この作品,ストーリーはハードボイルドタッチで,タイトルも「GUN」という実にぶっきらぼうな名前。“お堅い”イメージを連想しがちだが,実は純粋なシューティングゲーマーから,手軽にガンアクションを楽しみたいライトなプレイヤーまで受け入れる,懐の深さがある。手軽に西部劇の独特な世界に浸れるという側面もあるので,ぜひ多くのプレイヤーにチェックしておいてほしいタイトルだ。
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「Call of Duty 2」「Movies」と共に,ラッセルの海外タイトル提供第1弾となる「GUN」。開発元のNeversoft Entertainmentは「Tony Howk's」などの有名シリーズを手がけたデベロッパとあって,そのクオリティは折り紙付きといった感じ |
本作は三人称視点のシューティングアクションゲームだ。砂塵の舞う砂漠地帯や山岳地帯を,徒歩あるいは馬を用いて移動し,あるときは街中で,またあるときは部族の集落で,酒場で,船の上で,砂漠で,山で,森で,西部劇ならではのワイルドな銃撃戦を楽しめる。
その銃撃戦の爽快感をメインフィーチャーとしつつ,ストーリーとは関係のない道草的要素「サイドミッション」を通じてお金を稼ぎ,主人公を強化して遊べるというのが,本作の大きな魅力だ。以下にその特徴をピックアップして,紹介しておこう。
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善良(かどうかは分からないが)な市民にちょっかいを出し続けると,突然町の保安部隊がワラワラと集まってきた。それでも全員倒せばOKというのは,この時代ならではの大らかさか(?) |
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本作はストーリーに沿った大きな流れのほかに,“道草”要素として豊富な「サイドミッション」が用意されている。メインストーリーのミッションが始まっていないうちは,本筋から脱線して馬であちこち走り回ったり(人を踏み潰したりも可能),ストーリーとは関係のないサイドミッションに挑んだりできるのだ。
道草と聞いて連想するのは,ゲーム内で市民への暴行や車の窃盗,周囲を巻き込んだ暴走行為が,それなりのデメリットと引き換えとはいえ実行可能なGTA(Grand Theft Auto)シリーズだろう。本作にも同様の要素が盛り込まれており,住民へのちょっかいが可能なのはもちろん,サイドミッションでお金を稼ぎ,主人公の武器や馬などを強化して,より充実したガンマン生活をエンジョイできるのだ。
サイドミッションの詳細については後述するが,簡単なバウンティハンティング(お尋ね者を退治する賞金稼ぎ)から,牛や人を狼や悪党から守るプロテクトミッション,ポーカーや金の採掘(?)など,バラエティ豊富だ。
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メインのミッションが発動していなければ,行動はプレイヤーの思いのまま。ならず者に襲われながら,愛馬で気ままに観光しよう |
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ポーカーで小銭稼ぎ。ガチンコで勝負してもいいが,デフォルトで用意されている「Cheat」(イカサマ)ボタンもどんどん活用したい |
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お金を稼いだら,アイテムを購入して装備を強化すべし。一般的なアイテムから,「バレル研磨」といったマニアックなものまで揃っている |
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GUN Quickdraw Modeに移行すると,視点がスッと一人称視点に切り替わる。リロード不要なので,相手が吹っ飛んでいる間もガンガン弾を撃ち込める |
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本作のシューティングアクションは,一般的なFPSのような精密な射撃よりも,むしろ爽快感と西部劇のカタルシス,そして19世紀らしい武器の使用感を前面に押し出した内容である。武器はピストルやライフル,ショットガンといった飛び道具から,ナイフや斧などの格闘用武器,また火炎瓶やダイナマイトという投げ物まである。
銃のレティクル(照準)は大きめで,割と大雑把に敵を狙って撃っても,それなりにヒットする。頭を撃ち抜いて敵を一撃で倒す「ヘッドショット」も実装されているので,命中精度を高めて素早く大勢の敵を倒すことも可能だ。
中でも最も爽快なのが,「GUN Quickdraw Mode」(いわゆるバレットタイム)という機能。時間の流れを一時的にスローにして,銃弾を避けながら敵に連続して弾を撃ち込める。これはピストル限定のもので,一定時間,弾のリロードすら自動で行われる無敵のガンアクションを楽しめる。敵一人を蜂の巣にすることはもちろん,キー一つで次々と視界のターゲットを切り替えて,多くの敵を数秒で撃退することも可能だ。
