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海外ゲーム新作ガイド 2010
ここ数年,「Fallout 3」や「Dragon Age: Origins」などの秀逸なロールプレイングゲームが多く輩出された欧米のゲーム業界だが,2010年にリリースが有望視される新作RPGは,極端なほど少なそうだ。期待できそうな新作があまりにも少ないので,RPGとはちょっと言い難い「APB」や,WoWの拡張パック「World of Warcraft: Cataclysm」もこちらに入れておいたが,それでもこれだけしかないというのは,ちょっと寂しい。
もっとも,RPGやMMOの開発には時間が掛かるし,一作を遊び尽くすのには何週間も何か月も費やすのが常なので,これくらいの新作本数でちょうど良いのかもしれない。2011年以降には,「Diablo III」や「The Witcher 2」,そして「Deus Ex 3」といった超期待作が控えているようだし,「The Elder Scroll」シリーズの新作もそろそろ発表されておかしくはない。MMORPGに目を向けても,開発が遅れている「Star Wars: The Old Republic」や「Guild Wars 2」「The Secret World」,そして「DC Universe Online」といった大作が,水面下では目白押しだ。
世界的な人気を誇る「Grand Theft Auto」だが,そのオリジナル開発者が手掛ける最新のオープンワールド型クライムアクション「APB: All Points Bulletin」は,なんと完全オンライン化されたMMOとなる。プレイヤーは,法律を行使するEnforcer,もしくは犯罪に手を染めるCriminalの2勢力いずれかを選択して,それぞれの勢力で成り上がっていくのが目的となる。
APBでは,プレイヤーがどれだけミッションを続けて成功させたかによって,「Threatレベル」が決まり,それがプレイヤーキャラクターの頭上に表示される。この数字が高いほど,悪にせよ善にせよ,相手に脅威を与えるアブナイ奴というわけだ。
ゲームでは,Criminalチームに「○○地域の銀行を襲撃せよ」というようなミッションが出され,そのミッションが実行された瞬間に,周囲にいるEnforcerチームに「APB」(指名手配)というシグナルが発せられる。Criminalチームは,運転の得意なプレイヤーが逃走車を駆使して追っ手をまくことができ,もし接近されれば激しい銃撃戦が展開されることになるわけだ。勝ったほうが最終的に金銭を得ることとなり,それを武器の購入や,キャラクター/車のカスタマイジングなどに利用できるのだ。
「Alpha Protocol」は,「NeverWinter Nights 2」など数々のRPG開発で知られるObsidian Entertainmentの最新作だ。2003年にInterplayから独立して以来,同社にとっては初めてとなる,オリジナルのアクションRPGである。ストーリーは,ミッション遂行に失敗したCIA諜報員Michael Thorntonがアメリカ政府から命を狙われることになるという,マット・デイモン主演映画「ボーン・アイデンティティー」を彷彿とさせるもので,プレイヤーはその背後に潜む陰謀を暴いていくことになるのだ。
Alpha Protocolでは,プレイヤーは自分の拠点となる“セーフハウス”で「アルファ・プロトコル」と名付けられたデータベースにアクセス。ここで,重要参考人などにアクセスして情報を得たり,ミッションを選択していったりという仕組みだ。また,ここでミッションに携行する銃器を選んだり,プレイヤーの好み次第で変装も行ったりできる。
アクションは非常にスピーディで,銃撃ばかりでなく拳法を利用したコンバットも可能。ところどころでストーリーを進めていく会話シーンもあるのだが,限られた時間内に与えられた会話内容を選んでスムースにつなげていくというシステムが採用され,映画的なカットシーンを演出している。
カナダの雄BioWareの最新作「Mass Effect 2」は,2007年にリリースされるや200万本越えを軽々と達成した,大人気アクションRPGの続編だ。時は2183年,前作のエンディングから間もない頃,銀河の辺境をパトロールしていた主人公,Shephardの「ノルマンディ号」が,突然何者かの攻撃によって撃破されてしまう。九死に一生を得たShephardは,アップグレードされたノルマンディSR-2号に乗り込み,クルーをリクルートしながら,事件に関わるThe Collectorsと呼ばれるグループの追跡を始めることになるのだ。
