言いながら触りましたね。

梅村匡明氏:
DRM26ベースのサンプル。片方にオムロンのスイッチ,片方にZIPPYのスイッチが搭載されている
DHARMAPOINT
 これが(と言って,オムロンのスイッチを搭載した,DRM26ベースのサンプルを手に取り)最初に触ってもらったオムロンのスイッチですね。で,皆さんに感触を確認してもらったりしました。

BRZRK:
 そのときの雑談で出た話題で憶えているのが,「オムロンのスイッチ」は宗教になっているなと。それくらいファンが多いですねって。

梅村匡明氏:
 確かにマイクロスイッチの元祖はオムロンなのですが,ほかにも良いスイッチはありますからね。

4Gamer(編):
 ただ,「安定供給が可能」という条件で現実的な選択肢を考えると,素人考えではオムロンかTTCか,今回のZIPPYくらいしかないように思うのですが,ほかにもゲーム用途に堪えるスイッチというのはあるのでしょうか。

梅村匡明氏:
 マイクロスイッチでいえば中国のメーカーがいくつか作っていますが,(ゲーム用途に堪えるような)良いものはあまりないです。

BRZRK:
 最近,サイドボタンというとTTCが多いですが,今回のDRTCM37と38でもサイドボタンはTTC製ですか。

梅村匡明氏:
 いえ,サイドもZIPPYのスイッチを採用しています。

4Gamer(編):
 恥ずかしながら,ZIPPYって私の中では完全に産業用電源と蛍光管のメーカーだったので,「スイッチ作ってたんだ……」と。

梅村匡明氏:
 元はスイッチメーカーなんですよ。社長さんが手を広げていって,TFTの蛍光管や電源ユニットなどを始めたんです。
 普段だと,なかなかZIPPYさんのスイッチは細かく(指定して)買えないんですが,今回はいろいろ用意してもらえました。

BRZRK:
 どんなスイッチなのか,特徴を教えていただけますか。

梅村匡明氏:
 荷重値が強めなんですが,そのぶん耐久性はある,といった感じでしょうか。応答性が良いのも特徴ですね。(押下を)受けてからスイッチが入るまでの応答速度が非常にシャープで,その意味では,タップ撃ちとの相性が非常に良好だと思います。

BRZRK:
 過去にZIPPYのスイッチを使ったことはあるのですか。

梅村匡明氏:
 僕が過去に「これは(いい製品になりそうだ)!」と思ったマウスではだいたい採用していましたね。

BRZRK:
 シグマA・P・O時代にいくつか採用していたというわけですか。今回初めてというわけではないんですね。

梅村匡明氏:
 ええ,過去の実績がありましたから。ギャンブルしているわけではありません。あとは,先ほどもお話しましたが,開発期間が短かったので,オムロンでもTTCでもZIPPYでもない,新しいスイッチを探したりする時間的余裕がなかったというのはあります。

BRZRK:
 テストプレイヤーの人達からの意見はいかがでしたか。

梅村匡明氏:
 先ほどご覧に入れたとおり,DRM26に組み込んで触ってもらったのですが,違和感があるなどといったマイナス評価はありませんでした。むしろ,しっとりした感じがすると好評でしたね。

BRZRK:
 オムロンから変えてもまったく問題ないと。

梅村匡明氏:
 ええ。というか,世間だと最近は「オムロン製スイッチを採用している」というのが,アピールポイントになっていますよね。

BRZRK:
 台湾系のメーカーで顕著なイメージですね。

梅村匡明氏:
 それもちょっとどうなんだろうと。他にもいいスイッチがあるのに。

4Gamer(編):
 あるメーカーの関係者が,「オムロンのスイッチは日本製と中国製で反応が違う」と語っていたのを聞いたこともあります。それくらいこだわっている,という文脈のなかででしたが。

梅村匡明氏:
 いやー,そこまでの違いはないと思いますね。
 むしろ怖いのは,中国から出てくる“オムロンの偽物”のほうです。市場に出回っているので,それを掴まされてしまうのが怖い。

BRZRK:
 ところで,スイッチというか,ボタンの操作感についてなのですが,最初に触ったワーキングサンプルだと,左右メインボタンがブカブカしていましたよね?

