― インタビュー ―

ギャラクシアンの世界観をベースにしたRTS  「NEW SPACE ORDER」開発者インタビュー

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NEW SPACE ORDERの兵器体系を聞く

 

4Gamer:
先ほど「レーザー兵器と実弾兵器」という言葉が出ていましたけれど,実弾兵器とレーザー兵器の違いってなんですか?

 

高橋氏:

本作には実弾系とレーザー系の二種類の攻撃属性が用意されていて,ユニットごとにそれぞれに対する防御力が設定されています。ユニットの得手不得手を現すパラメータの一つですね。とくにレーザーは,長距離射程と高い命中精度を持つ扱いやすい武装でもあります。

 

4Gamer:
なるほど。

 

高橋氏:
あとレーザー兵器で思い出しましたが,先ほど勢力の紹介で触れた民主連邦は,レーザー兵器のほかに「航宙機母艦」が強いのも特徴です。「ジオキャリバー2」を搭載した「航宙機母艦I型」や「ドラグーンIDS」を搭載した「航宙機母艦II型」など,航宙機隊を使った遠距離からの攻撃は,民主連邦の大きな強みの一つだといえます。ドラグーンは,全国家中でも最も優秀な艦載機になりますね。

 

4Gamer:
航宙機母艦というと,ユニットから小さな編隊機が発進しているアレですよね。そういえば,本作における航宙機隊の扱いってどのようなモノなのでしょうか?

 

高橋氏:
航宙機隊は,一つの攻撃手段として扱われているもので,航宙機母艦では,レーザーやミサイルが発射される代わりに航宙機隊が飛んでいくことになります。航宙機隊は,主に惑星上の拠点などを陥とすのが得意で,アウトレンジから敵にダメージを与えたいときに有効なユニットになりますね。
また本作のユニットには,対空能力のような概念があって,対艦船用の主力武器以外にも小さな砲台を備えている艦船があるのですが,このような対空能力の低い艦船も,航宙機隊の格好の獲物の一つです。

 

4Gamer:

なかなか強そうですね。航宙機隊の弱点などはあるのでしょうか?

 

高橋氏:
扱いによっては非常に強い航宙機隊ですが,弱点として「航続時間」が設定されています。目的地があまりに遠すぎると途中で引き返してきてしまったりだとか,移動中に敵の航宙機隊と鉢合わせしてしまうと,その場でドッグファイトが展開されたりもします。もちろん,ドッグファイトで時間を浪費して航続時間が切れてしまったら,航宙機隊は母艦へ帰投しなければなりません。

 

4Gamer:
ふむふむ。万能ではない,ということですか。


高橋氏:
そうですね。ただ航宙機隊の攻撃が強いのも事実なので,なんらかの対策を施す必要は出てくるでしょう。例えば,航宙機母艦を守りたい施設の側に配置しておくと,敵の航宙機隊が攻めてきたときに自動的に迎撃発進してくれたりもしますから,航宙機母艦をどこに配置するかも重要になると思います。


4Gamer:
登場するユニットの話をもう少しお聞きしたいのですが,本作では,"決戦兵器"と呼ばれる最終兵器を生産できますよね。個人的には,決戦兵器の存在自体が"宇宙殲滅戦争"っぽくてそれだけで興味を抱いてしまったのですが,ゲーム的にはどういった扱いになっているのでしょうか?

 

高橋氏:

これは文字通り「戦いを決する」ためのユニットになります。決戦兵器の最大の特徴としては,"惑星を破壊できる"という能力が挙げられるワケですが,これは,ゲームが無駄に長引き過ぎないようにするための工夫でもあります。
ある程度慣れてきてしまうと,総力戦が延々と続いてしまうとか,そういう状況があると思うんですが,ゲームの最終局面で,生産基盤となる惑星そのもののつぶし合いが行われることによって,自然と戦いが終息していくことになります。

 

4Gamer:
それは確かに良い試みですね。マップ上の資源がなくなってしまうなどではない,アグレッシブな方向での終息具合が。

 

高橋氏:
決戦兵器の能力にはかなり気を配りましたね。高価で生産にも手間暇掛かるユニットではあるのですが,それだけに強力ですから。これだけを作っていれば勝てる,みたいな状況は生まれないように,移動速度を含めたパラメータの調整を行っています。ただ……,やはり決戦兵器で惑星を破壊して回るのはかなり爽快なので(笑),プレイした方にはぜひ使ってみてほしいユニットだと思います。

 

 

企画書の段階では戦車戦のゲームだった!?

 

 

4Gamer:
ちょっと話が戻ってしまうのですが,企画段階では戦車戦のゲームだった……という部分にもう少し突っ込んでもよいですか?


