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「HyperX Savage SSD」レビュー。Kingstonのゲーマー向けSATA 6Gbps接続型SSDが持つ性能を新導入のテストで明らかにする
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印刷2016/06/22 00:00

レビュー

ゲーマー向けSATA 6Gbps接続型SSDの性能を明らかにする

Kingston HyperX Savage Solid-State Drive(SHSS37A/480G)

Text by 米田 聡


HyperX Savage Solid-State Drive(容量480GBモデル,型番SHSS37A/480G)
メーカー:Kingston Technology
問い合わせ先:00531-88-0018(平日9:00〜19:00)
実勢価格:2万〜2万3000円程度(※2016年6月22日現在)
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 Kingston Technology(以下,Kingston)が展開しているゲーマー向け製品ブランド「HyperX」。そのSSD製品には,2016年6月時点において,3つのラインナップがある。Serial ATA(以下,SATA) 6Gbps接続で手頃な価格がウリの「HyperX Fury Solid-State Drive」,SATA 6Gbps接続の上位モデルという扱いになっている「HyperX Savage Solid-State Drive」(以下,HyperX Savage SSD),そしてPCI Express x4接続の「HyperX Predator PCIe Solid-State Drive」である。

 これらのうち,HyperX Predator PCIe Solid-State Driveは以前に4Gamerで取り上げたこともあるが(関連記事),今回はSATA 6Gbps接続のHyperX Savage SSDをKingstonから入手できたので,その評価を行ってみたい。


Phison製のSSDコントローラを採用したHyperX Savage SSD


製品ボックス。中には7.5mm厚となるSSDのほか,9.5mm厚へ変更するためのスポンジ製スペーサーと,ストレージの換装やバックアップを行うときに便利なソフトウェア「Acronis True Image HD」のライセンスキーが入っている
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 HyperX Savage SSDのラインナップは,容量120GB,240GB,480GB,960GBの4モデルだが,今回入手したのは,最近の売れ筋でもある容量480GBモデルだ。KingstonはSSD単体の「スタンドアロンドライブ」型製品ボックスと,SSD本体のほかに,USB 3.0接続を可能とするケースなどが付属する「アップグレードバンドルキット」というものも用意しているが,今回入手したのは前者の容量480GBモデルである。型番は「SHSS37A/480G」だった。

 表1は,4モデルのスペックをまとめたものだ。Kingstonは,ATTO製のストレージベンチマーク「Disk Benchmark」の結果を基にしたスペックとして,逐次読み出し書き込み性能最大560MB/s(※容量120GBモデルは同360MB/s)という,SATA 6Gbps接続モデルの上位製品らしい値を示している。「Iometer」のスコアを基にしているというランダムアクセス性能値も含め,スペックは総じて高いと述べていい。

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 HyperX Savage SSDには,筐体を止めている裏のビス(の1つ)にシールが貼ってあり,分解するとメーカー保証が失効するようになっている。なのでエンドユーザーによる分解はお勧めしないが,今回はあえてこのシールを破り,内部をチェックしてみよう。

HyperX Savage SSD全景。本体背面側,4か所あるトルクスビスのうち1つに,傷ついたり剥がれたりするとメーカー保証の失効するシールが貼ってある
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PS3110-S10
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 分解後の写真は下にまとめたが,HyperX Savage SSDの基板では,筐体の底面側にSSDコントローラとキャッシュメモリが載っている。
 SSDコントローラは台湾Phison Electronics製の「PS3110-S10」(関連リンク)だ。4基のCPUコアを統合した最新世代のコントローラで,NAND型フラッシュメモリのチャネル数は最大8とされている。会社名が初耳という読者もいると思うが,Patriot Memory製SSDなど,すでに採用実績はあり,HyperX Savage SSDが初というわけではない。

