■あの華撃団がオールスターでPCに帰ってきた
サクラ大戦のオールスターが勢揃いする,ファン待望の一作。ゲームを起動して,あのテーマソングが流れてくるのを聞くと,ああ……,ついにサクラ大戦をプレイできるんだなあという実感がふつふつと沸いてくる |
久しぶりに日本に帰国した華撃団隊長の大神中尉を待ち受けるのは,帝国華撃団の懐かしい面々と,帝都東京を灰燼に帰そうと画策する謎の男だった。蒸気機関を暴走させる不思議な粒子を振りまく敵に,成す術もない華撃団の隊員達。このシリーズ最大の敵に,大神隊長以下,華撃団の乙女達がどのように立ち向かうのか? というのがサクラ4のストーリーだ。
サクラ4では舞台を日本に戻し,蒸気機関の力でますます繁栄する東京を中心にストーリーが展開していく。花の都パリを舞台としたサクラ3も面白かったが,やはり浅草や銀座といった馴染みの地名が登場する日本が舞台というのは良いものだ。
それに加え,日仏両国華撃団隊員が勢揃いするという,サクラ3をプレイしていたときに誰しもが望んだであろう願望をかなえてくれるタイトルということで,これはもうサクラファンには期待するなというほうが間違っている。
たしかにサクラ3でも,後半で帝国華撃団のメンバーが登場はするものの,どうしても主役は巴里華撃団で,それを支える帝国華撃団という図式になっていたのだが,サクラ4では早い時期から両メンバーが登場してくれるので,まさに「これだよ! こうでなくっちゃ!」という感じだ。
そして,当然ながら大神隊長を中心に,いつものサクラ大戦らいしいラブコメディも満載となっている。とくに,大神隊長が結婚について隊員の皆に意見を聞くのだが,それを求婚と誤解されてしまうという序盤でのエピソードから,「これは,えらいことになるぞぉ」と思わずプレイヤーをほくそ笑ませる。
ゲームの流れは,サクラ大戦の第1作からまったく変わらず,ストーリーの展開するアドベンチャーモードがあり,敵が現れて3Dストラテジーモードへと突入し,アドベンチャーモードに戻って1話が終わる,という一連の流れが繰り返されていく。
アドベンチャーモードとはいえ,ミストのような3Dアドベンチャーとはまったく違い,声優さんのセリフを当てた一枚絵のグラフィックスが,クリックで適宜切り替わりながら進行するという,いわゆる紙芝居的内容だ。これでも十分面白いのだから,それでいいのだ。
純粋にエンターテインメントなゲームなので,小難しい理屈を唱えて分析しつつ掘り下げるとか,そんな必要は本作にはまったくない。こういうのを好きな人が楽しむためのゲームなのだから,せめてプレイ中くらいは実生活のことなど忘れて思いっきりのめり込み,隊員達と一緒に笑ったり泣いたりすればいい。それがサクラ大戦なのだ。
OPのワンシーン。今回のオープニングでテーマソングを歌っているのは,我らが華撃団隊長の大神中尉なのだ | 巴里華撃団の隊員は早い時期から登場する。最初にやって来るのはパリで一番のトラブルメーカーのエリカ | 新たな恋敵の登場ということで,当然こうなる。どっちつかずの態度をとり続ける主人公が一番悪いのだが |
懐かしの巴里華撃団のグラン・マ,メル,そしてシー。地下司令室の通信機を使って,パリと連絡ができる | サクラの愛機は,名前と同じく桜色にペイントされた,新型霊子甲冑の光武二式。蒸気と搭乗員の霊力で動く | エリカの特殊パワーが開放され,大神達の窮地を救う。これも大神隊長への,愛のなせる業か? |
■フル3Dによる戦闘シーンには,ちょっと不満も
必殺攻撃や協力攻撃などのときには特別なグラフィックスが表示され,戦闘シーンは,けっこう派手だ。もっと高解像度で見せてくれたら,なお良かったのに |
戦闘システムは,各ユニットに行動ポイントが設定されており,ポイントのある限り移動や戦闘が可能というスタイルだ。一つのユニットがすべての行動を終了してから次のユニットが行動するというターンベースで,これまたサクラ3のシステムそのままだ。
なお,各隊員に設定されている"必殺技攻撃"のときに表示されるCGは一新され,より派手で華やかなものとなった。各マップに登場するボスはそれなりに強いものの,全員で取り囲んで必殺技を絡めた攻撃をしていけば,さほどの苦労もなく倒せるので,ストラテジーの難度そのものはそれほど高くはない。すべてがサクラ3を引き継いだ形なので,4ならではの要素を加えてほしいところではある。
