さて,WYD2のベースとなる“WYD1”,つまり「With Your Destiny」は,2002年8月に韓国でオープンβテストが行われたタイトル。そこから約3年の間に,さまざまなアップデートが繰り返され,各国でのローカライズに関するノウハウも蓄積したうえでの,日本初登場となる。
さまざまな改良が施されているとはいえ,ベースは約3年前のゲームであり,グラフィックス面での目新しさはない。しかしその分,いくつか利点がある。例えばその一つは,クライアントプログラムの小ささ。現在筆者の手元にあるクライアントは,総容量で120MB程度(ムービーを外した場合)と,実にコンパクト。配布形態がダウンロードのみとなっても,これならそれほど負担にならないだろう。
またプレイしてみると分かるのだが,フィールドは一定量の地域を読み込んだら,その先はある程度進むまで読み込まないなど,細かく「読み込み」を制限しているようだ。その読み込み時間も,プレイに支障をきたすような長いものではない。ダンジョンのように完全にフィールドが切り替わる場合には,フィールドより多くの読み込みが必要となるはずだが,その場合でも“待たされる”という印象はなく,本作の軽さを感じさせる要因となっている。
軽さといえば,独自に開発された3Dエンジンは実に軽快だ。プレイに必要となる最低スペックも,Pentium III/600MHz,メインメモリ128MB,Direct3Dサポートのグラフィックスカードと,非常に低く設定されているのも嬉しいところ。ちょっと古めのデスクトップやノートPCでも十分プレイできる環境のため,圧倒的な間口の広さを感じさせるタイトルといえる。
最初に誰もが訪れることになる初心者エリア。最初のモンスターはそれほど強くないが,先に進むための鍵を持つモンスターは強力。門によってレベル分けされており,容易には先に進めない
カメラ視点はいわゆるクォータビュー(斜め上からの見下ろし)で,Tabキーによってキャラクターの目線の高さに切り替えられる。また解像度や色数フレームレート固定などのオプションメニューがあり,ホイール操作でズームイン/アウトも行える。ホイールを押したままマウスを移動することで,左右の視点移動も可能だ。
操作はシンプルで,行きたい場所を左クリック,もしくは左クリック押しっぱなしによりその方向へ移動し続ける。モンスターを相手にする戦闘は,ターゲットを左クリックして攻撃する。そして使いたい魔法/スキルを選択して右クリックで発動など,Diabloタイプのゲームに慣れた人なら,戸惑うことなくプレイできるだろう。
ファンクションキーに割り当てられるホットボックスは2ページあり,よく使うスキルや魔法などを登録し,切り替えが簡単に行えるのも,定番の嬉しい仕様。
WYD2では,サーバーの構成に関して,一般的なMMORPGとは少し異なる構成とシステムを持っている。多くのMMORPGでは,一つのサーバーに複数のキャラクターを持つことができるものの,キャラクターはそのサーバー限定の存在で,そのキャラクターを使って別サーバーでプレイできない。サーバー間のキャラクター移動サービスがあったとしても,何かしらの制限がある場合が多い。
しかしWYD2では,一般的なサーバー(もしくはワールド)にあたるものがチャンネルと呼ばれており,そのチャンネルを10個まとめて統括するのがサーバーである。それぞれのチャンネルに世界が存在するが,プレイヤーのデータはサーバーで一括管理されるので,チャンネル間の移動は自由自在。もちろん,キャラクターはそのままという状態になる。そのため,異なるチャンネルで友人がプレイし始めても,いつでも合流できるというわけだ。チャンネルの混雑具合やプレイ環境によって,自在にチャンネルを変えられる嬉しいシステムといえるだろう。
なお,1チャンネルあたりのキャパシティは1000人。サーバー全体では1万人までの同時接続に対応できる。
WYD2の特徴であるマウント。ビーストマスターのスキルであるポリモーフでワーウルフに変身していても,マウントできる。この場合,変身による効果とマウントによる効果が共に適用される
……と,実に間口が広いタイトルながら3年も運営されているだけあり,コアなMMORPGファンでも納得できるゲーム内容になっていると思う。韓国産MMOでは定番の,ギルド戦や攻城戦などのPvP要素は,各国で長年楽しまれているだけあり,バランスもばっちりだ。PK(Player Killing)行為は可能だが,初心者が狩りをする場所では行えず,一般フィールドではペナルティ付きで可能。さらにペナルティのないPK容認エリアがあったりと,うまくルール化されている。
また,3年間でのアップデートは内容をも進化させており,馬やユニコーン,さらにはドラゴンにまで乗れてしまう「マウントシステム」も実装されている。ただ乗れるだけでなく,マウントすれば移動が速くなり,さらに攻撃力が上がるなど能力値への影響もあるため,本作における重要なファクターとして機能する。もちろんドラゴンに乗れば,空を飛べるのも嬉しいところだ。
