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Intel,「10年後のスーパーコンピュータ」に向けた取り組みを披露〜PCやゲーム機に生かされる可能性のある技術も
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印刷2011/03/04 17:38

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Intel,「10年後のスーパーコンピュータ」に向けた取り組みを披露〜PCやゲーム機に生かされる可能性のある技術も

画像集#003のサムネイル/Intel,「10年後のスーパーコンピュータ」に向けた取り組みを披露〜PCやゲーム機に生かされる可能性のある技術も
Stephen S. Pawlowski氏(Intel Senior Fellow and General Manager, Central Architecture and Planning, Intel Architecture Group, Intel)
 IntelのシニアフェローであるStephen S. Pawlowski(スティーブ・パウロスキー)氏が来日。2011年3月4日,都内で国内の報道関係者向けに,「エクサスケールへの障壁を解消する技術革新」と題する説明会に登壇した。
 内容は「次世代のスーパーコンピュータを目指す次世代の技術ということで,4Gamerの守備範囲からは外れてしまう部分も多いのだが,将来のPCやゲーム機に利用されていくと思われる部分もあったので,今回はそのあたりを中心にレポートしてみたい。


次世代スーパーコンピュータの前に

立ちはだかる消費電力の壁


画像集#002のサムネイル/Intel,「10年後のスーパーコンピュータ」に向けた取り組みを披露〜PCやゲーム機に生かされる可能性のある技術も
Pawlowski氏が示したスーパーコンピュータの性能向上予測。2011年の時点でペタFLOPSを達成しているが,Intelの予測では,2017〜2018年ごろには,エクサFLOPSに達するという
 本題へ入る前に,「そもそも『エクサスケール』って何?」という部分を説明しておくと,エクサ(Exa)とは,ペタ(Peta,10の15乗)の1000倍,つまりは10の18乗のこと。スーパーコンピュータのランキングを公開しているWebサイトとしては,有名な「TOP500 Supercomputing Site」というのがあるのだが,ここに並んでいる上位陣はペタFLOPS(FLOPS:Floating point number Operations Per Second,1秒間に行える浮動小数点演算の数を示した値)を超える性能をすでに達成しており,次の目標がエクサFLOPS級になる。
 そんな,次世代のスーパーコンピューティングに向け,どんな課題と対策があるのかという話が,今回のテーマというわけだ。

 ゲーマーには何の関係もないと思うかもしれないが「今日(こんにち)のゲーム機が持つ演算能力は,1985年の『Cray』と同程度」とPawlowski氏が語るように,いずれコンシューマレベルに下りてくるものと考えていいだろう。

画像集#004のサムネイル/Intel,「10年後のスーパーコンピュータ」に向けた取り組みを披露〜PCやゲーム機に生かされる可能性のある技術も
現在のスーパーコンピュータのスペックを元にエクサFLOPSを実現すると4GW/hもの電力を消費するという
 さて,現在のスーパーコンピュータは,膨大な数のプロセッサを搭載し,並列計算を行う形が一般的だ。ならば,そのプロセッサの数をいまの1000倍にすれば,明日にでもエクサFLOPSになるのではないかという,素朴な疑問を持った人もいるのではないかと思うが,話はそう簡単ではない。「最大の壁は消費電力だ」(Pawlowski氏)。

 氏によると,2010年11月のTOP500で第1位の座にあるコンピュータの消費電力を基に,エクサFLOPSを実現したときの消費電力を試算すると,4GW/h(!)になるという。「4GW/hに堪えられるデータセンターはないし,第一,発電所がない」(同氏)ので,実現不可能ということになるわけだ。

