「エバークエストII」(以下,EQ2)のグループメイクのしやすさは,前作「エバークエスト」(以下,EQ1)より向上している。キャラクターのクラス選択で,EQ1のときほど慎重にならなくても,パーティに入れてもらえなくなるような事態は少なくなっているのだ。今回はその理由について見てみよう。前回に引き続き,ちょっと初心者には難しい内容だが,用語解説を参照しつつ頑張って読んでもらいたい。読み終わったころには,EQ2に対する理解度がまた高まっているはずだ。
それでは本題に入ろう。「クラウドコントローラー」の重要度が引き下げられたEQ2において,グループにどうしても必要な役割は「タンク」「ヒーラー」「ダメージディーラー」である。
「タンク」は"ファイター系"が,「ヒーラー」は"プリースト系"が,「ダメージディーラー」は"メイジ系"と"スカウト系"が主に担当する。タンクとヒーラーが1種類のアーキタイプなのに対し,ダメージディーラーには2種のアーキタイプが割り振られている。ここにバランス崩壊が生まれそうな気がするが,実はそうはならない。
一般的なプレイでは,タンクとヒーラーはどちらもグループ中に1人か2人いればよいので,よくあるグループ構成は以下のようになる。
メインタンク | + | メインヒーラー | + | ダメージディーラー×4 |
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メインタンク | + | メインヒーラー | + | サブヒーラー | + | ダメージディーラー×3 |
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メインタンク | + | サブタンク | + | メインヒーラー | + | ダメージディーラー×3 |
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メインタンク | + | サブタンク | + | メインヒーラー | + | サブヒーラー | + | ダメージディーラー×2 |
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これを違う形で書き出すと,以下のようになる。
一番上のパターンは少し極端に見えるかもしれないが,タンク+ヒーラーにスカウトが二人,メイジが二人と読み替えれば,それほど不自然でもないだろう。
仮に,作られるすべてのグループの構成は上記のどれかであり,また,どの構成も同じ確率で採用されるとしよう。すると,EQ2世界で"
LFMされる役割の比率"は,すべてを合計して……
タンク:ヒーラー:ダメージディーラー = 6:6:12 = 1:1:2
となり,"求められるキャラクターの数"と"存在するキャラクターの数"は,(すべてのアーキタイプが均等に存在すると仮定した場合)まったく同じだということになる。つまり,この世界にはグループになかなか入れないキャラクターが,(理屈では)ほとんど存在しないのだ。
もちろん現実には,必ずしも上記のとおりにいくとは限らず,誤差は生じるだろう。ただし以上の理屈から,少なくともEQ1のようなゆがんだバランスではなく,整頓された把握しやすいクラスバランスを作り上げようという作り手の姿勢は読みとれる。
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EQ2での標準的な戦闘。タンクはリンクしている複数の敵の攻撃を自分に集め,ヒーラーはそのタンクのヘルスを維持する。その間にダメージディーラー達は1体ずつ集中攻撃で敵を倒していく |
ちなみに,ここではメイジとスカウトのすべてを「ダメージディーラー」としたが,メイジクラスのエンチャンターとスカウトクラスのバードは,別扱いにすべきだという見方もありそうだ。エンチャンターはメズメライズによるクラウドコントロール,バードは音楽を使ったグループ
バフや
デバフなどを持ち味としているからである。しかしこれらの持ち味は,EQ2では"あれば便利"だが,"なくてはならないもの"ではない。
グループメイクしやすいもう一つの理由として,アーキタイプが「ダメージディーラー以外」のクラスに,二つ以上の役割を持たせられることが挙げられる。このためクラス/役割のバッティングを比較的恐れなくてよく,それがグループの作りやすさに繋がっている。それでは,対象のアーキタイプを一つずつ見ていこう。
