男手一つで娘を育てるゲーム「プリンセスメーカー」。この画面は娘が10歳のときで,誕生日を迎えると娘の姿は変わるが,服を着替えさせるのはお父さんの仕事(?)らしい |
今回はいささか趣向を変えて,キャラクターゲームのマイルストーンとなった作品を紹介してみよう。ガイナックスの「プリンセスメーカー リファイン版」は,1991年に登場した育成ゲーム「プリンセスメーカー」のWindows移植版で,ストーリーやゲームシステムはそのままに,グラフィックスをフルカラーにしてキャラクターボイスを付けた製品だ。
魔王との闘いで国を救った勇者ことプレイヤーは,次世代の希望を育むべく,10歳の娘を引き取って18歳まで育てるのだが,パラメータの伸ばし方しだいで娘の将来はドラスティックに変わる。14年前には"にわかパパ"を量産した画期的な作品だったわけだが,当時を知らない方,あるいは"リファイン版"の登場を知らなかった方も多いと思われるので,あらためて紹介したい。
魔王との闘いで国を救った勇者ことプレイヤーは,次世代の希望を育むべく,10歳の娘を引き取って18歳まで育てるのだが,パラメータの伸ばし方しだいで娘の将来はドラスティックに変わる。14年前には"にわかパパ"を量産した画期的な作品だったわけだが,当時を知らない方,あるいは"リファイン版"の登場を知らなかった方も多いと思われるので,あらためて紹介したい。
娘の疲れを取り,情緒を育てるバカンス。美しい自然の中で生き生きとした笑顔を見せる姿に,心和むひととき……とか書くと美しいが,本作では貴重なイベントシーンである |
閑話休題。娘のその時点の能力値によって行動の選択肢こそ変わるものの,本作には育成途中でのストーリー分岐はない。また,どんな育て方をしても表示される娘の姿は1種類で,年齢に伴って変わるのと,病気中や不良化したときに顔つきが変わる,季節ごとに服を替えられるといった程度。ごくあっさりしたグラフィックス表現である。
育成を重ね,娘が18歳を迎えた後の4月1日が「運命の日」となる。娘の成長度合いによって,それぞれに異なる人生がエンディングとして語られるのだ。製品名にもあるように,目標はプリンセス,すなわち王子の目に止まって妃になることだが,そう簡単にいかないのがミソ。平凡な結婚をする,武芸の道を選ぶどころか,夜の蝶になってしまう場合すらある。お父さんの責任は重大なのだ。
「プリンセスメーカー リファイン版」における娘さん。魔王を倒して王国を救った英雄たるプレイヤーのところに養女としてやってくる。泣きぼくろがあったりと,今風の萌えキャラとはかなり勝手が違う感じである。年齢は10歳,18歳まで育てる過程でグラフィックスも変わっていく。名前や性格はプレイヤーが決めるのがこのゲームである。(CV:鶴野恭子) |
ちなみにこちらが「プリンセスメーカー2リファイン版」の娘さん。お父さんの経歴は前作とほぼ同様だが,おうちにナビゲーターキャラの執事がいたりするので,やや裕福なのかも。こちらの作品だと,娘は天から授かった(降りてきた)という設定で,年齢は同じく10歳,感情表現はかなり豊かになっている。(CV:西村ちなみ) |
街に買い物に来たところ。武器や兜,鎧のほかに,ぬいぐるみや本,詩集なども揃っている。娘の状態と伸ばしたい方向に合わせて,相応しいアイテムを買い与えよう |
アルバイトで選べる職種が典型なのだが,娘が成長するにつれて行動の選択肢は増える。教育項目には武芸・学問・礼法があり,このうち武芸と学問には初級/中級/上級があって,それぞれ費用と効果が異なる。
そのほかに"武者修行"に出すという選択肢もあるのだが,そもそもプリンセスを目指すゲームに武者修行なる設定が必要なのかどうか。実際"プリンセスメーカー"と銘打ってはいるが,それ以外のエンディングも別に失敗ではないし,例えば「あやしいバイトは一度たりともさせない」とか「バカンスは毎シーズン欠かさず行く」といった独自の教育方針で,違う物語を作り出していけるのが本作の面白みなのである。
アルバイトも教育も,娘の状態が良くないと失敗することがあり,前者なら収入が得られず,後者では費用だけかかって身につかない。そんな日が増えてきたら娘とバカンスに出かけ,リフレッシュさせるのがよいだろう。
このゲームでは娘の[評価]パラメータがエンディングを大きく左右するが,秋の収穫祭で催される"武闘会"と"ミス王国コンテスト"で優秀な成績を収めれば,評価は大きく上がる。
育成は「こっちが伸びる代わりに,あっちが落ちる」という選択肢の連続になるのだが,パラメータの足し引きはきちんと非対称なので,目標に合ったローテーションをうまく見出す必要がある。キャラクターゲーム分野が明確な"別モノ"になっていない時代の作品だけあって,プレイバランスはそれなりにシビア,初回のプレイは芳しくない結果に終わることが多いだろう。だが,そこで思い知らされる"父としてのふがいなさ"が再挑戦の動機付けになるわけで,キャラの持つ威力はきっちり生かされている。
システムをきちんと理解すれば,プリンセスにいたる道はさほど険しくはないので,2度目にはそこそこに評判の良い娘に育ち,3度目か4度目には目指したとおりの結末が得られるだろう。
育成プロセスそのものを楽しませる要素が少ないのは,現在の目から見るとさすがに弱いところだ。その点,例えば続編の「プリンセスメーカー2」では,さまざまなイベントで目先を変えつつ,エンディングへの伏線を仕込む形へと進化している。
ともあれ本作が多くの"育てゲー"のルーツになったのは間違いないし,"男手一つで娘を育てる父親"を意図的に演ずるという,すれすれな感性は今にいたるまで個性的だ。当時から女性プレイヤー率の高かった作品であるが,プレイしていた彼女らが果たして本作の微妙な"業の深さ"に思いを致していたかどうか,今更ながら聞いてみたい気がする。
なお,ガイナックスからはこのほかに「プリンセスメーカー2リファイン版」が発売されており,今年(2005年)3月末にはPlayStation 2用の「プリンセスメーカー4」も登場する。娘達は首を長くして21世紀のお父さん志願者を待っているのである。
システムをきちんと理解すれば,プリンセスにいたる道はさほど険しくはないので,2度目にはそこそこに評判の良い娘に育ち,3度目か4度目には目指したとおりの結末が得られるだろう。
育成プロセスそのものを楽しませる要素が少ないのは,現在の目から見るとさすがに弱いところだ。その点,例えば続編の「プリンセスメーカー2」では,さまざまなイベントで目先を変えつつ,エンディングへの伏線を仕込む形へと進化している。
ともあれ本作が多くの"育てゲー"のルーツになったのは間違いないし,"男手一つで娘を育てる父親"を意図的に演ずるという,すれすれな感性は今にいたるまで個性的だ。当時から女性プレイヤー率の高かった作品であるが,プレイしていた彼女らが果たして本作の微妙な"業の深さ"に思いを致していたかどうか,今更ながら聞いてみたい気がする。
なお,ガイナックスからはこのほかに「プリンセスメーカー2リファイン版」が発売されており,今年(2005年)3月末にはPlayStation 2用の「プリンセスメーカー4」も登場する。娘達は首を長くして21世紀のお父さん志願者を待っているのである。