高橋氏:

ええ。元々私自身が戦車マニアだったということもあるんですが,戦車……とくに旧世代の戦車というと,前面の装甲が厚くて,左右と後ろの装甲が比較的薄い……というような特徴がありますよね。個人的には,これは非常にゲームとして確立させやすい部分だと考えていました。
というのも,ここは,回り込んだり回り込まれたりという"戦術的な楽しさ"がある部分だと思うんですよ。正面からぶつけ合うよりも,半分づつ左右,あるいは前後から挟んだ方が有利,みたいな。


4Gamer:

短時間ながらプレイさせていただいた感触だと,NEW SPACE ORDERは,内政面よりも戦闘を重視したゲーム設計になっていますよね。


高橋氏:
その通りです。NEW SPACE ORDERにおける"向きの概念"は,作品の大きな特徴の一つにもなっていて,これは先に言った"戦術的な面白さ"を表す一つの要素だといえます。それはユニットの特徴としても現れていて,例えば,本作には「駆逐戦列艦」と「砲塔艦」という二つの種類のスターシップが存在します。前者が敵を攻撃するときに船体ごと向きを変えるタイプの艦で,後者は装備している砲塔が自由に回転して敵を攻撃してくれるタイプのモノになります。砲塔艦は移動しながら好きな方向に攻撃を行えるので,側面や背後に回り込んで攻撃するのには有利!……というワケですね。もっとも,砲塔艦はユニットとしてはかなり上位の部類に入るので,それなりの設備や技術を整えないといけないのですが。

 

4Gamer:

戦闘中にこそ,細かい操作が要求されるタイプのゲームということですか?

 

高橋氏:
うーん,どちらかといえばそうなりますね。
あと,本作に登場する勢力の一つである民主連邦には,「キャパシタ砲艦」という特殊戦艦が用意されています。これは前後左右でダメージが違うという,このゲームの特徴をもっとも体現しているユニットでして,正面からの攻撃はまったく受け付けず,またレーザー攻撃に対しては,吸収してそれを収束し,貫通レーザーとして撃ち返すなどといった能力を備えているんですよ。

 

4Gamer:

おお,なんだかシューティングゲームみたいなノリですね。

 

高橋氏:
ただ「戦闘の操作が命か」というと,そういうワケでもないんですよ。
それを突き詰めてしまうと,各ユニットに特殊技があるだとか,特殊武装があるだとか,どんどん煩雑になってしまいます。ある程度ざっくりでもよいというか,手軽に楽しめるのも大事な要素だと考えているので,そのへんのさじ加減には神経を使っています。

 

 

 

 

ちょっと対談:日本でRTSが認知されるために必要なこととは

 

4Gamer:
手軽に楽しめる,というのは大事なポイントですよね。
ただ国内でRTSはまだまだマニアしか知らないというか,小難しい印象が先行してしまいますよね。本作には,初心者を引き込む工夫みたいなものは用意されているのでしょうか?

 

高橋氏:
確かにNEW SPACE ORDERを作るうえで,どうしたらRTSというジャンルの面白さを伝えられるか,というのはよく考えましたし,それを作品にも反映させていった経緯はあります。
一つ例を挙げるとすれば,NEW SPACE ORDERでは,マップ上に拠点となる惑星が点在していて,それを占領して繋げていくことで自勢力を広げていくことができます。つまり,惑星単位で陣地を管理させることで,RTSで忙しくなりがちな内政面を簡略化しているワケです。

 

4Gamer:
"スターライン"システムですね。惑星と惑星を繋ぐことで,物資/人員の流通網を築くという。

 

高橋氏:

そうです。ただこの惑星単位……つまりは拠点を明確にするというシステムにしたのは,内政の簡略化だけが目的ではありません。"戦略性の視覚化"という意図も含まれているんですよ。

 

4Gamer:
というと?

 

高橋氏:

要するに,既存のRTS……例えばAoCなどだと,施設などを自由に建てられるのはよいのですが,半面「どこが重要なのか」が非常に分かりにくい面がありました。恥ずかしながら私は,AoCに慣れない頃などは,どこを攻めれば良いのかがさっぱり分からなくて良く負けてしまっていたんですよね(笑)。もちろん,慣れてくれば資源の場所や配置が重要だとか分かってくるワケですが,どうも分かりにくいというか。そういう要素を分かりやすく,"目に見える"形にする必要があるんじゃないかな,と。

 

4Gamer:
確かにそれはありますね。とにかくRTSはハードルが高いですし。

 

