テストレポート
「SteamOS」がやってきた! 2014年の本格展開を前に初期β版を動かしてみる
Valveは2014年に,同社のゲームプラットフォーム「Steam」が統合された“Steam専用PC”こと「Steam Machine」を,世界市場へ投入すると表明している(関連記事)。Steam Machineは,専用ゲームパッド「Steam Controller」がセットになった状態で,ValveのサードパーティとなるPCメーカー各社から,日本を含む世界市場へ投入される見込みだが,今回β版が公開になったSteamOSというのは,文字どおり,そんなSteam MachineのOS(オペレーティングシステム)である。
ここで重要なのは“Steam MachineというPC”向けにOSが公開されたということ。つまり,Steam Controllerがない点さえ納得できるなら,読者手持ちのPCでも,β版SteamOSを試せる(可能性が高い)ということなのだ。
というわけで本稿では,SteamOSがいったいどんなものなのか,β版のインストールと試用を通じて分かった内容を,ざっくり紹介してみたいと思う。
Linuxの有力ディストリビューション
「Debian」ベースとなるSteamOS
そもそもSteamOSは,2012年11月にβ版がリリースされたLinux版Steamが基になっている。
いまさら説明するまでもないとは思うが,Linuxは,Linus Torvalds(リーナス・トーヴァルズ)氏をリーダーとして開発されているLinuxカーネルと,各種オープンソースのツール類が集積されたOSのことだ。厳正を期せば,Linuxというのはカーネル(Kernel,OSの中核部分)だけのことを指す。しかし,カーネルだけではOSとして機能できないため,Linuxカーネルをコアとしつつ,OSとして問題なく利用できるよう構築されたシステムが,いくつかのディストリビュータ(distributor,ここでは「Linux OS提供者」くらいの意味)から供給されている。
それを「ディストリビューション」(distribution)と呼ぶが,ここ数年における代表的なディストリビューションの例が「Ubuntu」(ウブントゥ)だ。Ubuntuという名前くらいは聞いたことがあるというPCゲーマー諸兄諸姉も多いのではなかろうか。
今回リリースされたSteamOSも,そんなLinuxディストリビューションの一種だ。「Steamを軸として,ゲーマー向けに特化したディストリビューション」と言っていいだろう。
ただ,Valveがカーネル以外をゼロから構築したものではなく,確認したところ,ベースとなっているのは,「wheezy」の開発コードネームで知られる「Debian 7.1」となっていた。Debianは,Ubuntuの基にもなっている,有力なLinuxディストリビューションの1つで,堅固かつ扱いやすいソフトウェア管理システムが特徴だ。
もちろんSteam OSは,Debian 7.1そのものではなく,それにValveがいろいろと手を入れてゲーム向きに改造したOSに仕上がっている……というか,現時点では「仕上げようとしている」段階のようだ。
どのように手を入れているのかは後ほど触れることにして,初期β版SteamOSのハードウェア要件を確認してみると,SteamOSのダウンロードページには,下記のとおり記されていた。
- CPU:64bit OSに対応したIntelまたはAMD製品
- メインメモリ容量:4GB以上
- ストレージ容量:500GB以上
- GPU:NVIDIA製
- そのほか:UEFIブートのサポート必須,マザーボード側にUSBポート必須
見てのとおり相当ざっくりしたものなのだが,筆者なりに少し追記を加えておきたい。
まずはCPUだ。SteamOSは64bitカーネルを用いているため,64bit(AMD64またはIntel 64)対応のx86プロセッサは必須となる。もっとも,今や64bit非対応のPC用プロセッサというとAtomくらいしか存在しないといっていいくらいなので,この点が高いハードルとなることはないだろう。
メインメモリは4GB以上が推奨されている。なぜ4GB以上かの説明はとくにないのだが,64bitのカーネルを利用していることに加えて,Steamクライアント自体のメインメモリ使用量が割と多いので,この程度は必要ということなのではないかと思われる。試しに4GB未満の構成にしても動くには動いたので,ちょっと試してみる程度なら,あまり気にしなくていいのではなかろうか。
