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印刷2009/12/25 11:11

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第246回:Access Accepted大賞 2009

奥谷海人のAccess Accepted

 さて,2009年もそろそろ終わりなので,今年の締めくくりとして恒例の,「Access Accepted大賞」を選出したい。今回は各ジャンルから1タイトルで合計7本+年間ベストタイトル1本をピックアップした。読者もよくご存じのように,これは筆者が身勝手に選ぶゲーム賞であり,欧米のゲームメディアが独自のゲーム賞を選ぶことに個人的に対抗したものだ。決して「日米の識者100人が選んだ」とか,「読者1万人の投票で選んだ」というようなものではないし,ややタイトルが偏っていると自分でも思うが,欧米ゲーム業界の動向を考えさせられたり,開発者に特定の思い入れがあったりするゲームを選んでいる。次点にノミネートされている作品を含めて,「そういや,今年はこんなゲームもリリースされていたな」程度の気分でお読みいただきたい。

第246回:Access Accepted大賞 2009

 

開発元:Valve
発売元:Electronic Arts/Valve

Left 4 Dead 2

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 いつものように,年末のショッピングシーズンに新作FPSが次々と登場したが,鳴り物入りで発売されたにも関わらず,いずれもプレイの斬新さやサービス面での不満が残ったという印象が強い。
 Valveの「Left 4 Dead 2」も,“新作”として見ればあまり新しさはなく,「本来ならDLCで開発していたものを製品化したのでは」という気さえしてくる。「Half-Life 2」のエピソード3の開発には何年もかけているのに,L4D2はたったの1年でリリースしたということも,その雰囲気に拍車をかけているのかもしれない。
 しかし,Left 4 Dead 2で遊んでみると,もう楽しくて仕方がない。SurvivalやVersusといった新たなゲームモードが登場し,一つの作品としての完成度が前作より格段に高くなっているのだ。全般的なリプレイバリュー,視覚的効果,AI面など多くの面で成長を感じられる稀有な続編といえるだろう。チームワークを発揮して難所を切り抜けたときの爽快感も格別で,そうした協力プレイの楽しさは,ほかのゲームにはない。
 Xbox 360版も出ているが,PCゲームとしての質の高さも大きなポイントだ。最近のFPSはコンシューマー機のプレイヤーを考慮されているため,水で薄められたような内容のものが少なくないが,遊びやすさとハードコアさを二つながらに達成したところを,高く評価したい。

  • ARMA 2
  • Borderlands
  • Call of Duty:Modern Warfare 2
  • F.E.A.R. 2:Project Origin

 

 

開発元:Rocksteady Studios
発売元:Eidos Interactive

Batman:Arkham Asylum

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 「Batman: Arkham Asylum」は,DCコミックスの看板タイトルの一つである「バットマン」を題材にしたゲームだ。日本では人気が高いとはいえないバットマンのライセンスものということで,ゲームイベントの取材などでもほとんどノータッチだったのだが,発売されるや否や,欧米のメディアの間で大絶賛。あら,そうなのと遊んでみると,確かに非常に面白い。
 「Half-Life」や「BioShock」,そして「Splinter Cell」などのいいところをうまく合わせ,かつどの作品にも負けないくらいのレベルへと引き上げている。
 映画化された人気のコミックスをゲーム化する場合,映画で描かれたダイナミックな世界観をゲームにも取り込もうと躍起になり,結果として失敗することが多い。その点本作は,「ゴッサムシティの重犯罪者収容施設」を中心とした狭い場所にこだわり,さらにコミカルな描写や映画的なセリフを回避し,とことんリアルに登場人物や風景を描き出しており,それが成功につながったということだろう。デベロッパのRocksteady Studiosに,拍手を贈りたい。

  • Battlefield Heroes
  • Ghostbusters:The Game
  • The Godfather II

 

 

