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印刷2007/09/07 20:53

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奥谷海人のAccess Accepted

 欧米には,日本のようなキャラクターの立ったゲームが極端に少ない。作っていなかったわけではなく,どうやら作れなかったようだ。その一方で,CGへのリアリティの追求などは一歩進んだ感があったのだが,ここにきて,さらに一皮むけようとしている。今回は,そんな欧米ゲーム業界のキャラクター作りにまつわる話を紹介しよう。

Access Accepted第140回:開発者が目指す新たなキャラ作り
キャラクター作りに失敗した欧米の開発者
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全員が主役というわけではないが,欧米産のキャラクターで記憶に残るものを12人集めてみた。皆さんはお分かりになるだろうか? 古いものもあるので難度は高めだと思う。9人以上分かるなら「超洋ゲーマー」,全員正解なら「究極洋ゲーマー」といった称号を,勝手に名乗ってほしい。正解は本文下欄に

 “キャラクターゲーム”とは,ゲーム性よりも,ゲーム内のキャラクターがプレイヤーの記憶に残るようなゲームを指すことが多い。日本ではゲームから誕生した有名なキャラクターとして,マリオ,リンク,ソニック,春麗,ソリッド・スネーク,カービーやチョコボなどがいて,名の知れたゲーム会社ならこうした「看板」としてのキャラクターをいくつか持っている。もちろん,ゲームそのものが面白くなければファンに支持されることはない。ゲームとともにキャラクターを大切に育んできたわけだ。

 欧米では,こういったキャラクターが長らく培われてこなかったのが,ゲーム史を見れば分かるだろう。記憶に残る名作なら「SimCity」「Sid Meier's Civilization」「Ultima」「Myst」「DOOM」「Diablo」など枚挙にいとまがないが,どれもキャラクターなど最初からいないか,キャラクターにスポットが当たっていない。欧米におけるゲームデザインのコンセプトがテーブルトークやボードゲームから流れてきたために,「メインキャラクターはあなた」というゲームが多かったことが影響しているかもしれない。

 少なくとも,'90年代の後半頃には,アメリカの開発者達の間で「キャラクターデザインを大切にしよう」,と唱えられ始めていたはずだが,キャラクター不足の状態が大きく変わったとは言い難い。日本のちょっとしたゲーマーに名前を知られているのは,ララ・クロフト,マスターチーフ,サム・フィッシャー,そしてクレイトスくらいなものだろうか。ゲームとしては高い知名度を誇る「Grand Theft Auto: San Andreas」でさえ,メインキャラクター名を記憶している人など,アメリカでもほとんどいないのが実情である。

 

最新鋭のアニメーション技術に見るトレンド

 ここまで読んできて誤解されると困るのだが,なにもキャラクターの立たないゲームは面白くない,といっているのではない。しかし,こうしてあらためて考えてみると,欧米のゲーム開発者はキャラクターを立たせることそのものがどうも苦手なようだ。ララ・クロフトが大成功した後のEidos Interactiveは,「我々はキャラクターゲーム会社だ」と打ち出していたものの,ヒロ・ミヤモトやコードネーム47,JCデントンらがゲームの成功をバネに一人立ちしたわけではない。Eidosを例に出すまでもなく, Electronic Arts,Vivendi Games,THQ,Midway Entertainment,Rockstar Gamesといった有名どころにも,看板を背負えるほどのゲームキャラクターは存在していないのである。

 

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欧米における新世代ゲーム技術のキーワードとなりえる「フリーランニング」。表情のアニメーション技術ばかりでなく,フリーランニングに影響を受けたスムースな動作アニメーションを駆使したゲームが,「Assassin's Creed」を筆頭にいくつかある