 したがってエクサFLOPS実現には低消費電力化が必須であり,リーク電流の低減などといった話題にもつながってくるのだが,ここでPawlowski氏が大きな課題として挙げたのがDRAMだった。
 現在のDRAMでは,「行(Raw Address)を指定してメモリページの行すべてをバッファに読み出し,次に列アドレス(Column Address)を指定してCPUから個別のデータを取り出す」という方法が使われている。行のサイズは1kbitなどといった,比較的大きな単位だが,このとき,データが移動するだけでも電力を消費する。CPUがメモリから小さな単位のデータを取り出すときにも,行すべての読み出しが行われるため,ここで多大な電力のムダが発生しているというのが,Pawlowski氏の指摘である。

画像集#005のサムネイル/Intel,「10年後のスーパーコンピュータ」に向けた取り組みを披露〜PCやゲーム機に生かされる可能性のある技術も
「DRAMのアーキテクチャを見直す必要がある」とPawlowski氏は指摘する
 この問題に対し,Pawlowski氏の示す解決策はシンプルで,「メモリページを小さくし,いきおい,一度に読み出すサイズを小さくできるようにする」というものだ。連続したアドレスの読み取りでは大きなオーバーヘッドが発生するが,「読み出すサイズをあらかじめ指定しておく機構を,DRAM側に持たせる」といった対策で,ある程度は解決できると氏は語っていた。

 正直な話,デスクトップPCでDRAMの消費電力が大きな問題になるのは相当先の話になるだろうが,モバイルデバイスでは,このようなDRAMのアーキテクチャ改良がそう遠くない将来に行われるかもしれない。

 消費電力の話では,「プロセッサ間のインターコネクトと消費電力の関係」もなかなか興味深い。
 下に示したスライドで,左側のグラフは「同じ帯域幅を持たせたとき,インターコネクトが占有する面積」,右側のグラフは「同じ帯域幅を持たせたとき,インターコネクトが消費する電力」を見たもので,Sandy Bridgeで採用されているリングバスは,面積でこそ不利ながら,消費電力ではクロスバー方式よりもかなり優れているのが分かる。
 次世代スーパーコンピュータのインターコネクトがどうなるかについて,Pawlowski氏は「内部で研究している」と語るのみだったが,示されたグラフからすると,リングバスよりもメッシュのほうが有力と考えているのかもしれない。

画像集#006のサムネイル/Intel,「10年後のスーパーコンピュータ」に向けた取り組みを披露〜PCやゲーム機に生かされる可能性のある技術も
プロセッサ間のインターコネクトが占める面積と消費電力の関係。左側のグラフで縦軸は面積,右側のグラフだと縦軸はbitあたりのエネルギーだ。Sandy Bridgeに採用されたリングバスは,性能対面積比でこそ不利だが,エネルギー効率とのバランスまで考慮に入れると総合的に優れているのが分かる

画像集#007のサムネイル/Intel,「10年後のスーパーコンピュータ」に向けた取り組みを披露〜PCやゲーム機に生かされる可能性のある技術も
シリコン内部で光に変換し,光ファイバーでインターコネクトを行う方法を研究中とPawlowski氏。光への変換をシリコンの外部では行わない,というのがIntelの方針だそうだ。
 さらに,将来的にはまず間違いなくPCやゲーム機に下りてくるであろう「シリコン・フォトニクス」についても取り上げられた。これは「I/Oバスやプロセッサ間のインターコネクトに光ファイバーを利用しよう」という技術で,Intelでは,シリコン内部で光の変調を行う方法を研究しているとのことだ。

 光インターコネクトは各社が研究している分野で,現状では光への変換をチップ外部に持たせる形が多いが,Intelではシリコン内部に作り込むことを目指しているという。理由は,「シリコン外部だと,スケーリング(広帯域化)が難しいから」(Pawlowski氏)だそうである。

 「エクサスケール最大の敵は消費電力」とPawlowski氏が語るだけに,今回の話は将来的に,バッテリ性能などが重要視されるモバイル分野とのつながりが大きくなりそうだ。将来のスーパーコンピューティングを目指して開発された技術が,それほど間置かずにコンシューマ向け製品で応用されることも少なくないので,今回の話題も憶えておくと,後々膝を打つことがあるかもしれない。
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