― レビュー ―
来るべきRelease 80世代をForceWare 81.84公式βで事前確認
ForceWare 81.84β
Text by 坪山博貴
2005年10月17日

 

 NVIDIAは,同社の関連サイト「nZone」で,ForceWareの公式β版にして,公式βとしては初となるRelease 80世代のグラフィックスドライバ「ForceWare 81.84β」(以下81.84β)を公開している。Release 80世代のForceWareがデュアルコアCPUに最適化されており,デュアルコアCPU利用時に3Dゲームでパフォーマンスが向上することは,リーク版のForceWare 81.26β(以下81.26β)で明らかにしたとおりだが,いかんせんリーク版。正式版の仕様に近いと思われる,公式βではどうか? また,Release 80で実装されるといわれる,ほかの新機能についてはどこまでサポートされているだろう?
 これらRelease 80の新機能について,一つ一つ検証していくことにしたい。

 

 

■81.26βほどではないが,やはりデュアルコアでスコア上昇

 

81.84β。日本語対応となっている

 まずは,最も気になるデュアルコアCPU対応について見てみよう。今回は「3DMark05 Build1.2.0」(以下3DMark05)と「Far Cry」を利用して,Release 75世代の公式最新版であるForceWare 78.01(以下78.01)と比較してみる。
 テスト環境はのとおりだ。Far Cryのテストに当たっては,HardwareOCの「Far Cry Benchmark v1.4.1」を使用した。

 

 

 まず,3DMark05のデフォルトといえる,1024×768ドットの標準設定で,ドライバによってスコアがどう変わるかををまとめたのがグラフ1,2だ。
 81.84βでは,シングルカードで約2%,SLIでは約7%のスコア上昇を確認した。10月3日の記事では「シングルカードだとデュアルコアCPUでスコアが上がらない」と断じたが,81.84βだと,わずかではあるものの,スコアの向上を確認できたことになる。

 

 もっとも,今回のテスト環境では,81.26βでも,シングルカードで約3%のスコア上昇を確認できた。
 つまり,81.26βを検証した記事とは異なる結果になるわけだが,これは,テスト方法の違いに起因するようだ。前回の記事では,グラフィックスカードの差し替えとドライバのインストールに当たって,バックアップソフトを使用し,Windows XP+SP2をインストールした直後の状態に復元していた。改めて確認したところ,この作業がベンチマークスコアに影響を与えるらしいことが判明したので,今回はこういったことを一切行わず,カードを交換するごとにOSのインストールから行っている。より厳密なテスト方法といえるだろう。

 

 

 さて,スコアに戻ると,全体的に81.26βのほうが81.84βよりも良好だ。ただし,81.26βには少なからずあった描画の異常が81.84βでは解消されており,信頼性はブラッシュアップされた印象を受ける。81.84βは,正式リリースに向けて81.26βのバグフィックスを行ったバージョンと捉えられそうである。

 

 続いて,Far Cryを用いて,実際のゲームでも同様の傾向を確認できるか見てみよう。今回は1024×768ドットと1600×1200ドットにおいて,標準設定と,8倍のアンチエイリアシングと16倍の異方性フィルタリングを適用した状態(以下8x AA&16x Anisotropic)の両方,計4パターンで検証している。

 

 標準設定で取得した結果はグラフ3,4にまとめた。やはり,スコアだけなら81.84βよりも81.26βのほうが良好だ。ただし,いずれもデュアルコアCPUに対応していることが明らかという意味では,同じといっていい。
 Far Cryのベンチマークに限って話をすれば,81.26βでもとくに不具合があったわけではない。ただし,81.84βがパフォーマンスを若干犠牲にしつつ,安定性を重視したのだとすれば,納得のいく結果である。

 

 

 以下,81.84βと78.01の比較を中心に話を進めると,1024×768ドットの標準設定で78.01だと,デュアルコアCPUとSLIはどちらも,利用するとスコアが低下する。描画負荷が軽い場合,処理分散のオーバーヘッドを補えるほどには,パフォーマンス向上を実現できていないわけだ。
 これが81.84βになると,デュアルコアCPUであるX2 4800+を利用したときに,78.01に対してスコアは10%以上高くなる。最高では12%強だ。X2 4800+利用時も,SLI動作ではスコアが下がるが,これは81.84βにおけるスコアの向上が,デュアルコアによるものであるという事実を追認する結果といえよう。

