■女性主人公も登場! 八つのストーリーでリプレイ性Up
長い歴史を持つティル・ナ・ノーグシリーズの,最新作となる第5作「〜悠久の仁〜」では,1本のメインストーリーに沿って物語が展開され,ウリでもあるシナリオ生成機能を一新。街やダンジョンの構成も前作「〜紡がれし勇士達〜」より高度になっている |
本シリーズの最大の特徴は,シナリオジェネレート(シナリオ生成)システムだ。新たな冒険を始めるたびにベースとなるシナリオやマップデザイン,街やダンジョンの構成を一から作り直し,毎回違った世界を冒険できるリプレイ性を実現している。
ちなみにシナリオを毎回ゼロから作り出すため,前作をプレイしていなくても物語的に困るようなことはまったくない。
第5作では,このシナリオジェネレートシステムを一新。「英雄物語」「闇に堕ちた王子」「王の狂乱」「お家騒動」「呪われし王家」「死の予言者」「災いの病魔」「大勇の王女」といった8本のベースとなるメインストーリーが用意され,選んだストーリーを軸にシナリオ生成されるようになった。前作までは,例えば国の王女が行方不明になったので探してほしいという始まりと,実は王女がラスボスだったという結末など,物語の最初と最後にだけメインストーリーが関わってきたが,今回は冒険途中にもメインストーリーに関連するイベントが発生する。
また今作には,プレイヤーの行動次第で物語が分岐して結末が異なったり,途中で発生するイベント(全300種類)も複数イベントから一つの流れになるものもあり,ストーリー性を取り入れたことで物語により深みを持たせている。
生成されるシナリオにはシナリオコード(10桁の数字)があり,面白かったシナリオに再挑戦したいときや,ほかの人にプレイしてほしい場合は,コード入力することで同一の設定で冒険を楽しめる。また前作「ティル・ナ・ノーグIV 〜紡がれし勇士達〜」(IV DX版を含む)のクリアデータを読み込ませることにより,前作で冒険を共にした仲間が登場したり,エンディングで結ばれた仲間同士の子孫として登場したりもする。
待望の女性英雄妖精が登場。男性/女性英雄妖精で内容の異なる8種類のメインストーリーが用意されている | 街の中に"民家"が登場。何度足を運んでも,イベント発生時以外は誰もいないのが残念なところ | 魔法はキャラごとに巻物を5本までセットできる。高いランクの巻物を使えば,より高い効果を期待できる |
戦闘は眺めてるだけのオートバトルで楽チン。だが無茶な行動をすることもあり,個別に命令を出す必要も | ダンジョンは未探索部分は真っ黒で何も見えない。それにしても,べた塗りの闇の処理はちょっと古い!? | ダンジョン構成も前作より複雑に。でもダンジョンの"隠し通路"は明るくなっており簡単に発見できる |
■繰り返し挑戦したくなるアイデア満載のゲームバランス
今回も数多くのキャラを仲間にしてパーティを組める。メンバー間の感情や相性も再現されているところが面白い。ドラゴン系を仲間にするにはミュドの薬を飲みまくって魅力のパラメータを上げよう |
仲間は冒険の途中で(かなり頻繁に)出会ったり,イベントで増えたりしてゆき,5人までのパーティを組める。気に入らないメンバーは途中で脱退させることも可能で,パーティ構成の自由度は非常に高い。途中で仲間にできるメンバーも英雄妖精とレベル差がさほど出ないようになっており,装備さえ揃えてやれば,すぐ戦いに参加させられる。
面白いのが,種族などによる特性の違いは当然のこと,メンバーごとの感情や相性が再現されており,同じメンバーで長い間パーティを組んでいると信頼関係もできて,異性を気にする会話や,気の合うメンバーであれば戦闘中に相手を気遣う会話をしたり,率先して援護したりもすること。途中でパーティから外そうとしても拒んだり,逆に気の合わないメンバーがいれば喧嘩して脱退してしまうこともある。
数多くあるキャラクターのパラメータの中でも,とくに重要なのが"士気"だ。士気は戦闘意欲や攻撃力に影響があり,前述のようなメンバー間のトラブルや,戦闘中に援護してくれない状況などでは下がってしまう。とくに信頼しているメンバーが戦闘で死ぬと士気がガクンと下がってしまい,立ち直るのに時間がかかったりと(睡眠を取れば徐々に回復するが),仲間の人間臭さがとても感じられる。
これは第5作の特徴的な要素の一つだが,どのシナリオもマップが四つのエリアに分かれている。各エリアは最初から自由に行き来できず,冒険を通して隣のエリアに渡る術(すべ)を見つけていかねばならない。
