― プレビュー ―
学校を舞台にインスタンス戦闘でストーリーを進めるMMORPG
ヨーグルティング
Text by 麻生ちはや
2005年9月12日

 

 韓国Neowizが開発し,ガンホー・オンライン・エンターテイメントが本日よりオープンβテストを開始した「ヨーグルティング」は,学校を舞台に選んだ異色のMMORPGだ。
 ヨーグルティングは,全体のストーリーに沿った"エピソード"をインスタンスゾーンとしてプレイヤー自身が開設,他プレイヤーと一緒に冒険していくという,非常に個性的な構造の作品である。その独特のシステムや全体的な印象を,クローズドβテストでのプレイに基づいてお伝えしよう。

 ヨーグルティングのバックストーリーは,おおむね以下のとおりだ。平和で平凡な学校に突如「無限放学現象」(Endless Vacation Phenomenon。通称EVP)が起こり,学校の先生達がほとんど消えてしまった。生徒達は突然の成り行きに驚きつつも,生徒会を中心として日常の維持とEVPの原因究明/解決に乗り出し,プレイヤーはそれに協力する。
 キャラクターの外見からは,お手軽なだけの作品にも思えるヨーグルティングだが,前述した個性的なシステムゆえそのプレイは退屈しない。もちろんライトゲーマー向けではあるものの,背景のストーリーがしっかり設定されているためか,クエストを解く楽しみ,学年が上がって先に進んでいく嬉しさが味わえる。

 

 

■クエスト遂行で学校の謎を解く

 

妙にセクシーな衣装は保健室の「ビアンカ」先生。エスティバー学園には看護師の衣装がもらえるクエストもあり,そちらもなかなかキュートなのだ

 プレイヤーはゲーム開始時に「公立エスティバー学園」か「学校法人宵月学院」のどちらかを選択し,その生徒となる。両校の違いはほとんど制服のみで,クエストやストーリーの展開にはそれほど大きな違いはない。
 クローズドβテスト時点で公開されていたのは各学校の校舎内部とグラウンド,裏庭,並木道などで,キャラクターを歩かせてみると結構広い。おまけに二つの学校は,なぜか地下道でつながっており,手間はかかるが行き来できる。
 学校内各所に立つNPC教師や生徒会メンバーに話しかけ,前述のエピソードおよびクエスト依頼を受けてゲームを進める。エピソードがアイテム入手や進級時に避けて通れないメインストーリーの一部を成しているのに対し,クエストは必ずしもプレイに必須ではないお使い要素だ。完了させたエピソード/クエストや,自分の学年によって話しかけるべきNPCは変わり,それらNPCとの会話内容から少しずつ,学校に一体何が起きたか分かるようになっている。

 今自分が受けられるクエストや次に向かうべき場所が分からないときには,数か所に置かれた「案内板」からチェックが可能だ。クエストをくれるNPCの名前も教えてくれるので,迷うことはまずないだろう。
 また,画面右上のミニマップはかなり役に立つ。というのも,ミニマップ上にはNPCおよび,エピソード遂行のために入る「エピソードゲート」の位置が記されているのだが,カーソルを合わせるとNPC名やゲート名をきちんと表示してくれる。
 RPGのプレイでは,マップに慣れないうちは何がどこにあるかサッパリ分からず,無駄に時間を費やすこともよくあるが,そうした場合本作ではミニマップを頼りにすればよいわけだ。

 

新入生/1年生のうちは,熊の着ぐるみを着たベン先生(宵月学園の場合はサム先生)からほとんどのクエストを受ける。左の画面が暗いのはゲーム内時間で夜のため

 

 

■大技が決まれば爽快な戦闘システム

 

携帯電話にはあらかじめ二つの購買部への直通番号が登録されている。どちらも売っている消耗品は同じだが,便利なのはエピソード進行中でも呼び出せること。長期戦で回復剤が切れたときに,この関西弁のおばちゃんは心強い味方となる