 

 8x AA&16x Anisotropicを有効にして,グラフィックスカードに掛かる描画負荷を高くすると,スコアの差は一気に小さくなる(グラフ5,6)。とはいえ,1024×768ドットで,SLI時スコアが約4%上昇している点は注目に値しよう。

 

 

 Far Cryのスコアを総合的に見ると,81.84βでは,同じコア,同じクロックで見たときに,デュアルコアCPUであることがボトルネックになる可能性がほぼなくなった点が挙げられるだろう。グラフ5,6を見ると分かるように,高解像度&高レベルのフィルタリング適用時にはシングルコアに後れを取ることからも,最適化は完璧ではない。しかし,少なくともシングルコア+非SLIという「軽武装」に,デュアルコア+SLIという「重武装」が完敗するという結果は出ていないのも確かだ。

 

 あとは,CPUコアが2個になったにも関わらず,せいぜい12%しかパフォーマンスが上がっていないことをどう捉えるかだ。もっとも,今後デュアルコア(やマルチコア)によってCPUの性能向上が図られることはほぼ確実。その意味で,ForceWareがデュアルコアに最適化してきたことは重要なマイルストーンと理解すべきである。
 CPUのトレンドがコア数の増加に向かうなかで,ゲーマーだけが,今後は割高感が増すと予想される「シングルコアで高クロックなCPU」を選び続けなければならないという制約が,現在はある。ForceWareは,この"呪縛"から,ゲーマーを早い時期に解放してくれるかもしれない。

 

 

■実装/非実装が明確に分かれる81.84β

 

 2005年9月14日のプレスカンファレンス,そして,その後の取材で明らかになったRelease 80世代ForceWareの機能は,デュアルコアCPU対応以外だと主に以下のようなものが挙げられる。

 

  • (1)システムを再起動することなく,SLIの有効/無効を切り替えられる
  • (2)同一のグラフィックスチップを搭載していれば,異なるメーカーのカード2枚であってもSLI動作が可能
  • (3)エクスプローラ風の新UIを実装
  • (4)ノート用グラフィックスチップにも利用可能
  • (5)PureVideoの画質向上
  • (6)フルスクリーン時のキャリブレーション機能,DVI利用時のホットプラグ対応など,HDTV(高解像度テレビ)への対応強化

 

 今回は,テスト環境がテスト環境であることと,ゲーマーにとっての重要度から,(1)〜(3)について一つ一つ確認してみよう。

 

Release 80に関するプレゼンテーション資料では,SLIに関する機能追加が言及されている(出展:NVIDIA)

 まず,(1)に関しては81.84βで完全に動作した。「SLIマルチGPU」のタブからSLIを有効にしても,再起動を促すメッセージは表示されない。
 念のため,再起動を行わない状態と,意図的に再起動を行った状態の2パターンで3DMark05を実行してみたが,スコアは誤差レベルだったことも付記しておこう。

 

81.84βでは,2枚のグラフィックスカードを差したままドライバを導入すると,Windows XPの起動直後に間違いなくハングアップするという,再現性のあるトラブルを確認できた。今回のテスト環境だけの問題かもしれないが,同じトラブルに遭った場合は,1枚差したところでドライバをインストールし,後からもう1枚を追加するという方法で回避できるようである

 

 (2)に関しては,上のデュアルコア検証で利用したASUSTeK Computer製「ASUSTek Extreme N7800GTX TOP/2DHTV」(以下EN7800GTX)と,AOpen製「Aeolus PCX7800GTX-DVD256」(以下PCX7800GTX)を用意して,検証してみることにした。EN7800GTXはオーバークロック版,一方PCX7800GTXはリファレンスクロックで動作するので,「メーカーも動作クロックも異なる2枚のGeForce 7800 GTXカードによるSLI」のテストとなるわけだ。

 

 78.01や81.26βでは,2枚のグラフィックスカードと認識されるだけだった両製品。しかし,81.84βでは,SLI構成が可能で,実際にSLI動作させることができた。
 そこで,CPUにX2 4800+を利用する以外は前出の表と同じテスト環境で,3DMark05を実行してみることにしよう。以下,「EN7800GTX+PCX7800GTX」は,EN7800GTXをプライマリとして動作させたこと,そして「PCX7800GTX+EN7800GTX」は,PCX7800GTXをプライマリとして動作させたことを示す。また,比較対照用に,リファレンスクロック(コア430MHz,メモリ1.2GHz)で動作するPCX7800GTXシングルカードのスコアも計測した。