ストレージ容量は500GB以上が指定されているが,ちょっと動かしてみるだけなら,容量100〜200GB程度でもまったく問題ない。ただ,詳しくは後述するが,初期β版SteamOSは,Windowsなどといった他のOSとの共存がサポートされておらず,インストーラを実行すると,起動用のストレージを問答無用でフォーマットしてパーティションを切ってしまう。なので,SteamOSで“潰して構わない”ストレージデバイスが必要だ。いま使っているWindowsマシンにインストールしようという気は起こさないほうが賢明である。
ただ,今回筆者は手元にあった「Radeon HD 6950」搭載グラフィックスカードでもテストしているが,一応は動作し,また,Valveのゲームタイトルが動作することも確認できた。「一応」と断った理由は後述したい。
また,これは明言されていないが,GeForceならなんでもサポートされるというわけではないようだ。これも詳細は後段で述べるが,SteamOSに同梱されているNVIDIAのドライバはG80世代(≒GeForce 8)以降をサポートしたものだった。筆者の手元にG70世代(≒GeForce 7)より前のGPUを搭載するカードはさすがに残っていないので,確認まではしていないが,おそらく動作しないはずである。
もう1つ重要なのが,UEFIブートに対応するPCが必須になるという点だ。これは,SteamOSのインストーラがUEFIブートのみに対応しているためで,レガシーBIOSだとインストーラを起動させられない。
Linuxのインストールディスクを自力で作る手間と,ブートローダーの設定という,高めのハードルを乗り越えれば,レガシーBIOSを採用するシステムへのインストールも不可能ではないものの,基本的にはUEFI世代のマザーボードが必須と考えておこう。
PC側の準備さえ整っていれば
導入の手間はほとんどない
Default Installationは,Valveが用意したSteam OSのディスクイメージをストレージに展開する方式だ。そのためストレージは推奨の通り500GB以上が必要になるが,インストールは自動で行われるため,まったくと言っていいほど手間はかからない。インストールされるSteamOSはSteamクライアントとしてだけ使う設定になっており,「SteamOSをLinuxとして使う」設定は省かれているのも特徴となる。
なんと言ってもデフォルトなので,こちらを使うのがValveの推奨なのだろうが,筆者が試した限り,インストール先ストレージの状態いかんではブートローダー(bootloader,OSを起動するためのプログラム)の書き込みに失敗し,インストールできても起動しないことがあった。
一方のCustom Installationは,Debianの公式インストーラ「Debian Installer」を用いるものとなっている。インストール中に操作の必要はなく,手間がかからない点はDefault Installationと同じ。Debian Installerがストレージのパーティションサイズを適切に割り振ってくれるので,前段で述べたように,たとえば容量120〜128GB程度のSSDなどにも導入可能というメリットもある。
もう1つ,Custom InstallationではLinuxのデスクトップにアクセスできるように設定されているので,Linuxの知識さえあれば,カスタマイズもしやすい。いろいろな意味で現時点ではCustom Installationのほうが優れていると筆者は思うので,ここからはCustom Installationを使ってインストールの話を進めていきたい。
■SteamOS初期β版のカスタムインストール
続いてWindowsベースのPCからSteam公式Webサイトの「Build your own Steam Machine」ページを開き,Custom Installationという見出しの下にある「Download the custom SteamOS beta installation」リンクをクリック。すると,「SteamOSInstaller.zip」というファイルがダウンロードされるので,これを解凍し,フォーマットしたUSBフラッシュメモリ上に展開する。
Custom Installation方法解説の1.にあるリンクをクリック |
SteamOSInstaller.zip内のファイルをUSBフラッシュメモリ上へ展開したところ |
続いてインストール先となるPCの準備を行う。ここがインストールの正否を決めるといっても過言ではない。
なお,前段で触れたように,SteamOSをインストールするドライブの中身は完全に消える。ユーザーデータが入っているなら事前に待避させておこう。
