― 特集 ―

国内のオンラインゲーム市場を見る

Text by TAITAI



 オンラインゲームを辞める動機についてのデータ。"管理会社への不満"が大きな割合を占めるのはコメントすべき点もない周知の部分だとして,ここでの見どころは,「ほかのオンラインゲームを始めた」がオンラインゲームを辞めるもっとも強い動機だという点だろう。オンラインゲーマーの間で感覚的なものとして囁かれていた「MMORPG放浪者」なるものの存在が,明確な数値として証明された形だ。
 これは「プレイ時間の関係から複数のゲームを同時に遊べない」というユーザー側の都合に加えて,新しいタイトルが次から次へと登場しているという市場側の背景も少なからず影響していると思われる。また,プレイ時間が長いコアゲーマーほど「ほかのオンラインゲームを始めて辞める」割合が高く,かなり流動的なユーザー層である点も見逃せない部分だ。
 先ほどからのデータをここまでで考えると,社会人かつプレイ時間が長め,という「優良顧客のコアゲーマー」を維持することに終始するか(いわゆる"コアゲーマー仕様"),それとも若い世代をその友人ごと巻き込んで居着かせるか(いわゆる"初心者向け"),利益を確保せねばならない運営サイドが採れる選択肢は,現時点ではそう多くないように思える。

 国内のオンラインゲーム市場を見渡すと,まだまだ立ち上がったばかりの勃興期ともいえる時期だと思うが,既存のオンラインゲームユーザー層に限って見てみれば,すでに"パイの食い合い"が起きているという厳しい現実も見える。新規の顧客の開拓を業界全体で推し進めていく一方で,現在のオンラインゲームが抱える根本的な問題点(ユーザーの拘束時間の絶対的な長さなど)の解決策をゲームデザインレベルで模索することが,今後のオンラインゲーム市場の課題だといえるのかもしれない。



 最後に,"季節モノ"のデータではあるが,今後遊んでみたいオンラインゲームについての調査データにも触れておこう。
 結果としては,ややコアゲーマー向きかと思われた「エバークエスト II」がトップ。ただアンケートの開催時期にちょうど当サイトでβテストの募集を受け付けていたという背景があり,本作が4Gamer読者から注目されていたという部分は,少なからず影響しているものと推測される。
 ほかのタイトルを見てみると,先日プレオープンされたばかりの「大航海時代 Online」や,ナムコの「テイルズ オブ エターニア オンライン」が上位にランクされており,そのメーカー/過去作品のブランド力の高さが伺える。また完全新作のタイトルとしては,「ファンタジーアース ザ リング オブ ドミニオン」にも注目したいところだ。あの時点ではまだ情報が少なかったにも関わらず,今後登場予定のタイトルの中でもとくに高い数値をマーク。アニメ世代などにも親しみやすい絵柄や世界設定に加え,アクションMMOというゲーム的な"新鮮さ"も,注目されている理由なのかもしれない。
 この手の期待度データというのは,いわば「時期物」の数値になりがちであり,その時点で公開されていた情報やタイトル自体のサービス時期が影響しているであろう点は,最後にもう一度強く念を押しておきたい。


 さて,順を追ってPC/オンラインゲーマーの動向データを見てきたわけだが,いかがだっただろうか。国内のオンラインゲーム市場は,黎明期ということもあっていまだに混沌としており,調査データと呼べるものがほとんど存在しないのが現実である。そういった意味でも,なかなかに興味深い内容だったのではないだろうか。
 ただ,賢明なる読者諸氏も見ていて感じたことと思うが,このデータからは,ビデオカードに対する認知度の低さや,パイの食い合いの事実を感じさせる数値など,国内のPC/オンラインゲーム市場に対する課題もいろいろと見えてくる。いままでのように,乱発/乱造をするのではなく,そういった部分をいかにクリアしていくのか,そこが国内のオンラインゲーム市場を占う一つのキーポイントといえるだろう。