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消費者のプロファイル情報を集めるためのRPG「チアフルタウン・オンライン」
プレイの中身は一種のシングルRPGだ。舞台となるのは小さな町「チアフルタウン」。プレイヤーキャラクターとNPCのインタラクションで様相を変えていくのが特徴とされている。あるときその一角が住民ごと消えてしまった。その謎を解き明かす,あるいはどうにかするのが,プレイヤーに課された使命となる。
またクエストで,現実にある場所の調査を命じられる,NPCに問われて,お菓子作りの得意な人(実在の知人)を推薦するといった,オフラインとの連携も考えられているようだ。
このゲームには連携するSNSサービスの設置も予定されており,前述のような現実世界との接点ではさまざまに利用される。ただし,そうした連携が行われるのは,2009年度以降となりそうだ。
実証実験(βテスト)は2008年2月下旬から3月初旬に,2週間程度の期間と数十人程度のモニターで行われる。2009年度以降には携帯型ゲームへの対応や,マルチプレイゲーム化も構想されているという。
その仕組みは,ブログウォッチャーがすでに手がけている「SHOOTI」(衆知)というblog解析マーケティングツールの延長線上にあるものと考えてよいだろう。
そしてその提案型営業の一案として構想されているのが「WEBオカン」だ。これは,ユーザー/プレイヤーのプロファイル分析から生活スタイルを推定し,それをユーザー/プレイヤーの母親に連絡して,有益な差し入れ物件を推薦するという,かなり突っ込んだプロファイル活用モデルである。
ちなみにブログウォッチャーは,リクルートが資本の99%を拠出し,自然言語処理を専攻分野とする東京工業大学助教授 奥村 学氏とのタッグで設立された会社。そして,「チアフルタウン・オンライン」の母胎ともいうべきプロファイルパスポート事業は,経済産業省の「情報大航海プロジェクト モデルサービスの開発と検証」の受託によって成立した。
ここまで述べてきたとおり,さまざまな可能性が喧伝される「チアフルタウン・オンライン」だが,消費の現場そのものでなく,ゲームを通して消費性向やマーケティング情報を手に入れるという迂回作戦は,果たして有望なのだろうか? ゲームもまた,プレイヤーの時間と手間を費やさせる消費の一つであることを考えたとき,そうした疑問が浮上せざるをえない。無料でプレイできるゲームのすべてが好評を博しているわけではないし,ゲームという形の実証実験が成功するとすれば,それはそのゲームのプレイが面白かったときに限られるのではないだろうか。
そしてそのことが,第二の疑問を提起する。ゲームがプレイアブルなものとして回ったとき,プレイヤーの行動はゲーム内の価値基準に大きく規定される。あるクーポンが人気を博したとして,それが入手過程の楽しさゆえだったりしたのでは,プロファイル収集にならない。いやもちろん,販促手段としては別かもしれないが。
現在しばしば話題となるゲーム内広告などと比べて,一足飛びにラディカルな構想がユニークな「チアフルタウン・オンライン」。占い/性格診断といった対話型のコンテンツや,トライ&エラーを繰り返す過程でプレイヤーの個性を抽出するような,別のゲームも考えられているそうだが,現存するゲームがビジネス的成功を目指す中で,必ずしも現実社会の消費生活のごとき多様性を志向してきたわけではない。したがって,マーケティングに使える場面は必ずしも豊富ではない。
そこで上述のような,ゲームの理屈とゲーム外の理屈が織りなす二律背反の関係を,どのような手段で克服しようと考えているのか,実に気になる存在ではある。
- 関連タイトル:
Game0.1a wyrd(旧題 チアフルタウン・オンライン)
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