― レビュー ―

 

 


 

 MMORPGには西洋ファンタジーをテーマとしたものが多い。そしてファンタジーといえば"剣と魔法"である。戦士が敵の攻撃を引きつけ,僧侶は味方の体力を回復し,魔法使いは術を唱えて戦場をコントロールする。EQ以降に発売された多くのMMORPGは"プレイヤー達がそうすることで戦闘に打ち勝つ楽しさ"を中心に据えてデザインされてきたように思われる。SFがモチーフの「Anarchy Online」でさえそうだった。聖なる力や魔法の存在をナノテクノロジに読み替えることで,同様のプレイ感を作り上げていたのだ。

 このような"MMORPGのコモンセンス"は多くの場合,新作タイトルの遊び方をスムースに理解する助けになってくれる。しかしSWGのプレイ開始時には,逆にこの考え方に縛られたままでいると混乱することになる。多くのMMORPGを経験してきたプレイヤーほど混乱は大きいだろう。

 かくいう筆者も縛られていた人間の一人で,SWG開始時には大いに混乱した。例えばSWGには,戦闘系の職業としてソードマンやテラス・カシ・アーティストといったメレー系と,ライフルマンやカービナーといった銃器による遠隔攻撃系がある。

 愚かな筆者は「きっとメレークラスはタンク,レンジド系はアタッカー」などと,やりもしないで思い込み,さらには「タンクはタウントがいちばん大事。これ絶対」といってタウントを連発し,あっというまにピンチに陥った。それでも懲りずに「これはヒーラーが必要。俺はタンクだからそんなスキル採らない。それはドクターの仕事」といってメディックスキルを採らずにいたものだから,非常に効率の悪いプレイをしばらく続けた。

 さらに「この世界の"魔法"に当たるものが絶対用意されているはずだ。ナノとか」と,不毛な調査を続けたりもした。そんなものは,ないのである。挙げ句,苦し紛れに導き出した予想が「ジェダイのフォースが魔法に当たるのかな?」である。これもかなり間違った認識で,SWGの世界にフォースは確かにあるが,これは本当に特別なもので,通常のプレイの戦術の一部としてこれを意識することはまったくない。「ミュージシャンはどうせバードでしょ」と身勝手に断じようとしたあたりで,ようやくSWGを既存のMMOに無理やり当てはめようとする愚かさに気がついた。

 SWGはEQクローンではなく,あくまでSWGという独自の作品なのだ。自らの反省の意も込めて書かせていただくが,もしあなたがMMORPGに慣れたプレイヤーならば,先入観に囚われすぎることには注意して,この作品に臨んでもらいたい。

 

 


 

 "戦闘"をプレイのメインに据えたMMORPGの場合,クラス間のバランスはとても重要かつ微妙なファクターだ。しかし,"SW世界の中で生活すること"に重点を置いたSWGでは,クラスのバランスはそこまで緻密ではない。
 端的に言ってしまえば,SWGには"役割を分担して戦術を組み立てて戦っていく"という要素が薄い。確かに戦闘に関するプロフェッションには攻撃に長けたもの,防御力に優れたもの,回復が得意なもの,といった性格付けがなされているが,どれかが欠けたらもう戦えないというものではない。
 そもそもSWGでは10人,20人という単位でグループが組めるので,大抵の敵には数の力で押し勝てる。足止めや催眠によるクラウドコントロールの概念もない。メンバー全員で突っ込んで,どどどーっとやっつけるのが一般的な狩りのスタイルだ。

 ではドクターやミュージシャン/ダンサーの活躍の場はどこにあるのかというと,戦いに出掛ける前と後にある。戦闘前の大仕事はBuffだ。SWGでBuffを施せるのはドクター/ミュージシャン/ダンサーのみ。このBuffは非常に強力で,キャラクターの特性値を大幅に上昇させられる。効果時間も2時間から3時間以上ととても長いので,メンバー全員がこのBuffを受けていれば,かなり強い敵とも渡り合える。
 戦闘後の仕事は,ウーンズ(Wounds)などの回復だ。SWGでは戦いを繰り返すことで慢性的な疲労やダメージが溜まっていく(HPなどの最大値が減るという形で表現される)。溜まると戦闘能力などに悪影響があるうえに,自力では治しにくい傷なので,彼らに癒してもらう必要があるのだ。

