レビュー
PlayStation 3に取り付けて使う11インチディスプレイ
HORI HD液晶モニター3 HDMI対応
同社は,2010年5月にも「HD液晶モニター3」(型番:HP3-87)という同様のディスプレイを発売しているが,新製品はその名のとおり,HDMI入力に対応させたマイナーチェンジモデルとなっている。果たして,この少々変わった製品は,ゲーム用ディスプレイとして使えるものなのか,チェックしてみたい。
なお,以下本稿ではモデルチェンジ後の製品を型番の「HP3-138」,モデルチェンジ前の従来製品を「HP3-87」と表記して区別する。
※注意
本稿ではPS3に取り付けた状態の写真を複数掲載していますが,HP3-138にPS3本体は付属しません。
HDMI入力に対応したマイナーチェンジモデル
HP3-138は,台座部分と折りたたみ式の液晶パネル部分とを持つ,ちょうどノートPCのような形状のディスプレイ製品だ。
台座部分のサイズは298(W)×251(D)mm。PS3と一体化させるのが前提の製品だけあって,非常にコンパクトなデザインとなっている。
一方の液晶パネルは,サイズが11.6インチで,解像度が1366×768ドット(アスペクト比16:9)となる。採用されているパネルはTN型だ。
本体底面を見てみると,PS3とドッキングできるよう,湾曲した形状になっているのが分かる。奥側には2本の出っ張ったパーツが確認できるが,これはHP3-138をPS3に固定するのに使う爪だ。この裏面の形状では,HP3-138単体で机に置こうすると,2本の爪のせいで本体が持ち上がってしまうため接地面が小さく,あまり安定しない。単体で置けないことはないが,基本的にPS3とセットで使うべき製品と考えたほうがいいだろう。
PS3とドッキングできるように,底面は湾曲した形状をしている |
HP3-138単体で設置しようとすると,奥側の爪があるため本体が持ち上がってしまう |
PS3への取り付けは簡単。奥側の爪をひっかけた状態でHP3-138をPS3本体の上に載せ,さらに付属のフック2個を使って手前側も固定すれば,ドッキングは完了だ。対応するPS3の型番はCECH-2000/2100/2500/3000シリーズとされているので,薄型化以降のPS3ということになる。
PS3と一体化させられるのがウリの製品だけあって,ぴったりとくっつくが,それでいて排気口やPS3のコネクタ部分を塞ぐことのない設計になっているのは好印象。取り付けた状態だと上面が平らになり,PS3っぽくないというか,一見すると違うゲーム機のようになってしまうのが面白い。
ちなみに,HP3-138の本体重量は実測1kgで,PS3と合わせると3.4kg程度だ。普段はテレビと接続しているPS3を自室に持って行ってHP3-138でプレイするといった使い方をする場合でも,十分に持ち運べる重量といえよう。
付属品一式。PS3との固定に使うフック×2,HDMIケーブル,ACアダプタが同梱されている |
PS3への取り付けは,奥側の爪をPS3の後部に引っ掛け,手前側を付属フックで留めるだけだ |
実のところ,前モデルたるHP3-87との違いは,この入力系統のみだ。HP3-87の映像入力はコンポジットとAVマルチだったが,さすがにこのご時世,コンポジット入力でプレイするのは,解像度的に不満というもの。それを受けて,HDMI端子とD端子を搭載することにしたということなのだろう。
どちらの入力もPS3専用端子というわけではないので,Xbox 360やWii,PC,あるいはAV機器などを接続して利用することも可能だ。その場合,当然ながらウリのドッキング機構は使えず,前述のとおり設置時の安定感もイマイチになるが,そこさえ許容できるのなら,汎用性の高いディスプレイだとはいえるだろう。
D端子が受け付ける映像信号は480iと720pの2種類。一方,HDMI入力の場合はPS3上で720pのディスプレイとして認識される。一応,設定メニューから1080iや1080pの選択も可能だが,その場合はパネル解像度の限界を超えてしまい,正しく表示されないので,720pで利用するのが基本だろう。
PS3と接続した状態。付属のHDMIケーブルはPS3接続用にしか使えない程度の長さしかない |
別途HDMIケーブルを用意しさえすればXbox 360とも接続できるが,当然ながら一体化はできない |
- コントラスト(0〜100まで)
- ブライトネス(明度,0〜100まで)
- サチュレーション(彩度,0〜100まで)
- シャープネス(鮮鋭度,0〜100まで)
- 色温度(ノーマル,ウォーム,クールの3段階)
- スケール(フル,4:3固定)
内蔵スピーカーのほうは,サイズがサイズだけに正直期待していなかったのだが,それでもノートPCに搭載されている一般的なものよりは大口径で,音質も意外に悪くない。低音はスカスカなものの,本体のサウンドメニューで低音と高音のレベルを調節できるので,低音をやや効かせ気味にすると,ゲームでも使えるレベルになるというのが筆者の評価だ。
低音を効かせすぎるとスピーカーがビビる問題は生じるが,HP3-138にはオンにしておくとビビリ音が生じない程度にピークを抑えてくれる機能「自動制御」が用意されていたりもするので,スピーカー周りの仕様はなかなか悪くないと述べていいのではなかろうか。
