― 連載 ―

コンシューマゲーム機でも人気のアドベンチャー/ストラテジー「サクラ大戦4〜恋せよ乙女」。今作では帝国華撃団,巴里華撃団のメンバーが東京に勢揃いする
 今回のお題は「サクラ大戦4〜恋せよ乙女〜」。コンシューマゲームで人気のアドベンチャー/ストラテジーのPC移植版であり,原作の発売は2002年にさかのぼるが,本作は3月3日に発売されたばかりだ。この(2005年)夏にはプレイステーション2向けで新作「サクラ大戦V〜さらば愛しき人よ〜」が発売される本シリーズの,現行最新作を詳しく見ていこう。
 とはいえ本サイトではすでに「こちら」の記事をはじめとして,ひととおりゲーム内容の紹介が行われている。そこで今回は,本連載の芸風ともいえる"ツッコミどころを共有する"スタンスを前面に出しつつ,一風変わった"レビュー"をお届けしたい。


アドベンチャーパートでの選択には時間制限がある場合も。枠がすべて赤くなったらタイムアウトだ。ちなみに会話の相手は,巴里のサポートメンバー,メルとシー。うーん,宇宙猿人ゴリとラーに匹敵する命名センスだ
 サクラ大戦シリーズの舞台は,大正時代ならぬ"太"正時代。現実と異なり「蒸気機械」テクノロジーが全盛の"スチームパンク"世界で,「霊力」を併用した霊子甲冑の「学天則」……じゃなかった「光武」を操る「帝国華撃団」の,帝都の平和を守る活躍を描く。シリーズ3作目ではパリに作られた同様の組織「巴里華撃団」も登場した。
 プレイヤーは,戦隊モノの宿命か"団"のリーダーなのに"隊長"と呼び慣わされる大神一郎となり,両華撃団の指揮を執る。既存のキャラ総動員で,グランドフィナーレを飾るにふさわしい陣容だ。
 かくして本作に登場する女の子は8+5人の計13人にのぼる。「王道ヒロイン」から「タカビーお嬢様」「妹タイプ」に「無口なクールビューティ」と,まさによりどりみどりだが,帝都と巴里で役どころのカブるキャラが続出するのはやむを得まい。
 これだけの人数が登場するせいか,各キャラのストーリーは少々短く薄めである。本シリーズのウリともいえる,"ムダな"内面描写のない効率的な人物造形は本作でも遺憾なく発揮されているし,前作までに語られてきたキャラ個別の設定についてはまとめて説明を省略することで,ストーリーテリングに集中しているようだ。

 そのストーリーを手がけるのは,"30分で30分アニメのシナリオ1本を仕上げた"など数々の逸話で知られるベテランシナリオライターあかほりさとる氏。"萌えアニメ"の先駆者と目される氏は,いつものようにいつものごとく,"お約束を誤たず踏む"ことでファンのニーズに応えている。
 戦闘中にピンチに陥り,応援が駆けつけるシーンなどでは「まあそうだよね。」と笑みが漏れることだろう。とにかく"勢い"で突っ走るのが氏の,そして本作の芸風だ。正義はいつだって,少しばかり口が達者で思い込みの激しい保守系庶民のものである。

真宮寺さくら

いわずと知れたサクラ大戦シリーズのメインヒロイン。破邪の力を持つ血統で,北辰一刀流免許皆伝の腕を持つ。娘さんのコスチュームが袴姿というのが"太"正時代の本領であろう。メインヒロインだけに活躍が多く,何も考えずにプレイしていくと,だいたい彼女のエンディングになる。(CV:横山智佐)

マリア・タチバナ

大神(プレイヤー)着任前の花組隊長。ロシア革命の勇者,"クワッサリー"(火喰い鳥)のコードネームで活躍し,恐れられていたが,慕っていた男性が作戦情報の漏洩により戦死。裏切り者に報復をするが命は取らなかったという武勇伝を持つ。冷静沈着かつ翳のあるクールビューティ。(CV:高乃麗)

神崎すみれ

神崎重工社長令嬢で母親は銀幕スター。高笑いが聞こえてきそうなタカビー系お嬢様キャラの見本である。プライドが高くて負けず嫌い,花組隊員のカンナとは犬猿の仲ではあるが,互いの力量は認め合っており,ケンカはしても足を引っ張ることはない……はず。(CV:富沢美智恵)

アイリス(イリス・シャトーブリアン)