Mass Effect 2には,ゲームシステム面でいくつかの変更があり,今回からヘルスは自動回復する仕組みになった。また,コンバット面では武器へ新たにヒートシンクのコンセプトが取り入れられているが,これは激しい銃撃によってヒートアップした銃器の,クールダウンを待つのではなく,カートリッジをチェンジすることでアクションを迅速に続けることを可能にするもの。
ほかにも,武器のタイプが4種類から一気に19種類にまで増えているほか,AIやアニメーション,カメラワークなど,さまざまな要素が洗練されている。前作のセーブファイルを利用できるのも,ファンにとってはうれしい仕様であろう。
開発がPerpetual Entertainmentから,「City of Heroes」などで実績のあるCryptic Studiosに移譲されてから,一気に進行してきた感のある「Star Trek Online」が,いよいよローンチされることになった。「スタートレック」というと,1966年からTVシリーズが開始されており,かつての“トレッキー”達の多くは,すでに中年層になっているだろう。しかし,2009年春に公開された映画「スタートレック」の全世界での興行収入は350億円を突破しており,MMORPGもそんな機運にあやかりたいところだろう。
Star Trek Onlineはローンチ直後から,惑星でのコンバットと,宇宙におけるバトルシップの戦いの両方を搭載したMMORPGとなる。25世紀初頭のタイムラインにあわせた本作では,現時点ではフェデレーション,もしくはクリンゴン陣営でプレイすることが正式に公表されているだけだが,公式サイトにロミュランやカーデシアのエンブレムが用意されているのも気になるところ。もちろん,それぞれの勢力には複数のエイリアン種族が含まれており,Cryptic特有のキャラクター制作のバリエーションと合わせて,キャラクターの作り応えは十分であろう。プレイヤーは,自分の勢力の中でキャプテンやストラテジー・オフィサー,ドクターとしてのランクを上げていくのだ。
ポーランドのReality Pumpが開発したオープンワールド型アクションRPGの新作「Two Worlds II」は,「The Elder Scrolls IV: Oblivion」や「Gothic 3」のように,メインクエストを進める以外にも自由に世界を散策しながら,豊富に用意されたサブクエストを楽しんでいく形式だ。ゲームは前作の「火の神Aziraal」の一件から5年後の世界が舞台。妹が誘拐され,自らも囚われの身になっていた主人公だが,なぜか宿敵であるはずのオーク達が救出してくれたという場面からゲームが開始されるようだ。プレイヤーは,魔軍がさらに侵食してきたAntaloorの世界を解放し,妹を探すための旅に出るのである。
Two Worlds IIは,新たにReality Pumpが開発したGRACEエンジンで制作されており,グラフィックスからアニメーションまで非常に洗練されたものになっている。本作ではゲームの持つ自由度の高さが突き詰められているようで,今回は自分の好きなスペルやポーションを作成できるだけでなく,自分で作った武器は色までカスタマイズできるという凝り用だ。クラスのないシステムは継承されており,プレイヤーの気が向けば,自分の好きなスキルにポイントを再割り振りできるなどの仕様も引き継がれている。
リリースからすでに5周年が経過した「World of Warcraft」は,今や世界で1150万アカウント,MMORPG全体の62%を掌握している。そんなMMORPG界の巨頭では現在のところ,拡張パック第3弾となる「World of Warcraft: Cataclysm」が開発されている。Cataclysmは,AllianceとHordeが果てしない戦いに明け暮れる一方,南方のDeepholmでは長い眠りについていた邪悪な黒いドラゴン,Deathwingが再び首をもたげ始めたというバックストーリーになっている。
このDeepholmは,Azerothの世界を築いた創造主Titansによって作られた魔力のバリアで封鎖された地域だったが,そのバリアが弱まったことで世界のバランスが崩れ,世界中に大異変が起きているという設定だ。そのため,樹木や岩で覆われたDarkshoreが湿地になったり,AzsharaはOrgrimmarからの直接ルートのあるHorde用のローレベルゾーンになったりと,Eastern KingdomsやKalimdorといったクラシカルエリアのゾーンはかなりの部分作り直されている。
レベルキャップは85にまで引き上げられ,今回はHorde向けにGoblin,Allianceには狼男風のWorgenという2種族が追加。さらに,Dwarfメイジ,Humanハンター,Taurenパラディンなどのコンビネーションでもプレイすることが可能になった。ギルドのレベルシステムや新しいWorld PvPゾーンが加わったのも気になるところだ。
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