― 特集 ―

アーケードで大人気の対戦型カードゲーム「三国志大戦」はいかにして作られたか

Text by TAITAI / Photograph by kiki 

 昨今,「オンラインゲーム=MMORPG」的な図式が色濃い国内ゲーム市場。しかしながら,何もMMORPGがオンラインゲームのすべてではないし,PCゲーム以外にもオンラインゲームはたくさん存在する。
 本来はPCゲームの記事を中心に掲載している4Gamer.netだが,今話題のオンラインゲームを紹介する意味合いで,今回特別に,アーケードで絶賛稼働中の対戦型カードゲーム「三国志大戦」の開発者インタビューを行った。

 三国志大戦とは,お馴染みあの"三国志"を題材にした対戦型のリアルタイムトレーディングカードゲーム。戦場を模した卓上の筐体に,劉備や曹操,孔明といった武将をデザインしたトレーディングカード(武将カード)を並べ,またその置いたカードを"直接動かして"戦うという独特のインタフェースを持つ作品である。
 加えて,セガのアーケードゲーム機器向けのネットワーク技術基盤「ALL.net」に対応しており,全国のゲームセンター間でオンライン対戦ができるのも大きなウリ。三国志大戦は,それこそ昼夜を問わず多くのプレイヤーが連日凌ぎを削っている,今まさにホットな対戦型アーケードゲームなのである。

 実は筆者もこの三国志大戦にはかなりハマった口であり,「鉄拳3」以来ご無沙汰だったゲームセンターに,毎週末あしげく通う原因となったタイトルでもある。カードゲームやリアルタイムストラテジーゲーム(以下,RTS)の面白さを,"国産ゲームらしいセンス"でうまくまとめ上げた本作は,カードゲームファンだけでなく,格闘ゲームや「Age of Empires」のようなRTSにハマったことがある読者にもお勧めしたい作品だ。

 今回のインタビューでは,このシステムができるまでの苦労話も交えた興味深い話をいろいろと聞くことができた。すでに三国志大戦を知っている/プレイしている人はもちろん,「三国志大戦ってなに?」という人も,ぜひ一読してみてほしい。

三国志大戦とは?

 さてまず始めに,三国志大戦というゲームについてもう少し詳しく説明しておきたい。この作品について,誤解を恐れず端的に表現すれば,「Age of Empires」のようなRTSと「Magic:The Gathering」のようなカードゲームを足して二で割ったような作品だ。100種類を超える「武将カード」を組み合わせて自分の"デッキ"を作り上げ,それを使って全国のプレイヤー達とオンラインで対戦していくというのが主な内容となる。
 そして単なるカードゲームではなく,フラットリーダー型筐体を採用することで,(卓上に置いた)カードを直接動かすことでユニットを操作するという非常に画期的なインタフェースを実現している。これによって直感的な操作性を実現したのはもちろんのこと,カードゲームながらも格闘ゲームさながらのスリリングなゲーム展開が味わえるなど,今までにないゲーム性を生み出している魅力的な作品でもある。

 ゲームプレイには,「君主カード」と呼ばれるゲームデータを記録するICカードと,三国志の武将データが書き込まれた「武将カード」を使用する。「武将カード」には1から3までの"コスト"が設定されており,カードのコスト合計値が8以下になるようにデッキに組み込むカードを決めることになる。
 基本的には,呂布や曹操といった強いカードほどコストが高く設定されており,強いカードばかりの少数精鋭でいくか,数重視の低コスト軍団(通称ワラワラデッキ)でいくかなど,自分の志向する戦い方によって編成を変えることになる。また武将カードには騎兵,槍兵,弓兵,歩兵,攻城兵といった5種類の兵科があり,それぞれで長所/短所があるほか,純粋な戦闘力を示す"武力"や,伏兵や計略の威力に影響を及ぼす"知力"などといったパラメータもある。基本的には,武力が高い武将は知力が低くて計略や伏兵に弱く,逆に知力が高い武将(軍師など)は計略は強いが直接的な戦闘には弱いという特徴があると考えてよいだろう。
 ちなみに"計略"とは,一定時間ごとに溜まっていく"士気ポイント"を消費して繰り出される必殺技のようなもの。戦況を一気に変えてしまうほどの威力を持つ,ゲームのキー要素の一つだ。計略にはダメージ系,強化系,弱体化系,カウンター系などといろいろな種類があり,計略を重ねて使って攻めたり,あるいは相手の計略を打ち消したりなどなど,計略の効果を考慮していくと,カードの組み合わせは本当に千差万別。ああでもないこうでもないとカードの組み合わせを考える楽しさがあるのは,カードゲームとしての側面を持つ,本作の大きな特徴だといえるだろう。