フランス,シャンパーニュ地方の生まれで両親は大富豪の貴族。霊力はトップクラスだが,なにせ子供なので気まぐれである。子供のころからその霊力を恐れられたため一人遊びに慣れており,親友はぬいぐるみのジャンポール。大神に懐いており「お兄ちゃん」と呼ぶ。自称,大神の恋人。(CV:西原久美子)

桐島カンナ

桐島流空手28代継承者。楽天的で細かいことは気にしない豪放磊落な性格であり,歌劇団女優というよりは,ガテン系肉体労働者のようなパーソナリティである。すみれとは表面上犬猿の仲ではあるが,実は信頼し合っているという,実によくあるパターンだ。(CV:田中真弓)

李紅蘭

中国出身ながら一時神戸に在住したため,怪しい関西弁を話す。機械いじりと発明が得意で少々メカフェチの気あり。装備のほとんどに関わっていると思われる。帝国華撃団のお笑い担当である点も併せて,メガネ+小柄キャラの本領発揮といえよう。なお李"紅"蘭であるからして,実名が山口淑子だったりはしない。(CV:渕崎ゆり子)

ソレッタ・織姫

イタリアで"赤い貴族"と呼ばれる,ソレッタ家の一人娘。日本人を父に持つハーフだが,子供のころに父親と確執があり,日本人の男性を恨んでいた。情熱的で音楽に非凡な才能を持つという設定は,わが国においてあるべきイタリア人のステレオタイプなのだろうか?(CV:岡本麻弥)

レニ・ミルヒシュトラーセ

ドイツ生まれ。元実験集団「星組」の一員で,織姫とは同期。花組に来た当時は感情のない戦闘マシーンで思考もオール・オア・ナッシング,結果がすべてと考えていた。花組に来てからは,徐々に人間らしさを取り戻しつつある。これもまた,"ドイツ"という語のイメージに合わせたキャラ類型だ。(CV:伊倉一恵)

エリカ・フォンティーヌ

巴里花組のヒロイン。帝都サイドでのさくらに該当するキャラ。修道院の見習いシスターで性格は明るく,元気で信仰心が篤い。人々に奉仕するのを喜びとするシスターの鑑のような少女。しかし,趣味がマシンガン射撃ってのは,え,えーと志穂美悦子? ガジェットの借用に躊躇がないのは,本作の強みかもしれない。(CV:日高のり子)
※便宜上「高」にしているが実際は「はしごだか」

グリシーヌ・ブルーメール

由緒正しきノルマンディー公爵家の血を受け継ぐ,ブルーメール家の令嬢。帝都サイドでのすみれに当たるキャラだ。人は誇りを持って生きるものだというポリシーと,生まれついての貴族の血のため,外国人や庶民に対しては一線を引くところがある。(CV:島津冴子)

ロベリア・カルリーニ

巴里始まって以来の大悪党で,盗みや強盗,要人邸爆破まであらゆる犯罪に手を染め,これまでの罪状は懲役1000年を超える。なぜ巴里花組にいるのかはよく分からない。確か「3」では,残った刑期を務めるため,自ら刑務所に赴く前代未聞のエンディングだったはずだが。(CV:井上喜久子)

コクリコ

サーカス団「シルク・ド・ユーロ」の団員。ステージ上では手品や軽業などを披露しているが,昼間はサーカスの動物たちのエサを分けてもらうため,市場で仕事を手伝っている。どんなときでも元気で笑顔を絶やさないためか,市場ではちょっとした人気者で,実は巴里花組一番のしっかり者。え,えーと,我もコクリコ?(CV:小桜エツ子)

北大路花火

日本の北大路男爵家の令嬢だが,祖母がフランス人で幼いころから外国暮らしのため日本を知らない。だがそれゆえにか書道・華道・弓道などを得意とし,現在は日本人留学生として,古くから誼のあるブルーメール家に居候している。奥ゆかしく,物静かでどんなときにも微笑みを絶やさず,殿方の言葉には絶対的に従う,過剰同調気味な"大和撫子"。(CV:鷹森淑乃)


ストラテジーパートで各キャラクターを操作するのに先立っては,このように各キャラのカットインが入る。キャラグラフィックスが「光武」より大きいわけですよ,奥さん
 ゲームの進行は,アドベンチャー要素と戦闘が交互に入ってくる形。アドベンチャーパートでは両華撃団・花組(=実戦部隊。ほかに情報収集を行う月組や風組などがいる)メンバーと会話して信頼度と好感度を上げてゆくわけだが,LIPS(Live & Interactive Picture System)というシステムが特徴的だ。これは会話における返事の選択に時間制限があって,それをオーバーしたか否かが選択結果ともども展開に影響するというもので,プレイに多少の緊張感を添えている。また,返事に込める感情の強弱も指定可能だ。