 ただ,これらの技能はハンティングに出かける前と,終わって帰ってきた後に必要になるもの。これまた端的に言ってしまうが,いくつか利点はあるものの,高いドクターやエンターティナーのスキルは通常のハンティングの最中には,とくに必要とされない。
 だからといって,彼らがハンティングに同行できないわけではない。理由の一つは「現地でのBuffやWounds回復は,できないよりはできたほうがいい」からだ。だがもっと大きいのは,「マスタードクターやマスターダンサーのスキルと同時に戦闘技能を伸ばすことも可能なので戦力にはなる」からである。これは生産系のスキルをメインに育てているキャラクターでも同様である。

 

 


 

 SWGの一般的なプレイスタイルを具体的に紹介しよう。

 SWGではソロでの戦闘や戦闘スキル上げ,ミッションの履行が可能である。これは「グループのほうがベターだがソロでもなんとか可能」というレベルではなく,やり方を工夫すれば,何人かと一緒に戦うよりも一人で適切な強さの敵と戦ったほうが戦闘系経験値獲得の効率は高くなるのだ。

 ソロプレイが可能なので,基本的にLFG(Looking for Group)のコールは少ない。プレイヤー同士が知り合いになるとしたら,駅前やカンティナで出会ったり,売買を通じて知り合ったり,自分の家の近所にたまたま住んでいたりといったケースが多いだろう。
 グループでのハンティングに利がないわけではなく,ミッションの報酬が上がったり,ターミナル-ミッションポイント間の往復を少なくできたりといったメリットがある。より強い敵にも挑戦できるし,なんといっても大抵の場合一人より二人のほうが楽しい。そのため,知人さえいれば一緒にプレイするようになる。


 フレンドリストが充実していくうちに,いわゆるギルドであるPA(プレイヤー・アライアンス)や,より大規模なコミュニティであるプレイヤーシティを作ろうという話が持ち上がるかもしれない。そうなれば,より連絡は取りやすくなり,仲間同士の関係は密なものになる。SWGの世界には,どう考えても一人二人では攻略不可能な敵やダンジョンも存在するので,大人数でそこへ行ってみようというイベントの話が持ち上がることもある。

 生産者にとっても,PAやシティの一員になるメリットはある。仲間達は良い顧客となってくれるし,生物を倒さないと手に入らないリソースの採集を手伝ってくれることもあるだろう。もちろんいくらかの銃器のスキルさえ保有しておけば,レイドに同行して援護要員として活躍することも可能だ。

 そんな活動を続けるうちに,キャラクターはスキルポイントを使い切るだろう。そうしたら,不要なスキルは削除し(削除するとスキルポイントは戻ってくる),より伸ばしたいスキルを伸ばしていく。ゲームのコツもこのころには分かってきているので,自分が理想とするスキル構成までキャラクターを育てきるのに,それほど多くの時間はかからない。
 EQタイプのゲームだと上限近くまでレベルを上げるまでにはカジュアルなプレイで半年以上の時間が必要だが,SWGでは一つのアドバンスト・プロフェッションをマスターにするまでにかかる時間は,効率を重視すれば一月程度だと思われる。

 その先の楽しみ方はプレイヤーそれぞれになっていくはずだ。いずれにせよ,レベルをキャップに到達させることだけがプレイの目的ではないSWGは,多くの他作品よりも"生活すること自体を楽しめる"ゲームであると言えるだろう。

 

■■星原昭典(ライター)■■
ここに書くネタにしようと,星原氏から近況を聞き出そうとした結果,氏が世間から長距離を置いて暮らす隠者であることが判明した。DoCoMoの携帯電話を持っていながらiモードに加入しておらず,機種変更のときDoCoMoのお姉さんを相当苦しめたらしい(そんな人は滅多にいないそうだ)。以前会ったときはナイスガイだっただけに,関係者一同,驚きを隠せない。


→「スター・ウォーズ ギャラクシーズ完全日本語版」紹介記事は,「こちら」


※スター・ウォーズ ギャラクシーズ完全日本語版βテストの模様は,エレクトロニック・アーツ株式会社の承認を得て掲載しています

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