キャラクターが選択できるクラスは,剣士系の「トランスナイト」,アーチャータイプの「ハンター」,魔法使いである「ポエマ」,モンスターを操ったり獣を召喚したりできる「ビーストマスター」と,タイプの異なる4種類。それぞれが個性的な戦闘方法で戦いながらレベルを上げていき,ダンジョンの奥深くに潜む強力なボスモンスターとのPvE(Player vs Enemy)や,ギルドや所属国家のために攻城戦などに参加するPvP(Player vs Player)を楽しむのがWYD2のプレイスタイルとなる。
キャラクターのレベルは,現在355が上限となっている。とはいっても,序盤はそれこそ「いつの間にかレベルが上がっている」と感じるほどサクサクと上がるうえに,武器や防具のレベル制限が細かく設定されており,またレベルで細分化されたクエストが存在するなど,常に目標をもってプレイできるような配慮がなされている。そのため,“ダレる”という印象はそれほどなさそうだ。
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Lv355までの長い道程で,その場その場の目標となるのがクエスト。細かくレベルで区切られたクエストの達成と,レベル制限のあるアイテムの装備などを目指すことで,レベル上げのダレを回避 |
スキルマスターに話しかけることで,自分のクラスのスキルを習得できる。スキル習得にはスキルポイントを消費する。ある程度ポイントが溜まるたびに話しかけてみよう |
なお,前述の国家戦のベースとなる国家の選択は,一定レベルを超えると可能となり,「アケロニア」と「ヘカルロティア」の2か国のどちらか,もしくは中立状態を選択できる。
どちらかの国に属した場合,国家戦への参加が可能となり,所属国家が国家戦に勝てば,一定期間ゲーム内での納税の義務を免れる。
この所属国家は,後から変更可能だ。また中立を選んだ場合にも,いつでもどちらかの国家に属して国家戦に参加できるし,その後また中立に戻ったり,別の国家に属したりもできる。ただどの場合にせよ,所属の変更にはアイテムとお金が必要なので,最初の選択はやはり慎重に行ったほうがよさそうだ。
クラスは基本的に固定だが,レベル355に達すると転職できる“伝神”という上位職も存在する。このクラスは,輝く鎧を身にまとい,あらゆる武器を使いこなせるそうだ。とりあえずはこの伝神を育てることが,あらゆるプレイヤーの目標となるだろう。
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精錬をすれば,金色に輝く鎧を身にまとえるようになる。また,元のクラスでは装備できなかった武器も,問題なく使いこなせる |
ギルド戦と攻城戦についても,もう少し詳しく解説しておこう。ギルド戦は,その街の支配権をかけて,ギルド同士で戦うものだ。ギルド戦の舞台は専用のフィールドで,最大で50人vs.50人という,大規模戦闘が行える。
ギルド戦に勝利すると,その後1週間街を支配することができ,その間ギルドマスターは,税金の設定を自由に変更できる。とはいえ,あまり税率を高くすると,プレイヤー達はほかの街やほかのチャンネルに逃げてしまうだろう。
攻城戦は,二つの国家での争いだ。勝利した側の国家が,そのチャンネルを1週間支配できる。
これらは共に,週に1回行われるイベントのようなものだ。ギルド戦でも最大100人が参加する大規模な戦闘だが,攻城戦はそれをはるかにしのぐ規模での戦いが展開する。
スタート地点からはるか数エリア先にある,一風変わった街。南北に各国の陣営が陣取り睨み合っている。自国陣営には国王と名のつくNPCも存在していた
普通にモンスターハントを楽しむもよし,国家戦を毎週楽しむもよし,巨大なギルドを作って街を支配するもよしと,間口と同様に遊び方も幅広いWYD2。また,基本料金が無料というのも,多くのプレイヤーが遊びやすい要因といえる。
プレイ感についてDiabloを引き合いに出したが,本作はMMORPGでありながら,プレイの手軽さという意味でも,Diablo並という印象を受ける。“ちょっとプレイして軽くレベルを上げたら今日は終わり”といった,シングルプレイRPGをプレイしているような感覚で遊べるからだ。それでいながら,対人戦などもしっかり楽しめるのだから,韓国やその他の国・地域で長くプレイされているのも納得がいく。
日本での正式サービスまでの日程は明らかになっていないものの,すでに完成の域に達しているタイトルだけに,展開は早いだろう。今後のWYD2共々,この連載にもおつきあい願えたらと思う。
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いくつかのダンジョンも存在する。ダンジョンによって,階層が分かれていたり,入るために必要なチケットがあったりと,種類はさまざま。なお街に近くても,低レベル向けとは限らないので注意 |
街にいる商人は,クラス専用のアーマーを売るNPCやポーションを売るNPC,武器を売るNPCなど何種類かに分類される。先の村や街へ行けば,より高レベルの装備を買うこともできる |