 戦闘パートはターン制。ARMS(Active & Realtime Machine System)とすごそうな名前が付いているが,要は行動ポイント制である。選べる行動には移動と攻撃以外に,敵の攻撃に備える「防御」,ヒットポイントを回復しステータス異常を解消する「回復」があるほか,気力を蓄積する「ため」なる選択肢があるのは面白い。
 各キャラはパラメータとして「気力」を持ち,そのゲージが100%になると固有の必殺技を使用できる。必殺技のために効率よく気力を"ため"ることが重要なポイントといえるだろう。このほか,連続して攻撃をかけることで相手に与えるダメージを増加させられるうえに,隣接する位置に味方機がいれば「協力攻撃」となり,いっそう大きな打撃力を発揮できる。
 各キャラに与えるドクトリン(行動指針)として,風・林・火・山の4パターンを指定できるのも本作の戦闘の特徴だろう。林が通常状態,火だと回復不可,山だと防御力が上がる代わりに移動コストも上昇するなど,それぞれ使いどころが異なる。
 で,そもそも戦闘パート全体の難度だが,これは端的に言ってかなり低い。どの戦闘も最終的にはボスキャラをみんなで囲んでタコ殴りにするパターンになるし(正義の味方って意外に粗暴だ……),よほどのミスをしない限り負けることはないので,効率的なクリアを追求する,あるいは好みの勝ち方にこだわるのが正しいだろう。

 ちなみにWindows版独自の要素として,エンディングを迎えたキャラクターのスクリーンサーバーや壁紙などが追加されてゆく「デスクトップキャラクターズ」や,ゲーム中の名画面を保存し,アルバムのように閲覧できる「蒸気カメラ」が追加されている。
 ベテランスタッフが作り上げた完成度の高いシリーズであるだけに,ある意味こなれすぎて新味が足りない気もするが,キャラクターを愛でるのが本義と考えるなら,これはこれでよいのかもしれない。とにかく"個々のキャラクター造形にムダな執着やディテール描写を込めない" "役に立ちそうなガジェットはどこからでも借りてくる"という2点の徹底度において,本作は数あるキャラクターゲームの中でも水際立っている。

 シリーズで初めてサブタイトルが大正時代モチーフになった本作(「君,死にたもうことなかれ」=日露戦争,「巴里は燃えているか」=第二次世界大戦,「さらば愛しき人よ」=1930年代ハードボイルド小説)は,おなじみ帝国華撃団の面々の最終公演。まあ,"カーテンコール"も多かろうし,きっとどこかで再会できるのがお約束と,踏んでたりもするのだが。

アドベンチャーパートではこのように,フリー移動モードで帝劇(本拠地)内を移動できる。まあ,なんというか,コンシューマゲームっぽい画面のままである 画面下部にあるのがARMS(行動ポイント)のゲージ。移動や攻撃などを実行するごとにこのゲージが減少し,なくなるとそれ以上行動できなくなる 攻撃可能な距離に敵が入ると,攻撃が有効なエリアが表示される。攻撃範囲の広いキャラを使うときは,できる限り多くの敵を捉えられるよう考えたい

自機に隣接して味方機がいるときに「連続攻撃」を行うと,敵に大ダメージを与える「協力攻撃」となり,参加したキャラのグラフィックスが表示される 必殺技発動時にはこのように,カットインでムービーが挿入される。毎回必ずカットインされるので,慣れると少々ツラくなってきたりもするのだが 各キャラには作戦パターンを指示できる。「回復」や「ため」が使えなくなったりもするが,必要な行動ポイントが変化するので,よく考えて使おう


■■柿島真治(フリーライター)■■
最近でこそ追いかけるのにやや"疲れ気味"だそうだが,ハードSFやホラー小説にも造詣が深いゲーム&ハードウェアライター。"帝都を震撼させた"と聞くと「魔人・加藤保憲」や平 将門を思い出すあたりは,ごくノーマルな教養水準といえよう。ちなみに担当編集は「玉音盤奪取」や「厚木航空隊」……今回は分が悪い気がする。
タイトル サクラ大戦4 〜恋せよ乙女〜(DVD-ROM版)
開発元 レッド・エンタテインメント 発売元 セガ
発売日 2007/01/25 価格 5040円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0c),CPU:Pentium III/1GHz以上[Pentium 4/1.40GHz以上推奨],メインメモリ:128MB以上[256MB以上推奨],グラフィックスメモリ:16MB以上[64MB以上推奨],HDD空き容量:2.5GB以上

(C)SEGA, 2002, 2004 (C)RED 2002