― インタビュー ―

ギャラクシアンの世界観をベースにしたRTS  「NEW SPACE ORDER」開発者インタビュー

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Text by TAITAI
2004年12月20日

 

 ナムコが開発中の「NEW SPACE ORDER」は,ドラグーンやジオキャリバーといった兵器でお馴染みの"ナムコ・スペースオペラ"を題材にした,国産では珍しいリアルタイムストラテジー(以下,RTS)作品である。
 ゲームとしてはかなり完成に近い状態にも関わらず,同社が運営するネットカフェ「知好楽」でクローズドβテストが細々と行われている以外に,目立った動きもほとんど見られない。今後の予定がまったく発表されていないのは,本作に興味を抱いているユーザーにとっては,非常にやきもきしてしまう部分といえるだろう。

 

 恐らくは,ナムコが初めてリリースするフルスクラッチのPCゲームであり,かつこれまたナムコ初となるRTSの本作。いろいろな意味で興味が尽きないタイトルだけに,このまま見過ごすワケにもいかない。4Gamerでは,ナムコ横浜クリエイティブセンターにおもむき,ゲームの内容などについて,いろいろと話を聞いてみることにした。

 

高橋徹氏 ■高橋徹氏プロフィール
株式会社ナムコCTクリエイティブグループ ゲームデザイナー兼ディレクター。業務用ゲーム機の企画制作を行った後,家庭用ゲーム機の企画制作を行う。現在は「NEW SPACE ORDER」の企画を担当。

 

 

 

ナムコ初のRTSとなるNEW SPACE ORDERとは

 

4Gamer:

いきなり押しかける形で訪ねてしまって申し訳ありません。

 

高橋氏:
いえいえ,わざわざありがとうございます。

 

4Gamer:
早速ですが,まずは本作を開発するにあたっての経緯などを教えていただけますか?

 

高橋氏:

そもそもこの「NEW SPACE ORDER」を作り始めた時期というのは,今ほどネットワークゲームが注目されているワケでもありませんでした。今でこそネットワークゲームは,MMORPGを中心に注目度が高いですけれど,以前は所詮マニア向けのものでしかなかったというか。
ですから本作も,ブームに乗っかってネットワークゲームを作った……というよりは,チャレンジとして作ってみたかった……という側面はかなり強いですね。

 

4Gamer:
ネットワークゲーム……ということは,やはり対人戦などを相当意識して作ってあるということでしょうか?


高橋氏:
RTSの醍醐味の一つとしては,やはりネットワークを介した対人戦があると考えていますので,ゲームのバランスも含めて,対人戦はかなり意識した作りにしてありますよ。

 

4Gamer:
なるほど。ただ客観的に見ると,RTSというジャンル自体が日本ではかなりのチャレンジですよね。

 

高橋氏:

そうなんですよね。元々ナムコ自体がPCゲームを作ってなかったとか,オンラインゲーム自体も経験がなかったとか,ジャンルもRTSという僕らにとって新しいものだったとか,苦労する要素がかなり重なっていたのは確かです。

 

4Gamer:

日本でRTSというと,「Age of Empires(以下,AoE)」シリーズなどが人気作として挙げられますが,やはりインスパイアされた部分は多いですか?

 

高橋氏:
実を言うと,私自身,「Age of Empires II:The Conquerors(以下,AoC)」などにはかなりハマッた口でした。RTSを作ってみたい!と考えたのも,やっぱりこのゲームに影響されたところが大きいですね。
職業柄というのもあって,私もいろいろなゲームを遊びましたけれど,AoCのネットワーク対戦はビックリするくらい面白くて,それこそ会社をズル休みしてでも遊びたい! みたいな(笑)。
ただ遊んでいくウチに,やっぱり「ここはこうした方が良い」だとか「これは分かりにくい」とか,いろいろと気になる部分が増えてきてしまったんですよね。

 

4Gamer:
じゃあ,作っちゃえ!……という?

 

高橋氏:
そういうノリがあったのは否定しません……というか,ありました(笑)。ただ作品自体はかなりじっくりと作り込んでいますし,ゲームの内容に関しては自信を持ってますよ。

 

 

ナムコ系スペースオペラU.G.S.Fをベースにした陣営設定

 

4Gamer:
そういえば本作は,題材をSFというか,いわゆるU.G.S.F系(ナムコ系スペースオペラ)を採用していますよね。

 

高橋氏:

ええ。なんでU.G.S.F系を採用したのかを一から説明すると話は長くなってしまうのですが,実を言うと,元々このゲームは企画書の段階では戦車ゲームだったんですよ。NEW SPACE ORDERでは,ユニットに向きの概念があって,横や後ろから攻撃されるとダメージが大きくなるというルールがあるのですが,これは,元々は戦車戦をイメージしたゲームシステムでした。
ただ制作するにあたって「戦車ゲームっていうのはマニアック過ぎないか?」みたいな意見が社内で出て,じゃあってことでUGSF系の世界観を持って来た。そういう経緯があります。SFも十分マニアックじゃないか,と言われればそれまでですけどね。ただ,ナムコ伝統のSFシリーズの世界観ということもあるので,随所随所に細かい設定は盛り込んでいますよ。


4Gamer:
最初に,NEW SPACE ORDERに登場する勢力について教えていただけますか?