高橋氏:
そうなんですよ。RTS自体は非常に面白いジャンルで,一度慣れてしまえばかなり楽しめる作品も沢山あるのですが,取っつきにくい要素が多いのが欠点ですよね。ネットワークを介した対戦も,ある程度ルールを理解すれば相当面白いです。ただ,その「ある程度の理解」にどうやってユーザーさんを導いてあげるか,やはりそこが悩ましい部分だと思いますし,いろいろ工夫しなければいけないと感じる箇所だと言えます。

 

4Gamer:

うーん,そうですね。
まぁ対戦というキーワードが出たので,ネットワーク対戦について考えてみると,「対戦するための情報」をどうやって得るのか,というのはありますね。例えば,対戦のためのコツであったり,あるいはIRCのチャンネルなどのようなコミュニティであったり,対戦を楽しむ上で必要になる情報/知識って,正直,結構あるじゃないですか。

 

高橋氏:

それはありますね。

 

4Gamer:
けど,じゃあ本当の初心者がGoogleとかを使って「良質なファンサイトなりを探すのか」と言われると,それはなかなかあり得ないというか。検索して攻略情報を探そうって時点で,相当なモチベーションだと思うんですよね。普通の人……つまり"そもそも興味がない人"は,そんな面倒なことはしない。
……なら,その興味が無い人が"対戦の楽しさを知るキッカケ"ってなんだろう? みたいな。

 

高橋氏:
そう,そうなんですよね。
NEW SPACE ORDERの開発当初だと,社内でも「RTS? ナニそれ?」みたいなところがあったりして,「いや,面白いんですよコレが」と説明するのは一苦労でした。RTSというジャンルがまだまだ知られていない日本の市場に限っていえば,ユーザーさん達にも同じ説明をしなければならないワケで,対戦となるとさらに……。

 

4Gamer:

個人的な考えとしては,ちょっとした見せ方だと思うことがあるんですよね。
例えば,NEW SPACE ORDERにも「リプレイ機能」がありますけれど,そのリプレイファイルを「見やすい形」で提供するだけでも,結構違うんじゃないかと。起動画面でオンライン対戦のランキングが出ていて,そこにリプレイファイルも一緒に用意されているとか。そうすれば,何気なくリプレイを見てみるかもしれないし,リプレイを見れば「対戦ってなんか楽しそうだな」とか「こうすればいいのか」と思うかもしれません。

そういうちょっとした気配りが重要なのではないか,と思うことはありますね。
リプレイファイルを探してファンサイトを巡る……などというのは,先の攻略情報と一緒で,"モチベーション"の高いユーザーしかやらないと思うんですよ。

 

高橋氏:
うーん,なるほど。
格闘ゲームなんかも,他人のやっているのを見て興味を持った人も多そうですし,確かにそういう見せ方は面白いですね。NEW SPACE ORDERには,対戦ロビーがあり,対戦を盛り上げるシステムを実装する予定ですが,そこにどうやって人を引き込むかという工夫については,もっと詰めていきたいと思います。

 

4Gamer:
そうですね。期待しています。本日はありがとうございました。

 

 

 

 国内でもオンラインゲームが注目され初めてはいるものの,いま一つ伸び悩む対戦系のオンラインゲーム事情。猫も杓子もMMORPGという状況が続く中,国内のメーカーから対戦系のオンラインゲームが登場してくるのは非常にうれしい事柄といえる。ゴチャキャラを始めとした「リアルタイムシミュレーション」は数あれど,いわゆる"RTS然"したタイトルは,国産のゲームとしては非常に珍しい……というか,これが初めてとなる作品かもしれない。

 

 実は今回インタビューを行うに当たって,事前に知好楽 新横浜店にて,β版として動いている本作を少しだけプレイさせて頂いているのだが,対戦の設定で配置を任意に決める機能(前衛と後衛,あるいはチームの配置の偏りなどを設定できる)があったり,ゲーム終了後に自分の動いた軌跡が見える(ミニマップ上に行動軌跡が記録される)など,些細な部分にいろいろな工夫が凝らしてあり,非常に良く作り込まれていた雰囲気があったのが印象的であった。


 正直,海外の一線級の作品群と比べるとグラフィックスを始めとした諸々の点で多少見劣りする面があるのは否めない。しかし,今なお絶大な人気を誇る「Starcraft」然り「Counter-Strike」然り,対戦ゲームの人気は,グラフィックスには左右されないのも確かな事実だ。ゲームとしての面白さに加え,遊びやすい環境がいかに提供されているかが,対戦ゲームでは重要なポイントになるのである。逆にいえば,軽いスペックでも快適に動くこと自体が,対戦人口の拡大を促す要因とさえなり得るだけに,その辺の"対戦を楽しむまでの仕掛け作り"に期待していきたいと思う。 今後も興味深く展開を追っていきたい。

 

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