4か所のビスを外して基板を取り出したところ。基板はシンプルな構成で,エンタープライズ向けのSSDに見られるようなデータ退避用の大容量コンデンサも付いていないが,コンシューマー向けのSSDとしては普通といっていいだろう。SSDコントローラと筐体の間に厚手の熱伝導シールが貼ってあり,コントローラの熱をアルミ製の筐体へ逃がす構造なのが分かる
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 SSDコントローラの隣にある,Kingstonロゴ入りのやや小さなチップ「D2516EC4BXGGB」は,4Gbit(=512MB)のDDR3L SDRAMで,間違いなくキャッシュ用である。基板裏にもSDRAM用と思われる空きパターンがあるので,容量960GBモデルでは合計容量1GBのキャッシュメモリを実現しているのかもしれない。
 それ以外の両面合わせて16枚あるKingstonロゴ入りのフラッシュメモリは,「FD32B08UCT1-DE」という型番こそ読み取れるものの,データシートが見当たらない。なので詳細は不明だが,1枚あたり容量32GB,合計容量512GBを実現したうえで,そのうち32GBを予備領域として使っているものと考えている。

基板のコントローラ側(左)とその反対側(右)。左にある「PHISON」ロゴ入りチップがコントローラで,その上に見えるのがキャッシュ用のDDR3Lメモリだ。表裏16枚並ぶのがNAND型フラッシュメモリである
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一般的なベンチマークではまずまずの成績を示すHyperX Savage SSD


 これまで筆者のSSD製品レビューでは,比較対象を示しながら,まず「PCMark 8」のワークロード「Storage」におけるスコアを示すという段取りになっていたが,今回から,PCMark 8の「Expanded Storage」をSSD製品の評価基準とすることにした。
 その理由を示す意味も含め,今回はまず,ドの付く定番ベンチマークである「CrystalDiskMark」(Version 5.1.2)と,4Gamerで長らく採用し続けているストレージI/Oベンチマーク「Iometer」(Version 1.1.0)の結果を先に示しておきたいと思う。

 比較対象として用意したのは,Samsung Electronics製の「SSD 850 PRO」(容量512GBモデル,型番MZ-7KE512B/IT)と,SanDiskの「Extreme Pro SSD」(容量480GBモデル,型番SDSSDXPS-480G-J25)の2製品だ。いずれも,性能の高さに定評のあるSATA 6Gbps接続タイプだ。HyperX Savage SSDがこれらにどれだけ迫れるかを見ようというわけである。
 そのほかテスト環境は表2のとおりだ。

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 というわけで,CrystalDiskMarkからである。
 CrystalDiskMarkでは,初期設定の「テスト回数5回,スレッド数1,テストサイズ1GiB,ランダムデータ」によるテストを10回繰り返し,その平均値をスコアとして採用することにした。10回の平均値なので,仮にユーザーがSSDを購入してCrystalDiskMarkの設定を弄らずに実行したとしたら,この程度のスコアが出るだろうという目安にはなるはずだ。

 CrystalDiskMarkの初期設定ではQueue Depth(以下,QD)=32の設定とQD=1の設定でストレージの帯域幅を調べることができる。
 QDというのは,ストレージに送るコマンドキューの深さのことで,Serial ATA仕様では最大32個のコマンドをキューに送ることができる。ストレージ側はキューに入れられたコマンドを最適な順番に並べ替えて実行できるので,キューに送るコマンドが増えるほどストレージの利用効率が高くなるが,QD=32はSerial ATA仕様の最大である32個のコマンドをキューに送り込んでテストを実行する指定だ。対するQD=1はキューに1個ずつコマンドを送って逐次実行していくテストで,QD=32と比べてストレージの利用効率が低下するものの,かつてのIDE仕様にはコマンドキューがなかったこともあって,QD=1のアクセスは現在のWindowsでも少なくないと言われている。

 グラフ1は,QD=32の逐次アクセス結果をまとめたものとなる。最近のSSDにおける逐次アクセス性能はSATA 6Gbpsの論理的な帯域に近づいていることもあり,スコアは良好と述べていいだろう。
 とくに,逐次書き込み性能では,HyperX Savage SSDが約524MB/sという記録を叩き出してトップを取った。次いでSSD 850 PRO,Extreme Pro SSDの順で,Extreme Pro SSDは500MB/sを切ってしまっている。
 逐次読み出し性能はHyperX Savage SSDとSSD 850 PROがほぼ互角で,Extreme Pro SSDはそれから置いて行かれている。