梅村匡明氏:
 ブカブカといいますと?

BRZRK:
 左右メインボタンの,デフォルトの位置よりも上方向に遊びがあったと言えばいいでしょうか。この遊びの幅が大きいとタップ撃ちがしにくくなるのですが,どうやって調節したのでしょう。

梅村匡明氏:
DRTCM37のボタンカバーを外したところ
DHARMAPOINT
 ああ,そこですか。基本的には,メインボタンの根元部分というか,僕は「板バネ」と呼んでいるんですが,その部分の調整になります。ボタンの“返り”は,この部分(と言って,ボタンカバーの裏側にある突起をペンで示しつつ)を削っていくと,少しずつ弱くなっていきます。押した感じでいうと,柔らかくなっていきますね。BRZRKさんが遊びと仰っているのは,この「返りが弱い状態」です。
 たとえば,あくまでも自己責任ですけれど,実際に(ユーザーが自分のマウスを)バラしてみて,このあたりをいろいろ削ったりしてみると,体験的に分かると思いますよ。

梅村氏の示した「板バネ」の部分。メインボタンの返りがどれだけ強いかはここがキモになるという
DHARMAPOINT DHARMAPOINT

BRZRK:
 つまり,最初に返りを強く設計しておいて,そこから少しずつ削っていって調整するわけですか。本当にマウスの調整ってのは気の遠くなるような作業ですよね……。

梅村匡明氏:
 「ひょっとして?」と思ったら調整して,のくり返しですからね。経験から,ある程度はターゲットを絞れるのですが,それでも実際にやってみないと分からないことは多いですね。

BRZRK:
 てっきり硬さってスイッチの調整で行っているものだと思っていました。

梅村匡明氏:
 スイッチ側は完全に固定ですね。もともとの荷重値は小さいですから,「クリック感」と呼ばれているものは,マウス本体側のパーツで決まります

梅村氏によるリップの説明(上)と実際のリップ(下)。上の図中,下がスイッチで,上が軸だ。軸の先端に凹みを設けることで,耐久性を向上させているという
DHARMAPOINT
DHARMAPOINT
 あとスイッチ周りについてお話すると,軸の先端にはリップ(lip,唇)を設けてあるんですけど,ここをフラットにしてしまえば,(スイッチの)ケースにカツーンと当たってそのまま止まります。こうするとクリック音が小さくなるので,オフィス向けの製品などには,あえてリップを付けないということもあります。

 ただ,そうしてしまうと,スイッチを奥まで押し込むことになって,耐久性が低下するんですよ。
オフィスユースなら問題にならないんですが,連打に連打を重ねるゲーム用途だと,持たなくなる可能性が出てくるわけですね。なので,それを途中で止めて,スイッチが最後まで押し込まれないようにするためにリップがあります。
 余談ですが,(安価なマウスで採用される)中国メーカーのスイッチだと,スイッチ側に突起を設けてあって,軸の加工を不要にしているケースもありますよ。


最新モデルでも光学センサーとレーザーセンサーを用意

光学とレーザーを区別する必要はもはやない!?


BRZRK:
 DRTCM37では光学センサー,DRTCM38ではレーザーセンサーをそれぞれ搭載してきましたが,2モデル用意することになった経緯を聞かせてください。
 ボク個人としては,性能的に光学センサーとレーザーセンサーの違いはほとんどなく,むしろ,光学は技術的に頭打ち感が強く,レーザーのほうが伸びしろがあるんじゃないかとも思っていたりするのですが。

梅村匡明氏:
 KeNNyさんにyukishiroさん,MatchaさんなどのFPS勢が揃って光学センサーに強いこだわりを見せていて,彼らからの強いプッシュがあったので,2モデル用意しました。ただ,僕も性能的にはレーザーで問題ないだろうと思っています。

