会場となったSuper Brand Mall(写真正面)
「
GeForce GTX 690 」や「
GeForce Experience 」といった発表が大きかったため,そちらのレポートを優先したが,「
NVIDIA Gaming Festival 2012/GeForce LAN 」(以下,NGF 2012)は,中国・上海市の繁華街のなかでも屈指の集客力を誇るという大型ショッピングモールのイベントホール「Super Brand Mall」で開催された,ゲーマー向けのイベントである。
開場10分ほど前の会場内。向かって奥がステージと観客席で,その手前がLAN対戦コーナーで,写真最も手前が試遊台だ。このブロックを挟むように,(広すぎて,とても撮影し切れていないが)左右にハードウェアメーカーの協賛ブースとなっていた
2012年4月29〜30日の2日間で,有料入場者数7920名を数えたNGF 2012。会場は奥行きのある長方形をしており,両サイドが協賛ハードウェアメーカーの展示ブースで,それに挟まれる格好で大きく確保された中央ブロックは,ざっくりと半分が試遊台エリアで,半分がステージエリアとなっていた。
試遊台エリアは,入退場口近くがハイエンドGPUを搭載したマシンや3D Vision Surroundの体験スペースになっているが,それ以外はゲームメーカー協賛のLAN対戦コーナーだ。
LAN対戦コーナーの模様。軽く引くくらい人が集まっていた
試遊台エリアの模様。ここでも来場者は自由にゲームをプレイできた(左)。イベント会場における3D Vision Surroundの訴求力はなかなかのものだ(右)
タイトルごとに盛り上がり方はまちまちで,気がつくと単なる休憩スペースになっているところもあったが,中国市場で人気がある「
Crossfire 」(邦題 クロスファイア)などではチームデスマッチが頻繁に行われていたり,サッカーゲーム「
Football City Stars 」では,だいたいいつ見に行ってもプレイヤーがいたりしたので,BYOC(Bring Your Own Computer)こそないものの,LANパーティ(GeForce LAN)の要素はあったと述べていいだろう。
入場者は,グッズなどのもらえる抽選会に参加したり,各社のキャンペーンガールやコスプレイヤーを撮影したりもしつつ,基本的には思い思いに時間を過ごしていた。
衝撃的だったのは,残る中央ブロックの半分に用意されたステージと観客席のほうだ。NGF 2012では,「
StarCraft II: Wings of Liberty 」(以下,SCII)と「
League of Legends 」(以下,LoL),「
DotA 」の3タイトルでオンライン予選を勝ち抜いてアジア各地から集ったプロゲーマーやプロゲームチームがステージ上で準決勝&決勝に挑んだのだが,試合が始まる前から観客席はいっぱいになり,開始後は,皆が皆,揃ってステージに注目するのである。
試合開始前,選手がウォーミングアップを始めた時点から,来場者の視線は出場選手に注がれる。ちなみに今回登場したプロゲーマーやプロゲームクランに日本人は含まれていないが,これは純粋に予選で敗退したため
それまでLAN対戦していた人達がプレイを止め,キャンペーンガールやコスプレイヤーまでもが,ステージを注視する。大音量で流れる実況を聞き,ゲーム展開が大きく動けば歓声が上がり,お目当ての選手を応援する声も上がる。会場にいるほとんどの人が手を止めて,場合によっては数十分間,ステージのゲームプレイに集中するのである。この説明でうまく伝わるのか,正直,自信はないのだが,会場で格闘技の試合を見ながら,放送向けの実況も同時に聞いているような感覚なのだ。
筆者のメイン担当はハードウェアなので,海外の大規模なゲームイベントを取材するのは今回が初めて。なので,多分に“驚き補正”が入っていることは自分でも理解しているつもりだ。ただそれでも,
実況の雰囲気や観客の反応は,(ゲームではなく実際の)格闘技イベントのそれに近い と言いたくなる気持ちを押さえられない。アジアの各地でe-Sportsがスポーツとして認められているという話は耳にタコができるほどよく聞くが,これは紛れもないスポーツイベントであった。
今回,実際に取材して肌で感じたのは,一度でも海外のゲーム大会を目の当たりにしたゲーマーなら,「この雰囲気や熱気を日本でも」と考えるのではないかということだ。
「海外ではe-Sportsが熱いよ!」という話は何度も何度も耳にしていたし,“当事者”の人達が熱心にe-Sportsを広めようとしているのも頭では理解していたつもりだったが,筆者は全然分かっていなかったということなのだろう。ステージでゲーム大会が始まったときに,観客どころか,動員されているキャンペーンガールやコスプレイヤーまでが展開を追っているという状況は,正直,うらやましい。難しいだろうと冷静に判断する自分がいる一方で,確かに日本でも根付いてほしい文化だと思う自分もいる次第である。
なお,本イベント全体を通して見た場合,スケジュール管理がメチャクチャで,前の試合が押すとどんどんと後ろ倒しになってしまうなど,興行としての完成度は,端的に述べて低かった。ただ,ビジュアルを前面に押し出した見せ方は洗練されており,このあたりはさすがNVIDIA主催イベントといったところだろうか。
決勝を控えウォーミングアップ中のW.E.メンバー
ちなみに,NGF 2012で勝ったのは,SCII(1on1)がMacSed選手で,チーム戦となったLoLとDotAは順にW.E.とLGD。当たり前といえばそれまでだが,中国チームの人気はすさまじく,筆者が試合を見ることができたなかでは,LoLの決勝で逆転勝利したW.E.が頭1つ抜け出ている印象を受けた。
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