開発元:Creative Assembly
発売元:Sega of Europe

Empire:Total War

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 一時期に比べて,ストラテジーゲームの新作がめっきり減ってしまった欧米ゲーム市場。対応機種がPC中心ということもあって,このような過疎状態はしばらく続きそうだが,それだけに今年は非常に濃厚なタイトルが揃った。この「Empire: Total War」は,まさに“エピック・スケール”と表現するにふさわしい作品である。
 本作のセールスポイントである海戦が,パスファインディングの問題などでほとんど機能していなかったり,AI相手の外交が理不尽だったり,バニラ(修正パッチやMODのないオリジナルバージョン)では小国でプレイできなかったりなど,いくつかの不満点はあるのだが,ターンベースとリアルタイムの良い部分を合わせ,ゲームの深さを保ちつつ,さまざまな要素を過不足なく詰め込んでいるのはさすがだ。
 修正パッチやMODでプレイアビリティがどんどん良くなっており,2010年に予定されている新作,「Napoleon: Total War」がリリースされたあとでも,長く楽しめそうな雰囲気だ。日本語版が発売されていないのが残念な良作である。

  • Demigod
  • Hearts of Iron III
  • Tropico 3

 

 

開発元:EA Maxis
発売元:Electronic Arts

The Sims 3

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 地味ながらも,割と面白いゲームがラインナップされた今年のシミュレーションゲーム。そう言いつつ,あまりにも定番なソフトで恐縮なのだが,ここでは「The Sims 3」を選びたい。対応機種がPCだけだというのに,すでに600万本以上のセールスを記録した本作は,シリーズの面白さを継承しつつも,さらに新しい発展が感じられる意欲作だ。
 The Simsシリーズは,これまでさまざまなプラットフォームで20作以上の作品がリリースされており,そのセールス累計は1億本を超える。そんな人気シリーズの最新作を作るというのは大きなプレッシャーだったはずだが,ゲームの舞台を「家」から「街」に拡張し,これまでの閉塞感を見事に打ち破っている。プレイヤーキャラクターが家を出て,公園や近所に遊びに行くという,ある意味,プレイヤーの誰もが望んでいたことを見事に具現化し,さらにThe Simsとしての楽しさを失っていないのだ。
 少々問題だと思うのは,例えば,キャラクターデザインで髪型の選択肢が少ないなど,あとから絶対に出てくるはずの,拡張パックを念頭に作られ過ぎているように感じることだ。ちょっと商売っ気出すぎかもしれない。

  • Cities XL
  • DiRT 2
  • FIFA 10

 

 

開発元:BioWare
発売元:Electronic Arts

Dragon Age:Origins

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 欧米市場ではあまり新作の多くなかったRPGジャンルだが,その中でダントツだったのが,BioWareの「Dragon Age: Origins」。
 「Baldur's Gate」から「Mass Effect」まで,いくつもの傑作RPGを発表してきたBioWareだが,その規模の大きさや達成感,そして全般的な遊びごたえという面で,Dragon Age: Originsは同社の数々のタイトルを凌駕している。
 地底から現れる邪悪な敵に対するため,人々が結束していくという「表のストーリー」だけでなく,いくつもの「裏のテーマ」が用意されていることが,本作の深さの一つだ。プレイヤーが旅を続けるにつれ,ゲームの中に渦巻く人種/宗教問題,そして欲望や裏切りにまつわる数々の出来事を見聞きすることになるのだ。
 また,プレイヤーの行動次第でゲームの進行が大きく変わるが,それでいて会話や物語に破綻をきたさないという,練り込まれたシステムも特筆できるだろう。これにより,コンパニオン(パーティメンバー)達とのさまざまな恋愛や友情が体験できるのである。
 戦闘シーンには,これまでの作品でBioWareが培ってきた戦略性が活かされており,頭を使った面白い戦いが楽しめる。

  • Champions Online
  • Risen
  • Torchlight

 

 