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 グラフ2はQD=32,4KiB単位のランダム読み出しおよび書き込みにおけるスコアだ。ランダム読み出しだとHyperX Savage SSDが比較対象と比べて明らかに一段低いスコアだ。書き込みのほうは僅差ながら,HyperX Savage SSD,SSD 850 PRO,Extreme PRO SSDという順になっている。

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 続いてグラフ3はQD=1における逐次アクセス性能をまとめたものになるが,スコア傾向はグラフ1と同じである。

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 グラフ4はQD=1で4KiB単位のランダムアクセスを行ったときのテスト結果である。ここではSSD 850 PROが読み出し,書き込みともトップで,Extreme PRO SSD,HyperX Savage SSDの順となった。
 Samsung Electronicsは以前から「WindowsではQD=1のランダムアクセス性能が体感的な速度向上感をもたらす」と述べていたりもしているので(関連記事),トップも当然といったところではあるが,残る2製品との間で大差があるわけでもない。

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 では,Iometerだとどうだろうか。
 Iometerのテストにあたっては,4Gamerで行ってきたこれまでのSSDのテストと同じやり方を踏襲する。具体的には,4KiBのランダム読み出しと書き込みをQD=32の設定で50%ずつ混在させて,30分間の連続ストレージアクセスを行い,平均IOPS値を出すというものだ。

 結果はグラフ5のとおりだ。Iometerのテスト結果は「IOPS」が「Read IOPS」と「Write IOPS」を足した総合スコアとなるが,そのすべてでSSD 850 PROが圧勝となった。
 本稿の主役であるHyperX Savage SSDは読み出しと書き込みが混在した状況でIOPSが他社の上位モデルと比べると大きく落ち込む傾向があり,これは大きな弱点となり得るだろう。

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PCMark 8のExpanded Storageとは?


 CrystalDiskMarkで得られるストレージの帯域幅やIometerで得られるIOPS値は,SSDを利用する快適さの目安にはなるものの,「実際のアプリケーションにおける快適さ」との相関関係は必ずしも明確でないのが難点だ。とくに,SATA 6Gbps接続型SSDの場合,全体的にインタフェース側の仕様上限に近づいているため,得られるスコアの違いはそれほど大きくなくなり,いきおい,各製品の性能差を把握しづらくなってきている。

 また,“通り一遍”のテストでは調べにくい重要な要素としては,「SSDコントローラの負荷が高まったときに,どれだけ性能が低下するか」を挙げることができるだろう。
 SSDは。ランダムな書き込みが連続すると,内部でデータの再配置を行うようになるが,SSDコントローラがこの再配置処理に多くの時間を割くようになると,ストレージアクセス性能の低下を招くことがある。ランダムなディスクアクセスが長時間続くような使い方をしていると,SSDの反応が低下したり,書き込みに時間がかかるといった形でユーザービリティの悪化を引き起こすわけだ。

これが2016年6月時点におけるPCMark 8のGUI。Expanded StorageテストをGUIから起動することはできない
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 CrystalDiskMarkやIometerでも,テストのコンフィギュレーションを工夫すれば,そうしたハードな利用状況における性能低下度合いを測ることも不可能ではないはずだが,安定した結果を得るためにはかなりの工夫が必要になるだろう。そんな「SSDの性能低下度合い」を,簡単に調べることができるという触れ込みで登場したのが,PCMark 8のバージョン2で「Professional Edition」から利用できるようになったテスト「Expanded Storage」だ。

 Expanded Storageは,「Consistency test」(一貫性テスト)と「Adaptivity test」(適応性テスト)という,2種類のテストを含んでいる。厳正を期すと,Consistency testではこれまでの間にテストシークエンスの改訂が入っており,今回用いたバージョン2.7.613のPCMark 8だと「Consistency test v2」というテストになっている。