ゲームの目的は,相手の城を攻撃して「城ゲージ」を減らしていくこと。城ゲージとは格闘ゲームでいう体力ゲージのようなもので,相手の部隊を撤退に追い込む/あるいは誘い出しながら,敵の城に攻撃を加えていくのだ

 とはいえ,カードの組み合わせだけで勝負がついたら,それは良くも悪くも子供向けの,普通のカードゲームだ。三国志大戦の面白さは,そういったカードゲームの要素に加えて,徹底した"リアルタイム性"が備わっているところにあるといえる。
 それを支えているのが,前述したフラットリーダー筐体を駆使した独自のインタフェース。通常のカードゲームだと,カードを並べた後にそのカードを動かすということはあまりないものだが,三国志大戦では,カードの位置がそのままユニットの位置としてディスプレイに描かれるのだ。
 あたかもレバーでキャラクターを動かすがごとく,カードを動かすとユニットが動いてくれるのは非常に斬新だ。騎兵ならば土煙を上げながらカードを動かしたとおりに疾走してくれるし,槍兵ならばカードの向きに対応して長い槍の先端を突き出す。もっといえば,例えば騎兵を敵の部隊に突撃させるときには,自分の騎兵カードをススっと敵のいる位置に動かし,ユニットが激突した瞬間にカードの位置を敵から離れた位置に戻して離脱するなど,本作は「操作してて楽しい」「操作してて爽快」という非常に希有なカードゲームとなっているのである。
 また先ほど説明した計略や,戦闘ごとに1回のみ使用できる「兵法」(強力な計略のようなもの)などの使いどころも,当然リアルタイムな状況での判断/操作になるし,騎兵の突撃のタイミングやそのカウンターとしての槍兵の操作などなど,細かいテクニックの差によって同じデッキでも強さがまったく違ってくるという格闘ゲームにも近いノリがあり,そこがまた三国志大戦の奥が深い部分だといえるのである。

 そういったゲームとしての面白さに加えて,決め手となっているのはネットワークを介した全国対戦機能だろう。ネットワーク対戦では,君主カードに記録された戦績を参照したオートマッチング機能も搭載されており,自分のレベルに合った対戦相手を見つけてくれるなど,"あるべき要素"がキチンと揃えてあるのは素晴らしい部分である。
 ただ正直に言わせてもらうと,プレイ料金が1回300円(勝ち続けると,200円,100円と下がっていく)と少々高めなのがたまに傷。とはいえ,それでもなお遊んでしまうところに本作の偉大さがある(?)ワケで,筆者もなにげに数百戦を数えるプレイ回数で,使った金額は考えたくもない。三国志大戦とは,そんなゲームなのである。

スターターパックは500円(税込)で販売されており,「君主カード」1枚と「武将カード」4枚が入っている。初めてプレイするときには,こちらを購入することになる


イラスト/ 川原正敏


イラスト/ 真島ヒロ

川原正敏氏 (代表作「修羅の門」「海皇紀」)や真島ヒロ氏 (代表作「RAVE」)などといった,多数の人気漫画家がカードイラストを手がけてるのも大きなウリだ。

タイトル 三国志大戦
開発元 セガ 発売元 セガ
価格 1プレイ300円〜100円      
 
動作環境 アーケード専用

(c)SEGA,2005