― レビュー ―
日本では知名度が低いが海外では大ヒットのクライムアクション
ドライバー3
Text by UHAUHA
2005年9月15日

 

■ハリウッド大作クラスのクライムアクション

 

マイアミ,ニース,イスタンブールの都市が箱庭として再現され,描き込まれた風景はまるで現地にいるよう。ドライブして風景を楽しむもよし,暴走するもよし,人々や車を片っ端から銃撃するもよし,行動は自由だ
 広大な都市を丸々マップとして作り上げ,その中を徒歩や乗り物で自由に移動できるという,現在非常に人気の高い「箱庭系ドライブアクション」というジャンル。"グランド・セフト・オート"(GTA)シリーズが国内外ともに知名度が高いが,このジャンルの土台を作ったのは,何を隠そうシリーズ累計1200万本の大ヒットを記録している"ドライバー"シリーズなのだ。そして2005年9月,ライブドアからシリーズ最新作の日本語版「ドライバー3」(原題 DRIV3R)が発売された。
 開発したのは,ドライバーシリーズだけでなく,"Destruction Derby"シリーズや「Stuntman」など,車を題材としつつも単なるレースでは終わらせない独創的な作品を送り出す,イギリスのReflections Interactive。マシンの挙動,破損シミュレート,ドライブアクションなど今までに培ってきた技術は,本作にもふんだんに採り入れられている。

 なお本作は,プロモーションムービーを映画「エイリアン」「グラディエーター」のリドリー・スコット監督が手がけており(公式サイト「こちら」で見られる),またゲーム中の声優は映画「キル・ビル」のマイケル・マドセンが主人公役を務めているほか,ミッシェル・ロドリゲス,ミッキー・ローク,イギー・ポップといったハリウッドスターが起用されている。さらに音楽には著名なアーティストが曲を提供するなど,かなり贅沢な作りのゲームなのである。

 今回ライブドアから発売された日本語版は,ゲーム中のテキストがすべて日本語化されており,ムービーシーンを多用している"アンダーカバー"(いわゆるストーリーモード)でも,セリフには日本語字幕が表示される。英語が苦手な人でも,ゲームの世界に没頭できるだろう。

 プレイヤーが扮するのは,ドライバーシリーズでお馴染みの男"ターナー"。元FBIエージェントで,現在はマイアミ警察の車両窃盗専門チームに所属するデカ(刑事)だ。マイアミで発生した40台の高級車窃盗事件の手がかりを探るために,国際的な自動車窃盗団「South Beach」へ潜入捜査を行い,悪の片棒を担ぎながら組織摘発を目指す。事件を追うにつれてマイアミからニースへ,そしてイスタンブールへと国境を越えて物語が展開していく。

 ゲームの舞台となるマイアミ(アメリカ),ニース(フランス),イスタンブール(トルコ)の各都市は,建物や道路/高速道路,裏道に至るまで,面積にして約250km四方(GTA3の約3倍とか)が忠実に再現されており,リアルタイムに変化する光源処理も手伝って,あたかも本当に現地にいるような気分にさせてくれる。

 

車に焦点がおかれた本作のウリは,やっぱり車。ギンギンに熱い走りでマップの中を走り回れ 映画さながらのパトカーとのカーチェイスも繰り広げられる。映画のように簡単には撒けないのがツラい 一般道だけでなく高速道路も再現されており,カーブも少なくて移動に便利だ。ただし正面衝突だけは避けたい

 

 

車だけでなくボートにも乗れる。それにしても,街並みや空の美しさがお見事。海面への光源処理にも注目 無表情で笑顔すら見せないクールな主人公,ターナー。刑事なのに悪党以上に悪いことを平気でしでかす 随所に挿入されるムービーには日本語字幕が表示され,映画を観ているようにストーリーに引き込まれていく

 

■主人公は刑事なのに犯罪行為やりたい放題


車のモデリングはともかく,タイヤテクスチャなど静止画にしないと分からないような部分まで細かく描かれている。サスペンションの動きによる荷重移動や,タイヤのたわみまで再現されている(左右のリアタイヤに注目)
 本作のゲームモードには,「アンダーカバー」「フリーライド」「ドライビングゲーム」の3種類が用意されている。メインとなるのがストーリーモードの「アンダーカバー」だ。
 アンダーカバーは,基本的にはミッションを一つずつクリアしていくことで,次のステージへ進んでいく。各ミッションが1話ずつに完全に区切られ,基本的に1本道のストーリーが進んでいくというステージ制の採用は,GTAシリーズとの大きな違いの一つだろう。