 そのため,Consistensy testはバージョン2を用いる前提で話を進めるが,Consistency test v2は,まさに上で述べたような「SSDの内部負荷が高まるような状況」を作り出し,ストレージ性能が劣化する度合いを調べるテストである。

Expanded Storageテストは「pcmark8cmd」コマンドにパラメータを与えて実行することになる。実行が始まると以降24〜30時間ほど,ただただテストシーケンスが実行され続ける。なお,物理セクタへの書き込みを行う都合上,テスト対象のストレージは未フォーマットの状態でなければならない
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 テストにおいては,まず,ストレージ全域にわたって容量128KB単位で2回,逐次書き込みを行う。これは「Pre condition」(プレコンディション)と呼ばれる処理で,一種の初期化作業と考えていいだろう。物理セクタに対する書き込みを行うため,SSDに設定されているプロビジョニング領域(予備領域)にまでシーケンシャルに書き込みを行うのがPre conditionの特徴で,プロビジョニング領域が設定されているSSDでは,その領域の書き込みテストの意味も持っている。
 続いて「Degradation phase」(劣化フェーズ)を実行することになる。Degradation phaseの手順は以下のとおりで,この手順でStorageワークロードのスコアを8回取得することになる。

  1. ランダムなオフセット(間隔)で,容量4KB〜1MBのデータをストレージに対して書き込む。つまり,バラバラの間隔でバラバラなサイズの書き込みを行うので,SSD内部ではデータの再配置に時間がかかるような状況になる
  2. その状態でPCMark 8のStorageワークロードを実行しスコアを取得する
  3. 再び1.に戻って,合計8回繰り返す

 1.がストレージ性能を低下させる処理で,所要時間は初回が5分,最後の8回めには45分と,試行回数が増えるごとに長く時間をかけるというのがDegradation phaseの特徴だ。
 SSDでは内部の再配置などの処理の負荷が高まるため,PCMark 8のスコアが徐々に落ちていくのが一般的なパターンになる。

 Degradation Phaseが終わると,続いて「Steady state phase」(安定フェーズ)に移る。
 Steady state phaseで行うこと自体はDegradation phaseと同じだが,1.にかける時間は50分の固定だ。Steady state phaseではPCMark 8におけるStorageワークロードのスコアを5回取得する。

 最後が「Recovery phase」(修復フェーズ)だ。Recovery phaseではDegradation phaseにおける1.の処理を行わず,代わりに5分間のインターバル(=何もしない時間)を置いて,PCMark 8のStorageワークロードを5回実行する。スコアの取得前にインターバルを置くので,SSD内部ではデータの再配置が進み,SSDの速度低下要因が減っていくため,一般的にはStorageワークロードのスコアは回を重ねるごとに上昇することとなる。

テストの結果はログファイルに記録される。これを基に,ログから各フェーズの平均帯域やアクセス時間,総合スコアといった記録を抽出してグラフ化するわけだ
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 もう1つのAdaptivity testだが,こちらでは,ストレージを初期化した後,Consistency test v2におけるRecovery phaseに相当するテストを8回繰り返す。SSDがクリーンな状態かつ適切なインターバルを置いてPCMark 8のStorageワークロードを実行するので,基本的には安定したスコアが得られなければならないテストということになる。

 これらConsistency test v2とAdaptivity testを通しで実行する場合,SATA 6Gbps接続のSSDだと,トータルで24時間から30時間ほどかかる。それほど長い時間をかけることで,長時間にわたってSSDの利用したときにどれだけ性能が落ち込むかを知ることができるというわけだ。
 また,CrystalDiskMarkやIometerとは異なるのは,PCMark 8のStorageワークロードでは,実アプリケーションのディスクアクセスパターンを利用するというのもポイントになる。速度やIOPSの低下状況だけでなく,実アプリケーションにおける性能低下の度合いが分かるので,よりユーザーにとって分かりやすい指標が得られる利点もある。