光学ドライブも接続されているなら,それも必ず外しておく。SteamOSのインストールに光学メディアは不要で,さらに,光学ドライブが接続されていると,Debian Installerが「オプションを光学メディアからインストールするか」聞いてくるなど,インストールの手間が増えるためだ。
以上が重要な準備で,ここまで完了したのであれば,あとは簡単だ。SteamOSをインストールしたいPCのUSBポートに,インストーラを展開したUSBフラッシュメモリを差し,PCの電源を入れる。そのうえでUEFI(≒BIOS)からブートメニューを開く。
開くと,下に示した画面のとおり,「UEFI:(USBフラッシュメモリの名称)」(※丸括弧内は製品によって異なる)という選択肢が表示されるはずなので,それを選択して[Enter]を押そう。
USBフラッシュメモリからのDebian Installer起動に成功すると,「GRUB」(GRand Unified Bootloader,高機能で知られるブートローダー)のブートメニューが,
あとは操作不要。(PCから余計なストレージと光学メディアが外されていれば)インストールはどんどん自動的に進む。最後に「Installation Complete」というダイアログが出たら[Continue]ボタンをクリックすると,PCが自動的に再起動する。
インストールは自動的に進む。何か操作する必要はまったくない |
Installation Completeというダイアログが出たら[Continue]ボタンを押す |
再起動後,GRUBのメニューが表示されるが,放っておけば,3秒後にOSの起動が始まるはずだ。急いでいるなら[Enter]キーを押せば,すぐに起動処理が始まる。
しばらく待って,Debianのログイン画面が表示されれば,インストールは成功である。
WindowsのSteamアカウントが
SteamOSに引き継がれる
ログイン画面の下部にあるプルダウンメニューには,次に挙げるとおり,4つの選択肢がある。
- Default Xsession(GNOMEデスクトップ)
- GNOME(GNOMEデスクトップ)
- GNOME Classic(クラシックタイプのGNOMEデスクトップ)
- SteamOS(これが本命のSteamOS)
SteamOSとは別に,Linuxにおける標準的なデスクトップ環境の1つである「GNOME」を呼び出す選択肢が3つある(※「Default Xsession」は文字どおり,UNIXのウインドウシステムである「X Window System」のデフォルト設定がなされているので,結局GNOMEデスクトップで起動する)。
本稿の主題はもちろんSteamOSだが,Custom Install選択時はSteamクライアントのインストールをGNOMEデスクトップ上で行う必要がある。そこで初回のインストール後は,Default XsessionもしくはGNOMEを選択し,ログイン名「steam」,パスワード「steam」を入力のうえ,[Login]ボタンをクリックしてほしい。GNOMEデスクトップが表示されるはずだ。
デスクトップの左端に,見慣れたSteamのアイコンがあるのでダブルクリックしよう。ライセンス承認のダイアログがポップアップするので,規約を読んだら「I have read and accept these terms.」にチェックを入れて[OK]ボタンを押す。すると,PCがネットワークに正しくつながっていれば,Steamのアップデートが始まることになる。
Steamアイコンをダブルクリックすると「Steam Install Agreement」が立ち上がるので,規約をよく読んで,チェックのうえ[OK] |
するとこんなダイアログが表示され,Steamクライアントのアップデートが始まる。しばらくかかるのでお待ちを |
というわけで,ここまできたら後の手順はWindows版と変わらずだ。「Steam Login」ダイアログが表示されたら,アカウント名とパスワードを入力する。次回以降,自動的にログインしたいなら,「Remember my password」にチェックを入れることになる。
ここににチェックを入れておかないと,SteamOSにログインした後でいちいちパスワードを聞いてくるので少々煩わしい。セキュリティ的にはチェックを入れないほうがいいとは思うが,煩わしさを嫌う人はチェックを入れてしまってもいいだろう。
以上でセットアップは終了。いったんログアウトしたら,いよいよ本番のSteamOS起動である。
GNOMEデスクトップ右上にある「Steam」というラベルをクリックするとメニューがプルダウンしてくる。ここで「Log Out…」をクリックすれば,Debianのログイン画面に戻ることができる。