4Gamer(編):
 発表直後にDHARMAPOINTさんのWebサイトを拝見したところ,DRTCM37のほうがPV的には注目されていましたね。

梅村匡明氏:
 そうなんですよね。そこはもう,本当に神話的なものがあるのかなと思います。

BRZRK:
 個人的には,「なんで今のレーザーじゃだめなの?」って質問したくなるんですよね。たぶん,性能差はないと思うので。

梅村匡明氏:
 どちらも良くて,優劣はつけられません。光学センサー搭載マウスは,たしかにスペック上の数字だとレーザーセンサー搭載モデルよりも低い値になりますが,きっちり詰めていけばレーザーに負けませんし。レーザーはそもそも(数値上だけでなく挙動上も)“勝っている”わけですし。

BRZRK:
 では,今日のレーザーセンサーが光学式に劣る点があるとするとなんでしょうか。

梅村匡明氏:
 あえて挙げるなら消費電力の部分でしょうか。ただ,これはゲームとは全然関係のない話になってしまいますけども。
 むしろ,「レーザーセンサーのほうがずっと小さいので,配置自由度は光学センサーのはるかに上」というメリットのほうが大きいです。

BRZRK:
 そうそう。センサーといえば今回,DRTCM37とDRTCM38で,センサー配置が微妙に異なりますよね。

左がDRTCM38,右がDRTCM37。底面から見ると,DRTCM38のほうがセンサー位置は前寄り(メインボタン寄り)にある
DHARMAPOINT

梅村匡明氏:
 光学センサーは通常どおりですが,レーザーは若干上(※編注:メインボタン側)に設置しています。
 ちなみに,光学センサーで型番を指定してくる人はゼロ,皆無ですね。「光学であればいい」みたいな。今回採用しているのは,光学センサーがAvago Technologies(以下,Avago)の「ADNS-3090」で,レーザーセンサーが「ADNS-9800」ですけれども。

4Gamer(編):
 ド定番ですね。

梅村匡明氏:
 はい。ここを別のものにすると,かなりの冒険になっちゃいますからね。そういうのは,「俺達のIE 3.0」というコンセプトには合ってないかなと。

BRZRK:
 全然意見が出てこないという光学センサーですが,あえてAvago以外という選択の可能性はあるのでしょうか。

梅村匡明氏:
 PixArt Imaging(以下,PixArt)と言いたかったのですが,(裁判を経てセンサー事業を)Avagoに売ってしまったので……。
 いつもそうなのですが,光学センサーは「生産終了させるから早く買え!」って何度も言われるんですよ。

4Gamer(編):
 5年くらい前からずっと「光学センサーはなくなる」って言われ続け,そしてずっと売ってますよね。

梅村匡明氏:
 「もう後継機はない! だから早く買え!」って通達が来て,「おいおい本当かよ」と思っていると,また生産が始まるという(笑)。

 センサーの違いがなくなってきたという話では,レーザーセンサーの値段が下がったというのも大きいかもしれません。初期のレーザーセンサーは高かったので,各社,搭載マウスの値段を上げていた時期がありました。

BRZRK:
 光学かレーザーかで価格に結構な差がありましたね。

梅村匡明氏:
 おそらくそのときのイメージが強かったんだと思いますが,DRTCM12と15をを出したとき,どちらの価格も7980円(税込)に設定したら,「光学とレーザーがなんで同じ値段なんだ,光学のほうをもっと安くしろ」と言われましたね。
 でも,こんなに小さな部品ですから,もともと大した価格差ではないんですよ。それが時間とともにこなれてきているわけで(価格差がつくはずはありません)。

BRZRK:
 値段が高くて,バグが多いイメージを引きずっている人が多い,ということですかね。

梅村匡明氏:
 そうですねえ。実際,出た当初はバグといいますか,使えない(≒相性の悪い)マウスパッドが多かったですし。
 たとえば「ADNS-6010」は非常に評判の悪いセンサーでした。あれは限界域が低かったものの,中低域の動作は非常に滑らかで,個人的には好きでしたけれども。