Extended StorageでもHyperX Savage SSDは中程度の成績か


 4Gamerでは初めてExtended Storageテストを実施するということで説明が長くなったが,今回は,主役と比較対象の合計3製品に対し,バージョン2.7.613のPCMark 8からExtended Storageテストを実行したので,その結果を見ていくことにしよう。

 まずは,Consistency test v2における平均ストレージ帯域幅の変化をグラフ6にまとめた。
 SSDの性能低下処理を含むConsistency test v2では,平均ストレージ帯域幅が大きく変化する。言うまでもないが,性能低下が起これば平均ストレージ帯域幅は下がるので,「実使用環境でどれくらい性能は低下しうるか」を,分かりやすい形で得られるはずだ。

 というわけで結果を見ていくと,HyperX Savage SSDはDegradation phaseの2回めに出した147.3MB/sをピークにして順当に(?)帯域幅が落ち込むものの,8回の試行で階段状に落ちていくということはなく,120MB/s前後をキープできている。また,Steady state phase 4を最後に落ち込みはなくなり,Recovery phase 2以降で帯域幅は170MB/s超となった。

 SSD 850 PROもおおむね似た傾向だが,Degradation Phaseの初回に170MB/s近いスコアを出した後はスコアがじわじわと低下していく。Recovery phaseの初回に再び170MB/s台を回復するものの,帯域幅は安定せず,その後も160MB/s前後を記録した。このことから,Recovery phaseに移ってもSSDコントローラの負荷が継続している可能性が見て取れる。

 一方で見事なスコアを示したのがExtreme Pro SSDだ。Degradation phaseからSteady state phaseまで一貫して200MB/s前後をキープしており,SSDコントローラに負荷がかかるような状況でも安定した性能を保てる製品だと言えるだろう。

※グラフ画像をクリックすると,実スコアのまとまった表3を表示します
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 Degradation phaseで悪化する要素の1つに,搭載するSSDコントローラの反応が挙げられる。SSDコントローラがビジーになると,レスポンスが悪化し,アクセス時間の増大という形で性能の低下が現れる。
 そこでまずは,Consistency testにおけるPCMark 8のワークロードのうち,Adobe製写真加工ソフト「Photoshop CC」を利用して高負荷な作業を行っているときのディスクアクセスパターンを再現した「Photoshop Heavy」における,読み出し時の平均アクセス時間を抽出し,グラフ7にまとめてみた。

 それを見ると,読み出し時はどのSSDも安定した平均アクセス時間をキープする傾向があると分かる。再配置などに関わるSSDコントローラの負荷が読み出しに与える影響は大きくないということだろう。
 HyperX Savage SSDの実スコアは,SSD 850 PROに迫る0.5ms台を確保しており,悪くない。Extreme PRO SSDは,上位2製品と比べると,アクセス時間がやや長かった。

※グラフ画像をクリックすると,実スコアのまとまった表4を表示します
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 一方,書き込み時の平均アクセス時間を抽出したグラフ8だと,様相は読み出し時とずいぶん異なっている。

 HyperX Savage SSDは,Degradation PhaseからSteady state phaseにかけて悪化傾向が続き,最大では約5.9msまで平均アクセス時間が延びている。もっとも,Recovery phaseではしっかりと書き込み時平均アクセス時間が低下し,最も短い2ms以下を確保できているのも分かる。
 最も劣化の目立つのがSSD 850 PROで,Degradation PhaseからSteady state phaseにかけて書き込み時平均アクセス時間が増大し続け,最終的には,HDD並みの16ms以上という平均アクセス時間になってしまった。Recovery phaseでも回復は鈍く,SSDコントローラのレスポンスの悪化が戻らない様子が見てとれる。これは「Recovery phaseにおいて平均帯域幅の戻り方が安定しない」というSSD 850 PROの先のグラフとも整合する結果だ。
 なお,ここでもExtreme PRO SSDのスコアは文句なし。ワーストで約2.9ms,ベストで2.7msと,最初から最後までほとんど書き込み時平均アクセス時間が変わっていないというのは素晴らしい。