 各ミッションは目的地への移動で始まり,ギャングや警官との銃撃戦,逃走車の追跡&破壊など,ドライブアクションだけではなくシューティングアクションも織り交ぜられている。
 例えば奪われた車を取り返すミッションでは,「ゴールド・コースト・ホテルへ移動」→「ホテルに入り,屋上に上がるとギャングとの銃撃戦」→「エレベータで地下駐車場へ移動」→「車を取り返したら追っ手を振り切りながら目的地まで移動する」といった感じ。多くのミッションがドライブ→アクションシューティング→ドライブという流れだ。

 本作は,車での移動がメインとなるのが大きな特徴。乗用車,スポーツカー,バイク,トラック,ボート(車じゃないけど)など,70種類以上の乗り物が登場する。車種はすべてオリジナルだが,車にうるさい人ならパッと見でモデル車種は何なのか判断できるはずだ。

 ゲーム中はどうしても何かに接触して事故を起こしたり,銃撃を受けたりと,車へのダメージは避けられない。このへんにもこだわって作られていて,衝突した箇所や衝撃度によりさまざまな部分が破損し,見た目に反映される。総合的なダメージ状況は画面上にある破損メーターで判断でき,最大になると車は使い物にならなくなる。
 そうなったら,今の車を乗り捨てて別の車を手に入れればいい。停車中の乗り物を窃盗してしまうなり,路上に飛び出して走っている車を止めて強奪すれば,すんなり次の車が手に入る。
 街中での一般人を巻き込んだ殺し合い(あるいは一方的な殺害)が可能というのも,この手のゲームの特徴の一つ。本作でも,のほほんと歩いている市民を次々と車で跳ね飛ばしたり,TPOを気にせず拳銃,マシンガン,ショットガン,グレネードランチャーなどを撃ちまくったりと,まさにやりたい放題だ。残念ながら(?),出血などのグロテスクな表現は省かれている。

 交通違反,盗難,殺人などの犯罪行為は,マップ内をパトロールしている警官(マップ上に表示される)に見つからない限りは,基本的に何のおとがめもない。しかし犯行現場を見られてしまうと,犯罪ゲージが上昇して警察に追われる立場になる。さらに警官を撃ち殺すなどの罪を重ねるとゲージは徐々に増え,次々にパトカーが押し寄せてくるなど包囲や追跡が厳しくなっていく。警官に逮捕されると当然ミッションは失敗なので,基本的にはあまり無闇に罪を重ねるのは得策ではない。

 ドライバー3で強調したいのは,「難しい!」ということだ。とくに逃走や,標的車の追跡&破壊などのミッションは非常に難しく,もの凄いドライビングテクで街中を走り回るCPU操作の車に対し,プレイヤー側がほんの少し引き離されただけで失敗,なんてミッションも多い。何度やってもうまくいかず,途中で投げ出したくなることも。何度も失敗&挑戦を繰り返すことでクリアの糸口が見えてくるので,根気が一番必要なゲームかもしれない。
 なお,一度クリアしたミッションは,あとで個別に遊べる。やり方次第で難しさがガラッと変わるミッションもあるので,いろいろな方法に挑戦してみるといいだろう。

 銃撃戦には,ドライビングほどではないが避けては通れぬ要素として用意されている。ミッション中たまたまギャングと出くわしたり,ギャングが数人いるところに攻め入ったりと,銃撃戦に突入する理由はさまざまだ。油断しているとギャングどもに撃たれてガツンと体力ゲージを減らされ,体力がなくなればミッション失敗となる。
 実はジャンプや前転などのアクションも可能なのだが,あえて使う必要もなく,ドアや壁に隠れてヒョイと顔を出してヘッドショットを決めるなど,地道な戦術で進むことがほとんど。正直銃撃戦に関しては面白みがあまり感じられなかった。もうちょっと,がんばってほしかったところだ。

 

 

細かいパーツまでダメージ計算され,見た目に反映される破損の再現が見事。この車は捨てて乗り換えだ 駐車場に止まっているカウンタックらしき車を拝借。これでドアがガルウイングだったら完璧だったのになぁ 破壊できない信号機と壁の間を抜けようとして失敗した痛そうなワンシーン。こういった激突は頻繁に起きる

 

パトカーやギャングに追われていると画面下にマークが出る。だが構わずに突っ走るしかないような状況が多い 罪もない一般人に凶行も。事件を起こすとパトカーが来るが,犯行現場さえ見られていなければ逮捕されない 面倒なのでパトカーを攻撃。犯罪ゲージが一気に上がり,応援のパトカーもやってくる(マップに表示される)

 