残念なのは,解像度が640×480ドットの固定となっているため,せっかくの3Dが100%活かされていない感じがするところだ。画面に表示される領域が狭いため,マップの全体像が少し掴みにくく感じる。
もちろんカメラ視点を移動させることで,マップの端から端まで見られるのだが,戦闘開始前に敵の配置をチェックし,マップ全体の地形を把握するためにも,高解像度が選べるようにしてほしいものだ。また曲線を基調としたデザインのユニットが多いため,ジャギーが目立ってしまうのも残念なところ。
Windows版サクラ大戦シリーズすべてに共通した願いだが,移植にあたって,せめて1024×768ドットくらいの解像度で楽しめるようにしてほしかった。この点に関しては,大いに不満であると,一ファンとして声を大にして言いたい。
主人公の言動は,隊員達の"やる気"となって戦闘モードに反映され,攻撃や防御の数値が上下する | 大神隊長の命令一下,ついにパリ華撃団隊員達が帝都東京に勢揃い。これで役者は揃った,さあ反撃開始だ | 敵の一撃が帝劇を狙う! それを止めるべき帝国華撃団の霊子甲冑は,謎の霧に包まれ行動不能に…… |
今回は登場シーンも多く,かなり重要な役回りとなる帝国華撃団支配人の米田司令。普段はただの酒飲みだ | 最後の決戦を前に,一人で不安に耐える隊員達のもとを回る大神隊長。彼の優しさが,彼女達に勇気を与える | 普段はおっちょこちょいでドジなエリカだが,戦闘ではユニットのHPを回復するという便利な特殊能力を持つ |
■えっ,もう終わり? 全体的なボリュームは少なめ
東京とパリ双方の華撃団が,敵の攻撃で破壊され,復興途中の帝劇の舞台に上がる。戦闘で傷ついた帝都の市民を勇気づけられるのは,君達の明るい笑顔なのだ |
ただしラスボスとの戦闘が終わったあと,戦闘で荒廃した帝都の復興と,新たな帝国華撃団のスタートを描いているエピローグの部分がけっこう長めで,感動的でしんみりするようなシーンも用意されているため,プレイし終わった後にそれなりの余韻は残る。
今作はヒロインが総勢13名も登場し,それぞれに個別のエンディングが用意されていることを考えると,どうしても本編のほうを膨らませることができなかったのかなとも思われるが,やはり,あっけなかったなあという思いは残ってしまう。
ただ,サクラ大戦というゲームは,1回エンディングを見たら終わりというゲームではない。最終的にはすべてのヒロインとエンディングを迎え,すべてのグラフィックスを見るというのがファンの大きな楽しみであることを考えると,意外とこのボリュームはちょうどいいのかもしれない。
サクラ4は,システム的にはサクラ3をそのまま継承しており,目新しい点がないとはいえるが,シリーズの集大成ということで,やはりサクラ大戦ファンならばプレイしておかねばならないタイトルだろう。
なぜなら,オールスター総出演という本作を最後に,これまでの"サクラ大戦シリーズ"は完結。「サクラ大戦V」からは新しい設定となって生まれ変わってしまったからだ。
筆者はまだ最新作をプレイしてはいないのだが,やはりサクラ大戦は帝国華撃団でなくてはならないし,そう考えているファンの人には,ぜひともプレイしておいてもらいたいタイトルであることには間違いない。
敵の必殺攻撃。梵字のようなマークが出現し,大ダメージを受けてしまう。お返しは,きっちりとしてやろう | ゲーム途中では,帝劇内部を散策するモードになる。制限時間一杯を使い,なるべく多くの隊員達に会っておこう | サクラ大戦お馴染みのミニゲーム。今回は麻雀に似たゲームで,同じ絵柄のパイを3個づつ集めれば勝ち |
帝劇の売店で購入できる,隊員達のブロマイド。一回に一枚しか購入できないので,よく考えて選ばなくては | 主人公の入浴中,隊員達が気づかず浴場に入ってくるという,お約束のお色気シーン。もちろんこの後は修羅場 | ゲーム後半で登場する最新鋭霊子甲冑の"双武"。そのパワーは凄まじく,攻撃・防御共に光武を寄せ付けない |