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武器によって威力,レティクルのサイズ,射撃可能範囲が異なる。ショットガンなら,広い照準に入った複数の敵をまとめて葬り去れるといった具合だ |
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接近戦になったら素早くナイフに持ち替えて,縦横に敵を切り刻むとよい。飛び散る血しぶきなどのゴア表現は残酷だが,やっぱり爽快感は増す |
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馬の動きが実にリアル! 走る/止まる/跳ぶ/いななくといった動作の再現度が高い。後述のアイテム売買で“ひづめ”を買えば,足も速くなる |
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Nedに叩き起こされ,ハンティングへと連れ出されるColton。すべての物語は,ここから始まるのだ |
物語は1880年のモンタナから始まる。
ある日,若きColton Whiteとその父Nedは,ハンティングのため,汽船でミズーリまで旅に出る。しかし旅の途中,船は謎の一団の襲撃を受け,Coltonは命からがら逃げ延びたものの,Nedは汽船と共に川底に沈んだ。別れぎわ,NedはColtonに「あるもの」を手渡し,自分が本当の父ではないことを告げ,Dodge Cityの売春宿AlhambraでJennyに会うように言う。
一方,謎の襲撃集団の雇い主であるThomas Magruderは,部下に,なんとしてでもその「あるもの」を奪うよう命じる――。
上記のようなあらすじで,主人公Colton Whiteは,陰謀渦巻く西部の地で,自らを成長させながら冒険することになる。
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丁寧なチュートリアルで,銃撃と乗馬の訓練ができる。GUN Quickdraw Modeは最初にしっかり身につけたい |
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汽船での一幕。Coltonの目を避けるように,女性から「あるもの」を受け取るNed。父がこんな女性と密会とは |
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乗っていた汽船は大破。Coltonはかろうじて逃げ出すものの,Nedは船とともに沈み,そのまま川底へ…… |
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かなりの時間を割いてムービーで丁寧に描かれる本作のストーリー。あまりにも登場人物の会話が多いので,英語力があると助かる |
ちなみにこのストーリーラインは,映画「マスク・オブ・ゾロ」の原案を手がけたハリウッドの脚本家Randall Jahnson氏が書き下ろしたもの。このほか,声優陣にはトーマス・ジェーン(映画「ディープ・ブルー」のカーター役),ブラッド・ドゥーリフ(映画「ロード・オブ・ザ・リング:二つの塔」の蛇の舌グリマ役)といったハリウッド俳優を起用するなど,本作はキャストも豪華だ。さすがはPC以外にも,Xbox 360などのコンシューマ機にマルチプラットフォーム展開される大型タイトルである。
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荒野に放たれるColton。たくましく成長する青年だが,襲われたり刑務所に入れられたりと,はたから見ると不憫だ |
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この広域マップで,行き先をチェックしたり,サイドミッションの場所を探したりできる。このビジュアルもなんだかGTAライク |
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大砲を用いた砲撃シーン。本作にはこういった要素がアチコチに散りばめられている |
本作のアクション要素は,銃撃だけではない。例えば,馬車の護衛任務には大量の火薬を用いた障害物の爆破があったり,大砲で船や家屋を砲撃したりするシーンもある。
敵を倒す方法としては,銃撃のほか,後ろから羽交い絞めにして後頭部を殴打するなど,凝った動作も可能だ。アイテム「Scalping Knife」を購入すれば,倒した相手の生皮を剥ぐことも……。実際にどんな効果があるのかは不明だが,ゴア表現が強烈なのは確実。
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マップ内のオブジェクトを効果的に用いれば,敵を一網打尽にできることもあったり |
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馬は,移動にも戦闘にも使えるスグレモノだ。ヘタな銃よりも攻撃力があるような…… |
