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印刷2009/02/27 19:40

連載

奥谷海人のAccess Accepted / 第208回:PCゲーム市場の今後を占うValveの実験

奥谷海人のAccess Accepted

 PCゲームの売り上げは落ちたといわれる。要因として挙げられるものはさまざまだが,現状はどうなっているのだろうか。今回は,PCゲームの販売にまつわるトピックを,最近発表されたデータとともに紹介しよう。消費者としても注目すべき結果が出ているようだ。

第208回:PCゲーム市場の今後を占うValveの実験

 

DRMの採用が裏目に出たElectronic Arts
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「Mass Effect」は,BiowareがMicrosoftと協力して開発した,Xbox 360専用のRPGだったが,BioWareがElectronic Artsに買収されたことにより,PCでもリリースされたという経緯がある。なお,日本では2009年5月にマイクロソフトからXbox 360版がリリースされる予定だ。「Mass Effect 2」もXbox 360で発売される予定だが,PC版はリリースされるのだろうか

 違法コピーを防ぐ目的で,PCゲームに導入されたDRM(Digital Rights Management)に筆者が興味を持ったのは,一年ほど前のことだ。当連載の「第161回: なぜPCゲームは売れなくなったのか」でお伝えしたように,「コール オブ デューティ4 モダン・ウォーフェア」や「クライシス」の開発者達が,次々と違法コピーによる被害を訴え,多くのパブリッシャが「SecuROM」などのDRMを本格的に取り入れ始めた頃である(関連記事)
 また,2008年2月18日に,Intel,AMD,NVIDIA,Microsoft,そしてDellやEpic Gamesといったコンピューター業界の大手による大連合“PC Gaming Alliance”が結成された(関連記事)。その設立主旨は,市場データを共有し,その輪郭を掴むことにあったのだが,最近では海賊版や違法コピー対策についても取り組むようになっている。

 パブリッシャが積極的に採用しだしたDRMだが,ゲーマーの間では不評で,「Mass Effect」のPC版が発売された2008年5月には,SecuROM反対運動が起きている。SecuROMは導入時に,インストール回数の制限やオンライン認証の頻度などをパブリッシャが決められるが,Mass EffectのPC版は,プレイヤーが10日ごとに認証し直さなければならないというものになる予定だったのだ。結局,この厳しい設定内容に対してゲーマーが反発し,Electronic ArtsはMass EffectからSecuROMを外して発売したのである。
 だが,2008年9月にリリースされた「SPORE」は,その反DRM論争を再燃させた。SPOREにもSecuROMが採用されており,「認証を5回した場合,それ以降はElectronic Artsのサポートに連絡して再度新しい認証コードを得る必要がある」という仕様に対して,再び大きな反発が起こったのだ。結果として,北米のAmazon.comのカスタマーレビューには,この仕様に反発した人々による約2600件もの最低評価が並び,一つ星攻勢の大炎上になってしまった。
 皮肉なことに,SporeはSecuROM付きで発売されたにもかかわらず,1か月あまりで違法コピー版が170万本以上もダウンロードされたという。SPOREは,2008年に発売されたゲームで,もっとも違法コピーの被害に遭ったことになる。
 発売元であるElectronic Artsは,SecuROMをSPOREに採用したことで悪評を買っただけでなく,違法コピーの被害を食い止めることもできなかったわけだ。また,SPOREと一緒にインストールされるSecuROMは,アンインストールが不可能だっために,これを不服とする消費者達に,集団訴訟を起こされた。結局,2008年12月に認証回数の制限をなくすツールをリリースすることになったのである。
 もっとも,以前お伝えしたとおり,SPOREは発売日よりも先にSecuROM機能のないバージョンが違法ダウンロードサイトにアップされていたので,製品の管理体制にも問題があるといえるだろう。
 もちろん,ゲームをコピーすることはまったくの違法だが,それを防ぐためにお金を払って買った人達に不便を強いては意味がなく,業界全体で違法コピーに対する新たな打開策を模索する必要があるだろう。デジタルデータはコピーしやすいこともあり,違法コピーへの対策は,市場の存続に関わる問題だ。