Debiamのログイン画面に戻って「SteamOS」を選択し,アカウント名Steam,パスワードSteamを入力してログインすると,短時間のスプラッシュスクリーンが表示された後,SteamOSにログインできる。
SteamOSを選択のうえ,あらためてログイン |
起動時のスプラッシュスクリーン |
Windowsで所有しているタイトルなら再購入は不要。ただし,非対応タイトルはまだ多い
上で示した画面を見て気づいた人も多いだろうが,テレビとの接続が前提となっているSteamOSでは,Windows版Steamに用意される,テレビ用の全画面ユーザーインタフェース(以下,UI)「Steam Big Picture」が採用されている。
SteaemOSの基本的なユーザーインタフェースはWindows版のSteam Big Pictureとあまり変わらない。なので,Steamユーザーにはくどくど説明するまでもないと思われるが,ざっと紹介しておこう。
中央に並ぶ3つのメニューのうち,「STORE」はSteamの配信サービス,「LIBRARY」はユーザーが購入したゲームタイトルの起動と管理,「COMMUNITY」はSteamのコミュニケーション機能の窓口をそれぞれ呼び出すランチャーになっている。
STOREは文字どおりアプリケーションストアだ。SteamOSで動作するゲームタイトルや,最近取り扱いの始まった一般アプリケーションなども購入できる |
LIBRARYでは,ユーザーが所有しているゲームタイトルの一覧や管理,インストール,起動を行える |
COMMUNITYを選択すると,フレンド登録されているユーザーを一覧でき,ステータスを見たりチャットをしたりできる |
メインメニューの下には左端に[WEB],右端に[FRIENDS]と,2つのボタンが用意されている。前者は組み込まれたWebブラウザ,後者はフレンドチャットへのそれぞれショートカットだ。
とりあえずSteamユーザーとして気になるのは,「いま所有しているタイトルをSteamOS上でプレイできるのか」という点ではないかと思うが,Windows版Steam上で購入済みとなるタイトルのうち,Linux版が用意されているタイトルであれば,追加費用なしでプレイできる。
ちなみに,Linux版Steamのβ版スタート当初はそういうサービスがなかったが,正式サービス開始後にあらためられ,Linux版Steamでもアカウント引き継がれるようになっている。要するに,SteamOSでもLinux版Steamと同じサービスが提供されているわけである。
筆者がWindows版Steamで購入済みの「Half-Life 2」(以下,HL2)を例に挙げてみると,本作にはSteamOS版――これはつまりLinux版ということでもあるが――が用意されているため,LIBRARYからSteamOSへインストールできる。その手順は以下のとおりで,端的に述べて,非常に簡単だ。
LIBRARYへ移動する。HL2はLinux版が用意されているタイトルだ |
HL2を選択すると,下向き矢印が表示されているのが分かると思うが,これが「SteamOS上でプレイ可能」(というか「Linux版をダウンロード可能」)であることを示している |
HL2のダウンロードとインストールを開始したところ。下向き矢印のアイコンが,ダウンロード中を示すアイコンに切り替わる |
もっとも,すべてのゲームタイトルがSteamOS(=Linux)に対応しているわけではない。未対応/非対応のタイトルでは,アイコンの代わりに「NOT AVAILABLE」(利用できない)という表示が入る。
SteamOSの旗を振っているValveはSource EngineシリーズのLinux移植を進めており,Source Engine 2をベースにしているタイトル,それこそHL2や「Left 4 Dead 2」「Team Fortress 2」「Portal」「Dota 2」といったタイトルなら,SteamOS上で問題なくプレイできる。また,Valve以外でメジャーなところだと,Croteamが手がけるFPSタイトル「Serious Sam 3: BFE」もSteamOSでプレイできるようになっているのだが,現状のラインナップはその程度だ。
LIBRARYの中央より少し下に用意されたボタン[VIEW ALL GAMES]をクリックすると,Windows版Steamで購入済みの全タイトルを一覧できるのだが,そこに用意されたプルダウンメニューの「Linux games」で絞り込めるタイトルしか,
購入済みのタイトル一覧が表示されるので,プルダウンメニューからLinux gamesを選択する |
SteamOS上でプレイできるLinux版タイトルが絞り込まれた。ここに表示されていないタイトルはインストールできないということになる |
