E3 2012では,アメリカ在住の筆者を含め,多数のスタッフで取材に臨んだ4Gamer編集部。トータルで約150本の関連記事を掲載したが,昨年(2011年)が大作ラッシュだったということもあって,当初の予想どおり出展作品は多くなかったという印象だ。そんなE3 2012だが,多くのファンに期待されながらも諸般の事情で出展されなかったタイトルもある。2012年8月にケルンで開催されるGamescomでの出会いに期待を込めて,今週はそんなタイトルをいくつか紹介してみよう。
サプライズがなかったE3 2012
先週の本連載
「E3 2012を終えて。欧米ゲーム業界とE3はどこへ向かうのか」でも書いたように,2012年6月5日〜7日に開催されたE3 2012は,例年に比べていささか
地味だった印象が強い。筆者が「取材すべきタイトル」としてリストアップした本数は,昨年よりも25%ほど少ない150作ほどだったし,イベントが始まってからは,リストに載っていないようなタイトルに出くわすというサプライズもほとんどなかった。
ここ数年,E3に来たジャーナリスト達と話をしていてよく聞くのが,「昔のような,記事の目玉になる新作がない」ということだ。もちろん,それなりに新作発表はあるし,毎年大ヒット作も生まれているのだから,目玉作品がないはずはないのだが,記者達の言う目玉とは
「大きなサプライズを与えてくれるタイトル」のことだ。つまり,展示作品のほとんどが,すでに発表されているタイトルであり,さらに開催前に行われるプラットフォームホルダーや大手メーカーのプレスカンファレンスでさまざまな情報が公開されるため,E3そのものに,もはや大きな驚きはないということだ。
ある意味サプライズだったのが,Electronic Artsのプレスカンファレンスで,同社が総合格闘技「UFC」との独占契約を結んだと発表されたことだ。この発表により,これまでUFC関連のタイトルを作ってきたTHQのライセンスが売却されたことが明らかになったのだ。写真は,EAのカンファレンスで壇上に立ったUFC社長,Dana White氏
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これもまた繰り返しになるが,最近はE3の1〜2か月前に新作の情報を公開してしまうのが,欧米ゲームメーカーのトレンドになっている。これは,せっかく発表した自社タイトルが,E3ではほかの情報に埋もれて目立たなくなってしまうことを避けての対策だろう。そのため,まず年頭から春頃にゲームを発表してファンに印象づけておき,E3でゲームプレイについて詳しく発表するという流れになっているのだ。
そういう「広報戦略」は筆者としても理解できるものの,そのためにE3で打ち上げるべき花火の数が少なくなり,新作の華やかなアピールがなくなってしまうのはさびしいことだ。これは筆者の個人的な感情だけでなく,E3の存在価値にも関わる話なのではないだろうか。
さて,E3の感想はこれくらいにしておいて,今週は,存在は発表されたものの,E3 2012に出展されなかった作品を5つばかり紹介しよう。「出展しない」という事前の発表があったタイトルもあるが,いずれも事前の期待感が高かったものだ。
Overstrike
発売元:Electronic Arts
開発元:Insomniac Games
発売予定日:未定
「ラチェット&クランク」や「レジスタンス」シリーズで知られるInsomniacが,初のマルチプラットフォーム作品として制作中の「Overstrike」(PlayStation 3/Xbox 360)。Electronic ArtsをパブリッシャとしてリリースされることがE3 2011で発表されている。
4人組なのになぜか「Overstrike 9」と呼ばれる,軍のはみ出し者を集めた特攻チームを操作して,人類の破滅を目論む影の組織と戦っていくという爽快アクションだ。詳細はほとんど明らかになっていないが,Co-opが用意されるという情報がある。
そういえば,Ubisoft Entertainmentの4人組のハチャメチャアクション「Brothers in Arms: Furious 4」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)が発表されたのも,昨年のE3でのことだった(関連記事)。あまりにもコンセプトが似すぎていたので,お互いに企画の練り直しを行っているのではないかというウワサ話も聞こえる。
Tom Clancy's Rainbow 6 Patriots
発売元:Ubisoft Entertainment
開発元:Ubisoft Montreal/Ubisoft Red Storm
発売予定日:2013年