 最近は,MMORPGやカジュアルゲームに人気が集まり始めたこともあり,一時ほど「何が何でもキャラクターを優先させる」という意気込みが感じられなくなってきた。むしろ“リアリティの追求”を目指しているようである。
 筆者がそう思い始めたのは,2006年3月のGame Developers Conference(関連記事:第73回 GDCで見たゲームの未来像)のころだ。U-Capというモーションキャプチャ・アニメーション技術を利用した「Medal of Honor: Airborne」や,オーガニック・デザインというコンセプトでスムースなアニメーションを実現した「Assassin's Creed」,そしてそのアニメーションを自動生成するプロシージャル法を用いた「Spore」などの技術デモが公開され,彼らの目指す方向性を垣間見たような気がしていた。
 同年10月のAustin Game Conference(関連記事:Mass Effectに見る,新世代デジタルキャラクター開発手法)などでCG技術への投資に加速がつき始め,2007年7月のE3 Media & Business Summitや,8月のGames Conventionを通して,欧米の開発者達が目指しているものの輪郭がはっきりしてきた。彼らは,アニメーションを洗練させることで,さらにリアルなキャラクター達を作り出すことに挑戦しているのだ。以前,よりリアルな描写で“不気味の谷”を越えようとしているゲームを紹介したが(関連記事:第127回「不気味の谷」越えに挑戦するキャラ達),キャラクターをデフォルメさせることなく,真っ向からリアリティを追求するという姿勢が,欧米開発者の間で見受けられる。

 

“アニメ的”アプローチの探索から
“映画的”アプローチの追及へ
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BioWareの開発する「Mass Effect」のように,欧米産ゲームは彼らの強みである映画的なアプローチを武器にしたものが今後も増えていきそうだ。これまでのように中途半端にリアルではなく,無茶苦茶リアルな作品が続々登場しそうな気配である。そろそろ「不気味な谷」越えの布石となるか

 2007年のGames Conventionで筆者が頻繁に耳にしたのが,彼らの開発するゲームと「フリーランニング」(パルクール)との比較だ。フリーランニングとは,数年前からヨーロッパの若者達の間ではやり始めた遊びで,道具を使わずトレーニングなどで得た筋力や技術を使って道路や建物の障害物を物ともせずに走り回るスポーツの一種である。屋根から屋根へと飛び移ったり,5階建てのアパートを外側から屋上まで登るといった,近くに警察がいれば必ず制止させられるような危険な行動を,ビデオに収めてYouTubeなどで紹介することで,ささやかな名声を得ているようだ。フランスでは7人組のチーム「ヤマカシ」が,リュック・ベッソンによって映画「TAXi2」の忍者役として起用され,その後はチーム名と同じ「ヤマカシ」という映画が公開された例などがある。
 このフリーランニングの要素をゲームに取り入れようと試みているのがAssassin's Creedだ。ヨーロッパではすでにPlayStation 2とPSP用のゲームソフト「Free Running」が発売されている。Games Conventionでは,このほか「Prototype」や「Totems」なども,フリーランニングに感化されているのは,お伝えした通り。このように,キャラクターの表情だけでなく,動作に焦点を当てる開発者が,欧米では目立ってきているのだ。

 日本のようにゲーマーの記憶に残るようなキャラクターを量産できなかった欧米の開発者達は,キャラクターとゲームデザインに対する試行錯誤の末に,これまで以上にリアリティを追求することに新たな方向性を見出し始めた。デフォルメしたり擬人化したりするというような,ある種“アニメ的”なアプローチではなく,不気味の谷に転げ落ちる覚悟で,人間的なゲームキャラクターを作るという,極めて“映画的”なアプローチをとっている。
 もちろん,日本にもリアリティ溢れる作品はいくつもある。だが,最新技術を元にした欧米産の新作は,挫折を繰り返してきたゲーム開発者の新たなトレンドとして注目に値するはずだ。

 

正解:
上段左から:G-Man(Half-Life),Kratos(God of War),Lara Croft(Tomb Raider),Duke Nukem(Duke Nukem)
中段左から:Larry(Leisure Suit Larry),LeChuck(Monkey Island),Rayman(Rayman),Gabriel Knight(Gabriel Knight)
下段左から:Master Chief(Halo),Rayne(Bloodrayne),Sam Fisher(Splinter Cell),Carl Johnson(GTA)

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。アメリカの中華料理屋ではよく,「フォーチューン・クッキー」なるおみくじ付きのせんべいが食後の口直しに配られる。たいていは格言や,「明日良いことがあります」といったようなことが書かれているだけなのだが,先日奥谷氏が引き当てたおみくじには,「もうすぐエイリアンがあなたに近寄ってきます」と書かれていたらしい。奥谷氏は,その唐突さに苦笑しながらも,「連れ去られないのかな? 近寄ってきて,何をするんだろう?」と真面目に心配している。とりあえず,来週は別の星のゲーム事情でもいいですよ。

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