タンキングが得意なファイター系のキャラクターは,タンクをするときは敵のヘイトを高めるコンバットアーツを中心に使用していくことになるが,高ダメージを与えることを主眼としたアーツや,そのほか特殊な機能を持ったアーツも豊富に習得する。自分が敵のヘイトを集めなくてもいい状況ならば,そういったアーツをドンドン使っていけるので,タンク役以外の活躍も可能だ。そういうシーンではシールドを外して両手用の武器を持つのもいいだろう。
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【ファイター】 ファイターは,敵を挑発するのに使えるコンバットアーツを多数習得する。多くの敵のヘイトをいかにして高いレベルにキープするか考えつつ,能動的かつ戦略的にアーツを使っていけるので,タンキングはやりがいのある仕事だ |
同様にすべてのプリースト系クラスは,"対象のヘルスを維持する"こと以外の特技も持っている。EQ2は,すべてのプリースト系クラスがほぼ同等のヘルス維持能力を持っているので,EQ1のころのように「クレリックがすでに一人いるので,もうヒーラーは定員です」というセリフを聞くことは少ない。むしろ,ヒーラーは二人いたほうがグループの安心感が高まる。あとはヘルス維持に専念しなくてよくなったパワーを,それ以外のスペル使用に振り分ければよい。
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【プリースト】 プリーストクラスはグループメンバーのヘルスの維持/回復やバフだけでなく,DoTやデバフなど攻撃的なスペルも使用できる。ただしこれらは,ヘルス維持を優先させなければいけない局面での乱用は禁物だ |
アーキタイプがメイジのキャラクターのうち,ソーサラー系とサモナー系はダメージディーラーなので,この話からは除外しよう。エンチャンター系はメズメライズが一番の特技だが,
DDや
スタン,
DoT,
ドレインといったスペルも持ち合わせており,そちらをメインに使っていく手もある。またEQ2のメズメライズはリキャストまでの時間が長く,あまり連発はできないようだ。グループ内にエンチャンターが二人いるような場合には,その点を補い合うといった方法もあるだろう。ちなみにEQ1では非常に強力なスペルであったマナ・
リジェネレーションは,EQ2のエンチャンターも持っているが,本作ではパワー(かつてのマナにあたる)の回復はスペルよりも飲み物の効果によるところが大きいので,以前のように不自然なほど人気が高いスペルではなくなっている。
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【メイジ】 EQ1では,複数の敵を一度に攻撃できる魔法は"今一つ使い勝手が悪いもの"とされてきた。しかし複数の敵との戦いが日常的なEQ2では,非常に有用な存在だ。"総和の大きいダメージを一度に与える快感"を満喫できるだろう |
スカウトにも触れよう。プレデター系,ローグ系はピュアなダメージディーラーとなる。バードは音楽という,ほかの誰にもマネのできない特技でグループに貢献する。しかしそれだけではなく,スカウトらしい攻撃用のコンバットアーツも順次覚えていくので,歌いながらも積極的に斬りつけていくことになる。つまりバードもスカウト(=攻撃役)という括りで捉えることができる。
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【スカウト】 武器による直接攻撃ダメージの高さが,スカウトの持ち味だ。覚えていく攻撃系のコンバットアーツにはさまざまな付属効果や発動条件を持ったものが多い。それらをどのように使っていくかを考えるのも面白い |
ちなみにダメージディーラーの「ダメージを与える」という仕事は,ヒーラーのヘルス維持能力やタンクの防御力/回避力とは違い,単純な足し算が可能なものだ。だからダメージディーラーは,役割がかぶって困るという事態に遭遇しにくく,基本的にはその仕事のみに専念できる。また,ダメージディーラー達が習得するコンバットアーツ/スペルの中には,ダメージディーリング以外に役立つものも含まれているので,プレイが単調になる心配は不要だ。
前回述べたように,EQ1のクラスバランスは「切ったり貼ったりした挙げ句,形は歪になったがなんとか釣り合いのとれたヤジロベエ」を連想させるような,どこかあやういものであった。その点,EQ2において意図されているクラスバランスは,自分&他人の役割を捉えやすい,きれいに整ったものとなっている。どのクラスもグループ構成によっては少し振る舞いを変える必要があり,実際その選択肢を与えられているところもポイントだ。
さまざまなクラスの特技/特色を活かしつつ,その上でグループへの入りやすさをできるだけ公平に整えたEQ2は,"役割分担のあるグループプレイ"の旨味をより手軽に味わえるゲームだといえる。