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Access Accepted第379回:ゲームコミュニティの新たな中心になりつつある,ライブ配信サイト
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印刷2013/04/08 12:00

業界動向

Access Accepted第379回:ゲームコミュニティの新たな中心になりつつある,ライブ配信サイト

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 日本では「ニコニコ生放送」がよく知られているが,欧米のゲーム市場でも,「ブロードキャスター」と呼ばれるライブストリーミングの放送者と,それを視聴するフォロワー達によってコミュニティが形成されている。そんな中,驚くほどのスピードで成長しているライブ配信サイトが「TwitchTV」だ。今回は,2800万以上のアカウントを抱えるソーシャルネットワークへと急成長したゲーム専用放送局,TwitchTVの状況を紹介したい。


わずか2年で急成長したライブ配信サイト「TwitchTV」


 最近,欧米のゲーマーコミュニティに欠かせない存在として注目されているのが,ライブ配信サイト「TwitchTV」だ。これは2011年6月に「justin.tv」の設立者であるジャスティン・カン(Justin Kan)氏エミット・シア(Emmitt Shear)氏が,ゲームコンテンツにスポットを当てた専用サイトとして立ち上げたもの。2013年2月の段階で月平均2800万のユニークビジターを数える,欧米ゲーマーご用達の「ゲーム専用放送局」となっている。

Activisionが「Call of Duty: Black Ops 2」のTwitchTVサポートを発表し,ゲーム内から直接アクセスが可能になるなど,TwitchTVを積極的に取り込もうとするメーカーも少なくない
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 設立以来,わずか2年で急成長したTwitchTVは現在,「YouTube Live」「USTREAM」といったライバルを抑え,全世界のゲーム系ライブストリーミングをほぼ独占しているという。スマートフォンで視聴できるアプリも公開されており,多くのユーザーがお気に入りのゲームトーナメントや,有名ゲーマーのプレイシーンを楽しんでおり,統計によると,ユーザー1人あたり,動画の視聴やチャットを行う時間は,1日平均約90分に達するという。

 YouTubeなどと同様,TwitchTVでも人気動画の投稿者に対して広告収入の一部を提供するパートナーシッププログラムを採用しており,投稿者としてMajor League Gaming (MLG)IGN Pro League (IPL)Electronic Sports League (ESL)といった有名なeSports関係団体/トーナメント主催者のほかに,大手メディアであるCBS Interactiveや,ゲームメディアのGameSpotなども参加している。一般ユーザーを含む,1500を超える公認パートナーが存在しており,Day[9]のようなゲーマーがブロードキャスターとして有名になり,広告収入で生活できるようになったというケースも少なくない。

激しい対戦や,まったりとしたシングルプレイ映像に加え,スピードランや隠しアイテム探し,アチーブメントの獲得といったさまざまなテーマのライブストリーミングや録画映像を楽しめるTwitchTV。2011年6月のサービス開始以来,2年を待たずに3000万アカウントが見えてきた
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 一般ユーザーも,無料の「Open Broadcaster Software」や有料(無料での使用も可能)の「XSplit Broadcaster」といった配信ソフトを使って高画質,高音質のライブ放送が可能になっているうえ,デジタルレコーダやカメラを使い,携帯ゲーム機の映像を撮影して放送するといった人も目立つようになってきた。
 また映像の題材も,「League of Legends」や「StarCraft II」といった人気オンラインゲームの対戦風景はもちろん,「Journey」「Minecraft」「BioShock Infinite」などのシングルプレイ,そして「スーパーマリオブラザーズ」のスピードラン(どれだけ早くゲームやミッションをクリアするかというもの)など,その種類も多彩だ。


変わりつつあるゲーム情報の入手スタイル


 こうしたゲーム動画は著作権的にややグレーな存在だったが,TwitchTVの勢いはゲームパブリッシャも敏感に感じ取っているようで,Electronic ArtsActivision BlizzardUbisoft EntertainmentParadox Interactive,そしてSony Online EntertainmentなどがTwitchTVをサポートすることを明らかにしている。ゲームから直接Twitch TVに投稿できる環境が生まれたことで,ゲームコミュニティもさらに拡大しており,ゲームトーナメントなどの大型イベントでは常時100万人を超える視聴者数を記録しているという。

TwitchTVで最も人気のあるコンテンツの一つ「League of Legends」。RiotGamesが主催するトーナメントが連日盛んにライブ配信されている。これを見て闘志をかき立てられたり,熱い試合を仲間と語り合ったりすることで,新たなコミュニティが形作られていくことになるだろう
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 1人あたり90分も他人のプレイ動画を見ているという統計には驚くばかりだが,TwitchTVのジョナサン・シンプソン-ビント(Jonathan Simpson-Bint)氏によると「放映されたゲームを,その視聴者の60%が持っていない」という場合もあるという。つまり,「気になるゲームだが,購入する価値があるのか」といったことを確認するために動画を見ていることも多いわけだ。
 このことから,文章やスクリーンショットといった静的な情報ではなく,ストリーミングやチャットなどのライブ情報をもとに購買の判断をしているという最近のゲーマーの傾向も窺えるだろう。文字主体のメディアだったGameSpotが,Twitch TVに専用チャンネルを設置したのも,そうした流れに沿ったものなのかも知れない。

 さらに,ライブストリーミングやゲーマーの動画投稿に対しては,プラットフォームホルダーもオープンな姿勢を見せており,Androidベースの据え置き型コンシューマ機OUYAが,TwitchTVを正式サポートしたのが顕著な例と言えるだろう。このほか,PlayStation 4にもライブストリーミング機能が実装される予定になっており,YouTube LiveやUSTREAM,Facebookなどを使って,ゲームの模様をリアルタイムで他人と共有できるシステムが用意されることが明らかにされている。

「PlayStation Meeting 2013」
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 そのことが発表されたニューヨークのイベント「PlayStation Meeting 2013」の様子もまた,TwitchTVやUSTREAMなどでライブ中継されており,ピーク時で100万人,のべ人数で800万人がアクセスしたという。E3のプレスカンファレンスや,BlizzCon,Call of Duty: XPなど,最近のファンイベントがライブ配信されるのは,もはや当たり前のことであり,世界中どこにいても最新情報にアクセスできるようになった。

 こうした新たな共有体験が新世代のゲームコミュニティを生み出していく可能性は高く,今後,そうした新たなコミュニティからさまざまなカルチャーが生まれていくはずだ。TwitchTVなどのライブ配信サイトには,次のトレンドセッターとして今後も注目していきたい。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

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