BRZRK:
 ともあれ,DRTCM37も38も“ド安定”なセンサーを採用しているので,その点では安心できそうですね。
 たとえばですけれども,ほかの選択肢はないのでしょうか。

梅村匡明氏:
 ほかに選択肢をというのであれば,PixArtの「PAW3305DK」を搭載し,“三六”として安価にリリースするといった感じでしょうか。

BRZRK:
 可能性があるわけではないですよね。

梅村匡明氏:
 いや,話は出ていますよ。ずいぶんと先の話になるとは思いますが。

BRZRK:
 ええと,同席されているマーケティングの方が,「初耳だ!」と言わんばかりのびっくりした顔をしていますが(笑),出るとすれば,タクティカルの冠を外して“DRM36”とかになるんでしょうか。期待しておきます。


ダーマコントロールのソースコード公開で

マウスのフルカスタマイズが可能な時代に!?


ダーマコントロール
DHARMAPOINT
4Gamer(編):
 ここまで,マウスのお話を聞かせていただきましたが,設定ツールたる「ダーマコントロール」には,何かアップデートが入ったりするのでしょうか。

梅村匡明氏:
 DRTCM37と38のタイミングでバージョン2.1へ引き上げるのですが,2.1と言いながら,実は全面刷新していたりします。

4Gamer(編):
 なんと。それはどういう理由でですか。

梅村匡明氏:
 正確にいうと,ダーマコントロールだけでなく,マウス側のファームウェアも刷新するんですよ。国内で,マウスのファームウェア(とその設定ツール)を書いてくれるソフトハウスを見つけて,協力してもらえることになったというのがその理由です。
 DRTM37と38からはハードの設計だけでなく,ファームウェアとダーマコントロールも日本製になります。

 ……で,それを機に,ダーマコントロールのソースコード公開も考えていたりします。

4Gamer(編):
 ソ,ソースコード公開,ですか。これはまた何のために。

梅村匡明氏:
 僕達のほうで用意している設定項目以上のカスタマイズをしたければ,自己責任でご自由にどうぞ,ということです。
 ただ,ダーマコントロールはまずバージョン2.1を出して,その後,2.15で機能追加,みたいな感じになるはずです。ソースコード公開はその後ですね。いきなり公開ということはなく,お時間をいただくと思います。

BRZRK:
 今後は,国産アプリとして生まれ変わり,バージョンアップもしていくわけですか。2.1での新機能追加というのはあるんでしょうか。

梅村匡明氏:
 レーザーセンサーのほうにアングルスナップ(=直線補正)が追加されました。かなり強力に効くので賛否はあると思いますが。
 というか,普通にキレイな四角が書けると思います(笑)。

BRZRK:
 つまり,設定値がいくつかあって,選択できるということですか。

梅村匡明氏:
 いえ,オンかオフかしかありません

BRZRK:
 それは思い切った仕様だ……。つまり,「ダーマコントロールのソースコードを公開するから,もしアングルスナップの調整を細かくしたければ,自己責任でどうぞ」ということですか。

梅村匡明氏:
 はい。あとは,2.1には間に合わないので,2.15での追加になると思いますが,デバンスタイム(de-bounce time)の調整ですかね。

BRZRK:
 デバンスタイム……ですか。すいません,それはなんのことでしょう。

梅村匡明氏:
 スイッチの反応する範囲を絞る機能ですね。ここからここまでオフで,ここからオンになるといった感じで。ちょっと図にします。

梅村氏の示した図。バネがあったとして,どのあたりで反応させるかを決めるのも,マウスメーカーの仕事だ
DHARMAPOINT
 スイッチにはバネがありますよね。で,バネはアナログなので,最初から最後まで反応させることも可能なのですが,そうするとヘタってきたときにチャタリングの原因となってしまいます。なので,反応する範囲を絞ってあげることで,耐久性が伸ばせるわけです。
 仮に,A社のマウスとB社のマウスで,同じスイッチを採用しているのに耐久性のスペックが異なっているのなら,それはこのデバンスタイムの(設定値の)違いによります。