開発元:PopCap Games
発売元:PopCap Games

Plants vs. Zombies

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 今年から新設したのがこの賞。デジタル配信システムの一般化やブラウザゲームの普及などに伴って,欧米ゲーム業界のビジネスモデルは急激に変貌しつつあるが,そんな中で最も注目度が高いのがインディーズゲームだ。本連載でも何度も紹介してきたインデーズゲームだけに,なんで今までこの賞を思いつかなかったのか不思議なほどだ。昨年あたりにあってもおかしくはない賞だろう。
 ともあれ,Best インディーズゲーム賞の最初の作品として選んだのが,PopCap Gamesの「Plants vs. Zombies」。大御所であるPopCapを”インディーズ”などと呼ぶと怒られてしまうかもしれないが,本作の雰囲気はまさにインディーズ。さまざまな草花の種を発芽させ,それぞれの特性を活かして押し寄せるゾンビ軍団から庭園を守り抜くという,「WarCraft III」の「Tower Defense MOD」風のゲーム性に加えて,草花の種を戦略的に組み合わせるというカードゲーム的な要素を併せ持っている。
 キュートな絵柄や,直訳すると「植物対ゾンビ」というバカゲー的なネーミングに似合わず,非常に中毒性の高いストラテジックなゲームに仕上がっているのである。
 ちなみに,次点のラインナップを見ていただければお分かりのように,今年のインディーズゲームは,本当にレベルの高い秀逸なソフトが多かった。

  • Zeno Crash
  • Brueberry Garden
  • Machinarium
  • Trine

 

 

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 今年のBest スタジオ賞として,「Borderlands」を開発したGearbox Softwareを選んだ。
 CEOのRandy Pitchford(ランディ・ピッチフォード)氏や,副社長Brian Martel(ブライアン・マーテル)氏を中心としてテキサス州ダラスに設立されたGearboxは,今年でちょうど10年という節目の年を迎えた。もともとは,「Half-Life: Opposing Force」(1999年)といった拡張パックや,同シリーズのコンシューマ機への移植など,下請け的な仕事でコツコツと評価を高めてきたが,2005年に発売した初のオリジナルタイトル,「Brothers in Arms: Road to Hill 30」でブレイク。ついに大作,Borderlandsにたどり着いたのだ。
 Pitchford氏らのゲームに対する強い愛情は,イベントなどで彼らを取材するたびに,常に感じてきたことだ。E3では,4人の開発者がBorderlandsのCo-opプレイに興じる姿を見せつつゲームを紹介するなど,元プロゲーマーであるPitchford氏らしい味付けがなされたプロモーションも行われている。
 アメリカではすでに拡張パックの第一弾「The Zombie Island of Dr. Ned」がリリースされるなど,ゲームの寿命を伸ばすための努力も見られる。
 2010年以降のGearboxは,タクティカルシューターの「Aliens: Colonial Marines」,いわくつきタイトルの生まれ変わりである「Duke Begins」,そしてBorderlandsの拡張パックや続編の登場が予定されており,今後も注目していきたいメーカーである。

  • BioWare
  • PopCap Games
  • Rocksteady Games
  • Stardock Entertainment

 

 

開発元:Naughty Dog 発売元:Sony Computer Entertainment

Uncharted 2:Among Thieves

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 筆者は基本的にPCゲーマーであり,コンシューマ機向けタイトルを遊び込むことは少ない。そのため,PlayStation 3専用の「Uncharted 2: Among Thieves」をAccess Accepted大賞に選ぶのは個人的に苦しい決断なのだが,筆者をつかんで離さない本作には,それだけの価値があると思ったわけだ。
 いわゆる「HDゲーム」としてアピールされることもあるUncharted 2だが,PCゲーマーは以前から高画質に慣れており,HDゲームであることに大きな魅力は感じない。加えて,ゲームとして新しい遊び方を定義しているわけでもないのだが,演出やグラフィックス,ストーリー展開,ゲームバランスやサウンドなど,あらゆる点において完璧に作られた素晴らしい作品に仕上がっている。

 開発を担当したNaughty Dogは,大ヒットしたクラッシュ・バンディクーシリーズなどで日本でも知られるメーカーだ。プラットフォームホルダーであるSony Computer Entertainmentからの信頼も篤く,現在ではSonyが主導する技術者集団,「ICE Team」を社内に擁しているほどである。そんな有力セカンドパーティとして,10年以上もアクションゲームを手がけたNaughty Dogが,ハリウッド映画などから学んだノウハウをつぎ込んで作り上げたのが,Uncharted 2というわけだ。
 本作が「Access Accepted ベスト オブ ザ イヤー賞」を受賞したことはたぶんすぐに忘れられるが,ゲームの存在は今後長らく記憶されるだろう。

 

 

■■奥谷海人(ライター)■■
サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けてきた。業界に知己も多い。本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,連載開始から200回以上を数える,4Gamerの最長寿連載だ。
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