Linux版Steamの登場から1年以上が経過し,「対応タイトルはValveのファーストタイトルだけ」という状況からは脱しつつあるものの,メジャータイトルのLinux移植はあまり進んでいないというのが,LIBRARYとSTOREを眺めての感想となる。
この状況を受けてか,Valveは,Windows版Steam上で実行したゲームを家庭内LAN経由でストリーミングし,それを別のSteam搭載機でプレイできる機能「In-Home Streaming」を準備している。Linux版タイトルの少ないSteamOSが持つ弱点をカバーできる仕組みとして,少なくとも当面の間は割と重要なものになりそうな感じはあるといえるだろう。
ただ,残念ながら初期β版SteamOSではIn-Home Streamingが有効化されておらず,筆者が確認した限り,隠し設定としても選択項目は用意されていなかった。そもそも現状だと,WindowsとSteamOSとで,同じアカウントからの同時ログインが行えないので,物理的に不可能ではないかと思われる。
ValveはIn-Home Streamingのβテストを年内に開始すると予告しているので(関連記事),このあたりは今後に期待といったところか。
日本語は未対応。NVIDIAとAMDのドライバは設定済み
初期β版SteamOSを触っていていくつか気になったところも紹介しておきたい。
まず気になるGPUサポート状況だが,前述のとおり,初期β版SteamOSは,GeForce用とRadeon用のグラフィックスドライバがセットアップ済みになっている。ただし,正式サポートされていないRadeonでは,Steam Big Pictureの表示が妙にボケてしまうという問題があった。よく見るとアンチエイリアシングの適用され具合がGeForceとは大きく異なっていたので,おそらくは両GPUにおけるAPIレベルの微妙な非互換が生んだ現象だろう。
また,SteamOSの起動直後を中心に,画面がちらつく例も見られた。こういったさまざまな事情により,Radeon(とIntel製のCPU統合型グラフィックス機能)のサポートは「近日中」とされているのだと思われる。
導入されていたドライバは,NVIDIAもしくはAMDが提供している,プロプライエタリ(proprietary,Linuxの世界では「オープンソースではない」という意味)版だった。
たとえば,GeForceを差した状態だと,X Window Systemのログに次のようなメッセージが残る。
[ 4.982] (II) Module glx: vendor="NVIDIA Corporation"
[ 4.982] compiled for 4.0.2, module version = 1.0.0
[ 4.982] Module class: X.Org Server Extension
[ 4.982] (II) NVIDIA GLX Module 331.20 Wed Oct 30 17:36:48 PDT 2013
「NVIDIA GLX Module」の「GLX」というのは「OpenGL Extension to the X Window System」の略で,つまりはLinux版GeForce Driverのこと。Windows版とGeForce Driverと同じく,原稿執筆時点で最新となるRelease 331世代のドライバが導入されているわけだ。
ちなみに,本稿の序盤でG70世代以前のGPUは動作しないだろうとした根拠もここにある。Release 331世代がG80以降のGPUしかサポートしていない以上,必然的に,SteamOSの対応GPUもG80以降になるだろう。
一方,Radeonを差した状態でも,GeForceを差したときと同じく,X Window Systemのログからバージョンを下記のとおり確認できた。下記のとおり引用しておこう。
[ 313.979] (II) AMD Proprietary Linux Driver Version Identifier:13.25.5
[ 313.979] (II) AMD Proprietary Linux Driver Release Identifier: UNSUPPORTED-13.25.18
バージョンが2つ出ているが,「Release Identifier」のほうがリリースバージョンと思われ,それによれば「UNSUPPORTED-13.25.18」。Catalyst 13.11 Betaシリーズの「Display Driver」が13.25.18系なので,導入されているのはCatalyst 13.11 Beta相当のものという理解でまず間違いない。