 

Valveが打ち出した,PCゲーム復活の秘策!?
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期間限定とはいえ,発売からたった3か月でいきなり半額で売られた「Left 4 Dead」。このセールは,Valveによる消費者動向の調査が目的だったが,普段より30倍も売れたというのは驚きだ

 リサーチ会社NPDのデータによると,2008年の北米ゲーム市場は,売り上げベースで15%拡大したが,PCゲームに限れば2007年度よりも14%も縮小し,全体の7%を占めるに過ぎない存在になってしまった。もちろん,パッケージ販売に頼らないオンラインゲームやダウンロード流通システムの普及が進んでいるので,PCゲーム市場が縮小したとは単純に言い切れないが,違法コピーの氾濫に嫌気がさし,PCゲームからの撤退を明言する開発者が現われるなど,市場の先行きはお世辞にも明るいとは言えない。
 では,PCゲームが売れるようになるための解決策はあるのだろうか。そのヒントといえるものを提示したのが,オンライン配信システム「Steam」で流通業界に一石を投じた,Valveである。

 発売されてから3か月ほどしか経っていない「Left 4 Dead」がSteamで,2月中旬に定価の半額で販売されていたのを覚えているだろうか。Valveの社長であるGabe Newell(ゲイブ・ニューウェル)氏によると,このセールは,消費者の動向を知るための実験ということだが,なんとその前週と比べて30倍も多く売れたという。実際の販売本数は発表されなかったものの,同作の発売初週の売り上げを上回る成績だったらしい。
 発売後3か月というのは,バーゲンされるには早すぎる時期である。しかも発売当初から売れていなかったゲームを安くしたのとはわけが違い,まだ鮮度の落ちていない人気作を,旬のうちに半額にしたのである。49.99ドルだったLeft 4 Deadが,いきなり24.95ドルで売られたのだから,購入を考えていたゲーマーは大喜びだったに違いない。さらに,Left 4 Deadを安く買いたいために,Steamのアカウントを作った人も多かったようで,普段よりも16倍も多く新規アカウントが発行されたとのこと。

 ニューウェル氏は,「ゲームによっては,週末セールの実施で通常時の360倍も売れることもあった」と語り,2008年末に実施したセールの結果を以下のように発表した。

 

割引率 売り上げ(通常販売時との比較)
10% 3.5倍
25% 2.45倍
50% 3.2倍
75% 14.7倍

 

 価格は下げたが,その代わりに数を稼げたので,結果として売り上げは通常時よりも多くなったのである。もちろん,ゲームを低価格で販売すれば,違法コピー問題が吹っ飛んでしまうという簡単な話ではない。だが,PCゲームが売れなくなったのをただ嘆くのではなく,「どうすればPCゲームが売れるのか」を実践しているValveには,素直に称賛の拍手を贈りたい。

 最近は,PC,Xbox 360,PLAYSTATION 3の3機種で発売されるゲームが増えてきたが,機種間による価格差はあまりない。さらにPC版に限っては,発売日がほかの2機種よりも遅いことが多くあるので,苦しい戦いを強いられるのは当たり前だ。
 オンライン配信は,店頭販売よりも価格の調整がしやすいので,市場価値に合った値付けを柔軟に行える。認証のしやすさなどを考慮しても,こういったオンライン配信が定着していくのは,もはや間違いなさそうだ。
 Valveは,Left 4 Deadで行った期間限定半額セールの販売データを,行動心理学者などを交えて専門的に解析するという。今後のValve,そしてSteamの動きは要注目といえるだろう。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。自宅にあるガレージのドアを閉じ忘れることが多い奥谷氏。過去にそのせいで,自転車を二晩連続で盗まれるという事態が起きたにも関わらず,いまだに閉じ忘れが多いという。そんな奥谷氏は,近所のレストランや酒屋に買い物にいったときなどは,「ガレージが開いたままの家の人」として声をかけられることなどもあるそうだ。本人は,忘れっぽさを恥ずかしがる素振りも見せず,「近所のコミュニティ作りに一役買っている」と語っている……。
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