応答速度,残像感はともに良好。欠点は視野角の狭さ
基本仕様を確認したところで,使い勝手を確かめていこう。
上で触れたとおり,HP3-138はPS3から720p解像度のディスプレイとして認識される。液晶パネルの表示色は公称で26万2144色の18bitカラー。表示色が少ないため,グラデーションが縞模様に見えるカラーバンディングが懸念されるが,内蔵の映像処理がうまく機能しているようで,実際には意外と目立たない。カラーバンディングが皆無というわけではもちろんないものの,グラデーションが多用されるPS3のクロスメディアバーであっても,さほど破綻せずに表示できていた。
表示面で気になったのは,室内の照明が画面に映り込んでしまうことだ。HP3-138のパネルはグレア(光沢)加工されていて一見すると美しいが,液晶パネルを開いた状態で正面に座って画面を見ると,角度的に天井の蛍光灯が映り込んでしまいやすい。では,液晶パネルの角度を調整すればいいのかというと,上から覗きこんだ状態の視野角は公称15度しかなく,ヘタに角度を変えるわけにもいかなかったりするのである。
見栄えがしないのかもしれないが,ここはノングレアパネルを採用してほしかったところ。ユーザー側で実際に使っていくうえでは,市販の映り込み防止フィルム(≒アンチグレアフィルム)を貼るなど工夫が必要になりそうだ。
ちなみに視野角は左右も各45度と,こちらもあまり広くない。画面サイズを考えれば,基本的に1人でゲームを遊ぶことになるとは思うが,それ以前に,2人で遊ぶには厳しい視野角といえよう。
ゲームプレイ時に重要な応答速度はどうだろうか。公称では8msが謳われているが,PS3には応答速度を調べるツールがないので,PCに本機を接続して調べてみた。
テストにあたっては,まず比較対象としてBenQのゲーマー向けディスプレイ「XL2410T」を用意。Dual-Link DVI対応のGefen製スプリッタ「1:2 DVI DL Splitter」(型番:EXT-DVI-142DL)を使ってPCの出力を2つに分け,DVI-HDMI変換アダプタを介して,HP3-138とXL2410Tに接続する。この状態でPCから「LCD Delay Checker」(Version 1.4)を起動し,2つのディスプレイをカシオ製ハイスピードカメラ「HIGH SPEED EXILIM EX-FH100」を使って240fps設定で録画。そのムービーを見比べて,どちらの遅延が大きいかチェックすることにしている。
まずは,PCからゲーム機と同じ720p相当の信号(1280×720ドット,60Hz)を出力して比較してみよう。XL2410Tの設定は「FPSモード」を選択し,パススルーモードにあたる「Instant Mode」をオンという,最も遅延の小さい設定にしてある。その結果が下に示したムービーだ。
動画をコマ送りなどして輝点の移動を比べてみると,HP3-138はXL2410Tとほぼ同じタイミングで輝点が動いていることが分かると思う。XL2410Tに対する遅れはほとんどないので,PC用のゲーマー向けディスプレイと同程度の応答速度が確保できているようだ。
次に,ゲーム機では入力されないので参考までにといったところだが,ドットバイドットの信号(1366×768ドット,60Hz)で比較した動画も下に掲載しておきたい。こちらでも,ほぼ同じ応答性能を示していることが確認できる。
続いて,MMGames製の「液晶応答速度&低解像度チェック」(Version 1.30,以下 LCDBench)を使って液晶パネルの残像感を検証してみよう。なお,液晶パネルの残像に解像度はあまり関係がないため,このテストではよりシャープに表示できるよう,あえて1366×768ドット,60Hzの設定を用いている。
下に示したムービーで左右に動く円の残像をコマ送りで見てみると,XL2410Tよりも,むしろHP3-138のほうが残像は少ない。これは,ドットバイドットになるHP3-138に対して,フルHD解像度のXL2410Tではスケール変換が入ることや,線がより多くのドットで表示されることなどが影響しているからかもしれない。いずれにしても,残像の点でもゲーム用ディスプレイとしての要件は満たしているといえそうだ。
細かい部分で不満は残るが,省スペース性は魅力
2012年9月8日時点の実売価格は2万円台半ばといったところで,同サイズ同性能の液晶ディスプレイであれば,もっと安価に入手できる。つまりHP3-138は,PS3と一体化できるというオンリーワンの特徴に追加コストを払えるかによって,大きく価値の変わってくる製品なのだ。
それらが許容できるのであれば,ドッキングによる省スペース性は大きな魅力である。応答速度,残像感においてもゲーマー向けディスプレイと同等というのは予想以上の結果といえ,PS3用のパーソナルディスプレイとして十分に使える製品といえそうだ。普段はPS3をリビングのテレビに接続しているという場合でも,(あらかじめPS3に取り付けてさえおけば,あとはHDMIケーブルをつなぐだけで)家族がテレビを見ているときにサッと使えるセカンドディスプレイとして活躍してくれるのではなかろうか。
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