2008年の「Rainbow Six: Vegas 2」以来,久々のシリーズ最新作となる「Tom Clancy's Rainbow 6 Patriots」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)も,期待されていたのにE3 2012に登場しなかった大型タイトルだ。2013年の春のリリースが予定されている「Splinter Cell Blacklist」のほうが先になりそうだが,いずれにせよ,Ubisoftのトム・クランシー作品は発売延期を繰り返すことが多く,メディア泣かせなのは間違いない。もっとも,何度も延期を繰り返した「Tom Clancy's Ghost Recon: Future Soldier」も,ちゃんと発売にこぎつけているので,キャンセルの心配はしなくていいだろう。
Rainbow 6: Patriotsについては,「True Patriots」という国内テロリスト集団にニューヨークが占拠されるというムービーが公開されているが,多数の市民を救うために,少数の犠牲をやむなしとするか,大多数が危険にさらされるのを承知で個人を助けるかといった,難しい決断を迫られるゲームになるという,無事,予定どおりに発売されれば2013年の問題作になりそうだ。
XCOM
発売元:2K Games
開発元:2K Marin
発売予定日:2013年〜2014年
「Borderlands 2」を始め,魅力的なラインナップを誇る2K Games。昨年のE3でライブデモを公開しながら,2012年は沈黙していたのが「XCOM」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)だ。世界観を共有するストラテジーゲーム「XCOM: Enemy Unknown」は,2012年秋発売としてE3 2012でデモが行われていただけに,ファンにとっては残念な話だろう。
XCOMは,1950年代にアメリカ政府によって結成されたという,架空組織XCOMの誕生秘話を描いたTPSで,昔のハリウッド製B級SF映画に登場しそうな武器を使って侵略してきたエイリアンと戦いつつ,彼らの先端技術を奪って,こちらの武器開発に役立てていくというゲーム。
北米のゲーム情報誌,Game Informerの2012年1月号では「2013年発売予定」となっていたが,2K Gamesの親会社であるTake-Two Interactiveが5月に発表した会計報告では,「2013年4月〜2014年3月発売」と,かなり幅を持ったものになってしまった。
BioShock: Infinite
発売元:2K Games
開発元:Irrational Games
発売予定日:2013年2月
2K Gamesのブースでの不在が目立ったもう一つのタイトルが,「BioShock: Infinite」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)だ。こちらは,開発元のIrrational Gamesが,発売延期の告知と2013年2月26日という新たな発売日,そしてE3 2012とGamescom 2012には出展しないことが発表されていた(関連記事)のだが,とはいえ,もしかしたらという気持ちがないわけではなかった。
BioShock: Infiniteは,主人公である私立探偵ブッカーが,幼い頃に失踪した女性エリザベスを追って空中都市「コロンビア」へ潜入していくという内容で,やがて2人はコロンビアで繰り広げられている市民戦争に巻き込まれていくことになるという。暗い海底都市を舞台にしたシリーズ従来作とはまったく異なる,目がさめるような青空に囲まれた空中都市の景観が斬新で,プレイヤーは,スカイラインと呼ばれるモノレールを操ってスピーディに動きながら戦うことになる。ファンやメディから高い評価を獲得した「BioShock」を超えられるか,2013年のリリースが楽しみだ。
Prey 2
発売元:Bethesda Softworks
開発元:Human Head Studios
発売予定日:未定
Gamescom 2011を最後にまったく情報がリリースされなくなり,プロジェクトが凍結されたのではと思われていた「Prey 2」(PC/Xbox 360)。噂されていたパブリッシャとの問題は結局のところ噂に過ぎず,単純に開発があまり進んでいないというのが出展を見合わせた理由のようだ。高低差を利用したフリーラニングが特徴で,オープンワールドタイプということから,想像以上のコンテンツが必要になっているらしい。
Prey 2は,2006年に発売された前作で,飛行機ごと惑星型生命体「スフィア」に飲み込まれた連邦保安官キリアン・サミュエルズが,記憶を失ったままエイリアンの母星でバウンティハンターとして生きているという,ちょっと奇想天外なストーリーの続編。街中を自由に移動してミッションを請け負い,さまざまなパターンで攻略できるなど,興味深いシステムの多い作品だけに,近況報告はぜひ聞いてみたいところだ。
著者紹介:奥谷海人
本誌海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,北米ゲーム業界に知り合いも多い。この「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年に連載が開始された,4Gamerで最も長く続く連載だ。バックナンバーを読むと,移り変わりの激しい欧米ゲーム業界の現状が良く理解できるはず。