 ヨーグルティングで戦闘が行われるのは,エピソード/クエストとしてプレイヤーが立てる「ルーム」(インスタンスゾーン)だけ。依頼を受けてから指定のエピソードゲートに入ると,まずは「ロビー」で待機することになる。
 ここで目的のエピソード/クエストを行っているルームがあるか,そこに人数的な空きがあるかと,「%」で表示されている進行具合を確認してからルームに参加すればよい。
 例えばすでに70%以上進行している部屋に入ってもあまり意味はないので,そこだけは必ず確認しておくべきだ。自分がやりたいクエストの部屋がなければ,無論自分が作成してもかまわない。

 

案内板では現在受けられるエピソード/クエストを確認できる。文字が赤いのは,受けられるがまだ自分が適正レベルに達していないもの 既存のルームに入ってもよし,自分で作成してもよし。ルーム作成時には,友達だけが入れるように,パスワードの設定も可能となっている

 

 プレイヤーは全員学園の「生徒」のはずなので,固定された職業という概念はないものの,装備する武器により,戦闘の方法とスタイルは大きく変わってくる。以下に装備する武器ごとの戦闘スタイルをまとめておこう。

 

●ブレード

チュートリアルで与えられる最初の武器。攻撃範囲が広く,自分の正面3ブロック分にいるモンスターに,一度にダメージを与えられる。一般的なRPGでいう前衛職の役割を果たすのに向いた武器だ。

 

●ミューラ

常に踊りながら音符を飛ばして攻撃する楽器。可愛らしいダンスアクションのため,クローズドβテストでは一番人気が高かったようだ。序盤は攻撃力が低いためいま一つだが,成長したときの範囲攻撃効果はかなりのもの。戦闘時の間合いは前衛と後衛の中間くらいになる。

 

●グローブ

攻撃範囲は狭いが一回の打撃が大きい,前衛用武器の一つ。装備したときの格闘技に近い戦闘スタイルは,「モンク」をイメージしてもらえば一番近いだろう。前衛職的な役割に向く。

 

●スピリット

水の精霊,火の精霊などをリュックサックから召喚し,敵に向かわせる精霊使いの装備。遠距離攻撃が得意な後衛用の武器だ。

 

 プレイヤーの前に立ちはだかるのは,「箱」など,学校の備品が化けたと思われるモンスターや,大発生したネズミなどなど。戦闘の基本はモンスターにカーソルを合わせて左クリックするだけで,相手が戦闘不能になるまで自動的に叩き続ける。戦闘していると右上のゲージがチャージされ,表示された数字が大きくなっていくのだが,この数字の回数分だけ右クリックで「スキル」発動が可能になる。
 スキルによる範囲攻撃は雑魚クラスなら一撃で倒せ,かなり爽快だ。オート戦闘は一般に,簡単でラクなぶん飽きやすいという欠点もあるが,スキルを使う場所とタイミングを見極めるのが重要で,戦術性もそれなりにある。
 とくに学校が舞台となるルームには障害物も多く,思うように動けないこともあり,飽きさせないだけの仕掛けは十分してある。

 

ミューラのスキル発動の瞬間。モンスターを引き寄せておいて右クリックすれば,一気にカタをつけられる 踊りながら敵を倒すミューラは結構楽しそう。戦闘とは無関係に踊りのアクションを楽しむプレイヤーも多かった

 

 

■協力体制をつい忘れそうな,アイテム入手システム

 

アイテムを交換するには相手を右クリックすればよい。渡したい荷物をドラッグ&ドロップし,双方が確認ボタンを押せば完了だ。装備中のアイテムは渡せないので,いったん外す必要がある

 エピソード/クエストの進行中には自分の順位が示され,これは一つのルームの参加者中で,モンスターを倒した数が多い人ほど上位になる。順位が高ければ,エピソード/クエスト終了後に入手できるアイテムのうち,好きなモノが手に入る可能性が高まるため,みな必死に1匹でも多く倒そうとするわけだ。
 エピソード/クエスト終了後のボーナスアイテム選択画面では人数分のダンボール箱が表示されるが,この時点ではそれぞれ中に何が入ってるか明確には分からない。
 各プレイヤーは制限時間内にどれか一つを選ぶのだが,このとき二人以上が同じ箱を選んだ場合,順位の高い人が優先される。よい(と推測される)アイテムが入った箱を確実に手にするためには,順位を上げる必要があるわけだ。
 クローズドβテストで試した限り,エピソード/クエストの中にはパズル要素を含むものも多かった。そこで例えばパズル要素の解決に貢献せず,道が開けた瞬間に飛び出して,ひたすらモンスターだけを相手にするといったプレイをする人がいると,ルーム全体の雰囲気が悪くなったりもする。
 もっとも,ルームの立て主にはキック権限が与えられているので,あまり行儀のよくないプレイスタイルを続けると名前が知れ渡り,クエストルームに入れてもらえなくなるだろう。エピソード/クエストの難度が上がるほど,全員の協力が必要になっていく。