エリアごとに配置された街やダンジョンは前作よりも増えているが,訪れたことのある街や地域は,地図を見れば現在地を含めて把握できる。またダンジョンはとくに意地悪な仕掛けがあるわけでもなく,先に進むための鍵なども簡単に手に入るため,ダンジョン用マップは用意されていないものの,迷うことはないだろう。
マップ全域において,英雄妖精のレベルに合わせた敵が登場するため,雑魚キャラばかりが相手ということは少ない。またメンバーの洞察力というパラメータが上がってくると「東で物音がしたよ」など周囲の状況を知らせてくれるので(それはもうウルサいくらいに……),敵とのエンカウント率は高いものの,不必要な戦闘を避けられることも多い。ただしパーティ参加希望キャラと出会ったり,先に進むためのアイテム入手やイベントが発生することもあり,戦闘を避けてばかりでは物語は進まない。
戦闘はオートバトルで各キャラが独自に戦い始めるので,基本的にただ眺めているだけの手軽さ。もちろんパーティ全体に指示を出したり,個別に指示を出したりも可能だ。このオートバトル機能は非常に便利なのだが,雑魚キャラ相手に強力な魔法を使ったり,貧弱な小妖精が強い敵に殴りかかって死んだり,近くに敵がいるにも関わらずほかの敵を必死に追いかけ回したりと,思わず「おいおい!」と言いたくなる部分もあり,これは第5作でもあまり改善されていない。
ステータス画面でキャラ特性や使用できる武器などを確認。キャラごとの美しいグラフィックは必見だ | エリア全体図は広そうに見えるが,実はそれほど広くない。ここは別エリアへ行くためにアイテムが必要 | 地図を開くとエリアの詳細が分かる。訪れた地域,街,ダンジョンが描き込まれていくため迷うことはない |
戦闘で重要になるパーティ隊列と行動をメンバーごとに指定できる。キャラ特性に合わせて設定したい | 冒険中,パーティに加わりたいキャラから頻繁にお願いを受ける。誰かを脱退させなければならないが | 気の合うメンバーが戦闘中に相手を気遣う会話をすることもあるのが面白い(画面はちょっと加工してます) |
■せっかくのストーリー性を生かし切れていない部分も
キャラクター図鑑で,ゲーム中に遭遇したキャラ一覧が見られる。仲間になるキャラには美しい挿絵が入っており,すべての?マークを表示させたくて何度もプレイしてしまうのはナイスアイデアだと思う |
キャンプ画面の"会話"で情報確認できるが,ここには酒場で収集した情報しか記録されない。ここですべての会話のログを見られて,ストーリーに重要な情報については完了マークが付く機能などあれば,何を見過ごしていたのか把握できて便利そうだと思った次第。
RPGの特性上どうしても作業的になってしまう部分も目立つものの,毎回違うシナリオ&仲間で冒険でき,謳い文句であるリプレイ性の高さは十分に味わえた。トップメニューで見られるキャラクター図鑑やイベントの足跡では,冒険で出会ったキャラや遭遇したイベントをリストで見られるので,全部集めたい(表示させたい)ために何度も繰り返しプレイしてしまう人も多いのではないだろか。
ケルト神話がベースでファンタジー色が強く,プレイする人を選びそうなタイトルであるし,18年前からそのままの部分や詰めの甘い部分は随所に見られるのだが,ほかのシングルRPGにはない面白さや魅力を持っている。まったくの新作というわけでなく前作の強化版といった感じが続いてはいるが,根っからのファンはもちろんのこと,久しぶりにRPGをやってみようかなと思った人も,まずは「こちら」の体験版をプレイしてみてほしい。
余談だが,公式サイトに掲示板が用意されており,ほかのプレイヤーとの情報交換や感想,要望などを気軽に書き込めるところが実にフレンドリーだ。ゲームに対する要望などには担当スタッフからレスポンスをもらえることもあり,実用性の高いアイデアなどは実際にパッチで反映されている。こういった場を利用して要望,不満な点などをアピールしておかない手はないだろう。
教会で冒険のヒントを得る。宿屋の占いでもヒントを得られるが,高い代金の割に関係ない会話のときも多い | 派手な魔法もいいが,敵の防御力を下げたり動きを止めたりする魔法で連係をとると,厳しい戦闘も楽に | 武器や防具の装着は"最強装着"を選択すると所有する武器,防具から自動で選んで装備してくれる |
苦戦を強いられそうなときは,全体命令/個別命令を使って,特定の敵に集中攻撃をすることも必要だ | 信頼していたメンバーが死ぬと士気(赤黄緑と変化するバー)が下がる。とくに"うはうは"は強烈に下がっている | 良い関係を保ったまま別れた仲間からは,頻繁に手紙(伝書)が届く。これも親近感を持たせる良い要素 |