高橋氏:

まず大枠から説明すると,NEW SPACE ORDERに登場する勢力は,民主連邦,軍事帝國,神聖宗教国,封建王朝国の四つになります。U.G.S.F系の世界観をバックボーンに持つ本作ですが,ギャラガとかボスコニアンなどといった勢力は,この作品では直接は登場せず,シナリオ的にはほかのU.G.S.F系の作品とは若干違う世代の話がメインになっています。

 

4Gamer:
民主連邦がU.G.S.F(銀河連邦宇宙軍)と同じ勢力になりますよね?


高橋氏:
そうですね。民主連邦は,ご存じの通りU.G.S.Fをベースにした勢力で,万能型ともいえる特徴を備える勢力になります。ユニットも癖がないモノが多く,非常に扱いやすい勢力として位置づけられています。
「どこかで見たことある」タイプのユニットがもっとも登場しているであろう民主連邦ですが,ゲーム的には,主にレーザー兵器を主力にした軍事技術が発達しているのも大きな特徴です。

 

4Gamer:
ふむふむ。

 


高橋氏:
民主連邦とは逆に,実弾系の兵器が強い勢力としては軍事帝國があります。この勢力は,特徴を一言で言い表すと「少数精鋭」ですね。ユニットは高くて数は揃えにくいけど強い,みたいな。そんな勢力となります。

 

4Gamer:
"ゼビ語"が使われているというBGMの国家ですね。軍歌っぽいBGMの。


高橋氏:
その勢力です。まぁ軍事帝國という名前からも分かるとおり,独裁者が統べる軍国主義の国家になります。この国のユニットは,設定を書いた私や担当したデザイナーが軍事オタクだったというのもあって,地味なところでマニアックさを醸し出している点も特徴ですね。戦艦の艦橋が旧イタリア海軍のなんちゃら型と同じ,だとか。分かる人には分かる……のかどうかもちょっと怪しいですが(笑),いろいろと遊び心が込められている勢力ではあります。

 

4Gamer:
封建王朝国と神聖宗教国はあまり見慣れない勢力のようですが……

 

高橋氏:
封建王朝国と神聖宗教国は,どちらも若干時代がかった設定を持つ勢力になりますね。
封建王朝国は,いわゆる廉価ユニットで戦う勢力になります。安くて弱いユニットしかありませんが,数の暴力で攻め立てることができるのが大きな特徴です。設定的には,登場する4勢力中もっとも高い科学力を有する勢力なのですが,復古主義的な思想のせいで,非効率的な兵器ばかりを作るということになっています。古代の木造船っぽい造形,かつ宇宙なのになぜか"オール"が付いてるユニットが登場するのも,そういった思想ゆえにというワケです。

 

4Gamer:
ふむふむ。

 

高橋氏:
次に神聖宗教国ですが,この勢力は,古代の超技術を修めた「聖典」を読み解くという形で科学技術が利用されていて,徐々に技術が進歩していく……というような文化を持たない特殊な勢力になります。ただいくつかの理由から「聖典」の解読が出来ない箇所があったりして,古代の超技術を完全に再現はできないでいる,という設定ですね。
生物兵器を主体にしたユニット構成も特徴で,兵器の中に超能力を持つ人間が入っていて,テレパシーで操作するといった設定になっています。
 神聖宗教国のユニットは,ゲーム中でもとくにアクが強いユニットとして位置づけられていて,一時的にユニットの能力が増す「進化」コマンド(注:後で一定時間硬直してしまう)や,通常攻撃以外の特殊攻撃能力を持つユニットなどが存在します。
 ちなみにU.G.S.F系の作品の中でも人気の高い「ギャラクシアン3 アタック オブ ザ ゾルギア」に登場した生物兵器「ゾルギア」は,この神聖宗教国のユニットとして登場しています。

 

4Gamer:

そういえば,私もギャラクシアン3にはハマった人間の一人なのですが,正直なところ,結局ゾルギアとかってなんだか良く分からないままなんですが(笑)。

 

高橋氏:
まぁ,ちゃんと語られてることもあまりないような……(苦笑)。
大まかなストーリーラインや設定は,今制作中のキャンペーンモードで分かるようにしていこうかな,という感じですね。

 

4Gamer:
なるほど。今稼働しているテスト版でもメニューだけは用意されてますよね。どんなモノか気にはなっていたのですが……。

 

高橋氏:
ええ。各勢力ごとに8シナリオ,計32のシナリオを予定しています。クリアしたら次のシナリオが選べるようになっていく,というオーソドックスなスタイルですね。ちょっとまだスクリーンショットなどを公開できる段階ではないのが申し訳ないのですが。

 

4Gamer:
現在,知好楽で行われているβテストでキャンペーンモードが遊べるようになるなどといった予定はあるのでしょうか?

 

高橋氏:
そのあたりも,本作の今後の展開と同様に検討段階ですね。

 

 

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「NEW SPACE ORDER」
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