 いずれにしても,これらの結果から「HyperX Savage SSDとSSD 850 PROのSSDコントローラのレスポンスの悪化は,書き込み時に大きく現れる」ことが言える。

※グラフ画像をクリックすると,実スコアのまとまった表5を表示します
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 グラフ9は,Consistency test v2で取得したStorageワークロード総合スコア18回分から,ベストスコアとワーストスコアを抜き出したものになる。両者のスコア差が小さければ小さいほど,SSDの性能低下が起こりにくいことを示すが,スコア差がほとんど生じていないのは,ここまでの結果からも想像できるとおりExtreme Pro SSDだ。圧倒的な安定性を誇るSSDと言えると思う。
 一方,本稿の主役であるHyperX Savage SSD,そしてSSD 850 PROはいずれも,ベストスコアとワーストスコアとの間に約4%のギャップが認められた。絶対スコアで見るとSSD 850 PROよりHyperX Savage SSDのほうがやや高いスコアを示しているので,劣化状況におけるHyperX Savage SSDは,SSD 850 PROと同等か,若干上回る性能を持っていると言っていいと思う。

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 同じく,Adaptivity testのワーストスコアとベストスコアを抽出したものがグラフ10だ。性能を低下させる処理のないAdaptivity testなので,つまりPCMark 8を通常実行するとこの程度のスコアが出るという目安になる。
 このテストではSSD 850 PROが僅差でトップだが,3製品の差は極めて小さい。

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 以上の結果から,圧倒的安定性を誇るExtreme Pro SSDと比べると,HyperX Savage SSDの速度安定性は一歩落ちるが,SSD 850 PROと比較した場合には大いに健闘している印象だ。
 やや余談気味だと断ってから続けると,SSD 850 PROの成績が悪かったのが意外だった。実は,SSD 850 PROの結果が信じられず,本製品だけはExpanded Storageテストを2回も追加で行ってみているのだが,スコアは変わらなかったのだ。なので,テストに問題があったわけではなく,SSD 850 PROの少なくとも容量512GBモデルは,再配置などが多発する状況で性能劣化がやや大きいSSDということになるはずである。


HyperX Savage SSDはSSD 850 PROといい勝負ができるものの,Extreme PRO SSDが強すぎる


 以前実施した短評ではぱっとしなかったExtreme PRO SSDが素晴らしい成績を残しており,「SATA 6Gbps接続で性能低下の少ないSSDを使いたいならExtreme PRO SSDを選ぶべき」という結論になるのだが,本稿の主役はあくまでもHyperX Savage SSDである。本製品についてまとめよう。

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 HyperX Savage SSDは,トップクラスの安定性を誇るExtreme PRO SSDと比べると分が悪いものの,容量500GB前後のSSD同士で比較する限り,SSD 850 PROに引けを取らない。気になるのは,Iometerのスコアが示すように,読み出しと書き込みが混在するランダムアクセスの性能がやや劣る点で,データベースのようにIOPSが物をいうアプリケーションには向かないだろう。
 だが,PCMark 8のStorage Adaptivityの結果がさほど悪くないことからも分かるように,ゲームデータの読み出しを含む,一般的なデスクトップPCのアプリケーションでは影響は少ないはずだ。

 さて,ここで考慮しなければならないのは,製品の店頭価格である。今回用意した3製品の2016年6月22日現在における実勢価格は,SSD 850 PROが3万4000〜3万8000円程度,Extreme PRO SSDが2万〜2万5000円程度のところ,HyperX Savage SSDは1万9500〜2万4000円程度となっている。
 HyperX Savage SSDは,性能,安定性ともに大差ないSSD 850 PROに比べれば圧倒的にコストパフォーマンスが高いと言えるものの,ほぼ同価格帯で圧倒的に安定した性能を見せつけたExtreme PRO SSDに比べると,価格面でもやや分が悪いということになる。その意味でHyperX Savage SSDは,今後,もう少し価格がこなれてくると,検討する価値が出てくるかもしれない,といったあたりが,2016年6月時点における結論となりそうだ。

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