ちなみに,サポートするGPUの名前やコードネームを,AMDのドライバはX Window Systemのログにずらずらと出力する仕様になっている。やや長いが,興味深いので,これはオマケとして2ページめに掲載しておきたい。
ログを見てみると分かるが,AMDのドライバはATI Radeon 9500シリーズ以降をかなり幅広くサポート対象にしているようだ。Radeon HD 6000シリーズ以降はコードネーム表記なのでやや分かりにくいものの,Radeon HD 7000世代まではサポートされているようにも見える。同時に,Radeon R9&R7シリーズがサポートされていない気配もあるので,このあたりも,初期β時点での正式サポートが見送られた原因の1つかもしれない。
GPUに関しては以上だ。今回は時間の都合上,IntelのCPU統合型グラフィックス機能が使えるかどうかの検証を行っていないが,ひとまず,ここ2〜3世代のGeForceもしくはRadeonならとりあえず動くと見ていいのではないかと思う。
Linuxユーザー向けの話をしておくと,SteamOSはSteamがリポジトリを管理しているが,確認したところ,そのリポジトリにも日本語フォントは存在していなかった。
とはいえ,Debian 7.1ベースなのでDebianのフォントパッケージを持ってきてインストールし,さらにシステムのロケールを日本語に設定すれば(※コンソールでdpkg-reconfigure localesを実行),日本語の表示自体は行えるようになる。少なくともGNOMEデスクトップから利用できるSteamクライアントは日本語をサポートしており,Valveのタイトルも一部は日本をサポートしていたりするが,文字化けが生じたりもするので,正式なサポートが行われている段階ではないと考えたほうがよさそうである。
さらにLinuxユーザー向けの話を続けると,Custom Installを行った状態ではユーザー名desktop,パスワードdesktopというアカウントが登録されており,このアカウントでroot権限のアクセスが可能になっている。アカウント名steamではroot権限にアクセスできない。
sudoコマンドを使えばユーザーをrootに切り替えられるので,ロケールの設定や日本語フォントのインストールが可能だが,当然ながらコンソールでの作業である。なので本稿では割愛するが,「Linuxユーザーならやってやれないことはないよ」とだけ述べておきたい。
いずれにせよしても,日本のユーザーは,言語は英語のまま,タイムゾーンだけ日本に切り替えておく程度で我慢しておくのが無難だろう。
まだまだこれから。2014年末までにどこまで進展するか期待したい
というわけで,初期β版SteamOSを駆け足で紹介してみた。インストーラが今ひとつというか,インストーラらしいインストーラがなかったり,正式サポートされているGPUがGeForceだけだったり,日本語非対応だったと,まだまだという印象は拭えない。挙動も「さくさく」にはほど遠いと言わざるを得ないだろう。しかし,
長年にわたってLinuxを使い続けている筆者の個人的な立場としても,Linuxがこうしたメジャーな場で使われるのは嬉しい。また,Linuxの歴史上でも画期的な試みだと思う。
ただ,ゲーム業界全体を見渡したときの立ち位置がどうなるかは未知数だ。Steam MachineはPCそのもので,サードパーティによってスペックが異なるため,PlayStation 4やXbox Oneと比べて,初心者向けの分かりやすさを欠くことになる。そして何より,「Linux版Steamのサービスが始まって1年経っても,Linux版タイトルの数が増えていないのに,2014年後半とされるSteam Machineの立ち上げ時にLinux版タイトルが揃っているのか」という,大きな疑問に対するValveの回答は,未だ示されていない。
2014年1月の2014 International CESと,その翌週に開催される開発者会議「Steam Dev Days」で,Valveが業界,そして開発者の興味をどこまで引けるのかが,SteamOS,そしてSteam Machineの成否を左右しそうだ。
いずれにしても,SteamMachineおよびSteamOSが今後どう成長していくのか,そして,In-Home Streamingを含め,どんな機能が最終的に実装されるのか。2014年のValveは間違いなく,目を離せない存在になるだろう。
ValveのSteam Machine予告ページ
SteamOSダウンロードページ(英語)
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