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ストーリーを進めていくと,“Quickdraw Modeの持続時間延長”といったColtonの能力的な成長と共に,装備もだんだん充実していく。最初はピストル,ライフル,ナイフというシンプルな構成だが,やがてショットガン,弓なども登場して種類が豊富になっていくうえ,ピストル自体も強力なものが手に入る。
徐々に充実していく武器のおかげで戦闘が単調にならず,「次はどんな武器が?」と常に期待させてくれる。実はこの部分が,本作の戦闘を飽きさせない最も大きな要素なのかもしれない。
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ショットガンはリロードが遅いのが難点。しかし,複数の敵を一度に吹き飛ばす能力を持つ |
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弓は,音の出ないスニーク用の武器だ。重力に従って山なりに飛ぶので,扱いが難しい |
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メインストーリーに関わるミッションをクリアすると,サイドミッションがアンロックされ,要所に関連NPCが配置される。NPCに話しかけて依頼を受ければ,ミッションスタートだ |
冒頭でも述べたが,本作の醍醐味は豊富な「サイドミッション」への寄り道。しかしこれらはあくまでも“サイド”の要素なので,ゲームを進めるうえでは“やらなくてもいい”行為だ。無視してストーリーを進めるのもいいだろう。
とはいえ,問題を一つ一つ処理していく楽しみもあるし,なんといっても報酬で装備をアップグレードできるのが魅力。急がば回れの要領で,サイドミッションによってキャラクターを強化してからメインストーリーのミッションに挑んだほうが,結果的に達成スピードが上がる場合もありそうだ。
ちなみにサイドミッションは,メインストーリーに関わるミッションをクリアすることで,次々にアンロックされる仕組みだ。同じミッションには何度も繰り返し挑戦できないが,例えばポーカーのようなミニゲームは,物語を進めると再びプレイできるようになる。なおミッション遂行中は,そのほかのミッションに関するNPCがマップから一旦姿を消すため,メインストーリーも含めて,重複して依頼を受けることはできない。これは,依頼が重複したときの混乱を避けるための親切設計だろう。
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【Bounty Hunting】“お尋ね者”を捕まえる,この世界では定番(?)ともいえるミッション。大抵は,生きたまま捕らえたほうが報酬は高い。射撃の練習としても使えるミッションだ |
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【Pony Express】馬を使って物を運んだり,情報を伝えたりするミッション。制限時間付きなので緊張感がある。最初はごく短い距離だが,やがて地理の下調べが必要な場所への依頼も出てくる |
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【Porker】前述のとおり,イカサマ上等のトランプゲーム。各自2枚ずつカードが配られ,場に出た5枚の共通カードとの組み合わせで役を作る“テキサスホールデム”スタイルだ。臆病な対戦者が多いのか,割とブラフが有効 |
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【Mining】アイテム「Pickaxe」を購入することで可能になる金の採掘。金山はマップのアチコチに点在していて,馬でパカパカ散歩していると不意に見つけることも。びっくりするような場所にあったりもする |
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【調査中】馬を使って牛や馬を誘導し,指定の場所へ連れて行くといったミッション。実に地味だが,巧みに馬を操れるようになれば,それなりに面白くなってくるから不思議 |
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【Keep the Peace】保安官の仕事を代行するように,街を無法者から守るミッション。基本的には複数人を相手にした銃撃戦となる。変形バージョンとして,夜間に牛を襲う狼を相手にするものもある |
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ここまで,ザッと本作の構成要素を挙げてその魅力をお伝えしてみたが,いかがだっただろうか。
上記のような特徴はもちろん,美しいグラフィックスで描かれる西部の情景,またガンマンとしてのカタルシスも,いうまでもなく本作のセールスポイントだ。馬の挙動一つをとっても,その再現度に舌を巻くこと請け合いである。簡単な英語が理解できてストーリーを十分に堪能できる人はもちろん,ピュアなシューティングファンでも,この変わりダネのテーマが興味を惹いたなら,ぜひ一度遊んでみてほしい。