■自動車の扱い全般に突出しているのが最大の魅力


運転はコンピュータに任せて,荷台から銃撃のみを担当するミッションもある。フロントグリルやタイヤを狙うと良い。とはいえ,追跡車の動きも速く,インタフェースの悪さもあり,かなり苦労するだろう。何度も挑戦してコツを掴むしかない
 車の挙動については,レーシングカーとは違うヤワなサスペンションの動きが再現されており,車両ごとの挙動の違いを味わえる。ドリフトさせづらい車,ちっとも曲がらない車といった具合にマニアックな特徴があり,ドライブゲームファンもニヤリとしてしまうはずだ。
 運転自体は,ギアはオートマチックのみ,アクセル/ブレーキだけの簡単操作なので,どの車も何度か走らせていれば,誰でも扱えるようになるだろう。急発進や低速時の方向転換に便利なバーンナウト,強引に車の向きを変えるためのサイドブレーキなど,華麗なドライビングテクニックを駆使してマップ内を走り回れる。
 ほかの二つのゲームモードも見ていこう。「フリーライド」は都市,時間帯(夜明け,昼間,夕焼け,夜),天候(晴れ,曇り,雨),警察の有無,マップ内のスタート地点などを選択して,広大なマップの中を自由に動き回れるモード。実は各都市には3台ずつ隠しマシンが用意されており,見つけ出せば使用できるようになる。また各マップには,"Timmy Vercelli"という,アロハシャツを着て腕に浮き輪という意味深な風貌のギャングが10人配置されている(ピンと来ない人のためにヒント。GTA Vice Cityの主人公の名前は……)。10人をすべて倒すと武器庫のロックが解除され,イベント(ミニゲーム)が始まるので,血眼になって探し回ってもらいたい。

 「ドライビングゲーム」では,逃走する車を破壊する"クイックチェイス",パトカーから逃げ切る"クイックゲッタウェイ",配置されたコーンに車を当てながら走る"トレイルブレイザー",車が完全に壊れるまでどのくらい逃げられるかに挑戦する"サバイバル",マップに設定されたチェックポイントを通過しながら走る"チェックポイントレース"という,6種類のミニゲームが楽しめる。都市ごとに数ゲームずつ用意されており,どれも短時間で楽しめるので,息抜き程度に遊ぶのにちょうどいい。

 なお,どのゲームモードもプレイ終了後にリプレイ機能が使用可能だ(保存も可能)。さらにリプレイデータを編集できるディレクターモードが用意されており,自由にカメラアングルを変更したり,スローモーションやモーションブラー効果を入れられるなど,リプレイフェチの人にはたまらない機能が付いている。うまく編集するとカッコ良いリプレイを見られるので,ディレクターになった気分で腕を振るってほしい。

 インタフェースについて触れておくと,ドライブ時はそれほど問題ないのだが,徒歩になると操作性の悪さが非常に気になった。とくにキーボード+マウスで操作する場合,照準の感度を最小にしても動きが速すぎるうえに荒く,とっさに銃の狙いを正確に定めるのが困難だった。筆者はプレイステーション2のコントローラでプレイしたが,これだと逆に照準の動き感度を最大にしてもモッサリとしており,マウスよりは使いやすくなったものの少々不満が残った。

 箱庭系ドライブアクションということで,比較対象になりやすいGTAシリーズや「マフィア」などと比べると不満な部分もあるが(とくに操作性がこんなに悪いのはなぜだろう),ドライブ部分についてはほかのゲームにはない面白さを持っており,さすが「ドライバー」を名乗るだけある。  ハードボイルド調のカーチェイス満載の映画が好き,リアルに再現された都市の中をドライブするのが好きという人は,遊べるゲームモードも揃っていることだし,挑戦してみてはいかがだろうか。

 

追跡するだけでも大変なのに,銃撃までとなると一段と難しくなる。接近して真正面に来たら銃弾を浴びせよう "〜へ行け"という場合,右下にあるマップ中に目的地の方向が示されるので,迷うことなく辿り着ける ガンシューティング部分は,画像のように敵が攻撃できない範囲から攻撃することが多くなり,面白みが薄い

 

奪った車を走行中のトラックに乗せるという,何かの映画にありそうなミッション。かなりの難度に泣かされた ミニゲームのトレイルブレイザー。速く走ろうとするとコーンを倒せずタイムロス,慎重にいくと時間切れだ リプレイを編集できるディレクターモードで,カッコいいリプレイを作りたい。ここはセンスが問われるところ

 

タイトル ドライバー3
開発元 Reflections 発売元 ライブドア
発売日 2005/09/02 価格 6980円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP,CPU:Pentium 4/1.5GHz以上,メモリ:256MB以上(512MB以上推奨),HDD空き容量:5.5GB以上,グラフィックスカード:メモリ64MB以上,DirectX 9.0c

DRIV3R (c) 2004-2005 Atari,Inc.All rights reserved. Created and developed by REFLECTIONS Interactive Limited,an Atari studio.All trademarks are the property of their respective owners. Manufactured and marketed by Atari,Inc.,New York,NY.Windows is either a registered trademark of Microsoft Corporation in the United States and/or other countries.