 キーボードで,同じCherry MXスイッチを採用していても,キーボードメーカーさんによって耐久性の値が異なっていたりすることがありますよね。それはメーカーさんが設定しているわけですが,DRTCM37と38では,ダーマコントロールからこれを調整できるようにしようとしているわけです。

BRZRK:
 でもそれって,基準はありますよね。「ここからここまでは保証しますよ」といった。

梅村匡明氏:
 ええ。僕らは15msを標準としていて,良品判定はここを基準にします。ですが,自己責任で変更する場合にはご自由にどうぞと。

BRZRK:
 「保証期間内なのにチャタリングが起きたよ!」と言われても,15msで検査してクリアしていれば,これは良品だというわけですね。その代わり,デメリットを覚悟のうえで反応速度を上げたければ,やり方は提供します,ということですか。

梅村匡明氏:
 そうです。そこはあくまでも自己責任で,ということになります。
 やりたいなら自分でとことん好きに調整してみたらどうでしょうと。

BRZRK:
 カスタマイズ性が行くところまで行っちゃったということでしょうかね。

梅村匡明氏:
 今回マウスに載せたMCU(※編注:Micro Control Unit,マイコンのこと)も探せば情報が拾えるので,(MCUレベルのハックも)やりやすいと思いますね。ロボットを作っているような人ならすぐにできちゃうかもしれないです。もう,直接ブートローダーから書き換えられます

BRZRK:
 ちなみに,ゲーム大会とかで,自分で書き換えたファームウェアを使用するというのは,危険をはらみませんか。

梅村匡明氏:
 そこはちょっとグレーですね。そこも含めて自己責任でということになります。


DHARMAPOINTの次の一手は?

今後の製品計画も聞いてみる


4Gamer(編):
 時間が迫ってきましたが,可能であれば,DRTCM37とDRTCM38以降の製品計画などがあれば教えていただけますか。

梅村匡明氏:
 現状,このクオリティの物を半年に1度,四半期に1度といったサイクルでリリースするのはシンドイですね。個人的にも(会社の)予算的にも。
 今僕らとしては,ゴールデンウィークから夏の間に,マウスバンジーなどといった,通電しない“軽いもの”を出して,年末にマウスやキーボードなどの“重いもの”を出すというサイクルで,1年に2回,何らかの新製品を発売できればと考えています。

4Gamer(編):
 つまり,次は半年後くらいに“軽いもの”が出て,さらにその半年後に“重いもの”が出ると。

梅村匡明氏:
 なので,仮にもし新製品のマウスが出るとしたら,来年の冬でしょうね。

BRZRK:
 じゃぁ年1回のペースで「俺達の」シリーズを市場投入でしょうか(笑)。

梅村匡明氏:
 ですねえ。
 ……というか,個人的には「俺達のイチゴー」をやりたいんですよ。

BRZRK:
 またDRTCM15に戻ってきました。(DRTCM15を好む)uNleashedが敏感に反応してくれそうなネタですね。

4Gamer(編):
 DRTCM15のアイデアをブラッシュアップするというのも,かなり面白そうですね。「三六」も含めて楽しみにしています。本日はありがとうございました。

梅村匡明氏:
 こちらこそありがとうございました。


 以上,梅村匡明氏に,新製品であるDRTCM37とDRTCM38の話を聞きにいったら,それ以外の話もたっぷり聞かせてもらえた,といった感じある。国内でPCゲーマー向けのマウスを開発する唯一のブランドが,国内で名の通ったプレイヤー達――しれっと書くのは少々気が引けるけれども――の意見を積極的に取り入れたというのは,たいへん面白い。

 言い方は悪いものの,筆者も含めた,さまざまなプレイヤーの“エゴ”から生まれようとしている「俺達のIE 3.0」。果たしてこれが国内のプレイヤーからどのように受け入れられるのか,興味深く見守っていきたいと思う。開発に関わった人間の一人としては,売れてほしいとも思うが。

 もちろん,製品レビューの機会が得られれば,妥協することなく,厳しい目でチェックしていくつもりだ。

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DHARMAPOINT公式Webサイト

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