 

検証に利用したASUSTeK Computerの「Extreme N7800GTX/2DHTV/256MB」。コアクロック490MHz,メモリクロック1.35GHz相当で動作する。実勢価格は6万5000円前後。
問い合わせ先:ユニティ コーポレーション(販売代理店) news@unitycorp.co.jp
同じく検証に利用した,AOpen製「Aeolus PCX7800GTX-DVD256」。こちらはリファレンスどおり,コアクロック430MHz,メモリクロック1.2GHz相当で動作する。実勢価格は6万円前後
問い合わせ先:エーオープンジャパン info@aopen.co.jp

 

 結果はグラフ7にまとめたとおりだ。CoolBitsを有効にしても,動作クロックはマスター側のグラフィックスカードしか変更できないので,実際に2枚のカードがどういったクロックで動作しているのかは不明だが,EN7800GTX+PCX7800GTXの組み合わせでは,PCX7800GTX×2よりもスコアがいい。EN7800GTXのクロックにPCX7800GTXが引っ張られているかのような数値である。
 ところが,カードを入れ替えてPCX7800GTX+EN7800GTXにすると,スコアは大きく落ち込んだ。シングルカードよりは良好なスコアなので,SLI動作しているのは確かなようだが,かなり低い。

 

 

 続いて,Far Cryでチェックしてみよう。描画負荷が高まると,異なるカードの組み合わせが異常なスコアになってしまうのが分かる(グラフ8,9)。
 また,3DMark05と同様,PCX7800GTX+EN7800GTXの組み合わせでスコアの低下が著しい。EN7800GTX×2に対して,最大約45%も落ち込んでいる計算だ。単純に「動作クロックの遅いグラフィックスカードに合わせてSLI動作している」わけではないようである。

 

 

CoolBitsを有効にしても,追加される隠し機能は「周波数の設定」のみだ。Release 80で導入予定となっている「グラフィックスメモリ容量が異なるグラフィックスカードを組合せた場合の設定項目」などは,81.84βには見当たらない

 確かに,81.84βでは異なるメーカーのカードでもSLI動作は可能だ。しかし,動作クロックの違いを吸収する仕組みは,まだ完成していないと見るべきだろう。動作クロックの異なる2枚のグラフィックスカードが非同期で動作し,結果としてオーバーヘッドが大きくなる。そして,グラフィックスチップへの負荷が高くなればなるほどその影響が大きくなってしまっているという推測が行える。

 

 これは,問題としては比較的クリティカルである。しかし,現時点ではあくまでβ版のプレビューに過ぎない。正式版では問題が解決することを望みたい。というのも,1枚めのグラフィックスカードは付加機能やバンドルソフトで選んでも,2枚めはコスト重視で選びたい人は少なくないと思われるからだ。

 

 最後に新型UIについて,これは(これまで掲載してきたスクリーンショットを見てもお分かりいただけると思うが)まったく実装されていない。NVIDIA FireWallのUIにも似た新型UIでは,より「目で見て分かる」ようになるとのことだが,とりあえず待つほかないだろう。

 

Release 80で実装される予定の新UIについて言及したスライド(出展:NVIDIA)。一つ一つ拡大して見てほしいが,「エクスプローラ」ライク,かつ"見ため"重視であることが窺える。オーバークロック機能は標準搭載か? また,SLI動作時には2個のグラフィックスチップについて,温度を同時にチェックできるようになるようだ

 

 

 

■問題はあれど,よりリリースに近づいた次期ForceWare

 

 デュアルコアCPUへの最適化確認からスタートした,一連の検証を終えてみて,より正規リリースに近づいたドライバという印象を強く受ける。まだ多くの不具合や,未実装の機能もあるが,それが解決されれば,非常に面白い存在になりそうだ。これからゲーム用PCの導入を考えているなら,デュアルコアCPUにするか,まだまだシングルコアで行くかの判断は,Release 80世代となる次期ForceWareの登場を待ってみてもいいのではないだろうか。

 

タイトル ForceWare
開発元 NVIDIA 発売元 NVIDIA
発売日 2003/10/23 価格 無料
 
動作環境 N/A