 

クエストが終わった直後の画面。得られた経験値,クリアランクなどといった,プレイの内訳を示す情報が表示される 選んだ箱に上位の競争相手がいなければ,「SUCCESS!」の表示とともに入手できる,たまに装備品がもらえることも 箱で通路がふさがれていたら,右クリックで箱を押す。その間にもモンスターは襲ってくるので,カバーしあうのが重要

 

 

■アクション性のみならず着せ替えが注目ポイント

 

可愛らしい装備についての情報交換も盛んに行われていた様子

 キャラクターやそのアクションの可愛らしさがウリのヨーグルティングで,着せ替え要素は外せない。むしろここを楽しまなければ,ヨーグルティングの魅力は半減してしまうといってもよいくらいだ。
 ゲーム開始時にはインベントリに各学校の制服が夏服/冬服とも揃っている。これがいわば初心者装備にあたり,その後クエストをこなすうちにボーナスアイテムとして新しい衣装を入手できる。「冬用コート」やら「手芸部の帽子」「飼育部の帽子」「体操着」やら,果ては「看護服」や"ネコミミ"まで,身に着けるアイテムのバリエーションはさまざまだ。
 なお,オプションの描画設定からはキャラクターに輪郭線を付けるかどうか選択できる。輪郭線をつけるとやや平坦なアニメ風に,外せば自然なカートゥーンレンダリングの3Dキャラクターに見える。小さな違いだし,プレイに影響するわけではないが,好みの演出を選べるのは嬉しい。
 プレイヤー同士が道端で,新しい装備品についての情報交換を熱心に行う様子もよく見かけたが,強い装備だから求めるというより,可愛いからそれが欲しい! という感じ。コレクター心はかなりくすぐられている様子だ。

 

輪郭線の付いたキャラクター,こちらはエスティバー学園の冬服 同じくエスティバー学園で,輪郭線なしの夏服バージョン

 

 このほか,武器の精錬と強化,属性付与といったRPGではお決まりのシステムもきちんと盛り込まれており,ゲーム内でやれることは数多くある。
 また,さすがにクローズドβテストの短い期間ではほとんど見かけなかったが,いかにも学校らしい「同好会」という名のギルドシステムもあり,コミュニケーションも取りやすくなっている。
 アクション性の高い作品だけに,クエストクリアの時間を前回より短くする手立てを考えたり,どうしたら効率よく1位を取れるか悩んだりと,プレイを工夫する余地は多々用意されている。
 キャラクターの見た目や,学園モノというテーマから敬遠する人がいるかもしれないし,操作性にはまだ改善の余地が残るとはいえ,独特のプレイ感覚が気に入る人もきっといるはず。
 そして何より,エピソード/クエストごとに手離れのよいプレイを少しずつ重ねられる点は,他作品にない大きなメリットだ。毎日1〜2時間のプレイで,ストーリーを地道に進めていくことが可能なのである。本日から始まったオープンβテストに参加して,この独特の魅力をぜひ確かめてみてほしい。

 

タイトル ヨーグルティング
開発元 Neowiz 発売元 ガンホー・オンライン・エンターテイメント
発売日 2005/11/24 価格 基本プレイ料金無料(アイテム課金)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium III/1GHz以上[Pentium 4/1.80GHz以上推奨],メインメモリ:256MB以上[512MB以上推奨],グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨],HDD空き容量:2GB以上,ネットワーク環境:1.5Mbps以上,Windows XP Professional 64-bit Editionは動作対象外

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